大気環境・自動車対策

黄砂対策への環境省の取組

黄砂対策への環境省の取組

日本にも飛来する黄砂については、日本、中国、韓国及びモンゴルの共通関心事項であり、早急な対応が求められています。従来、黄砂は自然現象と考えられていましたが、近年の現象については、過放牧や耕地の拡大等の人為的な要因も影響しているとの指摘もあり、より詳細な現象解明が求められています。しかし、現時点では黄砂の物理的、化学的な性質や飛来経路等について、必ずしも十分には解明されていません。このため、環境省では以下のような調査やプロジェクトを通して、黄砂の実態解明や対策に向けた取組を進めています。

 

ライダーモニタリングシステムの構築

ライダー装置本体の画像です。
ライダー装置(長崎県)

 ライダーLIDAR: Light Detection And Ranging)とは、レーザー光線を上空に発射し、浮遊する粒子状物質に反射して返ってくる光を測定・解析することにより、通過する黄砂を地上で計測できるリモートセンシング機器の一種です。環境省では黄砂の観測用に(独)国立環境研究所が開発した装置を使用しています。同装置は、他の大気汚染物質と区別して黄砂等粒子状物質の鉛直分布等をリアルタイムで観測することができます。

ライダーの原理

ライダー装置の仕組み
「黄砂パンフレット」掲載図より

 ライダーは、電磁波の代わりにレーザー光を用いたレーダーで、上空を通過する黄砂を地上で計測できるリモートセンシング機器の一種です。地上から放射したレーザー光は空中の微粒子によって散乱されるため、この状況から黄砂の垂直方向の濃度分布(レーザー光が浮遊物質によってはね返ってくる光線量から、浮遊物質量を推定)や、その時間的な変化を知ることができます。 
 

 また、偏光レーザー(光波の位相が一方向にそろったもの)を用いることにより、浮遊微粒子の非球形性の推定も行われています。偏向レーザー光は球形の物体により反射されると偏光のまま戻ってきますが、非球形の物体により反射されると偏光状態が乱れます。一般的に大気汚染物質は球形ですが、これに比べると黄砂粒子は不整形なので、この方法で大気汚染物質との判別が可能となります。
 

 ライダーは、雲のように極めて濃い微粒子が浮遊している場合を除き、対流圏内の観測点上空を通過する全ての黄砂を、リアルタイムに無人で連続観測できるという特徴があります。

 


ライダー装置による黄砂観測記録

 黄砂の近年の大規模化については、過放牧や耕地の拡大等の人為的な要因も影響しているとの指摘もあり、より詳細な現象解明が求められています。しかし、現時点では、黄砂の物理的、化学的な性質や飛来経路等について、必ずしも十分には解明されていません。このため、日本、中国、韓国及びモンゴルの4か国及びUNEP等の国際機関が共同で実施している国際プロジェクト(→ADB-GEF黄砂対策プロジェクト)でも、モニタリングネットワーク等の重要性が指摘されているところです。

 

 環境省では、当該ネットワークの構築にも資するものとして、黄砂観測のためのライダーモニタリングシステムの整備を進めており、これまで富山県(15年度)、島根県(16年度)、長崎県(17年度)、新潟県(18年度)及び東京都(19年度)にライダーを設置しています。

 これに加え、(独)国立環境研究所(大気圏環境研究領域遠隔計測研究室)等の研究機関が、札幌市、仙台市、つくば市、千葉市、東大阪市、長崎県福江島、沖縄県辺戸岬の7か所にライダーを設置し、観測を行っています。

 2008年現在、これら12基により国内におけるライダーモニタリングネットワーク(上図参照)を構築し、その観測結果を黄砂飛来情報ページで公表しています。

 環境省では、(独)国立環境研究所等と協力して、今後とも、ライダーによる国内のモニタリングネットワークの整備を進めていく予定です。また、中国、韓国、モンゴルの関係機関と協力して、ライダー観測データの共有化を図り、北東アジア地域における黄砂モニタリングネットワークと早期警報システムの構築に向けた取組を進めていく予定です。

 

ADB-GEF黄砂対策プロジェクト

 


黄砂発生時の北京「黄砂パンフレット」掲載写真より

 黄砂は、国境を越える環境問題であることから、効果的な調査・対策を実施するためには、関係する各国の協調が重要です。黄砂発生源地域を有する風上の国と、発生源から離れた風下の国では被害の内容・程度も異なり、特に、日本国内には黄砂発生源地域はないため、発生源情報の収集や対策の実施に関しては、国際連携による共同作業が不可欠です。
 このため、2003年1月より、国連環境計画(UNEP)、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)、国連砂漠化対処条約事務局(UNCCD)、アジア開発銀行(ADB)の4国際機関と日本、中国、韓国、モンゴルの4カ国により共同プロジェクト(ADB-GEF(地球環境ファシリティ)黄砂対策プロジェクト)が実施されました。
 環境省では同プロジェクトに積極的に貢献するとともに、関係国や国際機関との協力を進めています。

 


「黄砂パンフレット」掲載図より


マスタープラン報告書 Volume 1表紙

 ADB-GEF黄砂対策プロジェクトは、GEF及びADBの資金を活用し、黄砂対策関連情報の収集評価や黄砂対策マスタープラン作り等に取り組むものです(→これまでの経緯と概要)。
 フェーズI(2003-2005年)では、黄砂対策関連情報の収集評価が行われるとともに、北東アジアにおける黄砂のモニタリング・早期警報ネットワークの確立に向けた段階的なプログラムと、黄砂発生源における対策技術及び投資戦略に関するマスタープランが作成され、2005年には下記の3巻から成る報告書がまとめられました。

Volume 1: A Master Plan for Regional Cooperation for the Prevention and Control of Dust and Sandstorms「黄砂の防止と抑制に関する地域協力のためのマスタープラン」
Volume 2: Establishment of a Regional Monitoring and Early Warning Network for Dust and Sandstorms in Northeast Asia 「黄砂の地域モニタリング及び早期警報ネットワークの確立」
Volume 3: An Investment Strategy for Dust and Sandstorms Prevention and Control through Demonstration Projects 「実証プロジェクトを通しての黄砂の防止と抑制に関する投資戦略」


上記の報告書はADBホームページにおいて、英語版がご覧になれます。またVolume 1に関しては、日本語版、中国語版、韓国語版、モンゴル語版もご覧いただけます。

 

 今後は上記マスタープランに盛り込まれた内容の具現化が求められており、施策の実施に係るプロジェクト(フェーズII)の立ち上げが検討されています。
 環境省では同プロジェクトを通し、黄砂対策に向けて関係各国や国際機関とより一層の協力を進めて行く予定です。

黄砂対策

黄砂実態解明調査(報告書掲載ページ)
環境省では日本に飛来する黄砂の物理的・化学的性質を解明するため、「黄砂実態解明調査」を平成14年度より実施しています。
このページでは、調査方法や中間報告書(平成19年3月)や報告書(平成21年3月)、黄砂飛来状況調査報告書(平成25年度から現在)などがご覧いただけます。

黄砂化学成分調査
「黄砂実態解明調査」では、平成14年度から平成23年度にかけて、黄砂に含まれる化学成分の測定を目的とした調査を実施しました。

黄砂問題検討会
環境省では、黄砂問題に係る科学的知見の整理・収集を行うとともに、我が国の黄砂問題に対する今後の取組について検討しています。
このページからは、黄砂問題検討会報告書(平成17年9月)、同中間報告(平成16年9月)、及び英文概要版等がご覧いただけます。また、黄砂問題検討会では、黄砂実態解明調査のデータ解析、評価等も行っています。