大気環境・自動車対策

平成14年度地方公共団体等における有害大気汚染物質

平成15年11月14日

 大気汚染防止法に基づき、平成9年度から地方公共団体では有害大気汚染物質の大気環境モニタリングを本格的に開始しているところであるが、今般、平成1 4年度に地方公共団体が実施した有害大気汚染物質の大気環境モニタリング調査結果について、環境省の調査結果と併せて取りまとめた。環境基準が設定されている物質に係る調査結果の概要は以下のとおりである。

  1. 環境基準が設定せれている物質
    物質名地点数環境基準値
    超過割合
    平均値濃度範囲
    ベンゼン 409 8.3% 2.0μg/m 0.49~5.7μg/m
    トリクロロエチレン 341  0% 1.0μg/m 0.0012~70μg/m
    テトラクロロエチレン 355  0% 0.43μg/m 0.029~7.6μg/m
    ジクロロメタン 351 0.3% 2.9μg/m 0.16~190μg/m
    • ベンゼンについては、環境基準値超過地点の割合は8.3%に改善(平成13年度 :18.2%)しており、平均濃度も低下傾向にある。その他の物質については、ほとんどの地点で環境基準値を満たしていた。
  2. 環境中の有害大気汚染物質による健康リスクの低減を図るための指針となる数値(指針値)が設定されている物質
    • ニッケル化合物については、指針値超過地点の割合は2.9%で平均濃度は低下傾向であった。
    • アクリロニトリル、塩化ビニルモノマー、水銀及びその化合物については、全ての地点で指針値を満たしていた。

1.概要

 大気中の濃度が低濃度であっても人が長期的に曝露された場合には健康影響が懸念される有害大気汚染物質については、環境省において、昭和60年度から大気環境のモニタリング調査を行ってきたところであるが、平成9年度から、大気汚染防止法に基づき、地方公共団体(都道府県・大気汚染防止法の政令市)においても本格的にモニタリングを実施しているところである。
 今般、地方公共団体における平成14年度の有害大気汚染物質の大気環境モニタリングについて調査結果がまとまり、環境省の調査結果と併せて公表することとした。
 なお、調査地点によっては、測定頻度が少なく、年平均値を算出し、環境基準値等により評価できないデータもあるが、有害大気汚染物質の大気環境中の濃度を把握する上で貴重な情報となるため、これらの調査結果についても併せて示した。

2.調査方法、対象物質及び測定地点数

(1)調査方法

 大気汚染防止法第22条の規定に基づく大気の汚染の状況の常時監視に関する事務の処理基準(平成13年5月21日制定。以下「処理基準」という。)及び有害大気汚染物質測定方法マニュアル(環境省環境管理局大気環境課)に準拠して調査を実施した。

(2)対象物質(19物質)

ベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン、アクリロニトリル、塩化ビニルモノマー、水銀及びその化合物、ニッケル化合物、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,3-ブタジエン、酸化エチレン、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、ベンゾ[a]ピレン、ヒ素及びその化合物、ベリリウム及びその化合物、マンガン及びその化合物、クロム及びその化合物

(3)測定地点

 測定地点の区分については、処理基準に基づき一般環境、固定発生源周辺及び沿道の3種類とする。
 また、平成14年度における3区分全体の測定地点数(環境省及び政令市が実施した測定地点数を含む。)を都道府県・測定対象物質ごとにまとめたものは参考2 平成14年度の測定地点数のとおりである。

3.測定値の評価

 長期曝露による健康リスクが懸念されている有害大気汚染物質のモニタリングにおいては、原則として月1回以上の頻度で測定を実施し、年平均濃度を求めることとしている。また、ベンゼン等の4物質の環境基準値及びアクリロニトリル等の4物質の環境中の有害大気汚染物質による健康リスクの低減を図るための指針となる数値(以下「指針値」という。)も年平均値として示されているところである。したがって、環境基準値及び指針値(以下「環境基準値等」という。)の達成の評価は、月1回以上の頻度で1年間にわたって測定を実施した地点に限っている。
 しかしながら、必要とされる頻度で測定を実施できなかった地方公共団体もあることから、すべての測定結果について年平均濃度を算出し、評価をすることは困難である。
 このため、今回の取りまとめにおいて、別添の個別測定地点の調査結果表の平均値の欄には、当該測定地点における複数回の測定結果の算術平均値を記載したが、調査地点によっては、必要とされる頻度で1年間にわたって測定を実施していない場合もあることから、環境基準値等との直接的な比較はできないものもあることに留意する必要がある。
 また、月1回以上の頻度で1年間にわたって測定していない地点も含め、今回取りまとめたすべての測定地点のデータについてまとめた値を表1、表4及び表5の中の括弧内に示したが、環境基準値等との直接的な比較ができないデータも含めた数値であることに留意する必要がある。

4.調査結果の要点

(1)環境基準が設定されている物質

イ ベンゼン

 平成14年度のベンゼンの濃度については、表1:平成14年度ベンゼンモニタリング調査結果の概要及び図2 ベンゼンの大気環境中濃度分布のとおりであった。
 平成9年度から平成14年度の環境基準値超過地点数及び平均濃度の推移を表2:ベンゼンの環境基準値超過地点数及び平均濃度の推移に示す。環境基準値と比較すると、一般環境について225地点中3地点で、発生源周辺について74地点中5地点で、沿道について110地点中26地点で環境基準値を超過しており、合計すると409地点中34地点(8.3%)で環境基準値を超過したが、平成9年度から平成14年度において、全般的に改善傾向にある。また、全国の平均濃度も低下している。

 平成10年度から平成14年度にかけて継続して月1回以上の頻度で測定を実施した地点におけるベンゼン濃度の推移を表3及び図1に示す。環境省及び地方公共団体において、継続して測定を実施した地点は212地点あり、これらの地点における平成14年度のベンゼンの平均濃度は、平成10年度の3.4μg/m3に比べ約41%低下し2.0μg/m3であった。

ロ トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン及びジクロロメタン

 平成14年度のトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン及びジクロロメタンの濃度については表4:平成14年度トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン及びジクロロメタンのモニタリング調査結果の概要及び図3 トリクロロエチレンの大気環境中濃度分布図4 テトラクロロエチレンの大気環境中濃度分布図5 ジクロロメタンの大気環境中濃度分布のとおりであった。
 環境基準値と比較すると、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンはすべての地点で環境基準値を下回っていたが、ジクロロメタンでは351地点中1地点において環境基準値を上回っていた。
 経年変化を見るため、継続測定地点における平均値の推移を見たところ、表8 継続測定地点における平均値の推移及び図10 継続測定地点における平均値の推移のとおり、濃度は低下傾向にある。

(2)指針値が設定されている物質

 平成14年度のアクリロニトリル、塩化ビニルモノマー、水銀及びその化合物、ニッケル化合物の濃度については表5:平成14年度アクリロニトリル、 塩化ビニルモノマー、水銀及びその化合物、ニッケル化合物モニタリング調査結果の概要及び図6 アクリロニトリルの大気環境中濃度分布図7 塩化ビニルモノマーの大気環境中濃度分布図8 水銀及びその化合物の大気環境中濃度分布図9 ニッケル化合物の大気環境中濃度分布のとおりであった。
 指針値と比較すると、アクリロニトリル、塩化ビニルモノマー、水銀及びその化合物はすべての地点で指針値を下回っていたが、ニッケル化合物では238地点中7地点において指針値を上回っていた。
 経年変化を見るため、継続測定地点における平均値の推移を見たところ、表8 継続測定地点における平均値の推移及び図10 継続測定地点における平均値の推移のとおり、濃度は低下傾向にある。

(3)その他の有害大気汚染物質

 その他の有害大気汚染物質については、表7 モニタリング調査結果の概要(環境基準等が設定されていない物質)のとおりであった。
 経年変化を見るため、継続測定地点における平均値の推移をみたところ、表8 継続測定地点における平均値の推移及び図10 継続測定地点における平均値の推移のとおり、濃度は低下傾向かほぼ横ばいである。

5.今後の対応

 有害大気汚染物質の大気環境モニタリングについては、大気汚染防止法に基づき、国及び地方公共団体が調査の実施に努めることとされており、地方公共団体においても現在本格的な調査が実施されているところである。
 環境省としては、今後とも、有害大気汚染物質の大気環境モニタリングの充実を図るとともに、有害大気汚染物質による大気汚染の健康リスク評価を行い、対策の推進に役立てていくこととしている。
 また、有害大気汚染物質対策としては、中央環境審議会答申「今後の有害大気汚染物質対策のあり方について(第六次答申)(平成12年12月)」に基づき、平成13年6月に「事業者による有害大気汚染物質の自主管理促進のための指針」を改正し、平成15年度を目標年度とする事業者団体ごと全国単位の自主的な排出削減計画を策定し対応を進めるとともに、特にベンゼンについては、固定発生源が相当程度寄与して高濃度となっている5地域を対象として、新たに地域単位の自主的な排出抑制の取組の促進を図るなど、対応を進めているところである。

添付資料

資料編

平成14年度地方公共団体等における有害大気汚染物質モニタリング調査結果について(目次)