平成23年度環境省政策評価委員会 第2回議事録要旨

  1. 日時:平成23年8月25日(木)14:00~16:00
  2. 場所:環境省第一会議室
  3. 出席者
    委員
    (委員長)
    須藤 隆一
    東北大学大学院工学研究科客員教授
    井村 秀文 横浜市立大学特任教授
    大塚 直 早稲田大学大学院法務研究科教授
    河野 正男 横浜国立大学名誉教授
    崎田 裕子 ジャーナリスト・環境カウンセラー
    堤 惠美子 株式会社タケエイ 顧問
    藤井 絢子 特定非営利活動法人 菜の花プロジェクトネットワーク代表
    細田 衛士 慶應義塾大学経済学部教授
    三橋 規宏 千葉商科大学名誉教授
    山本 良一 東京都市大学特任教授
    鷲谷いづみ 東京大学大学院農学生命科学研究科教授
    事務局(大臣官房)
    谷津大臣官房長、高木秘書課調査官、鎌形会計課長、吉田総務課課長補佐、高橋政策評価広報課長、他
    環境省各局部
    坂川企画課長(廃棄物・リサイクル対策部)、中井総務課長(総合環境政策局)、福島課長補佐(環境保健部)、鮎川課長補佐(地球環境局)、水野調査官(水・大気環境局)、田中総務課長(自然環境局)
  4. 議題:(1)平成22年度環境省政策評価書(事後評価)(案)について
    (2)その他
  5. 配布資料
    配布資料
  6. 議事録要旨
    議事録要旨

議事録要旨

(大臣官房長挨拶)

議事1 平成22年度環境省政策評価書(事後評価)(案)について

(事務局より、資料3「第1回政策評価委員会における主な意見及び対処方針」について説明)

【鷲谷委員】
「目標5-1 基盤的施策の実施及び国際的枠組」(P.27~29)の指標「生物多様性の認識状況」について、今年度は数値がないが、「目標の達成状況」では認識が高まっているという評価となっている。しかし、日本がリーダーシップを取って決定した世界目標である愛知目標が国民の間に広がっていないということは、まだ生物多様性の認識が高まっていないことを表しているのではないか。また震災の影響により、昨年と現在の間に非常に大きな社会のギャップが生じてしまっている。このような中で、COP10の成果に立ち戻って発展させることは難しい面もあるだろう。しかし、このようなときだからこそ、愛知目標を掲げて、地方自治体や国民が、これを認識し、自治体は政策の中で、国民は生活の中で、生物多様性を意識しながら行動できるようになるとよい。
生態系と健康への放射線の影響としては、チェルノブイリ原子力発電所事故の経験があるためロシア語の論文が多い。英語で入手可能な文献としては、国際原子力機関(IAEA)のパンフレットのほか、ニューヨーク科学アカデミーの年報がある。これは、ロシア語の論文のデータを総合した論文である。健康被害については意見の相違が大きく、被爆以外の影響もあるため、複合的な結果として影響が出ることは当たり前である。また、発ガンについては発症までの遅延時間がある。このような場合、被爆との関係を直接的な実験室で使うモデルで把握することは難しい。この点、自分のような環境に関わる者は、予防的アプローチで望むべきであると考えている。しかし、この国際機関の論文においては予防的な姿勢が見られず、小児の甲状腺がんは明確であるが、その他、厳密な医学的証明のない健康被害は、放射線の影響としないという方針が貫かれている。この見解と、現地で被害者の近くで研究を行っている研究者の見解との間には、非常に大きな齟齬がある。このことは、被害者の救済上にも大きな問題を提起しているのではないか。日本においては今後様々な問題が出てくるであろう。その場合、予防的アプローチを重視しないと、多くの不幸な人が出てきてしまうのではないか。
また、放射線の影響に関する動植物へのモニタリングが手薄である。チェルノブイリの原発事故においては、例えば実験固体群の確立などが2ヶ月後に実施されており、様々なモニタリングが早い段階から実施されていたようである。しかし、日本ではそのような動きが随分遅れている。動物の観察は、人間の健康被害を考える上で有益な知見をもたらす。様々な病気になった場合、人間の場合は被害のストレスからくるトラウマや、飲酒などの生活習慣による影響もあるが、野生生物は人間と異なり、これらの影響は受けないために自然科学的に研究が可能である。鳥類について調査をしてみると、放射性セシウムの被爆を受ける土壌の虫を食べる鳥類などが最も影響を受けるようである。国際誌に掲載されているいくつもの論文を人のモデルとして考え、予防的に解釈をし、人の健康を守っていくことに活用することは重要であるし、動植物の繁殖力や寿命、病気などについてもモニタリングをする必要があるのではないか。人以外の病気であれば、環境の問題であるので、やはり環境省の仕事になるのではないか。
【山本委員】
前回の発言の訂正をさせていただきたい。まず、P.98のマレーシアの7,000億プロジェクトは、「2015年」ではなく、「2025年」までのプロジェクトであった。また、P.98海面上昇は「1.5m~1.6m」と記述されているところを、「0.5~1.6m」としていただきたい。これが主流の見解であり、NASAのジェームズ・ハンセン博士は最悪5m上昇する可能性があると述べている。
自分が言いたいことは、結局のところ温暖化は進行しており、このような中で、軽減策とともに適応策も考えなければならない。最悪、あと50年で4度上昇突破することになると、ジオエンジニアリングも視野に入れなければならない。今月、『地球温暖化への3つの選択』という本を出版した。この中で、緩和策・適応策・ジオエンジニアリングについて触れている。日本はこの3つしかとる方策がないと考えているため、是非ご参考にしていただきたい。
また、先月オーストラリアにおいて、気温が4度上昇した場合に適応策をどうするかについて国内シンポジウムが開催された。会議の内容としては、4度上がった場合、膨大なお金がかかりすぎるため適応策は不可能であり、スターン氏の見解どおり、あくまで緩和策をメインの対策としてとるべきであるという結論に至っていた。オーストラリアの現政権は、地球温暖化について前向きな政策を打ち出しており、排出権取引や環境税も導入するということになっている。この背後には、オーストラリアにおいて起こった洪水やサイクロンなどの異常気象がある。
したがって、適応策の記述を増やしていただけるのはありがたいが、緩和策・適応策・ジオエンジニアリングという3つを真剣に考える必要がある。
【三橋委員】
1点目として、地球温暖化対策の推進について、温暖化対策のマクロの指標として入れていただきたいのは、「GDPの伸び率」と「原油輸入量の伸び率」である。例えば、1980年代、経済成長率は年率3.8%と順調に成長した。1980年の実質GDPを100とすると1990年は157まで増加した。これに対し、原油輸入量は、1980年を100とした場合に1990年は95と減少し、デカップリングが成立していた。このように、日本にはデカップリングが成立した時期がある。その背景には、1980年代は2度のオイルショックにより原油価格が高騰したため、企業が積極的に省エネに取り組んだ。その結果、経済成長率は上がり、原油輸入量は右下がりのデカップリング経済が実現した。しかし、1990年代以降は経済成長率がわずかにプラスである中、原油輸入量も増加に転じ、カップリングが成立してしまった。これは、1990年代は原油価格が暴落したため、企業が省エネ努力よりも原油を買う方がコストが安くつき、省エネをしなくなってしまったためである。今世紀に入ってからの10年間もこの延長線上にある。このため、GDPが増えれば原油の輸入量あるいはCO2の排出量が増えることになっている。
さらに興味深いのは、リーマンショック前の2007年における経済成長はプラスであり、温室効果ガス排出量はそれ以上の増加率であった。これに対して、リーマンショック以降2008年度および2009年度は経済成長率がマイナスになり、温室効果ガス排出量はそれ以上の減少率となった。日本は厳しい経済状況になると温室効果ガスが減少するようである。このような大きな枠組みの指標もあった方がよいのではないか。1980年代は、1970年代に環境法規制が整備された上に原油価格が高騰したことでデカップリング経済が実現したが、1990年以降は産業界の自主的努力や個人のクールビズのような精神論に依存しているためにCO2削減効果がうまくいかなかったのではないか。経済成長をすれば、それに輪をかけて温室効果ガスの排出量が増えるような経済を作り出してしまった。このようなことに対する反証という意味でも、地球温暖化対策のマクロの指標を検討していただきたい。
2点目として、「中長期のロードマップ」(P.4)について指摘したい。マップ自体はよいが、その問題点も指摘すべきである。このロードマップは、2030年の鉄鋼などの素材産業における生産量が過去の最大値を維持しているという前提で考えられているが、それはありえないことである。自分の推定では半分以下に落ち込んでいるのではないか。その場合の地球温暖化対策は全く変わってくるであろう。このように前提が間違っていると、ロードマップも正しい姿になるはずがない。さらに、2020年から2030年まで人口は年率で0.5%程度減少、さらに2030年から2050年までは人口が年率1%減少するといわれているのに、2030年には現在よりGDPがプラスになる前提となっている。このようなことはありえないことである。ロードマップの前提についての疑問点についても、何らかの形で触れるべきではないか。
最後に、資源エネルギー庁の原子力安全・保安院と内閣府の原子力安全委員会が統合されて環境省の外局として配置されることについて、原子力関連問題は、これまで環境省が触れるべきであるところ経済産業省に遠慮して触れなかったが、今後はまさに環境省のメインテーマとなるであろう。原子力業界に遠慮せず、特に規制という立場と安全という立場からどのような姿勢で取り組むべきか、来年と言わず、今のうちから議論していただきたい。
【細田委員】
1つ目は、前回申し上げればよかったが、「施策3 大気・水・土壌環境等の保全」(P.11~)に関する意見である。かつてデータの改ざん問題があったが、そのときに問題になったのは、昔は水や大気の状況について、地方自治体や企業においては常に人が張り付いて公害防止に取り組んでいたが、現在はそれが薄れてしまったということである。それがデータの改ざんにもつながったのではないか。ということは、地場の企業および地方自治体と国が連携することが、あのような将来にわたって問題を起させないために重要な観点である。このような地域との連携を評価書に入れるべきではないか。
2つ目は、三橋委員と重複する部分があるが、評価そのものを過去からの時系列に見てみることも必要である。どこでデカップリングができていて、どこでカップリングしてしまったのかということを把握しておくことが、将来マクロの環境政策を実現する上で重要である。
3つ目は、本政策評価はいいのであるが、マクロ的に見ると、もっと発信力を持っても良いのではないかということである。某新聞は、再生可能エネルギーについて技術的な確実性が出てきた現在でも、いまだ原発推進派であり、再生可能エネルギーは高くて不安定であると述べている。しかし、今や日本は再生可能資源については米国、中国、スペインにまで投資額で追い抜かれている。再生可能エネルギーは、技術的にもシステム的にもクリアできる問題がたくさんある。このような誤りを正すためにも、環境省の政策および正しい評価を発信していただきたい。
【藤井委員】
「目標4-2 資源循環の適正な3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進」(P.69)二つ目の○「家電リサイクル法について~」では、「法定基準を上回る率が引き続き達成されている」とあり、よい結果というように読める。しかしこれは省エネ法改正やエコポイント、また地デジ化によってある程度予測されたことであり、結果的に国際的に不法な輸出、不法投棄などが増えている。また、無料回収ポイントなどが乱立しており、目に余る状況である。このように、数値が上がればよいというわけではない。
また、P.68 測定指標9「循環型社会ビジネス市場の規模」について、20年度が44兆円となっており、前年度から増えていない。これは国内において廃棄物を回す仕組みになっておらず、循環が狂ってしまっているのではないか。このままいけば、モノの動きに手が付けられない状況になってしまうのではないか。
典型的には、P.70丸1「容器包装リサイクル法に基づく容器包装分別収集量」のオ「ペットボトル」の分別収集量である。数値としては伸びているようであるが、海外へ動いているようである。また、丸2「家電リサイクル法における特定家庭用機器の再商品化率」についても目標値よりも高いが、その数値が高い裏側をしっかり見ていただきたい。ASEANとNGOによる国際循環に関する会議の中でも、日本からの輸出物による途上国の環境問題悪化の問題が年毎に増えている。日本が加害者になり続ける構造ができてしまっており、何とか食い止めないといけない。したがって、評価書における表現の仕方を改めていただきたい。
【堤委員】
「目標3-1 大気環境の保全」(P.12)に、アスベストについて追記していただいたが、もう一点指摘させていただきたい。アスベストへの対策として、封じ込め(囲い込み)という対策の方法をとることが慣行となっていたが、今回の地震によって、封じ込めをした場所がそのまま落下したという事態が散見された。今後も地震が発生する可能性があるため、すでに行われてきた方法ではあるものの、アスベスト対策をこのまま同じ方針で継続してよいのかという新たな問題を提起している。この点について再検討いただきたい。
また、三橋委員からのロードマップの話に似ているが、「施策4 廃棄物・リサイクル対策の推進」(P.67~78)において、廃棄物についても、全体で見た場合、過去に比較すれば非常にリサイクルが進んでいる。しかし、経済が低迷したままであるのに、廃棄物は減少していないのではないか。おそらく大量生産・大量消費・大量廃棄が大量生産・大量消費・大量リサイクルへ変わっただけではないかと感じている。この点についても、マクロでロードマップを検討していただきたい。
【崎田委員】
まず、放射線の影響がある土壌や大気の環境回復や除染などについて環境省がリーダーシップをとるのは、来年と言わず今年始まるという目線で行っていただきたい。国民にとっても環境省が乗り出していただければ心強いのではないか。その中で、環境回復を今後実施する際には、地域行政や市民の視点を入れないと、廃棄物行政のときのような最終処分場の問題もあるため、市民団体や地域社会の声を早い時期から取り入れて政策を運営していただきたい。なお、廃棄物、大気、水、土壌については非常に広範囲であるため、今後どのように評価指標の指標や予算案につながるのか、どのように運営するのかについて教えていただきたい。
また、「目標9-4 環境情報の整備と提供・広報の充実」(P.57)の測定指標の「環境情報に関する国民の満足度」については、目標が90%以上のところ、現状は16.5%となっており、非常に乖離している。震災前に抜本的に広報について考えるプロジェクトが開かれたと伺っていたが、震災の影響でおそらく大変になったことであろう。広報のための広報は予算から難しいため、政策を実施する際に、社会を巻き込んで実施することで社会の関心を高めながら実施することが必要なのではないか。
なお、一つ残念なことは、こどもエコクラブの予算が切られたことである。これは大きな痛手であった。こどもエコクラブは学校以外に地域社会において環境情報を子ども世代に伝えるための手段であり、日本で環境省が唯一持っている宝であったと考えていた。全国の子どもたちは13万人くらいいる。現在は、財団法人日本環境協会が自主的に継続しようとしているようである。これから少しずつ復活させていくことが日本の将来のためになると考えている。
【河野委員】
まず、「目標5-3 野生生物の保護管理」(P.33~35)と「目標5-4動物の愛護および管理」(P.36)に関わることであるが、外来種について、野鳥化した鳥や爬虫類などについてはどちらの目標で扱うのか。
また、23年度以降のことであるが、先ほどの中長期ロードマップに関連して、日本のエネルギー政策が転換しつつあるような印象を受けている。そうなると、「目標1-1 地球温暖化対策の計画的な推進による低炭素社会づくり」(P.3~5)の「施策に関する評価結果」の書き方が変わるのではないか。2012年や2020年などにおいてはかなり難しい問題を抱えているのではないか。当面、原子力から化石燃料に転換することで温室効果ガスの排出量が増加することを危惧しているのが、特に触れられていないため、気になる。
最後に、電力について、節電という長期的な実験がなされているようである。1970年代はオイルショックによって省エネに企業が取り組んだことにより、日本企業の国際競争力が高まったようである。現在、節電への対応で企業において様々な取り組みが見られるが、これが中長期的に見れば日本の競争力を高めることにつながるのではないかと考えている。このようなこともウォッチしていただければありがたい。
【大塚委員】
藤井委員と同じく、「目標4-2 資源循環の適正な3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進」(P.68~71)において、ペットボトルや家電の海外流出については、評価項目に挙げたほうがよいのではないか。とはいえ、推計になり、はっきりとした数値が出ないため、慎重な検討が必要になるであろう。ただ、日本の循環型社会や家電リサイクルのレジームが崩れる可能性があるため、このような数値は今後のためにも出した方がよい。
また、原子力関連で、除染への取り組みを環境省が先導することについては、大変なことであろうが国民から期待されているということなので、是非頑張っていただきたい。
最後に、福島第一原発の施設周辺は国が借り上げることなどについて検討が進んでいるようであり、現実的な話が進んでいるようである。しかし、当初議論があったものの最近あまりされなくなってしまった話が、魚への放射性物質の蓄積の問題であり、今後大きな問題になることであろう。放射性物質の蓄積は、一年から一年半後あたりがピークになるようである。厚生労働省の問題になるかもしれないが、環境省は水俣病問題を経験しているため、是非ご検討いただき、早めに対応していただきたい。放射性物質が川底や海底に堆積しているのをどうするかという問題にも関わってくるため、簡単に対応できる問題ではないが、近い将来、かなり重要な問題になってくるのではないか。ご対応をお願いしたい。
【井村委員】
「施策4 廃棄物・リサイクル対策の推進」は非常に細かいデータがあり、評価がよく出来ていると感じるが、これに対して「施策1 地球温暖化対策の推進」の指標については、あまりにマクロでありブレークダウンされていないと感じる。おそらく、前者については地域行政から細かいデータが取れるのに対して、後者はこうした体系になっていないため、このようになってしまうのであろう。地方では、現在、太陽光や再生可能エネルギーの導入、民生部門である家庭における省エネなど様々なことを行っているが、このデータが積み上げて国の目標に反映させる体系になっていない。今後は環境省がこのようなエネルギー関係の業務をより多く所掌するようになるのではないか。データとしては、日本エネルギー経済研究所が集めてはいるが、それ以外ではきちんと把握していない。これでは国全体の低炭素社会に向けた取り組みの評価をきちんと評価することはできない。改善すべきである。
また、先ほどリサイクル関係で産業連関表を作成し、分析できるようにする話があったが、それだけでは従来の一部の経済学者が行ってきたことのおさらいに過ぎない。国の政策評価に生かすための研究としては、エネルギー、資源、および物質をトータルに表現し、経済との関係を分析できるような統計体系、またそれを使った経済分析ができるように取り組んでいただきたい。
最後に、リサイクルに関連して、震災による瓦礫のデータが出た場合、廃棄物について統計的に不整合が起きるのではないか。何らかの準備をすべきであろう。資源生産性や循環利用率データについては、後々のためにデータを準備して検討しておかないといけない。
【須藤委員長】
今回の東日本大震災は平成22年度に起こったことであるが、このような年度内に起こった大災害など緊急事態への対応について、わずかな期間であってもその対応が適切であったか否かについて、評価していただきたい。今後もこのような自然災害は起こる可能性はあるので、是非、22年度評価において、わずかでよいので触れていただきたい。

<環境省からの回答>

【地球環境局】
山本委員からの、緩和策・適応策・ジオエンジニアリングの3つが重要であるというご意見については、おっしゃるとおりである。適応については、地球温暖化対策基本法案の中で策定される基本計画において、緩和策と並んで位置づけることになっている。ジオエンジニアリングについても勉強させていただきたい。
三橋委員の「GDPの伸び率」と「原油輸入量の伸び率」を指標としてカップリング、デカップリング分析を行うことに関するご意見は、非常に示唆に富んだご意見であった。環境省は毎年わが国の温室効果ガス排出量を公表しており、確定値を出す際にはその要因分析を行っている。GDPや、民生部門におけるオフィスの床面積、世帯数との関係を分析しており、現在カップリングが成立している状況である。この指標の中でもカップリング、デカップリングは非常に重要な分析であるため、今後も参考にさせていただきたい。ただ、政策評価の中でどこまで盛り込んでいくかについては、他の施策とのバランスを考えて検討したい。
同じく三橋委員からの中長期のロードマップの前提条件に関するご指摘については、いわゆるマクロフレームの話であると考えている。人口については厚生労働省(国立社会保障・人口問題研究所)の中位推計のデータを用いている。素材産業の生産量見込みについては、それぞれの業界の見込みをベースとしているために、どうしてもこのような数値になってしまっている。しかしご指摘はごもっともである。中央環境審議会の小委員会で2013年以降の対策の検討を行っており、そういった場などにおいてどのような対応ができるか今後検討したい。
河野委員からの2013年や2020年における評価はこの震災の影響を受けて変わるであろうというご指摘については、原発の代わりに火力が増えてCO2が増えるという意味のご指摘であると理解している。京都目標について、第一約束期間の前半2008年と2009年においては、達成水準にある。予断を許さない状況ではあるが、引き続き努力を続けたい。2020年の中期目標については、震災前にまとめた中長期ロードマップがそのままそのとおりになるとは思わないが、原発のみならず、経済動向、エネルギーの需要構造の変化など、様々な要素があるため、今後検証していきたい。
同じく河野委員からの節電の状況をウォッチするべきであるというご指摘については、ご指摘の通りである。今後CO2の評価の中で非常に大きなファクターの一つであると認識している。
井村委員からの温暖化の指標が廃棄物の指標と比較してマクロ過ぎるというご指摘については、ご指摘のとおりである。しかし、廃棄物、特に一般廃棄物や個別にリサイクル制度が構築されている廃棄物の場合は、排出量の実績値を積み上げる手法をとることが可能であり、そのようにしているのに対して、CO2の場合は全ての排出源の排出量を把握して実績値を出すことは技術的に難しいことから、全国的な状況を把握するためには、エネルギー統計から推計して計算により排出量を求めざるを得ない。ただし、個々の排出量を全く把握する必要がないと申し上げているわけではなく、たとえば、一定規模以上の事業所における排出量を算定し、公表する制度は確立している。併せて地域における排出量を計算する取り組みも進みつつあり、環境省はガイドラインを定めるなどお手伝いしながら今後も進めていきたい。
【水・大気環境局】
震災後は、水や大気に関わる環境問題について、モニタリングを行い、その結果を踏まえて適切な措置を講じることによって二次災害を防止する必要があると考えている。この点について各媒体としっかり取り組む必要があるということについて、前回もご指摘をいただき、アスベストおよび土壌について記述を追加した。
この原則に沿った具体的な措置のあり方について、従来の考え方だけでは不十分であり、改善すべき点があるとして、2点ご指摘をいただいた。鷲谷委員からは、放射性物質のモニタリングのあり方として、予防的原則の考え方を踏まえたモニタリングをすることをご指摘いただき、堤委員からは、アスベスト対策について封じ込め対策が次の問題につながる事例があるということも踏まえた検討が必要であるというご指摘をいただいた。双方とも重要なご指摘であり、原則としては評価書の通り、モニタリングを行い、適切な措置を取るということであるが、具体化する段階において、これらご指摘をどこまで反映できるか検討したい。
崎田委員からの、震災の事後措置に関連して環境省の方針を早く明らかにして説明してほしいというご意見については、早急に行わなければならないと認識しており、現在は対応のあり方について検討中である。早い時期にまたご報告したい。
細田委員からの、地域と国の連携が重要であり、そのことについても明記したほうが良いというご指摘は、まさにその通りである。どのように書き込めるか検討したい。
【自然環境局】
鷲谷委員からの、生物多様性への認識の高まりに関するご意見について、昨年はCOP10が名古屋で開催されたこともあり、国民の間で認識が高まった。しかし、それから一年が経とうとしている上、最近の震災の影響で生物多様性への取組は陰に隠れているように見える。しかし、地道な取組は進んでいる。愛知目標を国の中でどのように反映させていくかについて、現在、国家戦略の改定作業を始めたところであり、来年秋には公表したい。また、自治体や国民の間にも同様の動きを起こすことについては、自治体においては地域戦略作りが広がってきている。昨年成立した生物多様性保全活動促進法についても具体的に計画を作ろうという動きも出てきている。このような地道な取組も継続的に進めていきたい。
同じく鷲谷委員からは、生態系へのモニタリングの必要性に関するご意見があった。放射性物質に限らず、震災によって生態系が様々な影響を受けている。モニタリングや対応を行う場合、まずは人の生命、健康、安心安全が優先的に取り組まれているために、生態系の観点は少し遅れているということは認識している。しかし、できるところから取り組んでおり、宮城県の仙台海浜の鳥獣保護区や岩手県の海鳥の繁殖地の調査なども行っている。現在、放射性物質に関する情報は、魚介類や食肉という、人が摂取するものについて分析され、情報が公表されている段階であるが、生態系の観点も中長期的に重要な課題であるため、今後はこのような知見を充実させたい。自然環境局ではこれまでも基礎調査や重要地域のモニタリングを進めてきているので、これまでの取組にさらに付加し、重点的にモニタリングをするなど、さらに強化していきたい。
河野委員の外来種の影響に関するご質問については、「目標5-3 野生生物の保護管理」の中で外来種を記述している。「目標5-4 動物の愛護および管理」は主に飼養している動物、ペットを扱っている。ペットとして飼われる動物が外来種として問題を起こす場面もあり、両方にわたる課題であるとも言えるが、主に目標5-3で扱う。
【廃棄物・リサイクル対策部】
藤井委員および大塚委員からの廃棄物の輸出に関する問題のご指摘については、大きな課題であると認識している。不法に輸出されるものは取り締まらなければならず、廃棄物処理法やバーゼル法が順守されるように税関と協力しながら監視を強めたい。また途上国と連携し、国際協調の下に管理を行っていきたい。さらに、途上国においては廃棄物管理に関する法制度が整備されていないため、法制度作りのための専門家の派遣なども行っており、引き続き支援していきたい。加えて、容器包装リサイクル法や家電リサイクル法なども定期的に見直しを行う中で、輸出についてどのように取り組むか検討を進めていきたい。
堤委員からの大量廃棄から大量リサイクルに変わっているというご指摘については、確かにそのような傾向があり、なかなか排出量が減らない。リサイクルが進んでいるために、最終処分場は減少しているものの、実際の廃棄物の排出量の削減につながっていない。この点については、廃棄物処理法を昨年改正した時も一つの課題になっており、多量排出事業者の報告制度をうまく活用するなど議論をしてきた。一方、リーマンショック以降、産業廃棄物の排出量は減少していると業者から聞くが、統計上はまだ現れていない。今後の推移を注視していきたい。また、産業廃棄物の統計は、推計を含んでいるが、一、二年前あたりから統計の取り方を変えたため、どのような変化があるのか見ていきたい。
しかしここで問題になるのが、井村委員からのご指摘である。地震による災害廃棄物により統計上の不整合が発生するというのはご指摘の通りである。どのように分けるかについて課題であるが、十分検討していきたい。
三橋委員、崎田委員および大塚委員からの放射性物質に関するご指摘については、健康影響を防止するという点を重要視していきたい。この点、原子力安全委員会が災害廃棄物の処理に伴う線量は年間1ミリシーベルトを下回るようにという目安を出しており、これに基づいて対策を検討している。放射性物質については国民の不安感が強いため、国民への説明に際して、どのように安心感を持っていただけるかということが課題である。この問題については特別措置法も成立するので、適切に運用していきたい。予算についても、急ぎのものは来年度予算を待たず、補正予算においても確保したい。
【総合環境政策局】
三橋委員、崎田委員および大塚委員からの、資源エネルギー庁の下にある原子力安全・保安院と内閣府の下の原子力安全委員会が統合されて、原子力安全庁(仮称)が環境省の外局になるということであるが、環境省としても、総合環境政策局が事務局となって受け入れ準備を行っている。作業自体はこれからであるが、来年4月を目処に外局を設置することや、関連法案などについても全力を尽くしたい。このような中で、環境省として新たに入る原子力安全の分野をどのように扱うか、安全規制の問題を環境の観点からどのように考えていくか、今後検討していきたい。
崎田委員からの、社会を巻き込んで政策を行う中で広報を強化するというご意見をいただいた。環境教育については「今後の環境教育・普及啓発のあり方」という報告書を7月に発表し、これに基づいて取り組むことになっている。今回の震災は、環境問題を考える非常に大きなきっかけである。環境教育の観点から、震災をどのように消化していくかということについて、被災地のヒアリングなどを行い、まとめて環境教材として使うことも検討している。補正予算についても検討している。
井村委員からの環境の観点からエネルギー・物質・経済をトータルで分析する枠組みが政府として必要ではないかとうご指摘は、ご指摘の通りである。今後も勉強していきたい。
【環境保健部】
須藤委員長からの「震災時の対応が適切であったかどうか評価すべき」との御指摘に関連して、御報告する。震災当日に、自治体の化学物質関係部局へ連絡し、化学物質の漏洩等について報告を求めるなどの対応を行った。また、被災地のPRTRデータをとりまとめ、水・大気環境局及び廃棄物・リサイクル対策部に提供した。環境保健部としても被災地における化学物質の残留状況については数年かけてチェックしていきたい。

議事2 その他

(事務局より、連絡事項を説明)

【須藤委員長】
以上をもって、本年度の第二回政策評価委員会を終了する。

以上


問い合わせ先
環境省大臣官房総合政策課企画評価・政策プロモーション室
ご意見・ご要望