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事後評価 4.第4研究分科会<生態系保全と再生>
i. 環境問題対応型研究領域

研究課題名: D-0801 非意図的な随伴侵入生物の生態リスク評価と対策に関する研究(H20-22)
研究代表者氏名: 五箇公一 ((独)国立環境研究所)

1.研究概要

図 研究のイメージ 経済の国際化に伴い、国際貿易が加速するなか、ひとやモノに付着して非意図的に侵入してくる随伴侵入生物の問題は今後一層深刻になると考えられる。本研究課題では、これまで政策的にも、また社会的にも関心を集めることが少なかった潜在的な随伴侵入生物の中で、特に生態系および人間生活に対して重大な影響を及ぼしているもの、あるいは及ぼすおそれのあるものを選定して、それらの侵入実態および生態学的特性を明らかにするとともに、在来生物・生態系および人間生活に対する影響評価を行う。さらに侵入ルートおよび分布拡大プロセスについて生物学的側面のみならず、社会経済学的側面からの解明および予測を図り、検疫・防除手法の具体的検討を行うことを目的とする。また、オーストラリア・アメリカ・韓国・中国・台湾・東南アジア諸国などの研究機関とも連携を図り、アジア地域を中心とした国際的な随伴侵入生物の防除ネットワークの構築を目指す。
最終的には、環境省・外来生物法における「非意図的な随伴侵入生物」の管理方針の必要性を示し、科学的提言を行う。研究対象として、大量に輸入される資材に紛れて侵入してくる微小生物(昆虫、センチュウ、ダニ、貝類)と、ペットとして意図的に導入される生物に随伴して侵入してくる寄生生物(カエルツボカビ、ラナウィルス、マダニ媒介感染症)という随伴侵入生物の主要な2 タイプを扱い、実証研究を進める。

図 研究のイメージ        
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■ D-0801  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/9846/f-081.pdf PDF [PDF 634 KB]
※「 F-081 」は旧地球環境研究推進費における課題番号

2.研究の達成状況

図 研究成果のイメージ [1]世界に分布拡大しているアルゼンチンアリはわずか4 つのコロニーで形成されていることが明らかとなった。また侵入地における生活史を明らかにし、巨大コロニーの形成メカニズムにオスを介した遺伝子流動の可能性を示した。
[2]両生類の新興感染症カエルツボカビはアジア起源である可能性が高いことを明らかにした。
また、さらに新しい両生類の感染症ラナウィルスが日本にも生息していることを確認するとともに、外来両生類ウシガエルの野生個体群で感染爆発していることを明らかにした。カエルツボカビの成果は、Molecular Ecology やOIE に掲載され、カエルツボカビの検出法およびDNA 変異分析法のグローバルスタンダードを構築した。

図 研究成果のイメージ        
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[3]タイワンタケクマバチ、ニレ立枯れ病菌をはじめとする輸入建材に随伴して侵入してくる外来種の実態を明らかにするとともに、その分布拡大経路を追跡した。農林水産省林野庁保護対策室と森林総合研究所の意見交換会において、「ニレ立枯病の日本への侵入」を報告し、対策について協議し、防除事業等の立案検討に貢献した。
[4]付着性外来二枚貝のカワヒバリガイは日本国内に複数回侵入していることおよび、水利施設を通して分布拡大が進行していることが集団遺伝学的に裏付けられた。国土交通省が建設を進めている霞ヶ浦導水事業に対してカワヒバリガイの分布拡大リスクを提示するとともに、その防除対策について検討を行った。
[5]輸入爬虫類に寄生するマダニ類体内より新型ボレリアおよび人獣共通感染症であるアフリカダニ咬傷熱ウィルスを発見した。マダニ類とボレリアの共進化関係を明らかにした。現在法的措置が一切ない輸入爬虫類の病原体モニタリングの重要性を提起した。

ネットde研究成果報告会 ネット de 研究成果報告会 D-0801
http://www.env.go.jp/policy/kenkyu/special/houkoku/data/D-0801 .html

3.委員の指摘及び提言概要

カエルツボカビ・アジア起源説の提唱、ラナウイルスによる新興感染症の探索など、随伴侵入生物である微生物や微小な寄生生物の生態リスク評価でまとまった成果を上げたことは評価できる。
ただ具体的な対策に結び付くまでには至っていない。全体として外来生物への対応についての、技術的、法的手段の提案を出して欲しかった。これは各サブテーマ間の連携が十分ではなかったためであり、課題代表者の下で各サブテーマの研究者が対策まで視野に入れて統合的に研究を進めていればよかった。

4.評点

  総合評点: B    ★★★☆☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): b  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): b

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研究課題名: D-0802 SEA-WP海域における広域沿岸生態系ネットワークと環境負荷評価に基づく保全戦略(H20-22)
研究代表者氏名: 灘岡和夫(東京工業大学大学院情報理工学研究科情報環境学専攻)

1.研究概要

図 研究のイメージ SEA-WP(Southeast Asia and West Pacific)海域、すなわち東南アジアから西太平洋中部に至る海域は、沿岸生態系における生物多様性が世界中で最も高い地域として知られているが、様々な人為的環境負荷によって沿岸生態系の劣化が急速に進行している。
本研究では、同海域の沿岸生態系保全策として有望視されている海洋保護区(MPA; Marine Protected Area)に関して、その合理的設定と維持に重要な情報となる同海域における広域的沿岸生態系ネットワーク(reef connectivity;サンゴ礁間連結性)の実態解明と、ネットワーク中の幼生供給源の同定およびそこでの環境負荷評価を、新たに開発した海洋物理・低次生態系モデルに基づくサンゴ礁生物の広域幼生分散数値シミュレーションや集団遺伝学的解析(遺伝学的手法による異なる集団間の遺伝学的類似性の解析)、そして陸源負荷評価解析等によって行った。

図 研究のイメージ        
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■ D-0802  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/9846/f-082.pdf PDF [PDF 287 KB]
※「 F-082 」は旧地球環境研究推進費における課題番号

2.研究の達成状況

図 研究成果のイメージ [1]太平洋−インド洋接合域に位置する超多島複雑海域としての SEA-WP海域での高精度海流計算を可能とする高解像度入れ子モデルを、同海域を対象とした低次生態系モデルとともに開発することに成功した。
[2]これらのモデルをベースとして、 SEA-WP海域におけるいくつかの重要海域において幼生分散シミュレーション解析を行い、海流特性等に対応した幼生分散特性を解明するとともに、サンゴ礁間連結性の解析を可能とした。そして、その成果と[3]の集団遺伝学的解析の成果に基づく MPA候補サイト設定のための指針を示した。
[3]サンゴ、ナマコ、ヒトデなどの無脊椎動物 16種類約 6,000個体を採取し、遺伝子マーカーを用いて集団遺伝学的な解析を行うことにより、 SEA-WP海域のさまざまな場所での幼生分散の範囲やその方向の推定に成功した。また、幼生浮遊期の長さや生殖様式が異なる種ごとの集団遺伝構造を明らかにした。

図 研究成果のイメージ        
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ネットde研究成果報告会 ネット de 研究成果報告会 D-0802
http://www.env.go.jp/policy/kenkyu/special/houkoku/data/D-0802 .html

3.委員の指摘及び提言概要

SEA-WP海域において、広域沿岸域の流れと気象条件を組み合わせ、沿岸域生態系の構成生物群について、幼生の流出入を経た交流を具体的に検証した。また、集団遺伝学解析を行って、種分化に関する貢献を行った。いずれも沿岸域生態系保全の基盤となるべき重要な貢献であり、優れた成果をあげた。
しかし、日単位の変動から、氷河期の関わる現象まで幅が広く、時間スケールに関する統一性がない。生物の絶滅リスクに関して生物の長期変動を見据えた研究が望まれる。また、それぞれの海域でのソース -シンク関係が明らかになったが、全体としての MPA候補地への言及が無いのは何故だろうか。

4.評点

  総合評点: A    ★★★★☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): a  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): b

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研究課題名: D-0803 海洋酸性化の実態把握と微生物構造・機能への影響評価に関する研究(H20-22)
研究代表者氏名: 濱 健夫 (筑波大学)

1.研究概要

図 研究のイメージ 人類が化石燃料を消費することにより大気に放出された二酸化炭素の約半分は、海洋に吸収されていると推定され、海洋の炭酸物質の濃度は、大気中の二酸化炭素の濃度と同様に年々増加している。このため、海洋は酸性化の一途をたどるものと予想されている。
本研究では、高い精度を持つ分析機器を開発して西部北太平洋における酸性化の実態を把握するとともに、これまで国内外で得られている情報と統合することにより、海洋酸性化に関するデータベースを構築し、広域にわたり酸性化の評価を行う。さらに、海洋微生物の培養実験を通して、海洋の微生物群集に及ぼす海洋酸性化の影響の評価を実施する。

図 研究のイメージ        
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■ D-0803  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/9846/f-083.pdf PDF [PDF 305 KB]
※「 F-083 」は旧地球環境研究推進費における課題番号

2.研究の達成状況

図 研究成果のイメージ 最新の光学技術を応用する事により開発したpH 測定器を用いる事により、±0.002 の高い繰り返し精度で、海洋表層から深層のpH を観測することに成功した。また、気象庁・気象研究所が北太平洋西部において取得した炭酸系のデータを利用することにより、1983 年から2007 年までの海洋表層水のpH の経年変化を明らかにした。この結果、海洋表層水ではCO2 の吸収による有意なpH の低下傾向を明らかにすることができた。更に、太平洋全域にわたる全511 航海分のデータを統合し、航海間による系統的な測定値の差を補正することにより構築したデータセット「PACIFICA」を構築した。これにより、太平洋全域の1990〜2008 年に渡るpH の動向を明らかにすることができ、酸性化の進行の南北による違いなどが明確となった。
自然微生物群集を用いた培養実験の結果、酸性化の進行は海洋の主要な植物プランクトンの一種であるハプト藻、Chrysochromulina sp.の増殖を阻害するなどの影響を与えること、また、酸性化に伴い植物プランクトンサイズ組成が小型化する傾向があることなどが認められた。これらの群集組成の変化は、食物連鎖、有機物の鉛直輸送等の海洋物質循環に影響を与えることが予想される。一方、海洋酸性化の影響を評価するキースピーシーズである円石藻Emilianiahuxleyi に関する詳細な培養実験の解析から、大気中CO2 濃度上昇による海洋酸性化は、本種の増殖、光合成、石灰化(ココリス形成)に対して、大きなダメージを与える可能性は少ないことを実験的に証明した。

図 研究成果のイメージ        
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ネットde研究成果報告会 ネット de 研究成果報告会 D-0803
http://www.env.go.jp/policy/kenkyu/special/houkoku/data/D-0803 .html

3.委員の指摘及び提言概要

太平洋における海洋pH の測定法を確立し、観測船による航海観測を可能にしたことによって、地球規模の二酸化炭素濃度の上昇が海洋の酸性化に及ぼす影響を実証的に検討した。
ほぼ計画通りに研究を遂行しており、きわめて優れた成果である。円石藻が予想される酸性化に対して適応能力を持っていることが証明されたことは、新しい重要な発見であった。
しかし、生物群集の解析には、さらに広がりが必要という印象である。また、本推進費と気象研究所自身の持つ開発費がどのように使われ、推進費による研究がどのように貢献したかが、分かるような報告が欲しい。

4.評点

  総合評点: A    ★★★★☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): a  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): b

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研究課題名: D-0804 温暖化が大型淡水湖の循環と生態系に及ぼす影響評価に関する研究(H20-22)
研究代表者氏名: 永田 俊(東京大学大気海洋研究所)

1.研究概要

図 研究のイメージ 本研究では、温暖化が大型湖沼の生態系と水質に及ぼす影響を評価することを目的とし、我が国最大の淡水湖である琵琶湖を主要な調査対象として、観測、実験、モデリングを連携させた学際的な研究を実施した。具体的には、6サブテーマの連携のもとに、次の3つの目標を達成することを目指した。
目標1: 琵琶湖における総合的な観測や実験的な解析を実施することで、温暖化が、生態系や水質に及ぼす影響を評価するのに必要な新たな科学的知見を得る。
目標2:それらの知見を統合化することで、高精度な「流動場—生態系結合型」の数値モデルを構築する。これを用いて琵琶湖の生態系と水質が今後100 年間にどのような変化をするのかについての評価を行う。また、他の大型湖沼についても評価を行い、結果を比較する。
目標3:以上の知見に基づき、予想される被害の緩和策や適応策の構築に資する基盤情報を整備する。

図 研究のイメージ        
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サブテーマは以下のとおりである。
(1)琵琶湖の全循環と生態系モデリングに関する研究(東京大学)
(2)乱流・混合過程に伴う酸素フラックス量の定量化に関する研究 (東京海洋大学)
(3)温暖化が物質循環と水質に及ぼす影響評価に関する研究(東京大学)
(4)温暖化が底生動物と魚類に及ぼす影響評価に関する研究(滋賀県琵琶湖環境科学研究センター)
(5)温暖化が浮遊性生物相互作用に及ぼす影響評価に関する研究(滋賀県立大学)
(6)安定同位体比を用いた生態系変動評価と予測に関する研究(京都大学)

■ D-0804  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/9846/fa-084.pdf PDF [PDF 309 KB]
※「 Fa-084 」は旧地球環境研究推進費における課題番号

2.研究の達成状況

図 研究成果のイメージ (1)全循環の発生に関わる表層と底層の水温変動の再現性向上に焦点を当て、境界条件の精緻化等を進めた結果、温暖化シナリオのもとで、
1)琵琶湖では成層期の底層の水温上昇率が表層の水温上昇率を上回り、全循環が継続して発生すること、
2)池田湖では表層の水温上昇率が底層の水温上昇率を上回り、全循環が停止することを示した。
琵琶湖と池田湖の予測結果の比較から、琵琶湖では、今後の気温上昇により表層平均水温が底層平均水温より上昇しても、成層期に底層水温が上昇し、循環期に下降する季節変動を示すため、全循環が継続して発生するものと推察した。

図 研究成果のイメージ        
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次に、生態系サブモデルの改良を加えた結果、深水湖の季節変動および経年変動を想定した予測精度の範囲内で再現できた。今後100 年間で気温が上昇すると仮定した場合は、水温の上昇により酸素の溶解度が減少し、年最低溶存酸素濃度が低下した。また、底層での溶存酸素濃度の低下により栄養塩が溶出し、富栄養化によって湖底の溶存酸素濃度がさらに低下することが明らかになった。
(2)琵琶湖の夏季の成層期には、乱流混合がほとんど発生しない成層の強い層が存在し、表層を通して中・底層への酸素の供給が極めて小さいことを明らかにした。冬季の係留系データを基に、湖が冷却していく状態を解析した結果、表面冷却による対流現象と湖底面に沿って流下する密度流を捉えることができた。湖は全体が一挙に冷やされるのではなくて、対流と密度流が間欠的に発生することを繰り返しながら冷却していくことが明らかになった。さらに、北湖東岸の緩斜面から得られたデータによれば、冷却の過程で冷水・低酸素・低クロロフィルの層が波動の状態で存在することも確認できた。
(3)堆積物直上水が有酸素及び無酸素のそれぞれの条件下でリンの溶出フラックスを測定し、その結果から、深水層の無酸素化に伴うリンの内部負荷が生態系に及ぼす影響を評価した。深水層が1 カ月間にわたって無酸素化した場合のリンの溶出量は1.1〜10.9 トン、一方、12 カ月間にわたって無酸素化した場合には、この値は3.1〜29 トンと見積もられた。無酸素化が12 カ月間続いた場合に増加するリンの内部負荷量は、外部負荷量の3〜29%に相当した。このことから、温暖化に伴う深水層の無酸素化が、リンの内部負荷の増大を通して、富栄養化を促進する可能性が示された。
(4)水中ロボットによる湖底調査から、イサザの生存条件を制限する水温と溶存酸素濃度を調べた。また、琵琶湖で採集されたイサザやアナンデールヨコエビを用いた飼育実験を行い、底生動物の行動に影響を及ぼす溶存酸素濃度の閾値を推定した。その結果、溶存酸素濃度が2mg L-1以下の場合、死んだイサザしか確認できないこと、また、イサザはアナンデールヨコエビに比べてより低酸素化の影響を受けやすいことが明らかになった。
(5)琵琶湖における粒子の沈降フラックスと植物プランクトン一次生産が湖水の流動および気象の変化にどのように応答しているのかを詳細な時系列観測から明らかにした。得られたデータから、琵琶湖の深層に負荷される年間の有機炭素量を見積もるとともに、その起源を、炭素安定同位体比から推定した結果、鉛直輸送された炭素の大部分が自生性であることが示唆された。また、全沈降フラックスが風向・風速の影響をうけて変動することを明らかにした。
(6)酸素安定同位体比を用いて琵琶湖深水層の酸素消費過程を解析した結果、全体の酸素消費に対して、水柱における酸素消費が約40%、湖底堆積物による酸素消費が約60%寄与しているものと推定された。また、堆積物コアを用いた窒素動態の解析の結果、湖底が無酸素になると、アンモニウムの活発な溶出が起こる一方で、硝化−脱窒系が機能しにくくなるため、堆積物による窒素除去能が低下し、窒素の内部負荷が加速することが示唆された。
イサザ個体群および環境変数についての長期データを統計解析した結果、湖底酸素濃度の低下、卵成熟開始タイミングのシグナルとなる秋季の沖帯表層水温の低下時期の遅延、繁殖資源をめぐる水温特異的な競争による近縁種からの繁殖干渉などの生理・生態的影響により、イサザの個体群減少が引き起こされることが示唆された。

ネットde研究成果報告会 ネット de 研究成果報告会 D-0804
http://www.env.go.jp/policy/kenkyu/special/houkoku/data/D-0804 .html

3.委員の指摘及び提言概要

温暖化が地球にさまざまな影響を与え始めた中で、温暖化の大型淡水湖に及ぼす影響について優れた成果を上げたと考える。多くの分野の専門家の成果を、課題代表者がどう統括するかだが、『温暖化の湖沼学』として出版するというのも興味深い。
一方で、固有種のイサザにスポットを当て過ぎたことなどもあって、生態系全体への影響を見たり、環境政策に反映させるという視点にやや欠けていたのではないかと思われる。また、電気分解による酸素供給は、実現性、実用性があるのだろうか。

4.評点

  総合評点: A    ★★★★☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): b  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): b

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研究課題名: D-0805 航空レーザ測量データを用いた景観生態学図の作成と生物多様性データベース構築への応用(H20-22)
研究代表者氏名: 小荒井衛(国土地理院)

1.研究概要

図 研究のイメージ 地域の生物多様性を評価する上では、単に種の分布や自然の劣化度を捉えるだけではなく、地形という場の条件を理解した上でその上に存在する生態系を捉える景観生態学的な視点が重要である。航空レーザ測量によって森林の下の詳細な地形や樹木の三次元構造を捉えることが可能になってきており、この新技術を活用して詳細な地形や植生の三次元情報を反映した景観生態学図を作成し、生物多様性管理のベースマップとして活用することを考えた。
本研究では、原生的自然環境の地域として世界自然遺産に認定されている知床半島を、里山環境の地域として古くからたたら製鉄に伴う「鉄穴(かんな)流し」による大規模な地形改変と植生改変が行われてきた中国山地を取り上げた。活葉期と落葉期の2時期の航空レーザ測量データを取得し、樹林下の詳細地形データの解析による自動地形分類図と、植生三次元構造を捉えた植生図とを作成した。

図 研究のイメージ        
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これらの情報を組み合わせて生物多様性評価に役立つ景観生態学図を凡例レベルから吟味して作成するとともに、生物多様性評価に役立つデータベースも構築した。また、航空レーザ測量データを用いてルーチン的に景観生態学図を作成する手法の検討も行った。
サブテーマは次の3つである。
1)詳細地形データを用いた景観生態学図作成に関する研究
2)原生的自然環境における景観生態学図の生物多様性評価への応用に関する研究
3)里山環境における景観生態学図の生物多様性評価への応用に関する研究

■ D-0805  研究概要
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2.研究の達成状況

図 研究成果のイメージ 航空レーザ測量データから、落葉樹か常緑樹かの区分(または落葉時期の違いによる区分)と、植生高、樹冠の厚さ、単層か複層かの区分のような植生三次元構造を反映した植生図(レーザ植生図)を作成することができ、その手法の一般化を図ることができた。(サブテーマ1)
航空レーザ測量で得られた詳細地形データ(DEM)を用いて、傾斜、凸度、地形のきめ(テクスチャー)の3つの地形要素に着目した自動地形分類図を作成した。また、解像度の異なる DEMによる地形要素の値の変化特性や、鉄穴流し跡地ではテクスチャーの値が一定の値を示すことなど、地形学的に貴重な知見が得られた。(サブテーマ1、3)
航空レーザ測量データから、エゾシカの食害の把握に繋がる情報(Deer Lineとしての枝下高、エゾジカ不嗜好性草本であるハンゴンソウの分布)を捉えられることが示せた。(サブテーマ2、1)
知床岬で鳥類相調査を行うことにより、エゾシカの食害による草原植生の変化が鳥類の生態系に及ぼす影響をモニタリングする上での基礎資料を得ることができた。また、羅臼岳登山道の侵食状況を計測して、登山者のオーバーユースによる荒廃度を評価するための基礎資料を得ることができた。(サブテーマ2)
DEMの自動地形分類による緩傾斜・凹型・テクスチャー粗の地域に主に分布することが分かった。そして、鉄穴流しによる人為改変地にオニグルミ林が卓越して成立することを実証した。大規模な人工改変が行われた箇所で、結果的に植生の多様性が高まる結果となっている。これは、環境史の分野でもこれまで報告されていない興味深い現象であり、人為と生態系の関係を考究する上で新しい視座を提供した。(サブテーマ3、1)

図 研究成果のイメージ        
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鉄穴流し跡地で全層植生図を作成し、レーザ植生図と対比するための基礎資料を得ると共に、オニグルミ林の草本層の生物多様性が豊かであることを示すことができた。(サブテーマ3)
航空レーザ測量データを基に、植生三次元構造を反映した植生と詳細 DEMによる自動地形分類とを組み合わせて、原生的自然環境と里山環境での景観生態学図を作成した。また、その手法の一般化を検討し、既存の航空レーザ測量データを活用する作成手法等を、マニュアル的にまとめることができた。(サブテーマ1)
景観生態学図を作成するために集約した GISデータを、生物多様性データセットとしてまとめることができた。今後 HP等で公開する予定である。(サブテーマ1)

ネットde研究成果報告会 ネット de 研究成果報告会 D-0805
http://www.env.go.jp/policy/kenkyu/special/houkoku/data/D-0805 .html

3.委員の指摘及び提言概要

高精細 3次元景観生態学図の作成は成功し、一部問題はあるものの、ほぼ十分な精度のものができたと評価できる。
一方、応用に関しては、植物群落構造に関する情報の精度が飛躍的に向上したほか、中国山地に於ける鉄穴流しによる人工改変地の把握、その後のオニグルミ群落の発生など新たに得られた成果はあるものの、もう一つの対象地域である知床半島では、シカの食害の把握が十分でないなど、十分な成果があったとは言えない部分もある。

4.評点

  総合評点: B    ★★★☆☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): b  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): b  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): b

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事後評価 4.第4研究分科会<生態系保全と再生>
ii. 革新型研究開発領域

研究課題名: RF-0907 藻場の生態系サービスの経済的価値評価:魚類生産の「原単位」から「日本一」を探る(H19-20)
研究代表者氏名: 小路 淳 (広島大学)

1.研究概要

図 研究のイメージ 本研究では、藻場の資源供給サービスの推定と、その経済価値の試算の具体例を示すために、コアサイトとして位置づけた瀬戸内海のアマモ場において高頻度サンプリングを実施し、温帯域アマモ場の優占種でありかつ水産業上重要種であるシロメバルを題材として、藻場における魚類生産速度(重量/ha/年)を推定し、その経済価値(円/ha/年)の試算を行った。さらに、シロメバルが我が国温帯域のアマモ場に広域分布することを利用して、生産速度の南北比較と変動を左右する要因の探索を実施した。
これらの調査研究により、藻場の生態系サービスのうち、これまでブラック・ボックスであった魚類生産(供給サービス)の定量評価を比較的高い精度で推定する手法の開発が可能となる。全ての生態系サービス(基盤サービス、調整サービス、供給サービス、および文化サービス)を包括的に定量評価したうえで、浅海域の生態系サービスの総合評価を達成するための手法を提供することにも本研究は貢献しうる。

図 研究のイメージ        
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■ RF-0907  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/11490/rf-097.pdf PDF [PDF 380 KB]
※「 RF-097 」は旧地球環境研究推進費における課題番号

2.研究の達成状況

図 研究成果のイメージ 小課題1では、藻場における魚類生産の定量評価と広域的解析を目的として、全国サイト(広域サイト)における魚類採集、集中調査サイト(瀬戸内海:コアサイト)における継続採集および飼育実験における成長至適水温の探索を実施した。全国調査の結果、魚種数と個体密度の空間変動については明瞭な傾向が認められなかったが、バイオマスは南で少なく北(北海道、東北)で多い傾向が認められた。また、単位面積あたり魚類バイオマスと種数の間には正の相関関係が認められた。魚類生産速度の広域比較を実施するためのモデル種としたシロメバルの個体密度およびバイオマスは、瀬戸内海と仙台湾において大きかった。シロメバル仔稚魚の成長様式は全国で3 つのパターンに大別された。
特筆すべき成果は、
[1]これまで研究事例がきわめて乏しかった水圏生態系の供給サービス(魚類生産)を高頻度サンプリングにより定量評価しその経済的価値を試算したこと、
[2]全く同一の手法で全国サイトにおけるサンプリングを実施し、魚類群集の種多様性と生産構造について、過去にない広い空間スケールで定量評価したこと、
[3]フィールド調査と飼育実験を組み合わせて、地球温暖化による環境変動が魚類の分布、成長に与える直接・間接的影響を評価するための基礎的知見を提供したことである。

図 研究成果のイメージ        
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小課題2では、藻場の生物多様性・生物生産の保持機能と漁業資源供給サービスの持続的利用にむけて、藻場の魚類生産の定量評価とその時空間変異性を解明し、環境変動を考慮したモデル解析により生態系サービスの将来予測を行うことを目的とした。その結果、瀬戸内海および東北海域に高魚類生産ゾーンが形成されたが、温暖化の進行によって瀬戸内海海域のアマモ場の群落構造の縮小および不安定化が生じ、魚類生産は高いにもかかわらず瀬戸内海海域の高生産ゾーンが崩壊するパターンが確認された。
得られた成果には、国内にとどまらず国際的にも先進的・独創的なものが含まれるとともに、以下のような点から、環境政策への貢献も期待される。
・藻場の生態系サービスのブラック・ボックス=供給サービスを定量評価した
・生物多様性が高いとされる日本沿岸域において、魚種多様性の南北勾配をみいだした
・海洋保護区(MPA)の選定などに重要な定量的データを充実させた
・地球温暖化による魚類への影響は、種(の特性)に依存的であることを指摘した
なお、本研究の成果をもとにした一般普及書「浅海域の生態系サービス:海の恵みと持続的利用」を本課題の研究代表者・分担者が編集・執筆し、2011 年3 月にすでに刊行されている(恒星社厚生閣、東京)。今後は、この書籍の広報・普及に努めるとともに、学会や専門誌での論文発表を積極的に行う予定である(最終報告書の提出以降に、英語論文1 報が新たに受理された:2010年6 月22 日現在、計2 件)。また、国内の産官学の関係者が集う2010 年度の全国アマモサミット(鹿児島県指宿市)において、本課題の研究成果を基盤に基調講演を行い、アマモ場の生態系サービスとその持続的利用に向けたアマモ場の保全・再生のあり方について本課題の研究成果を基盤に基調講演を行った(分担者)。その反響として、水産庁の藻場・干潟に関する生態系保全関連事業を実施しているいくつかの団体から、本課題の成果に基づく事業計画の見直しに関する打診を受けている。また、環境省重要生態系監視モニタリング事業(沿岸域)、水産庁生物多様性総合保全事業、水産庁地球温暖化対策推進費など関連する事業の実施において本課題の成果を反映させている。

ネットde研究成果報告会 ネット de 研究成果報告会 RF-0907
http://www.env.go.jp/policy/kenkyu/special/houkoku/data/RF-0907 .html

3.委員の指摘及び提言概要

海洋生態系保護区を設定する基盤的な研究で、重要な知見を提供している。アマモをキーストーン種にメバルを指標種としたアプローチと評価は適切といえよう。藻場の生態系サービスの経済的価値が、先行研究による推定より35%高いことなど、政策的にも有用な結果を得ており、期待以上の成果が多かった。
しかし、藻場をより総合的に評価することが必要であり、構成種の違いを含めて要となる生態系サービスモデルが明示されていない。対馬海流についての調査や評価がない。また、シロメバルの評価を行う際に、単純に市場価値を使用したことは期待に反した。

4.評点

  総合評点: B    ★★★☆☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): b  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): b

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研究課題名: RF-0908 南西諸島のマングースの水銀濃縮解明に関する研究(H21-22)
研究代表者氏名: 渡邉泉(東京農工大学)

1.研究概要

図 研究のイメージ 本研究は南西諸島で分布拡大している侵略的外来種マングースの水銀濃縮メカニズムの解明を試みたものである。これまで、野生動物における水銀濃縮現象は海生哺乳類や海鳥類など海の動物でみられていた。マングースは同様の濃縮を示す唯一の陸上哺乳類である。そのため、本種を用いたアプローチは、再現の困難であった in vitroの各種投与実験を可能にし、野生動物の水銀濃縮メカニズムに新たな知見をもたらす可能性が考えられた。さらに、実際の生態系で水銀をどのように濃縮するのかという理解は、包括的な生態系保全にくわえ、マングースの駆除にも有用な知見をもたらすことが期待された。
そこで本研究は、琉球大学大学院医学研究科の柳による「水銀濃縮機序解析ツールとして不可欠なマングース由来細胞の安定供給をめざす戦略」と、鹿児島大学大学院医歯学総合研究科の山本雅達による「水銀濃縮機構の解析と重金属解毒系遺伝子の発現評価系の作製と個体での発現評価」の二つのサブグループから、生化学的に野生動物の水銀濃縮現象を解明するアプローチと、東京農工大学大学院農学研究院の渡邉泉による「食物網を通した水銀取込み・排泄に関する研究」から生態環境科学的に、蓄積メカニズムに迫るアプローチを試みた。

図 研究のイメージ        
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■ RF-0908  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/11490/rf-098.pdf PDF [PDF 252 KB]
※「 RF-098 」は旧地球環境研究推進費における課題番号

2.研究の達成状況

図 研究成果のイメージ 本研究の結果、野生動物の水銀濃縮現象を解明するために必要不可欠な「細胞を用いた実験系」の手法が確立された。つまり、水銀を濃縮する組織器官である肝臓の
[1]初代細胞の培養法が確立され、
[2]不死化細胞樹立への展望が具体化された。
このことで、これまで困難であった in vitro実験に基づく水銀濃縮機序解明への検証が可能となった。
確立された初代細胞培養法を用い、得られた肝臓細胞で、水銀およびその解毒に関係しているとされる必須元素セレンの投与実験を行った。その結果、 in vitroの重金属負荷試験によって得られるデータは、野生動物の摂食行動・生活環境をも反映しうることが示された。さらに海生哺乳類のセレンの蓄積量は水銀の蓄積量と正に相関するが、マングースの肝細胞はセレンの耐性度と個体の水銀の蓄積量が負に相関した。

図 研究成果のイメージ        
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これらの結果から、水銀高蓄積を示す個体には、セレン類似の分子化合物を駆除剤として使用することで、有効性が見いだせる可能性を示した。
生態環境科学的アプローチは、やんばると奄美大島の生態系で起きているマングースの水銀濃縮メカニズムを明らかにした。つまり、生態系を構成する低次生物から、マングースと類似の高次捕食者まで 51種の野生動物、さらに比較として沖縄島中部および鹿児島本土のマングースの微量元素および親生物元素の安定同位体分析を行い、水銀の濃縮メカニズムを検討した。
その結果、マングースの水銀濃縮は、肝臓における特異な蓄積能、さらに換毛による排泄が少ないといった種の特徴にくわえ、生息する生態系の“深さ”が寄与していた。つまり、他地域でみられた低い水銀レベルは環境<無脊椎動物<マングースという生物増幅の結果であるのに対し、やんばると奄美大島では環境<無脊椎動物<両生類など多様な中間捕食者(多くは固有種)<マングースの増幅であることが明らかとなり、貴重な生態系の保全のためにもマングースの速やかな駆除が必要であると結論された。

ネットde研究成果報告会 ネット de 研究成果報告会 RF-0908
http://www.env.go.jp/policy/kenkyu/special/houkoku/data/RF-0908 .html

3.委員の指摘及び提言概要

水銀高濃縮種であるマングースを通して、生態系保全の問題まで追求した優れた研究である。
マングース由来細胞の安定供給(1)、水銀濃縮機構の解析(2)、食物網を通した水銀取り込み、排泄に関して (3)、それぞれに一定の成果を挙げたことが認められる。マングース以外の動物についての応用も考えてほしい。
しかし、食物網を議論するのに、試料としてマングースとコセンダングサしか扱っていないのは、研究計画とは大きく異なり、目標が達成されたとはいえない。また、政策への貢献の道筋がよく意識されていない。研究成果の発表において、業績が非常に少ない。

4.評点

  総合評点: B    ★★★☆☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): b  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): b

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研究課題名: RF-1013 ポスト 2010年目標の実現に向けた地球規模での生物多様性の観測・評価・予測(H22-23)
研究代表者氏名: 矢原徹一(九州大学大学院理学研究院)

1.研究概要

図 研究のイメージ 本研究は、平成 23年度開始予定の戦略的研究開発の具体的方途について事前に調査・分析を行い研究開発の具体的目標となる課題を特定することを目的として実施された。具体的には以下の課題を調査することを目的とした。
(1)陸域生物多様性の評価に関する課題の調査
●陸域生態系の生物多様性観測を行っている ILTER(International Long-Term Ecological Research:国際長期生態学研究)などの達成状況を評価し今後の課題を特定する。
(2)海域生物多様性の評価に関する課題の調査
●海域生態系の生物多様性観測を行っている CoML(Census of Marine Life:海洋生命センサス)などの達成状況を評価し今後の課題を特定する。
(3)種・遺伝子多様性の評価と生物多様性の価値に関する課題の調査
●種多様性の変動傾向に関する従来の指標(Red List Index:レッドリスト指数 , Living Planet Index:生きている地球指数)の問題点を明らかにしこれらに代わる指標開発の方向性・課題を特定する。また評価の前提となるデータベース化の課題を特定する。
●遺伝子多様性の変動傾向に関しては指標がないので地球規模での指標開発の可能性を示し課題を特定する。
●生物多様性の価値評価に関して従来の方法(仮想市場法など)の問題点をレビューし研究課題を特定する。人間活動の生物多様性への負荷や生物多様性損失がもたらす結果に関する評価法についてのレビューを含む。

図 研究のイメージ        
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■ RF-1013  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/12772/rf-1013.pdf PDF [PDF 299 KB]
※「 RF-1013 」は旧地球環境研究推進費における課題番号

2.研究の達成状況

図 研究成果のイメージ 遺伝子・種・生態系レベルの生物多様性(陸域・海域を含む)の観測・予測・評価に関するこれまでの研究をレビューした。その結果、以下の課題を解決することが重要であると結論づけた。
1)生息地の消失にともなう種の消失速度を定量的に評価すること。
2)生息地や種の消失にともなう生態系機能・生態系サービスの消失を定量的に評価すること。
3)緊急に保護を必要とする地域を科学的証拠にもとづいて選定する方法を開発すること。
また、研究手法について検討した結果、以下の課題が重要であると結論づけた。
(1)標本にもとづく研究、プロットにもとづく研究、地域を限定した研究、リモートセンシングによる研究を統合すること。
(2)自然要因と社会要因の両方を説明変数とする空間分布モデルにもとづいて、統計学的解析を行うこと。
上記の検討結果にもとづいて環境研究総合推進費平成 23年度戦略的研究開発領域課題(案)を策定した。

図 研究成果のイメージ        
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ネットde研究成果報告会 ネット de 研究成果報告会 RF-1013
http://www.env.go.jp/policy/kenkyu/special/houkoku/data/RF-1013 .html

3.委員の指摘及び提言概要

生物多様性観測・予測・評価に関する環境研究総合推進費戦略的研究開発に関して今後のプロジェクトを発展させるための問題点の整理と成果が得られたと思われる。ただし、陸域の淡水域の問題点の洗い出しが弱いように感じた。今後の研究に期待したい。この課題は全体的な統合作業が中心になっており、評価の基準はその研究成果というよりも、どれだけ広く、かつ現状に照らした展望を持っているかにかかっている。

4.評点

  総合評点: B    ★★★☆☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): b  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): a  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): b

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