温室効果ガス排出・吸収量等の算定と報告~温室効果ガスインベントリ等関連情報~

温室効果ガスインベントリの概要

温室効果ガスインベントリとは?

 インベントリとは、一定期間内に特定の物質がどの排出源・吸収源からどの程度排出・吸収されたかを示す一覧表のことです。気候変動・地球温暖化の文脈では、一国が1年間に排出・吸収する温室効果ガスの量をとりまとめたデータのことを、一般的に「温室効果ガスインベントリ(Greenhouse Gas Inventory)」と呼んでいます。

 気候変動枠組条約(United Nations Framework Convention on Climate Change: UNFCCC)の第4条1及び第12条1に基づき、我が国を含む附属書I締約国(いわゆる先進国)は、毎年自国の温室効果ガスインベントリを作成し、4月15日までに条約事務局へ提出することが義務付けられています。我が国も毎年温室効果ガスインベントリを作成し、直近年の温室効果ガス排出・吸収量を推計・公表するとともに、排出・吸収量データ及び関連情報を含む温室効果ガスインベントリを条約事務局に提出しています。

気候変動枠組条約における規定

温室効果ガスインベントリの構成

 条約事務局に提出する必要がある温室効果ガスインベントリの構成及び内容は、第19回気候変動枠組条約締約国会議(COP19)で採択された改訂UNFCCCインベントリ報告ガイドライン(Decision 24/CP.19, Annex)で規定されています。附属書I国が提出すべき温室効果ガスインベントリは、以下の2つから構成されています。

  • 共通報告様式(Common Reporting Format: CRF):排出・吸収量の定量情報(数値情報)を報告するためのデータテーブル。CRFはMicrosoft Excelのスプレッドシートであり、条約事務局が開発したCRF Reporter(CRFを作成するためのソフトウェア)を用いて作成されます。
  • 国家インベントリ報告書(National Inventory Report: NIR):排出・吸収量の算定方法や使用データの出典等について説明した報告書です。

対象ガス

附属書I国が提出すべき温室効果ガスインベントリでは、二酸化炭素(CO₂)、メタン(CH₄)、一酸化二窒素(N₂O)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)、パーフルオロカーボン類(PFCs)、六フッ化硫黄(SF₆)、三フッ化窒素(NF₃)の7種の温室効果ガスの排出量を算定するとともに、CO₂と比較した場合の各温室効果ガスの温室効果の強さを示す地球温暖化係数(Global Warming Potential: GWP)を用いてCO₂等量に換算した温室効果ガス総排出量を算定することが求められています。

算定対象期間

 温室効果ガスインベントリでは、基準年(原則1990年)からインベントリ提出年の2年前まで(例えば2016年に提出する温室効果ガスインベントリの場合、2014年)の全ての年の排出・吸収量を報告する必要があります。

 なお、温室効果ガスインベントリにおける温室効果ガス排出・吸収量の標準的な算定方法を規定した2006年IPCCガイドライン では、各年の排出・吸収量を暦年ベース(1月1日~12月31日)で推計することが良いとされていますが、使用データが時系列で一貫している場合は、会計年度でも使用可能とされています。我が国は、排出・吸収量の算定の際に使用している各種統計が会計年度(4月1日~翌年3月31日)に基づいているものが多いことから、基本的に会計年度ベースで排出・吸収量を推計しています(ただし、HFCs, PFCs, SF₆, NF₃は出典統計が暦年ベースであることから、暦年で算定しています。その他のガスにおいても、使用統計の制約により、暦年値を用いている部分があります)。

排出・吸収源

温室効果ガスインベントリでは、原則として、その国から人為的に発生する全ての温室効果ガス排出・吸収量を算定する必要があります。2006年IPCCガイドラインでは、温室効果ガスの排出・吸収源を大きく次の4つのカテゴリーに分類した上で、各分野に属する詳細な排出・吸収源とその排出・吸収量算定方法を提供しており、各国はこの分類に基づいて排出・吸収量の算定を行い、報告を行っています。

  • エネルギー(Energy)
  • 工業プロセス及び製品の使用(Industrial Processes and Product Use: IPPU)
  • 農業、森林及びその他土地利用変化(Agriculture, Forestry and Other Land Use: AFOLU)
  • 廃棄物(Waste)

排出・吸収量の再計算

 温室効果ガスインベントリは、全ての時系列で一貫した算定方法を用いて排出・吸収量を算定することが求められています。従って、温室効果ガス排出・吸収量の算定方法や使用データの修正・改善を行う場合は、過去に遡り、1990年から直近年まで全ての年の排出・吸収量を再計算する必要があります。

 我が国においても、新しい研究成果・調査結果の適用や、温室効果ガスインベントリの審査 での指摘事項に基づく算定方法等の改善、過去の統計データの修正等により、1990年度以降各年の排出・吸収量は、毎年の温室効果ガスインベントリ作成の度に修正されています。

温室効果ガスインベントリの審査

  各附属書I国が提出した温室効果ガスインベントリは、条約事務局により編成された専門家審査チーム(Expert Review Team: ERT)による技術的な審査を受けることとされています。この審査では、所定のガイドラインに従って排出・吸収量の算定・報告が正確かつ完全に行われているか、算定方法等について透明性のある説明がなされているか等の観点から各国の温室効果ガスインベントリが精査され、将来的な報告の改善に向けた勧告や推奨事項を含む審査報告書が作成されます。各国の審査報告書は、UNFCCCのウェブサイト で公開されています。

IPCCガイドラインの概要

 温室効果ガスインベントリにおける温室効果ガス排出・吸収量の算定は、IPCCが作成した以下のガイドラインに基づいて行うことが求められています。

 上記のIPCCガイドラインでは、各排出・吸収源別に、排出・吸収源の概要、算定方法を決定するためのデシジョン・ツリー、標準的な算定方法(算定方法の算定精度や詳細さ別に、Tier 1, 2, 3等の複数の算定方法が示されています)、標準的な排出係数等のパラメータ、活動量の説明等が示されています。 各国は、このIPCCガイドラインにおける規定を基礎としつつ、各排出・吸収源における国内の実態やデータの利用可能性、科学的知見等を考慮に入れた上で排出・吸収量の算定方法を決定し、排出・吸収量の算定及び報告を行っています。

我が国における温室効果ガスインベントリ作成体制

 我が国では、環境省が関係省庁及び関連団体の協力を得て、下図に示す作成体制により温室効果ガスインベントリを作成しています。 我が国における温室効果ガスインベントリ作成体制の詳細は、日本国国家インベントリ報告書(NIR) の「第1章 序論」をご覧下さい。

図 我が国のインベントリ作成体制

図 我が国のインベントリ作成体制

温室効果ガスインベントリの改善について

 温室効果ガスインベントリにおける温室効果ガス排出・吸収量は、カンクン合意の下での2020年排出削減目標や、パリ協定の下での2030年排出削減目標など、我が国が国際的に表明している温室効果ガス排出削減目標の進捗及び達成を評価するための重要な基礎データとなります。また、これら目標の達成に向けた国内の各種施策・対策を定めた地球温暖化対策計画 の基礎データとしても利用されます。従って、温室効果ガスインベントリにおける温室効果ガス排出・吸収量は、我が国における温室効果ガスの排出・吸収実態や、排出削減対策・吸収源対策の効果を可能な限り正確に反映したものとする必要があります。 上記に鑑み、環境省では、温室効果ガスインベントリにおける温室効果ガス排出・吸収量算定方法や使用パラメータ等を継続的に改善していくための検討を毎年実施しています。