大臣談話・大臣記者会見要旨

山口大臣閣議後記者会見録(令和4年2月1日(火)8:59~9:17於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

私のほうからは、パリ協定6条に関わる国際会議の開催について報告させていただきます。 昨年のグラスゴーで開催されたCOP26で、二国間クレジット制度(JCM:Joint Crediting Mechanism)を含むパリ協定6条の市場メカニズムのルールが合意されました。これからは、パリ協定に基づく市場メカニズムを世界的に実施する段階に入ったという形です。6条の市場メカニズムによる削減ポテンシャルは、2030年までに世界全体で年間90億t/CO2に達するとされており、これは直近の世界全体の年間排出量の約3割に相当します。パリ協定の目標達成に向けて、市場メカニズムを可能な限り早期に実施し、削減に向けた各国の野心的な行動を引き出していくことが必要だと考えています。6条交渉を主導してきた日本ですから、その市場メカニズムの実施に関して、各国政府及び関係事業者の体制準備あるいは能力構築を支援するべく、今月の17日と来月7日の2回にわたって、オンラインでの国際会議を開催することにしました。この会議の開催に当たっては、国連気候変動枠組条約事務局やCOP26の議長国である英国などの協力も得ています。現在、世界各国や関係国際機関に参加を呼びかけているところです。当日は、私も開会の挨拶を行う予定であり、JCMに携わってこられた事業者など日本の関係者にも、是非御参加いただきたいと思っています。以上です。

2.質疑応答

(記者)共同通信の水内です。冒頭発言がありましたパリ協定6条の国際会議について、お伺いします。この会議には、パリ協定締約国全体に呼びかけているということだと思うんですけれども、どれぐらいの国が参加すると見込まれているか、または望むか。そして、企業にも呼びかけているということで、そちらも同様に、どれぐらいを見込んでいらっしゃるか。さらに、現状、その市場メカニズム普及への課題をどのように捉えていらっしゃって、今回の会議、日本が主催するということですけども、どのようにそうした課題を解消していきたいか、お考えをお願いします。
(大臣)条約事務局あるいはCOP26の議長国であるイギリスの協力は確保しているわけですけれども、より多くの国あるいは企業に参加いただけるよう、今、調整を進めています。我々の意気込みですけど、参加国数は100か国程度、あるいは、参加者数は企業なども含めて各会議で1,000人以上を目指したいなというふうに思っています。昨年末の12月23日に、環境省と(公財)地球環境戦略研究機関で開催した「パリ協定6条解説セミナー」、この会議はオンラインだったようですけど、そこには800名以上の方が参加登録していただいたようです。ですから、その1,000名というのは、あんまりむちゃな数字ではないかなというふうに思っています。市場メカニズムの実施拡大のためには、各国で政府承認の手続の仕方、あるいは関係者による6条ルールの理解向上、そういう具体的な、実務的な面が必要になってくると思うんです。ですから、そういうプロジェクトを実施するための能力構築というのが一番の課題だと認識しています。その観点からの会議だというふうに捉えていただければと思います。今回の会議では、JCMを含む市場メカニズムの実施事例などを各国から紹介しながら、市場メカニズムの実施に必要となる能力、体制、それらを強化するための具体的な活動内容、そういうことを明らかにしていきたいなと思っています。この市場メカニズムの実施を加速化するため、JCMを6条の実施事例として国際的に発信して、脱炭素市場拡大に向けた具体的な活動内容をまとめていきたいと考えています。

(記者)日経新聞の岩井です。EUのタクソノミーの原子力の位置づけについてお伺いしたいと思います。案が公表されてからしばらくたちましたけれども、国際環境団体から、持続可能でないとか、グリーンではないというような声明が出たりというようなことになっています。今時点での大臣の、EUでの議論であったり、そういう国際団体の声明の受け止めをお伺いできますでしょうか。
(大臣)EUにおいても、どういうふうにカーボンニュートラルを実現できるかということが根っこにあるかもしれませんよね。その中で、ドイツとかフランス、国によって事情が違うとは思うんです。フランスは8割近く原発という電源構成ですから、それから、ドイツの場合はむしろフランスからそれを時々は融通してもらっているという状況でしょうから、したがって、ドイツにおける原子力発電に関する考え方と、フランスにおける考え方も違っているとは本来思うんです。ですから、すっきり、その原子力を丸としたというふうには思えないんですけれども、特に、日本に置き換えてみると、我々のポイントというのは、やっぱり再生可能エネルギーを主力電源として、徹底的にそれを増やしていくと。まず言えるのはそこまでだと思うんですね。長期的に考えると、それはいろいろな意味で、電源構成の話として、例えば原子力は6%から20~22%に増やすとか、いろいろありますけれども、だけど、今EUはこうだから日本がこうだというのは、ちょっと今そこまで言う段階ではないのかなと。我々環境省としては、再生可能エネルギーを徹底的に導入していくというところ、それから、原発については安全を最優先にと、そこまでだと思うんです。
(記者)いろいろな意見を聞くんですけれども、政府がしっかり方針を示さないから、その後継者が育たないとか、その分野を志望する学生が減っているとか、そういった話も聞くんですけれども、そういった課題も踏まえて、日本政府として、どうしていったらいいのか、どうお考えでしょうか。
(大臣)確かに、そのエンジニアの話は大きいですよね。政府の電源構成の話でも、原発をゼロにするということではなくて、できる限り低減させていくというところですから、エンジニアは要るわけですよね。ですから、そこら辺をもう少しはっきりしないと、廃炉するものが出てきたとしても、何十年もかかるわけですから、それをきちっとできないと、えらいことになるということなので、そういう意味では、もう少し議論を精緻にしなければいけないとは思っています。ただ、環境省的には、再生可能エネルギーをできるだけ増やしていくというところ、それから、原発についてあえて言うなら、できるだけその依存度を低減させる、安全を最優先、そこら辺までが今は精いっぱいだと思うんです。

(記者)読売新聞の中川です。冒頭御発言のあった会議の関係ですけれども、JCMを普及させるということについて、取引が活発になれば世界の脱炭素に貢献できるということは一つだと思うんですけれども、日本が今回の会議を主催してJCMを特に経験を共有されていくということの日本側のメリットみたいなものについて、少しお話をいただけますでしょうか。
(大臣)JCMは日本のシステムですよね。似たようなシステムがほかの国にもあるわけですけれども、今、日本のこのJCMというやり方で17か国と協定を結んでいると。気持ち的には、その17が増えるように、我々はこれから動いていくわけですよね。総理のほうから、「アジア・ゼロエミッション共同体」という言葉も出てきているわけですけれども、日本の脱炭素の技術、ノウハウ、その辺を共有することによって、アジアのゼロエミッションへの動きを加速させると同時に、日本にとっても、そのことが企業的にプラスになるようにという気持ちはあります。環境というものが国際的に「国境なし」という言い方を私もよくしますけれども、他方、自分のやり方でできるだけ染まっていってほしいなという思惑が、ヨーロッパとかアメリカには、私には透けて見えるような気がするんです。別にそれは覇権争いとは少し様相は違いますけれども、日本的にイニシアティブを取って、そして、そのことによって、日本の役割を大いに果たすことができればいいなという気持ちはあります。「アジア・ゼロエミッション共同体」も別に最初からチャーターが決まっているわけでもないから、少し気持ち的な要素も強いんだと思いますけれども、日本のこれからの役割として、「脱炭素を制する者は次の時代を制する」というふうに思いますから、このJCMという活動、あるいはこういう国際会議という一つのキャパシティー・ビルディングの在り方も含めて、いいやり方だなと思います。私も環境省は立派だなと思うのは、割と気軽に、カジュアルに、この国際会議をやろうと準備、着々と進んでいますから、そこは立派だなと思うんですね。対面で実際に人が全世界から来るとなると、結構いろいろなロジスティクスも大変ですけど、こういうオンラインのやり方ですから、そういう面が、ある意味で省けることもあるかもしれません。でも、これをさっとできるというのは、環境省も大変なもんだなというふうに思います。2月17日と3月7日、2回に分けてということですけれども、できるだけ、「そうか、そういうふうなマーケットメカニズムについては、そういうふうにやればいいのか」ということがいろいろな途上国も含めて共有してもらえればなという願いはあります。

(記者)河北新報社の桐生です。女川町の原子力総合防災訓練について、先日に続いてお伺いしたいのですけれども、宮城県の知事のほうは、参加者全員にPCRなど、そういった感染対策をすれば開催可能ではないかということを、既に国に伝えているということです。改めまして検討状況をお願いします。
(大臣)オミクロンはまだ相当な数の感染者が発生している状況ですから、その状況を注視してはいます。その中で、現時点では2月の上中旬で実施予定という方針、ここに変更はありません。今、特に知事のほうからもおっしゃっていただいた、私ちょっとその詳細は分かっていないんですけれども、その辺が一番大事なことですから、実際の訓練には、宮城県の方々、女川のその周りの方々、関係することなので、そういう方々の納得もいただきながら、いろいろな想定外があるだろう中での、もともとの訓練のはずですから、いろいろなことも含めて、実際にそのような訓練ができればなというふうに思っています。最終的に宮城県とよく調整しなければいけない話だと思っています。
(記者)仮定の話になってしまうんですけれども、実際、訓練を実施するとなると、東京都内からも職員の方も大勢行かれると思います。感染状況によっては、東京都内は緊急事態宣言ということもなきにしもあらずだと思うんですけれども、そういった場合の取扱いというのはどのようになるのでしょうか。
(大臣)普通に考えて、スタッフの人が行く数というのは少なくなるかもしれません。その辺はゼロということではないと思うんですけれども、できるだけそういうことを工夫しながら、みんなが安全対策というか、感染対策をきちんとしながら、やりたいと思っています。ちなみに、宮城県に実際に訓練参加者が移動する場合には、事前にPCR検査を実施して、陰性を確認できた人に限って参加してもらうというふうに考えています。それから、宮城県の滞在中は毎日抗原検査を実施すると。そして、陽性が万が一確認された人については、訓練への参加は中止と。その人についてはですけどね。それから、オフサイトセンター、私が見に行ったところですけれども、その訓練に参加する要員についても、当初の割り当てられた席数の2分の1程度に絞るということで密を避けるということも考えています。当然のことながら、マスク、手洗い、そういう基本的な対策も実施していきます。ということで実施できればなと。あとは宮城県との最終的な調整という段階です。

(記者)朝日新聞の関根です。今の関連なんですけれども、そのオフサイトに参加する数を2分の1に絞るとかという、そういったコロナとの両立を図るための今回の対策というのは、これは実際に事故が起きたときも恒常的な対策としてそうするから、今回そういう対策を検証するという意味でそういうふうにしているのか、それとも、あくまでも今回流行しているから、今回は特別、宮城県の要望に対応するためにそういうふうにしているのか、これはどちらなのかというのをちょっと教えていただけますでしょうか。
(大臣)実際起きないということを我々は一番願っているわけですけども、訓練を通じて、この計画の、言ってみれば、精緻な形を目指しているという意味で、今回こういう事態を受けて、実際に半分でやってみると。実際のところ、そういうことを経て、万が一同じことが起こったら、そういう形でやっていけるというところを確かめるわけですね。ですから、実際には実際の場合で、またいろいろなことが起こっているかもしれませんけれども、今の状態において、こういう格好でできるということを確かめるという格好になると思います。これでうまくいけば、そういうことができるということが検証されるわけです。

会見動画は以下にございます。

https://youtu.be/cMSN59OQLuU 

(以上)

配付資料

・ パリ協定6条国際会議の開催について