第3節 地球温暖化対策


1 地球温暖化問題をめぐる動き

平成17年4月に京都議定書目標達成計画が閣議決定されました。今後は、毎年、計画の進ちょく状況を点検し、必要に応じ施策の強化を図るとともに、平成19年度には計画の定量的な評価・見直しを行います。

2 地球温暖化対策及び施策


(1)エネルギー起源二酸化炭素に関する対策の推進
ア 省CO2型の地域・都市構造や社会経済システムの形成
地域・都市に関しては、都市再生事業を通じた地球温暖化・ヒートアイランド対策等を行いました。
交通システムに関しては、公共交通機関の利用促進のための鉄道新線・新交通システムの整備、高度道路交通システム(ITS)の推進等の交通流対策等を行いました。
物流体系に関しては、モーダルシフト関連施策の推進を含め、環境負荷が小さく効率的な物流体系の構築に取り組みました。
新エネルギーの面的導入に関しては、バイオマスタウンの構想の推進等を行いました。
イ 施設・主体単位の対策・施策
経団連環境自主行動計画に基づく、産業界における省エネルギー・二酸化炭素排出削減のための対策の進ちょく状況について、関係審議会においてその内容の聴取を行い、フォローアップを実施しました。
建築物・住宅の省エネルギー性能の向上のため、エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和54年法律第49号。以下「省エネ法」という。)を改正し、一定規模以上の非住宅建築物の大規模修繕などを行う者に対して、所管行政庁への省エネ措置の届出を義務付けるとともに、一定規模以上の住宅についても非住宅建築物と同様に所管行政庁への省エネ措置の届出を義務付けました。このほか、住宅・建築物の性能の向上と環境負荷の低減を総合的な環境性能として一体的に評価し、その結果を分かりやすい指標として提示する住宅・建築物の総合環境性能評価システム(CASBEE)の開発・普及を推進しました。
新エネルギーの導入促進に関しては、電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(平成14年法律第62号。以下「RPS法」という。)について着実な運用を行いました。
ウ 機器単位の対策・施策
自動車に関しては、省エネ法に基づくトップランナー制度の対象として、トラック、バスを追加するとともに、クリーンエネルギー自動車を含む低公害車の開発・普及の促進を図るため、民間事業者等に対する購入補助を実施したほか、自動車税のグリーン化、低公害車を取得した場合の自動車取得税の軽減措置等の支援等を実施しました。
機器における対策では、省エネ法に基づくトップランナー制度の対象として液晶・プラズマテレビ・電子レンジ等を追加しました。また、これに加え、省エネラベリング制度や、省エネ型製品販売事業者評価制度により、家電製品の省エネ性能に関する情報提供を行いました。

(2)非エネルギー起源二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素に関する対策の推進
廃棄物の最終処分量の削減や、全連続炉の導入等による一般廃棄物焼却施設における燃焼の高度化等を推進しました。
また、下水排熱等の有効利用を図るため、新世代下水道支援事業制度リサイクル推進事業に対し引き続き国庫補助等を行いました。

(3)代替フロン等3ガスに関する対策の推進
代替フロン等3ガス(HFC、PFC、PF6)の排出抑制については、京都議定書目標達成計画において、地球温暖化対策推進大綱時より強化された目標(基準年総排出量比+0.1%)を設定しました。これを受け、業務用冷凍空調機器からの冷媒フロン類の回収を徹底するため、平成18年3月に、機器廃棄時のフロン類の回収行程を管理する制度の導入、整備時の回収義務の明確化等を内容とする特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(平成13年法律第64号。以下「フロン回収破壊法」という。)の改正法案を第164回国会に提出しました。
また、産業界の自主的な行動計画の進ちょく状況のフォローアップを行うとともに、行動計画の透明性・信頼性及び目標達成の確実性の向上を図りました。
さらに、ノンフロン型省エネ冷凍空調システムの技術開発や、既に実用化が進んでいる冷媒にフロンを用いない省エネ型自然冷媒冷凍装置の導入への補助事業を新たに行いました。

(4)温室効果ガス吸収源対策の推進
温室効果ガス吸収源対策の推進を図るため、二酸化炭素吸収源である森林の適切な整備・保全等を推進しました。また、京都議定書目標達成計画で目標とされた森林による吸収量3.9%の確保を図るため、健全な森林の整備、保安林等の適切な管理・保全等の推進、木材及び木質バイオマス利用の推進、国民参加の森林づくり等の推進等の総合的な取組を内容とする「地球温暖化防止森林吸収源10カ年対策」を展開しました。

(5)京都メカニズムに関する対策の推進
京都メカニズムに関する対策は本章第2節参照。

(6)温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度
温室効果ガスを一定量以上排出する者に温室効果ガスの排出量を算定し国に報告することを義務付け、国が報告されたデータを集計し公表する制度の導入等のため、地球温暖化対策推進法が平成17年6月に改正されました。
これを受けて、温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度の導入に向けて、温室効果ガス排出量の報告を義務付ける対象者(特定排出者)の範囲、温室効果ガス排出量の算定方法、報告事項等の制度細目を平成18年3月に定めました。

(7)国民運動の展開
平成17年4月、地球温暖化防止のための国民運動「チーム・マイナス6%」が発足し、国民一人ひとりのライフスタイルを見直していく取組の一環として、冷房時の室温28℃と「クール・ビズ」を呼びかけ、6月5日の環境の日に愛・地球博の会場内において「COOL BIZ Collection」を開催しました。また、暖房時の室温20℃を呼びかけることを目的として「ウォーム・ビズ」を提唱しました。
さらに、NGOと連携し、夏至の日とその直前の土・日曜日に全国のライトアップ施設や家庭の電気の一斉消灯を呼びかけるCO2削減/ライトダウンキャンペーンを開催、全国22,716か所の施設、約664万人の参加を得ました。そのほか、温暖化対策型製品を紹介する冊子「ふたりで始める『環のくらし』Part.3」等を作成し、市販の雑誌の付録として配布しました。

(8)公的機関の率先的取組
平成17年4月、「京都議定書目標達成計画」に基づき、「政府がその事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の抑制等のため実行すべき措置について定める計画(政府の実行計画)」を閣議決定しました。この計画では、政府は自らの事務及び事業から排出される温室効果ガスを18年度までに13年度比で7%削減することを目標としています。
平成16年度における政府の事務及び事業に伴い排出された温室効果ガスの総排出量は197.8万トン(基準年度値の0.8%減)となりました。
地球温暖化対策推進法においては、地域レベルでの取組を推進するため、1)地方公共団体の事務・事業に係る実行計画の策定義務付け、2)地方公共団体は、区域の自然的社会的条件に応じて、温室効果ガスの排出の抑制等のための総合的かつ計画的な施策(地域推進計画)の策定に努めること、3)都道府県は、地域における普及啓発活動や調査分析の拠点としての都道府県地球温暖化防止活動推進センター(都道府県センター)を指定できること、4)地方公共団体、都道府県センター、地球温暖化防止活動推進員、事業者、住民等により組織することができる地球温暖化対策地域協議会を通じたパートナーシップによる地域ごとの取組の推進等を図ることとしています。

(9)税・課徴金等の経済的手法
税、課徴金等の経済的手法については、第7章第3節参照。

(10)国内排出量取引
平成17年度においては、費用効率的な削減と取引等に係る知見・経験の蓄積を図るため、自ら定めた削減目標を達成しようとする企業に対して、経済的なインセンティブを与えるとともに、排出枠の取引を活用する自主参加型の国内排出量取引を開始しました。

(11)排出量・吸収量算定手法の改善等
気候変動枠組条約に基づき、温室効果ガス排出・吸収目録(インベントリ)の報告書を作成し、排出・吸収量の算定に関するデータとともに条約事務局に提出しました。また、これらの内容に関する条約事務局による審査の結果を踏まえ、インベントリの整備体制や算定方法の改善について検討しました。

(12)地球温暖化対策技術開発の推進
京都議定書目標達成計画において、技術開発は、その普及を通じて環境と経済の両立を図りつつ、将来にわたり大きな温室効果ガス削減効果が期待できる取組として位置付けられました。このため、総合科学技術会議の意見具申(「地球温暖化対策技術研究開発の推進について」平成15年4月)や地球温暖化研究イニシャティブなどを踏まえ、関係各府省が連携し、産学官で協力しながら総合的な推進を図りました。

(13)観測・調査研究の推進
地球温暖化の不確実性を低減させ、科学的知見を踏まえた一層適切な対策を講じるため、引き続き、地球環境研究総合推進費等を活用し、現象解明、将来予測、影響評価及び対策に関する研究及び人工衛星等を用いた温室効果ガスの観測技術の開発を実施しました。また、これらの調査研究等の推進を図りました。


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