大臣談話・大臣記者会見要旨

山口大臣閣議後記者会見録(令和4年3月11日(金)9:00~9:30於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

私からは、今日は3月11日ということで、その所感を述べさせていただきます。東日本大震災・原発事故の発生から、今日で11年となります。改めて、亡くなられた方々に心より哀悼の意を表するとともに、被害を受けられた方々にお見舞い申し上げます。これまでの間、中間貯蔵施設事業や、避難指示解除に向けた特定復興再生拠点での除染などが着実に進展した一方で、復興に向けては、いまだ道半ばの状況です。環境省としては、引き続き、重要な課題の解決に向けて取り組んでいきます。まず、福島県内除去土壌等の県外最終処分についてです。2045年までという国としての約束の実現に向けて、全国での理解醸成等の取組を進めています。来週3月19日には4回目の対話フォーラムを福岡県で開催し、私も出席する予定です。さらに、昨日から中央合同庁舎5号館の正面入口に除去土壌を用いたプランターを設置しました。こうした取組を通じて、着実に国民の理解を広げていければと願います。また、拠点区域外の取組についても、2020年代をかけて帰還意向のある住民の方が帰還できるよう、関係省庁と連携していきます。さらに、ALPS処理水に係る海域モニタリングについては、実施結果を国内外に分かりやすく発信することで、風評影響の抑制に努めていきます。このほか、ぐぐるプロジェクトを始めとする放射線の健康影響に関する差別・偏見の払拭、福島県との連携協力協定を踏まえた「脱炭素×復興まちづくり」に向けた取組の支援等の未来志向の取組も着実に進めていきます。東日本大震災・原発事故からの復興・再生は、今後も環境省としての最重要課題です。引き続き、環境省の全職員が復興担当という意識を持って取り組むよう、本日、職員向けのビデオメッセージを配信します。今後も、地元の皆様との信頼関係を大切にしながら、全力を尽くしてまいります。以上です。

2.質疑応答

(記者)毎日新聞の信田です。福島の除去土壌について伺いたいんですが、中間貯蔵の開始から7年となりますが、いまだにその最終処分のめどは当たっていません。その最終処分に向けた取組について、遅れているのか、どのような御認識かをお聞かせください。また、候補地選定に向けて新たな施策を検討する考えがあるかもお聞かせください。
(大臣)福島県内除去土壌等の2045年までの県外最終処分という方針は、国としての約束であるとともに、法律にも規定された国の責務です。その実現に向けては、除去土壌等の減容・再生利用によって、最終処分量を低減することが重要だと考えています。県外最終処分の実現に向けては、現在、2016年に策定した技術開発戦略及び工程表に沿って、減容に関する技術開発や、再生利用の実証事業、理解醸成活動などを着実に進めているところです。工程表では、2024年度を戦略目標として、基盤技術の開発を進めるとともに、最終処分場の必要面積あるいは構造について、実現可能な幾つかの選択肢を提示することとしています。最終処分地に係る調査検討・調整などは2025年度以降のスケジュールということで、それまでの取組の成果を考慮しながら検討していく予定です。

(記者)環境新聞の小峰です。ウクライナで、ロシア軍は原発や核関連施設を攻撃しました。ロシアの今日は、南シナ海、東シナ海、そして台湾への覇権主義を露骨に強めている中国の明日に重なると懸念する日本国民は多いです。我が国の原子力施設を中国や北朝鮮のミサイルやテロから守ることは、原子力防災大臣としての大きな、いや、最大の任務と言ってもいいと思います。山口大臣は、原子力防災担当大臣として、敵基地攻撃能力の保有や米国との核シェアリングも検討すべきと、岸田首相に進言すべきではありませんでしょうか。
(大臣)このロシアのウクライナにおける原発攻撃については、これはもう言語道断ですね。まず、こういうことをやってはいけないということを、なぜロシアが分からないのかと。 私、今日ちょっとよく調べてみたんですけれども、「1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書」の第56条第1項、そこでは「危険な力を内蔵する工作物及び施設、すなわち、ダム、堤防及び原子力発電所は、これらの物が軍事目標である場合であっても、これらを攻撃することが危険な力の放出を引き起こし、その結果文民たる住民の間に重大な損失をもたらすときは、攻撃の対象としてはならない。」と、はっきりしているんですね。ロシアがこれからも国際社会の一員でありたいと願うならば、これはまずやってはいけないということを、はっきり、もっともっと認識するべきです。中国もこれから世界のリーダーとして振る舞いたければ、こういうことは絶対にやってはいけないということを、世界の一員として、もっとはっきり言うべきです。北朝鮮に至ってはなおさらです。したがって、こういうことについては、まず、外交の範囲あるいは政治家の範囲として、軍事の仕事に絶対してはいけないということが、まず第一にあると思います。こういうことを想定していろいろ話すということは、本当は私の本意ではありません。他方、今、この、小峰さんのあえての御質問ですから、私としては、万が一、国内にある原子力施設において、武力攻撃に伴って原子力事業所外へ放出される放射性物質又は放射線による被害が発生した場合については、これは事態対処法や国民保護法の枠組みの下で想定しているということで、総理を本部長とする事態対策本部において、政府一体となって対処していくものと認識しています。武力攻撃原子力災害が発生した場合については、基本的に、この5㎞圏内の方々は直ちに避難と、あるいは、5㎞から30㎞の範囲の方々は屋内退避といった対応を取ることになると思います。さらに、武力攻撃では様々な事態が想定されるので、そうした状況に応じて、臨機応変に対処するということになろうと思います。原子力防災担当大臣としても、事態対策本部の指示の下、本部員の一員として、原子力防災対策として用意した様々な対応策を活用しながら、実動組織を始めとする関係省庁あるいは自治体と連携して、住民の方々の安全確保を行ってまいります。敵基地攻撃能力、核シェアリングについては、総理が答弁されているとおりでいいと思います。

(記者)テレビ朝日の川﨑です。今の件に関連して、今まさに大臣がお話しされていた、8日に杉本福井県知事が武力攻撃に関する緊急要望書というのを出されましたけれども、今のお話だと、原発への武力攻撃を想定されているということになるんでしょうか。
(大臣)想定、そういうシナリオがあるわけではありません。あってはいけないことです、その攻撃自体がね。だけど、今、そういう御質問をいただいたから、あえて答えるとしたら、先ほど申し上げたようなことになるという話だと思います。杉本知事にも、そういうふうにお伝えしました。
(記者)具体的にどういう被害が出るとか、そういった想定は、特に、この先、検討されるとか、そういうことはないということでいいですか。
(大臣)ありません。
(記者)今ある枠組みの中で、要望書にもあったような、関係法令の内容の検証とか、あるいは、対応方針を国民・県民に明らかにしたり、あるいは、その事態の進展に応じた避難経路や避難手段の確保等の具体的な対応を示すこと、これについては、応えるということなんですかね。
(大臣)ごめんなさい。もう一度おっしゃっていただいていいですか。
(記者)緊急要請書の中にある2と3で、実際に、「武力攻撃に対する原子力発電所の防御、原子力安全対策および防災対策に係る関係法令等の内容を検証し、その結果および対応方針を県民・国民に明らかにすること」。また、3では、「原子力発電所に対する武力攻撃時の避難等の防護措置について、事態の進展に応じた避難経路や避難手段の確保等の具体的な対応を示すこと」というふうに求められていますけど、これについては、どういうふうに応えられる予定でしょうか。
(大臣)我々として、これはまず、こういうことはあってはいけないということを、もっともっと強調してほしいんですね、そこは。こういうことをやったら、もう、昔で言ったら村八分、今の国際社会で言ったら国際社会の一員としてもう認められないという意識を、まずはっきり、みんなに持っていただきたいんです。日本は、まずそれを前提とした話というのは、同じ土俵に乗るような話、私、本当はしたくありません。しかし、いろいろなことを想定しておくということは、もちろん、それは仕事の一部としてと思いますけれど、しかし、そのことというのは、私は今ある枠組みでもって、どういうふうに対応するのかなということを検討することになると思います。
(記者)武力攻撃があった場合の原子力発電所の被害想定というか、それは。
(大臣)そういう話は、引き寄せという言葉もありますけれども、そういうことをまるで認めるようなことですよね。ですから、それはやり出したら話は大変ですよ。だから、それは、起こった場合、いろいろなことが想定されるでしょうけども、我々が持っている道具、それは環境省の持っている道具でどういうふうに対応すべきかということを環境省としては検討するんだと思います。防衛省には防衛省の仕事、あるいは外務省には外務省の仕事もあるでしょう。そういうことが全部合わさって、こういうことというのは対応すべき話であって、環境省で全部そういうこと、このいろいろな攻撃を想定してということは、私はいかがなものかなというふうに思います。我々の持っているツールを総動員して、それを活用していくということが検討の内容になると思います。
(記者)一般的に考えて、被害の想定とか全く、武力攻撃と事故だと、大分変わってくると思うんですけども、特に。
(大臣)被害の想定というのは、チェルノブイリの時よりも、もっとすさまじい話ですよね。もう、そもそもその町が消えていくぐらいの話でしょう。そこをどういうふうにという話は、私は環境省の範囲をはるかに超えていると思います。
(記者)そういったところが不安で、福井県知事が緊急要請書を出されたと思うのですが。
(大臣)そうですね。その不安を払拭するのは、外交でもって、政治家でもって、そういうことを絶対に起こさせないというのが、もう最大のポイントだと思います。でなければ、その世界に引き寄せてしまいますよね。だから、あえて言うとしたら、中国もこの事態をよく、今、観察していると思いますよね。こういうことをしたら、本当に、世界の一員としての資格を失うということをはっきりと認識してもらわなければいけないと思います。

(記者)朝日新聞の関根です。今の関連なんですけれども、先日、原子力規制委員長が国会の答弁で、ロシアのウクライナにおける事態を念頭において質問があったわけなんですけれども、核施設、原発にミサイルの攻撃があった場合の対応というのは、審査の条件にはなっていないということを明らかにしていましたけれども、現実にこういう問題が起きている中で、そうした審査のあり方についての見直しの必要性というのは、大臣としては現在どのように認識されておりますでしょうか。
(大臣)私は、更田委員長と同じ意見です。
(記者)先ほどのお答え内容とも重なるんですけれども、外交努力でやっていくというのは当然のことだと思うんですが、岸田総理もコロナの際によくおっしゃっていましたけれども、最悪の事態を想定するというのは、政治の危機管理の要諦であるということを繰り返しおっしゃっていますけれども、そういった観点から今回の事態を受けて、るる質問があったような、被害想定であったり、関係法令との関係性の検証であったり、あるいは、5㎞から30㎞は、先ほど、同じように一時退避、屋内退避だということをおっしゃっていましたけれども、現実にそういったことが可能かとか、いろいろなことが噴出しているわけなんですけれども、全体的にそういう見直しをするという、そういうお考えも特に現時点ではないと、そういう理解でよろしいでしょうか。
(大臣)見直しというよりも、今持っているツールを活用して、対応していくということだと思います。
(記者)つまり、チェルノブイリの時よりもっとひどい、街が消えていくような話に対して、今持っているツールで活用していくということで対応できるということなのか、あるいは、そうなってしまったらどうしようもないから考えられないということなのか、どちらなんでしょうかね。
(大臣)相当なことが起きるということは、誰でも分かると思うんです。でも、その中で、環境省として用意しているツールで対応するというのが私として答えられる範囲だと思います。

(記者)エネルギージャーナル社の清水です。2点ほど伺います。一つは、冒頭に触れていただいた3.11に関連してなんですが、沿岸の防潮堤は9割方完成しているようですけれども、環境省も東北の沿岸については、国立公園のあるところを中心に、遊歩道的なものをずっと整備してきた事業、何とかトレイルとか言っていますけれども、自然環境局がやってきた事業。伺いたい点は、コンクリートだけの防潮堤、要するに、海が見えなくなって、それまでの自然環境とか生活環境とかと非常に隔離された、そういう防潮堤が多い。環境省は随分問題意識は持っていたと思うんですが、依然として、それに対しての環境の観点から見た防潮堤の在り方といいますか、あるいは、できている防潮堤が本当にそういう面から見て適切なのかどうか。今後、大津波とか地震とかが想定されているわけでして、東北での防潮堤の造り方の経験をいかしていかなきゃいかんという状況も出てくるだろうと思うんですが、その辺、どういう認識をされているか、これが一点です。それからもう一点は、電事連とか石油業界とのトップとの会談をされましたけれども、大臣としてはどういう点を理解を求めて、それが十分だったのか、十分でなかったのか、その辺の所感を伺わせてください。
(大臣)防潮堤の話は、3.11の大惨事の前に、確か10メートルくらいの高さのものを造っていたんじゃなかったでしたかね。それで十分だと思ったものが、十分じゃなかったということ。それを超える高さでやってきてしまったということがあったと思うんです。そういう意味では、当時の映像で、白砂青松、本当に美しいところにあったものが、全部飲み込まれて、だから、そういう景観の問題はあるんでしょうけど、想定したものを超えて、津波がやってきた。そのことに対する守り、果たして、今造っているもので、何とか守り切れるようにと願いますけれども、世の中、想定外のことが起こっているから、果たしてそれで大丈夫なのかどうか。景観をとるか、安全をとるか、その辺の話だろうとは思います。この3.11の日には、やはり安全のことの方が先に頭に入って来るものですから、そういう意味では、今、いろいろな工夫が行われている中で、まずは安全だろうという気はします。あとは、電事連あるいは石油の連盟の方々とお話をさせていただいて、それは脱炭素ドミノということをカーボンニュートラルの中で起こしていきたい。全国行脚も続けるわけですけれども、それぞれの産業界の方々ともいろいろと意見交換をさせていただくという一連の話のことです。その中では、いろいろな話をさせていただきました。あるいは、聞かせていただきました。それは、各産業界とも脱炭素に向けて意識は十分に持っていただいているし、それから、それに対していろいろな施策も考え、あるいは、実行に移そうとされている、その辺もよく分かりました。そして、カーボンニュートラルにつけて、イノベーションということも大事。その財源としてのカーボンプライシング。そういう話についても、いろいろと意見交換をさせていただきました。国がカーボンニュートラルに向けての作業の中で、日本がどういうふうに国家戦略を描いていくかという気持ちも伝えさせていただいて、それに対しての理解を求めたわけで、これ1回で、1時間ぐらいの話で、それが全部共有されるとは思っていません。だけど、千里の道も一歩ですから、私はよくお互いに意見を交換できて、私的にも、それぞれの産業界の方々が、カーボンニュートラルへ向けて本気で取り組んでおられるなということがよく分かりました。我々の本気度も十分汲み取っていただいたというふうに希望しています。でも、これ1回で済む話じゃないと思いますから、カーボンプライシングについても、じっくり話していかないと、我々はこれから設計図を描いていくわけですから、そういう意味では、所感ということで言えば、初めの一歩を踏み出させていただきましたということだと思います。

(記者)環境新聞の小峰です。今回のウクライナ戦争、これにおいて化石燃料価格が暴騰しています。一方で、ウクライナの原発攻撃がありました。ここで今、日本国内だけじゃなくて世界の議論になっていると思いますけれども、原発というのは、原子力というのは、そういう観点から化石燃料価格の高騰には有効ですけれども、いざというときには壊滅的な被害を、軍事攻撃等を受けたら事故が起きる。大臣は、今はクリーンエネルギー戦略の改定の真っ最中で、環境大臣、そして原子力防災担当大臣、そして一政治家として、今後、原子力施設は、原発は、将来的にあるかないかを含めて、あるべきか、ないべきかを含めて、御見解を聞かせていただけたらと思います。
(大臣)大前提として、環境というものが、我々、宇宙船地球号ということから始まったんだと思うんですね。当時、そういう言葉が言われ出したときに、何かしら、我々はふわっとした感覚で、それはそうだなという程度でとどまっていたと思うんですけれども、今や地球環境というものが非常に切迫感をもって捉えられて、高校生の方々も、若い世代として非常に差し迫った感覚を持っておられる。我々も、それを当然共有しているわけですけれども、 だから、その中であるにも関わらず、原子力発電所に対する攻撃を行ったということは、人類全体に対する敵対行為みたいな話だと私は思います。そのことを常任理事国の一国であるロシアのリーダーが分かっていなければいけないですよね。国連というのが、戦後、戦争をなくそうということで、あえてそれまで言わなかった武力行使の禁止というのを(国連憲章の)第2条第4項で言っているわけですけれども、なかなかそういう意味では、その際に、常任理事国に拒否権を与えたことで、国連自身の機能というものがずっと抑えられてきた面はあると思うんです。そういう意味では、国連というものが世界全体の平和を作っていく、常任理事国はその責任感を持っていなければいけない。そのことと、その後の宇宙船地球号という感覚、本来そこは軌を一にしているはずなんですね、それを全部ぶち壊すような動きが今回のロシアの動きですから、そこはやはり世界全体がはっきり声を一つにして、そのことの非を指摘し、唱えて、ロシアのリーダーに対して、そこを認識させなければいけないですよね。ロシア国民全体がそう思っているわけでは、当然ありませんよね。反戦運動というものがものすごく続いている。だから、そこは、ロシアの人全部が、今のリーダーのようなことではないということははっきりしていますけども、ロシアに対しては、もっともっとメッセージをはっきり出していかなければいけないと思います。そこが一番大事なところであって、この原発をこれからどういうふうに考えるかということについては、電源構成の話でも、去年の10月に閣議決定したものの中では、6%から、20%なり22%に引き上げるという話があるわけですから、そこの道は当然探っていくわけですね。まずは、我々としては、その前に、環境省としては原発の安全を最優先の中で、再生可能エネルギーを最大限導入して、原子力発電については可能な限り低減するというところに私は尽きると思います。世の中の中で、いろいろな意見が起こっていることは、よく承知していますから、そこにもよく耳を傾けていきたいとは思います。

会見動画は以下にございます。

https://youtu.be/xA-x6HXgO1c

(以上)

配布資料

・除去土壌を用いたプランターの中央合同庁舎5号館への設置について