地球環境・国際環境協力

気候変動の科学とわたしたちの未来~IPCCと地域の対話 in 愛媛・松山~(2014/12/27)

IPCCと地域の対話 in 愛媛・松山

日時
2014年12月27日(土) 13:00~16:00(12:30開場)
会場
松山市総合コミュニティセンター/大会議室
主催
環境省、共催:愛媛県、松山市

プログラム

挨拶

竹本 明生
環境省 地球環境局 総務課 研究調査室長
遠藤 美武
松山市 副市長

基調講演

Fredolin Tangang(フレドリン・タンガン)
(IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第1作業部会副議長、マレーシア国民大学 教授(気候学))

「IPCC第5次評価報告書 統合報告書

 9月に発表されたIPCC WG1第5次評価報告書から最新の科学的知見が紹介された。
 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の組織構造と役割についての説明ののち、現在までに観測された自然科学的な気候の変化が紹介され、その中には人為的影響と関連づけられるということが強調された。また、さまざまな分野での広範囲の気候変動影響が紹介され、気候変動に対する対策の必要性が示された。最新の将来の気候変動予測の結果、二酸化炭素の累積排出量によって全球平均気温がほぼ決定されることが説明された。最後に、将来の気温上昇を2℃までに抑えるには排出量の大幅な変化が必要であり、我々の緩和策次第で地球の未来は大きく異なるということが強調された。

藤野 純一
((独)国立環境研究所 社会環境システム研究センター 持続可能社会システム研究室 主任研究員)

「低炭素社会に向けて」

 温室効果ガスの排出量を大幅に削減し、将来的に0%排出を達成するためのヒントが紹介された。2050年に80%削減の目標のためには「省エネ、エネルギー削減」「再生可能エネルギーの活用」「化石燃料の高効率化」「原子力の活用」が4本の矢として示された。また、エネルギーから得る満足度のレベルを見直し、少ないサービス量で満足度を得る方法を考え、暮らし方やビジネスのスタイルを変えていくことから出発すべきであるという考え方が強調され、少ないエネルギーでサービスを得る手法、エネルギー消費量あたりのCO2排出を減らしながらQOLを向上させる概念が説明された。また、エネルギー問題対策と健康増進や不動産価値向上等を両立させる事例紹介があった。実際の取組事例として、マレーシアのイスカンダル開発地域における低炭素社会シナリオづくり、および社会実装に関する我が国の取組が紹介された。最後に、自治体の役割としてステークホルダー間の役割分担の明確化が重要であると強調された。

高木 信雄(愛媛県農林水産研究所 果樹研究センター みかん研究所 初代所長、高木農園代表)

「地球温暖化に着目したブラッドオレンジ栽培は何を目指すか」

 温暖化がみかん産業に及ぼす影響、およびそれを逆手に利用する考え方が紹介された。
 ウンシュウミカンは地球温暖化に伴う気候の変化により弱いため非常に痛みやすく、大量生産、短期販売であるため温暖化の影響を大きく受けていることが紹介された。加えて、近年の温暖化で木の老齢化が起こっていることを踏まえ、現状の形態の農業を続けることに対し警鐘が鳴らされた。逆に温暖化をチャンスと捉え、気温の上昇により栽培可能となるグレープフルーツやタロッコ、レモン等に作物を転換し大都市向けに販売する等、農家が視点を変える必要性が示された。最後に、東京の消費者は非常に温暖化に敏感である、ということが強調された。

パネルディスカッション「今後の気候変動対策」

ファシリテーター
杉澤 綾華(NHK松山放送局キャスター、気象予報士(株式会社ウェザーマップ所属))
木根原 良樹(株式会社三菱総合研究所 科学・安全政策研究本部 副本部長)
パネリスト
Fredolin Tangang(フレドリン・タンガン)(IPCC第1作業部会副議長、マレーシア国民大学 教授(気候学))
藤野 純一((独)国立環境研究所 社会環境システム研究センター 持続可能社会システム研究室 主任研究員)
高木 信雄(愛媛県農林水産研究所 果樹研究センター みかん研究所 初代所長、高木農園代表)
竹本 明生(環境省 地球環境局 総務課 研究調査室長)

 前半は気候変動の緩和策(温室効果ガス削減対策)についての議論が行われた。竹本氏より、政府の緩和策に対する取組の紹介があったのち、愛媛県県民環境部環境局環境政策課長松本靖氏より愛媛県内の温室効果ガス排出状況について紹介があった。1人1人が省エネの意識を持ち、ライフスタイルを転換させることと併せて、着実に再生可能エネルギーの比率を高めることの重要性を述べられた。その後タンガン氏より、ある気象現象の原因が気候変動であることを科学的に証明するのは難しいが、極端な現象の頻度が高まることは科学的に予測されており、備えが必要であるとの説明があった。藤野氏からは、市民レベル、産業レベルでの緩和策の取組事例についての紹介があった。
 後半は気候変動適応策についての議論があった。竹本氏より、政府の適応策に関する取組の紹介があった。その後タンガン氏より、気候変動に伴う洪水リスクへの対応について、インフラ面、食料面の備えの重要性が示された。高木氏より、愛媛県の適応策としてのかんきつ栽培が海外からも注目を浴びているとの報告があった。
 その後、パネリストの間でディスカッション、会場との質疑が行われた。