大臣談話・大臣記者会見要旨

山口大臣記者会見録(令和3年12月24日(金)10:41~11:20於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

初めに、私のほうからは、種の保存法施行令の改正、令和4年度当初予算について、そしてまた、脱炭素先行地域の募集スケジュールについて、お話しさせていただきます。種の保存法施行令の一部を改正する政令の閣議決定ということで、今日の閣議において、種の保存法施行令の一部を改正する政令を決定しました。今回の改正内容は、捕獲等が原因で絶滅が心配される小型サンショウウオ類等、32種の野生動植物を、国内希少野生動植物種に指定するものです。指定された種は、捕獲や譲渡、輸出入等が規制されます。詳細は、報道発表資料を御覧ください。今日また閣議決定されました令和4年度の当初予算案のポイントについてもお話しさせていただきます。まず初めに、来年度予算のキーワードは「脱炭素」だと思います。COP26の合意を受けて、成長分野であり、また地域活性化の手段でもある脱炭素は、岸田内閣においても非常に大きな重点政策です。2030年までの「勝負の10年」に「地域」と「くらし」の脱炭素化を強力に推進していこうという考えです。「新たな地方自治体向けの地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」としての200億円、あるいは「環境省初となる本格的な財投出資」としての200億円など、地域脱炭素の推進とライフスタイル転換に、補正予算と合わせれば1,000億円以上を重点配分することになります。これは環境省の復興特別会計を除く当初予算の1/3の規模に当たります。また、二国間クレジット(JCM)などを活用した我が国技術の海外展開も積極的に進めていきます。このほか、プラスチック資源循環を初めとする循環経済関連ビジネスの充実、陸・海の30%の保全などを実現するため、集中的な取組を進めていきます。さらに、東日本大震災・原発事故からの復興・再生については、福島県内の除去土壌等の30年以内の県外最終処分という約束を果たすべく、これもまた全力で取り組ませていただきます。そしてまた、未来志向の取組を展開していきます。加えて、内閣府の原子力防災については、原子力災害時における避難の円滑化対策等、そして、原子力災害対応の実効性向上を図っていきます。原子力規制委員会については、規制を支える安全研究の推進などのための予算を計上しており、引き続き、委員会をしっかりとサポートしていきます。最後に、脱炭素先行地域の選定スケジュールについてお話しさせていただきます。既に多くの自治体から関心を寄せていただいています。今日、第1弾の募集要領と、具体的な選定要件などを定めたガイドブックを公表させていただきます。その上で、第1弾の脱炭素先行地域の募集を、来年1月25日(火)から約1か月間行います。地方自治体の皆様におかれては、令和4年度の予算案に盛り込まれた「脱炭素移行・再エネ推進交付金」200億円などの活用も検討の上、積極的に手を挙げていただきたいと思います。地域の脱炭素化を推進するためには、地域の方々と実際に意見を交わして理解を深めていただくことが欠かせないというふうに考えて、私、あるいは両副大臣、そしてまた大臣政務官とともに全国行脚を行い、脱炭素実現に関する様々な地域の声を聞いていきたいと思っています。まず、来年の1月中旬から全国の地方自治体向けにブロック別の説明会を行います。ここでも、私を始め、政務がそれぞれ出席させていただいて、地域脱炭素に向けた課題あるいは推進方策について、各地域の方々と意見交換をさせていただきたいと思っています。日程については、調整が整った段階でお知らせさせてください。以上です。

2.質疑応答

(記者)朝日新聞の関根です。1F(東京電力福島第一原子力発電所)の処理水の放出について、東京電力が先日、計画を申請しました。それに対して、中国が計画の撤回、あるいは韓国が遺憾の意を表明するなど、海外から批判・反発の声も出ていますが、そうした批判に対して、山口大臣はどのように反論されますでしょうか。
(大臣)それぞれの報道があったことは、よく承知しているわけですけれども、それぞれの報道にコメントするということは、差し控えたいと思います。我々は、ALPS処理水の処分の検討状況について、中国や韓国を含む国際社会に対して、科学的根拠に基づいて、透明性をもって丁寧に説明してきています。今後もこれを継続していく方針です。
(記者)それから、もう一点、予算の関係で今御説明がありましたけれども、環境省として本格的にかかる初めての財投融資として官民ファンドを立ち上げるということですが、改めてその狙いと、官民ファンドというと、なかなかうまくいかないケースも散見されるようなんですけれども、国民負担とならないように、どのように取り組んでいかれるのか、大臣の考えを教えてください。
(大臣)最初の、(交付金)200億円、(財投)200億円のうちの財政投融資の部分ですね。ここだけで終わるんじゃないと思うんですね。これが一つの呼び水となって、あるいは、シードマネーのようになって、世界からのESGマネーも含む、そういうお金の流れというものを是非、引き寄せたいなというふうに思います。これが、要するに、役所的なファンドの運営にならないように、そこは大きなイニシアチブ、できるだけ民間のイニシアチブというものを期待したいと思いますけどね。当然、生きてくるようなお金の使い方になるように見守っていかせていただければと思います。

(記者)北海道新聞の大澤です。福島県対策地域内の高濃度PCB廃棄物の処理に関して、室蘭市と北海道から環境省に回答がありました。お伺いしたいのが、環境省は、この回答をもって室蘭市内での処理が決定したという御認識でしょうか。また、もう一点、市民から不安の声もまだありますが、住民の理解は得られたという認識なのか、大臣の御所感をお願いいたします。
(大臣)北海道及び室蘭市から回答いただけたということに対して、この大前提は地元の御理解ということだと思います。地元の御理解あってのPCBの廃棄物処理だというふうに認識しています。福島の復興を更に進めていくために、この福島県対策地域内の高濃度PCB廃棄物の処理に御理解・御協力をいただけたということで、心より感謝申し上げます。これからは、安全性の確保を第一として、受入れに際しては北海道及び室蘭市から求められた追加的な事項を確実に履行するとともに、処理方針に従って、地元の生活環境保全に影響を及ぼすことがないように、安全に処理を進めていくつもりです。この追加的な事項としては、事故等が発生した際の対応計画の策定、あるいは、一定期間の空間線量率等のモニタリング、そしてまた、放射性物質による影響がないことが確認された高濃度PCB廃棄物以外は持ち込まないと、こういうことが追加的な事項ということで、それを確実に履行していきます。

(記者)環境新聞の小峰です。昨日ですね、日経新聞等の主催で十倉経団連会長の特別講演がありましたが、その中で、「グリーントランスフォーメーションも、我が国の取組が欧米に比べて非常に遅れている」という指摘がありました。ある意味、山口大臣への強い要請だと思いますけれども、十倉会長の発言の大臣の受け止めをお願いいたします。
(大臣)十倉会長の発言は、本当にエンカレッジングというか、叱咤激励というか、非常にありがたいなと思っています。経済界の中にいろんな考え方があると思うんですね。業種によっては、例えばカーボンプライシングについても、いろいろと慎重な意見もありますし、だけれども、我々はこれからグランドデザインというものをきっちり練り上げて、その際には、産業界あるいは経済界からのいろんな知恵も、あるいは意見もめいっぱい吸い込ませていただきたいと思います。そういうことが、岸田総理が考えておられることと軌を一にしていると思っています。岸田総理も最近、講演の中、あるいは記者会見のステートメントの中で、「気候変動」ということを明示的に言及され、そのことが新しい資本主義の中核だという趣旨のことをおっしゃっておられると思います。そのことは、私自身もよく認識しているところです。したがって、そういう政策的な気持ちをどういうふうに実現するかという中で、十倉会長もこういうステートメントを出されたんだと思うんですね。それは予算の中、あるいは、これからの施策の中、まだまだ予算的に、来年度に向けて、この「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」の200億円は、これは手始めですよね。これはきっちり実行できるということを確認しながら、来年度に向けて、同額、若しくは、それ以上というところがあると思いますし、その中で、いわゆる予算的なもののみならず、財政投融資の中で、それ以上の資金の流れというものを呼び起こそうとしているわけですから、そういう道具立てというものは、まだまだ日本の中で、これから進化させていく必要があると思います。特に、この金融面では、日本が更にグリーンボンドとかいう話もあるでしょうけれども、もっともっと進化していく余地は大きいと思うんですね。ですから、いわゆる古典的な言葉で言ったら、ものづくり、あるいは、それを支えるカネ、金融、その辺がもう少し一体感を持って、我々がグランドデザイン、2050年までに、こうやって、ああやって、そうやって、どうやってするから、ほらゼロになるんだと。それから、そのためには、この産業を、例えば推進できるというようなこともめいっぱい相談させてもらわなきゃいけないと思うんですね。それは環境省だけでできることではありません。経済産業省だけでもまだ足りないですね。全体をひっくるめて、なおかつ、場合によっては民間の知恵をもっともっといただいて、この全体のグランドデザイン、そのことを進めていかなきゃいけないなと思います。この間の10月31日から11月にかけて行われたCOP26というのは、その大きな一つのスタートだと思っていますから。だから、それを受けて、来年あるいは来年度、より大きなスタートを切らせていただく。それは、我々がまだまだ行かなきゃいけない、この千里の道も一歩からぐらいのことで、相当大きな道のりを、速いスピードで行かなきゃいけないなというふうに思っていますから、十倉会長がおっしゃっていただいたこと、これはそのとおりだし、そのように受け止めて、期待に応えさせていただければと思います。私もよく(交付金)200億、(財投)200億と言っていますけど、現実には、今回の補正予算とかを入れると1,000億円という数字になるんですね。ですから、(交付金)200億、(財投)200億というよりも、予算的には、補正予算も含めて約1,000億円でもって脱炭素の動きをかけつつあるというふうに見ていただいて、決してそれは、小さいことではなくて、ただし、全然十分ではありませんから、我々的には、それが実を結ぶようにめいっぱい頑張らせていただきたいと思っています。したがって、政務三役5人で全国行脚。全国行脚というのは全国をカバーするというよりも、1都1道2府43県、全部回ると。全部回るといっても、場合によっては1周だけじゃなくて2周、場合によっては2周だけなくて3周ぐらいの気持ちで考えていますので。脱炭素ドミノ、これを起こさせていただくことによって、日本の経済を、新たな段階にまで持って行っていただくというところで、十倉会長とも更なる心合わせをさせていただければと思っています。

(記者)テレビ朝日の川﨑です。先日、国会が閉会したわけですけれども、大臣としては初めての国会になったと思うんですが、振り返ってみてどうだったでしょうか。
(大臣)確かに、大臣として臨ませていただくという意味では、初めての国会だったわけですけど、ずっと若いときから国会に関わらせていただいていて、それで見るとき、岸田内閣は非常に安定しているというふうに、これは一員として言うのは若干気が引けるんですけれども、総理の答弁あるいは同僚の閣僚のみんなの対応を見させていただいていて、相対的にものすごく安定しているなという気はしています。発想としても、コロナ対応、それから、これからの「新しい資本主義」という言葉に込められた、この気候変動、我々の分野も含めたいろんな政策的な理念、それもかなりはっきりしているんじゃないかなというふうに思っていますので、そういう意味では、臨時国会ということでしたけれども、きちっとしたスタートを切らせていただいたのかなというふうに思っています。
(記者)16日の参院予算委の審議の中で、白眞勲議員のほうから、鉄道の有用性の質問が、確か何かあったと思うのですが、二酸化炭素の排出の観点から見て、大臣はどういうふうに鉄道に関しては思っていらっしゃいますか。
(大臣)確かに、自家用自動車よりも鉄道というほうが、CO2発生ということに関してはいいわけですよね。確か、数字的なもの(CO2排出原単位)が、鉄道が18(g-CO2/人キロ)だったら、自家用自動車は133(g-CO2/人キロ)だったとか、結構そんな数字もあるぐらいですから、そこは自家用自動車よりも鉄道ということはあるんだと思います。他方、これからグランドデザイン的に、2050年までにどうやってゼロに持っていくんだっていうふうに、ずっと積算するときには、鉄道の分野だけでなくて、いろんなことをやらなきゃいけないから、そこは、そのうちの一つの発想が、それなんだろうなというふうに思っています。あのとき白さんは、北海道という枠組みででも言われたんでしたっけね。ですから、北海道の鉄道というものが、ある意味で民営化された中で、なかなか収益が大変だというところも後ろにあるのかなと思いながら聞いていました。
(記者)また別でですね、昨日、2020年度の犬猫殺処分の数字が公表されまして、3万頭を切って、譲渡率も7割近くだと。このことに関しての大臣の所感と、あと、今後についてはどう考えていらっしゃいますでしょうか。
(大臣)犬猫の返還・譲渡率が上がっているわけですね。そういう傾向が続いていること自体、環境省と自治体あるいは関係団体の皆様の取組の成果が現れているんじゃないかというふうに考えています。令和2年度の犬猫の殺処分数が、確かに、全国で2万3,764頭というふうに減少してきている。そういう意味では、自治体あるいは関係者の方々の御努力に感謝申し上げたいと思います。引き続き、自治体に引き取られる犬猫の数を減らすということ、あるいは、終生飼養の徹底、あるいは、新たにペットを迎える際の選択肢としては、動物愛護センターというものも、是非増えればいいなという、そういうものがむしろ一般的というぐらいのことになればいいなというふうに思っています。
(記者)あと、先ほど触れられた脱炭素に関しての全国行脚なんですけど、具体的にいつ頃から始めるとか、スケジュール感があれば。
(大臣)スケジュールは今、いわゆる関係者の方で関係の方々と打合せしていただいているところです。もう作業は既にスタートしてもらっているんですけれども、具体的な日程まだ決まってないけど、やっぱり国会がいつ始まるか。1月に始まることほぼ間違いないわけですから、私的にはそれまでに動きたいし、私自身が1人でやるわけじゃなくて、副大臣の方2人、大臣政務官の方2人、全部で私も入れて5人ですから、みんなで手分けしてやってきたいなと思っています。日にちの方はまだこれから。今調整中です。
(記者)通常国会の前、年明けすぐにでも動きたいという感じですか。
(大臣)できれば動きたいと思うんです。私自身も国会の前に、国内に出張させていただくこともあるだろうし、そういうときにも、できればそういう話題も含めて、できればなと思っています。これは1都1道2府43県、47あるとしたら、5人で割れば1人10件弱ですから、そこは1日に、例えば2件回ったら、土日で4件。そうしたら、もう1回土日で8件。ある意味で、半月ぐらいでやろうと思ったらやれる。そういうことで、やっぱり地方自治体の方々も含めて、この先行地域に応募しようとしても、どういう事例があるのかなとか、どういうふうなことをやればいいのかなという、そういうこともあるでしょうから、その紹介もあるだろうし、それからやっぱりいろんな意味で、脱炭素という要素ってたくさんありますから、そういう、いろいろなことも共有して、また意見交換させていただければなというふうに思っています。

(記者)エネルギージャーナルの清水です。2点程ありましてですね、ちょっと基本的な話になるかもしれませんけども。一つは、新年を間近に控えて、COP26もさっき触れられたように、終わって、やはり国際社会が「勝負の10年」と言われるところに、どう対応していくかということが、新年は問われると思うんですけど、それで、日本は京都議定書、そしてパリ協定の礎を作ったわけですけれども、大臣は長年外交官としての経験もおありでしょうし、COP26を踏まえて、日本は国際社会にきちっとアピールしたのかどうか。COP26の「宿題」も含めてですね、そこをひとつアピールする必要があるんじゃないか。CO2排出の10カ国の一つになっているわけですし、やっぱり例えば46%から50%のCO2削減も、どっちを目指すのかというようなことも含めてね、何か一つ大臣としての国際社会へのアピールはありませんかということが一つです。それから2つ目は、先ほども触れられましたけれども、岸田首相の「新しい資本主義」の検討が随分具体化してきてるようですけど、やはり成長と分配の前提としてね、地球環境の保全・気候変動への対応というのは、もうど真ん中にあるはずだと思うんですよ。そこで、そういう前提がどうもないがしろにされているんではないかという意味で、環境省が考える「新しい資本主義」の在り方というか、提案というか、そういうのをやっぱり検討する必要があるんじゃないでしょうか。どうでしょうか。その2問です。
(大臣)後の方の、環境省が考える「新しい資本主義」というのは、私はこう思っているんですよ。今までの資本主義は儲かりさえすればいい、今さえよければいい、自分さえよければいいという、こういう資本主義だと、みんなが幸せになっていっていないわけですよね、格差も出てきたし。もう一つ出てきたのがこの地球温暖化。これが資本主義では解決できていないわけですよね。そんな中で、我々民主主義側と、それから違う体制の全体主義側。何かこういう点では全体主義側の方が何か公権力をもってやれるから、調子がいいのかという意見も出てきている。だけど、我々が言っているのは、その資本主義、中国が例えば赤い資本主義、それでこっちが市場資本主義、資本主義と言っても違うわけですよね。それで、資本主義がこういう地球温暖化の問題についても答えられるのかというのが問われてると思うんですよね。だから別に、環境省が考える「新しい資本主義」という捉え方ではなくて、資本主義がみんなを幸せにできるのかというのが、我々環境省としての捉え方ですから、そういう意味では、この気候変動に対してきちんと対応していくということが、既にこの答えになっているはずなんです。ただ、私がさっき申し上げようとしたのは、それだけにとどまらないはずなんですよ、本当はね。グランドデザインということで、どの産業をどういうふうに助けていくのかと。例えば、鉄がコークスを燃やしてCO2を出すんだったら、H2とどうやって結び付けられるんだと。その技術を取るのに一体どれくらいかかるんだと。何千億円か何兆円か、場合によっては何十兆円かと。そういうことをきちんと考える部署が本当は必要なんですね。だから、それは環境省としての枠を出る議論ではありますけれども、そういうことも組み合わせないと、カーボンプライシングの話というのは、最終的に、私は合意を取るのはそんなに簡単じゃないと思っていますから、それは公権力的にやる話じゃないんで。もうCO2をたくさん出していると言われる業界、その辺の気持ちもめいっぱい吸い込みながら、どういうふうにそれを解決していくんだと。その業界をどういうふうに進化させていくんだというところまで、本当は目指さなきゃいけない。それが「新しい資本主義」ということの意味だと思います。だから、成長と分配の前提とか、そういう捉え方は私はしていません。気候変動に取り組めるかどうか、解決できるかどうかが、資本主義がこれからみんなを幸せに本当にできるのかの、一つの要素だと思っています。資本主義の中で格差をなくせるかどうか、あるいは、昨日より今日、今日より明日の方がいいという、もう一回そういう実感を取り戻せるかどうか。その辺は環境省を超える部分ですから、我々は、今までの資本主義では解決し損なっているこの地球温暖化という問題、この問題に、これは日本だけでは取り組めないわけですから、アメリカ・中国の2大排出国等を巻き込みながら、それから、今までこの先進国と途上国と言われている格差の問題についても、どういうふうにCO2を捉えるかという、そこの溝も埋めながら、場合によっては、洪水が起こった、あるいはそういうときに備えての適応のお金もたくさんくださいという、COP26でのいろいろな声も受け止めながら、対応していきたいなと思っています。それが、最初に清水さんがお聞きいただいたCOP26での話、あるいはアピールということだと思いますけど、私は別にCOP26で特にアピールを狙ったわけではありません。国益を最重視して会議に臨みました。だから、石炭についても、受けを狙ったわけではありません。日本の業界のことを念頭に置きながら、なおかつ環境省として許容できる範囲かどうか。そして、そのことが世界全体の地球温暖化(対策)の中で、逆行し過ぎていないかどうか。そういうことを念頭に置きながら対応しました。京都議定書の性格とパリ協定というのは、少し違っているかもしれません。京都議定書がかなり拘束力が強かったものかもしれません。パリ協定というのはどちらかというと、それぞれの努力を尊重しているという立て付けになっているかもしれません。そんな中で、市場メカニズムについて、なかなか合意が取れていなかったものを、今回、日本の提案がもとになって、各国の賛同を得ながら、そのことが全体の1.5度というところまで、漕ぎつけたという感覚を持っているし、そのことは各国の交渉担当の人たちがかなりはっきり意識していることですから、別に派手派手しいアピールではなくても、存分に日本としてあるべき姿は、できたのかなというふうに思っています。あとはこのCOP26というのは、むしろスタートですからね。ここからスタートしてどういうふうにするかと。それは帰ってきて岸田総理に御報告申し上げたときにも、総理から、「山口さん、この長い道のりがついに始まったわけですから、国内体制の充実も含めてよろしくお願いします」と。行く前には岸田総理から、「追加的な支援のコミットメントも含めてきっちり表明して、そのことは各国から相当好意的に受け止められたというふうに自分は感じました」と、「特にジョン・ケリーさんからはものすごくポジティブな反応をもらいました」というふうに言っておられました。「後は山口さんよろしくお願いしますね」ということで、私は大きな「宿題」を抱えて現地へ行かせてもらったわけですけども、非常にいろんな要素に助けられながら、COP26まとまったと。6条に関しても、多くのスタッフの方々の努力で、結果的にまとまったと。それで、まとまったことでもって、全体がまとまったと。オミクロン株がもうちょっと早かったら、ちょっと危なかったかもしれないという気もしますけれども、いろいろな意味で助けられたと思うんです。そういう意味で、人類にとっていいスタートが切れたと思います。決して十分でありませんけどね。だからそういう意味では、このCOP26を受けて、日本では国内的に、この200億の地域脱炭素(移行・再エネ推進交付金)、それから財政投融資、それからもちろん他の補正予算も含めれば1,000億。こういうことでもって、脱炭素のドミノをどういうふうに進めていくのか。だから、政務三役も汗をかいて全国行脚をやりますと。そしてその中で、日本が実現していく際のグランドデザインも考え始めなければいけないなと。その中で、カーボンプライシングも始めとした合意形成に努めていきたいなと。決して時間がたくさんあるわけじゃないから、この約1年の間にどこまでもっていけるかという、自分自身の勝負だと思っていますから、短期間の間ですけど、そういう動きの中で、静かなアピールで確かな結果を出していきたいなと思っています。
(記者)1点だけ追加。今の答弁で。国際社会へのアピールの点でね、日本の2030年目標というのは、先進国の目標に比べて、アメリカも含めてですけど、決して高いレベルじゃない。ですから、50%の高みというのが入っているんだろうと思いますが、そこは見直して国際社会へアピールしていくというお考えはありませんか。その1点だけです。
(大臣)期待が高くて現実がついていかないと、その期待マイナス現実というのは、全部不満になるんですね。この目標値というのは、ある意味で期待ですから、だからこの今の46%がどういうふうに出てきたかというのを振り返れば、去年の10月に菅総理がこのカーボンニュートラルというのを言われて、今年の4月に気候サミットをアメリカの主催でやったときに、この46%というのを打ち出したわけでしょう。つい半年ちょっと前なんですね。その46%の積算というのが、この分野でどれだけ、この分野でどれどれ、もうかなり詳細に分析して、積算して、出してきたと。それがこの10月の選挙中の、地球温暖化対策計画の中で正式に決まったと。ついこの間、決まったばっかりなんですね。だから、それを確実にやっていくと。期待マイナス現実がゼロになるところまで、現実を高めていくというところが行政の在り方だろうし、言ったことは必ずやるんだなということで、信頼が出てくるんだと思うんです。今はまだ日本全国で本当にできるのかと思っている人がほとんどでしょう。やるぞということがまず大事で、期待を更に上げるというよりも、現実をついて行かせる方が私は先だと思っています。

(記者)環境新聞の小峰です。2問目ですみません。大臣が冒頭でおっしゃった、脱炭素先行地域募集の話ですけれども、来年の7月は参院選です。それで、政務三役は5人ともですね、1人公明党がいまして、与党ですと。それで、この全国行脚から、そしてこの先行地域指定はですね、参院選で非常に有利になるんじゃないかと。当然、山口大臣も自民党員ですから、自民党のためにやるのでしょうから、その辺いかがかと。それから、選定結果の公表が来年の春ということですけど、選定結果を見たらですね、山口大臣の選挙区、兵庫12区、務台・大岡両副大臣、穂坂・中川両政務官のですね、地元にですね、重点的にですね、指定されるなんてね、そんな懸念も、僕なんかは皮肉な人間なんで、すぐそういうところも見るんですけど、いかがですか。
(大臣)別にこれは、環境というのはその国だけでやれるものではなくて、グローバルな話ですから、そんなちまちました感覚で取り組んでも実現しません。だから、我々はもうちょっと高潔な志でもってやっています。参議院選挙、我々が動いても、動かなくても勝ちに行くと。それが選挙ですよね。これがやれたから勝つとか、そんな話じゃないですよ。やっぱり、日本の国民の方々が今、政治に対して何を期待されているか。それはやっぱり本当は、未来に対する確固たるビジョンですよね。昨日より今日のがよくなる、今日より明日のがやっぱりいいという確信を持っていただけるかどうかと。そこがポイントだと私なんかは思っているんです。ですから、今さっき、グランドデザインというふうに申し上げたんですけど、やっぱり日本の在り方というものが、戦略として問われるというのは、今まであまりなかったと思うんですね。それは戦後、吉田路線ということで、アメリカに安全保障を任せて、日本は経済中心にやっていくんだと。だから、政治家たちはもう、そのレールに乗っかって、あまり戦略を考えて来なくてもよかった時代が長かったと思うんですよ。だから、アメリカのコミットメントを確実にするために、思いやり予算、これから強靭化予算というふうに言うかもしれませんけれども、それはもう全部、アメリカのディフェンスコミットメントを確実にするためのもの、そこに戦略が集中していたわけですよね。だけど今、アメリカが、パックス・アメリカーナが、今どうなってるんだろうという議論も含めて、オバマさんのときに、既に世界の警察官を辞めるというふうに言って、そしたら、日本としては、本当はもう国家戦略というものを、どういうふうな世界にしたいのか、在ってほしいのかということも含めて、もっともっと考えなきゃいけないときに来ていると思うんですよ。先行地域を俺の予算で自分の地元に来たからどうのこうのということで私は選挙をやっていませんから。私の選挙はもっともっと地道に、一人一人の草の根的な気持ちをいただいて成り立っている選挙ですから、そのことは。結果として、うちの選挙区のほうの方々が、私が環境大臣をやっていることによって、先行地域がもらえなかったって、これもまた不公平な話だから、客観的にいろいろと考えていただければと思いますし、どういう風に今、考えてくれているのかというのは分かりませんけれども、300近い小選挙区があって、それが別に1小選挙区一つというふうに限りませんから、結果的にどういうふうになるか分かりませんけど、私なんかは100よりももっともっと多く先行地域があった方がドミノが起こしやすいなというふうに思うんで、そこは選挙の在り方とは全く別次元として考えていただいた方が、実態に近いだろうなというふうに思います。

会見動画は以下にございます。

https://youtu.be/w4I2eY8pYqc

(以上)

配布資料

「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律施行令の一部を改正する政令」の閣議決定について(国内希少野生動植物種の指定等)

脱炭素先行地域募集要領(第1回)・ガイドブックの公表について