事務連絡
平成15年1月8日
水道事業者
各厚生労働大臣認可 担当者 様
水道用水供給事業者
厚生労働省健康局水道課
総合規制改革会議においてまとめられた、「規制改革の推進に関する第2次答申 ―経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革―」について
水道行政の推進につきましては、種々の御協力を賜り、感謝いたしております。
平成14年12月12日に開催された総合規制改革会議において、
「規制改革の推進に関する第2次答申 ―経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革―」
がまとめられましたので、別添の通り、情報提供いたします。
なお、別添の資料は標記答申の抜粋です。水道事業については、【具体的措置】
(1)公共サービス分野における民間参入(2)水道事業において言及されています。
※ 全文を入手されたい方は、http://www8.cao.go.jp/kisei/siryo/を御参照下さい。
別添
規制改革の推進に関する第2次答申
―経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革―(抜粋)
(平成14年12月12日 総合規制改革会議)
(略)
2 民間参入の拡大による官製市場の見直し
【問題意識】
1 官民役割分担の再構築
近年の経済・社会環境の急速な変化に伴い、財・サービスに対する消費者のニーズは多様化している。しかしながら、我が国の経済・社会システムは、必ずしもこのような多様化するニーズに十分に応えていない面がある。運営主体の制限を行うなど公的関与の強い市場及び公共サービス分野(いわゆる「官製市場」)については、このような傾向が特に強いと考えられる。
公共サービス分野については、従来、政府部門が直接自らサービスを提供することが一般的であった。しかしながら、民間の多様なサービス産業が発展してきている今日、公共サービスの提供についてもできる限り民間事業者にゆだねていくことにより、今まで以上に消費者の多様なニーズに対応した良質で安価なサービスを提供することが可能になっていると考えられる。
したがって、公共サービス分野について、時代に即応した官民役割分担の再構築を行うことにより、民間参入を積極的に推進していくことが必要である。
従来、行政改革の場においては、行政が時代の変化に十分に対応することなく拡大を続けてきたとの問題意識の下、行政の活動領域やその関与の在り方の再整理が議論され、平成8年12月16日には、行政改革委員会において、「行政関与の在り方に関する基準」がとりまとめられた。そこでは、「民間でできるものは民間に委ねる」、「国民本位の効率的な行政」を実現する、「説明責任(アカウンタビリティ)」を果たすという基本原則が掲げられるとともに、全般的な基準として、例えば説明責任に関しては、社会的便益と社会的費用の総合評価等が挙げられている。また、行政の関与の可否に関する基準として、公共財的性格を持つ財・サービスの供給、外部性、市場の不完全性、独占力、自然(地域)独占、公平の確保といった「市場の失敗」に関わるものが示されているが、これらの基準に従って行政関与が必要と判断される場合であっても、関与の手段・形態を選択する際には、既存の政府部門と民間委託とのコスト・品質面での比較、「政府の失敗」の考慮(経営努力や効率化のインセンティブの確保、既得権益の排除等)等の視点に留意しなければならないとされている。
これらの基本原則や基準は、今日でも公共サービス分野における官民役割分担の再構築を検討していく際に妥当するものと考えられるが、本来財・サービスの供給は市場における民間活動によることが基本であることを検討に際しての出発点とすることをより明確にする観点から、「民間でできるものは官は行わない」という考えを基本に置いていくことが適当であると考える。
このような考え方に沿い、従来公共サービスとされてきたものであっても、現在では「市場の失敗」が存在しないと認められるものについては、全面的に民間参入を進めていくべきである。また、当該サービスの全体を見れば「市場の失敗」が存在すると認められるものであっても、必ずしも当該サービスの提供に係る業務の全てを政府部門が直接自ら行う必要があるとは限らない。当該サービスが担う諸機能やサービスが提供される地域の状況等に応じて、コスト面やサービスの質の面等に留意しつつ民間参入を進めていくべきである。民間参入の形態としては、民営化、民間への事業譲渡、民間委託が考えられるが、業務の内容や市場の状況等に応じて適切な形態を選択していく必要がある。これらにより、現在でも民間の参入が可能な公共サービスについて民間参入の機会の拡大が図られるとともに、現在では民間の参入が認められていない公共サービスについても多様な民間参入が可能となるものである。
(備考)
民営化:政府部門の出資により設立された法人に事務・事業を引き継がせ、政府部門の出資分を民間に譲渡すること。
民間への事業譲渡:事務・事業を民間事業者に譲渡すること。
民間委託:政府部門の事務・事業の実施について、包括的に、あるいはその一部を民間に委託すること。
公共サービスへの民間参入を進めるに当たっては、公平・公正・中立性や継続・安定性の確保、秘密保持、責任分担の明確化等のための措置を必要に応じて講ずるとともに、民間事業者相互間の競争的環境の確保に留意していく必要がある。また、公共サービスの中には公権力の行使を伴うものがあるが、そのことのみをもって民間参入の検討の対象外とすることは相当ではなく、「公権力の行使は全て公務員が自ら行わなければならないのか」という問題意識を持って民間参入の検討を進めていくことが重要である。特に公権力の行使に当たると考えられる事務・事業についても、政府部門による裁量の余地が比較的少ないものについては、その執行を積極的に民間にゆだねることは可能である。また、裁量の余地が比較的大きいものについては、裁量行政の排除の観点からルール化や基準化を推進するべきであり、そのようにしてルールと基準が明確になれば、積極的に民間にゆだねることが可能となる。 このような民間参入の拡大は、消費者の多様なニーズに対応した良質で安価なサービスの提供を図ることを主眼とするものであるが、それに加え、行政の簡素化、効率化に資するとともに、新たなマーケットの創出による我が国経済の活性化にも貢献するものと考える。 当会議は、以上のような考えに立ち、本年7月23日の「中間とりまとめ-経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革-」に例示的に掲載された以下の事務・事業を含め、幅広く公共サービス分野における各府省所管の事務・事業について検討を行い、以下の具体的施策に掲げるものについて、民間参入を進めるべきであるとの結論を得た。当会議としては、民間参入を図るべき事務・事業はこれらにとどまるものではなく、今後なお、幅広く官民役割分担の見直しを行い、積極的に民間参入を拡大していくことが必要と考える。
「中間とりまとめ」に例示的に掲載された事務・事業 経済動向の分析等、世論調査、公文書等記録の保存・利用、救急業務、公営ガス事業等、経済実態調査、刑務所・少年刑務所・拘置所等、証券及び印刷物の製造、政府刊行物の編集・製造・発行、学校給食、文化施設、学校、水道事業、病院、老人福祉施設、保育所、職業紹介、職業訓練、国有林野の管理運営、中央卸売市場、地方卸売市場、農業災害補償制度、機械類信用保険、貿易保険、工業用水道事業、展覧会・博覧会等、道路事業、港湾の整備・運営等、都市公園、下水道、住宅・宅地の供給等、土地の測量・地図の調製、気象の予報・警報・気象通信、公園管理、一般廃棄物処理、公の施設の管理、各種研修、各種統計、免許関係事務、運転免許に係る講習、自動車保管場所証明手続、駐車違反対応業務、恩給の支給、登記事務、競売、公証事務、出入国審査、旅券業務、税徴収、通関手続及び関税等徴収、著作権等に係る登録、国民健康保険の徴収・支払、政管健保の徴収・支払、国民年金・厚生年金の徴収・給付、失業手当等給付、検疫・検疫に付随する衛生検査、品種登録(種苗法)、植物検疫、動物検疫、特許権付与等、回路配置利用権等の登録事務、鉱業登録事務、貿易管理(輸出入承認等)、自動車の登録業務 このような観点から、政府部門の事務・事業全般について、民営化、民間への事業譲渡、民間委託により民間参入を積極的に推進するため、例えば内閣官房に推進母体を設置するなど、早急に政府内の推進体制を一元化し、推進計画を策定して、これらを総合的・包括的に進めることが重要である。その際、現在実施されている特殊法人改革や公益法人改革とも密接に連携・協力を図っていく必要がある。
2 消費者主権に立脚した株式会社の市場参入・拡大
医療、福祉、教育、農業等の公的関与の強い分野においては、当該事業への株式会社の参入が認められていなかったり、あるいは制限されている。 この問題については、当会議では、本年7月23日の「中間とりまとめ」において、医療、福祉、教育、農業の各分野における株式会社の参入に関して、以下のように当会議の考え方を示した。
[総合規制改革会議「中間とりまとめ-経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革-」(平成14年7月23日)]
○消費者主権に立脚した株式会社の市場参入・拡大
医療、福祉、教育、農業等の公的関与の強い分野においては、しばしば、「営利主義に走ることは、利用者の利便性を損ない、公共性が確保されない」という考え方に基づき、個別の行為規制だけでなく、運営主体が制約され、新規参入・競争が制限されていることが多い。しかしながら、運営主体の形態による制限をなくし、多様な運営主体による財・サービスの提供が行われることは、消費者の選択の幅を拡大させ、消費者が享受する財・サービスのコストや質の向上に寄与することになる。その上で、どの運営主体のものを選択するかは、利用者の判断にゆだねることが望ましい。
利用者の自由な選択を一層実現するためには、徹底した情報開示や第三者による評価、事後チェック等の環境整備が不可欠であり、かつ、公共性、公益性又は利用者の安全確保のためには、合理的で最低限の行為規制のみで足りるのであって、運営主体を制限するなどの事前規制は不要とすべきである。
「株式会社」という経営形態の有するメリットは以下のとおりである。
1) 株式会社は、投資効率や資産効率の向上による利益の増大や企業価値の増大を目指す経済主体であり、そのため、徹底した顧客満足の向上・サービスの向上や無駄なコストを省く効率的な経営に資する。
2) 取締役会・監査役会等の主体の統治構造(ガバナンス)に優れた面を持つとともに、株主や社債等の債権者による外部チェックにより経営の透明性・健全性の追求が求められる。特に、商法上の大会社(資本金5億円以上又は負債200億円以上)においては外部会計監査の義務付けや社外監査役の設置による経営のチェックが、また上場企業においては有価証券報告書の作成・供覧による情報開示の義務付けや不特定多数の株主による経営のチェックがなされることで、より透明かつ健全な経営に資する。
3) 努力した者(経営者・従業員)が報われるための多様な報酬制度等のインセンティブ付与は、利用者・顧客に対する財・サービスの適正化、利便性の向上に資する。
4) 株式、社債などの直接金融手段による多様な資金調達が可能であり、設備・システムなど必要な投資資金の確保が容易になる。なお、配当は、間接金融における金利同様、資金調達のコストであることを認識する必要がある。
このような株式会社の有する効用に着目し、現在参入が制限されており、かつ、相当の市場規模があり経済活性化に資すると考え得る医療、福祉、教育、農業などの分野について、株式会社の参入が可能となるよう、その門戸の開放・拡大を図るべきである。なお、情報公開や外部監査制度等が一定水準にある株式会社について、より積極的に参入促進を図っていくことも考えられる。
(1)医療分野における株式会社の参入
医業経営への株式会社参入によるメリットとしては、資金調達の多様化、徹底した患者ニーズの把握による患者サービスの向上等による患者満足度向上だけではなく、経営効率化につながるシステム環境整備、経営マインドの発揮、管理・事務スタッフ等必要な人材投入等による患者ニーズに直結した効率的な経営などが挙げられる。
一方、問題点としては、以下のようなことが挙げられている。
1) 医療の強い公共性と株式会社の株主への利益配当という2つの要請には相容れない面がある。
2) 医療機関が自己利益の追求に向けた行動を取る結果、患者の利益が損なわれるおそれがある。
3) 全体として、医療費の高騰を招きかねない。
4) 株式会社が医療法人よりも効率的で医療の質の向上に寄与するという証拠はなく、米国においてもその問題点が指摘されている。
5) 情報の非対称性という医療サービスの特殊性のため、サービスの質や量の決定が供給者側にゆだねられており、適正なサービスを選択できないおそれがある。
しかしながら、前述したように、利益の配当は資金提供に対する対価であり、医療の公共性とは何ら関係しない当然の支払いコストに過ぎず、また、現行の持分を有する医療法人でも内部留保を蓄積し、解散時にはそれを出資者に配分することは可能であることなどを考え合わせると、医療の公共性と利益配当が相容れないという議論は意味をなさない。患者利益が損なわれることや医療費高騰といった懸念については、現行の医療法人においても、金融機関からの借入返済圧力などを受けて増収行動をとる場合もあり、払拭されるものではない。これらの懸念を払拭するためには、徹底した医療及び経営情報の開示を通じて患者の自由な選択を確保するなど競争環境を整備することが重要である。また、米国の例では株式会社が非営利法人より効率的で医療の質の向上に寄与しているとは言えないとの主張は、米国の非営利法人が納税面や資金調達面で極めて有利な制度下に置かれていることにも原因がある。問題は医療法人であれ株式会社であれ患者利益の向上に寄与しないものは淘汰されるだけあり、このような比較に意味はなく、十分な競争環境の下では、いずれも同じ効率性に収斂することになる。医療サービスの質・量の決定が供給者側の手にゆだねられているということについても、適正なサービスが供給されていれば問題はなく、医療機関の経営主体が何者であるかを論じることは無意味である。そのためにも、広告規制の緩和、第三者評価の充実などより一層の情報開示を推進し、医療サービスにおける情報の非対称性を是正していくことが求められる。
以上にかんがみ、医療分野に株式会社の参入を認めない積極的な理由は存在しない。したがって、医療法第7条第5項の「営利を目的として開設しようとするものに対しては病院の開設の許可を与えないことができる」との規定、及び昭和25年の「会社組織による病院経営は認めない」こととしている事務次官通達等の該当部分は撤廃し、株式会社の参入を認容すべきである。
(2)福祉分野における株式会社参入の推進
1)特別養護老人ホーム経営への株式会社の新規参入
特別養護老人ホーム(以下「特養」という。)経営への株式会社参入によるメリットとしては、利用者満足度向上に向けたニーズの把握によるサービスの向上、資産等の効率的な運営によるコスト低減、また特に利用者の多い都市においては、一般の住宅や他の介護施設等との複合事業などによる供給増も期待される。
一方、問題点としては、以下のようなことが挙げられている。
1) 入所者は要介護高齢者であり、施設に対して権利主張を行い難い。
2) 不適切なサービス提供があった場合には、要介護高齢者に具体的な被害が発生し、事後チェックでは回復不可能。
3) サービス提供は夜間・早朝も行われる等、外部からの目が行き届きにくい。
4) 入所者にとって、施設は終の棲家であり、経営主体が自由に退出せずに、長期間安定した形でサービス提供をし続けることが求められる。
しかしながら、いわゆる介護付き有料老人ホーム等の経営について実績・ノウハウを有している株式会社も数多く存在しており、特養でのサービスを株式会社が提供することについて問題視する理由はない。不適切なサービス内容を防止することは、社会福祉法人であれ株式会社であれ、外部による検査体制、苦情処理機関、情報公開等の手段で対処すべきものである。また、事業者の自由な退出の懸念については、他の特養による入所者の引受などサービスの継続が確保されるためのセーフティネットを講ずることで対処できる。以上により、上述の懸念は社会福祉法人でなければ払拭できないという性質のものではない。また、セーフティネット整備につながるサービス供給増加を達成する手段としても、多様な経営主体の参入が必要である。
したがって、老人福祉法第15条第1項、同条第3項及び第4項において、特養の設置主体を地方公共団体及び社会福祉法人に限定しているが、同条第5項規定のケアハウス等同様、その他の主体についても特養の設置を認めるための法改正をすべきである。
(3)教育分野における株式会社の参入
学校経営への株式会社参入によるメリットとしては、資金調達の多様化、増大している社会人教育ニーズの把握とそれに対応した教育サービスの充実・向上、経営・事務スタッフ等必要な人材投入による学生ニーズに直結した効率的な経営などが挙げられる。
一方、問題点としては、以下のような点が指摘されている。
1) 教育への再投資の確保が株式会社では不可能
2) 株主の意向による教育内容等の安易な変更の危険性
3) 安定性・継続性が確保できない危険性
しかしながら、株式会社が行う余剰金の処理の方法は、間接金融における利息支払に該当する配当を行った残余は基本的には利益剰余金として積み立てられて、将来の投資に向けられるものである。たとえそれが直接教育に向けられないとしても、現行の学校法人も教育以外の使途での投資を許容されているのであり、両者の間に差異はない。株式会社は、顧客満足度を高め企業価値の増大を図ることを踏まえると、株主の意向による教育内容の安易な変更等、顧客である学生をないがしろにした教育サービスの提供は考えられない。安定性・継続性の問題は、現行の学校法人についても同様であり、特に株式会社の属性ではない。必要とあればサービスの継続が確保されるためのセーフティネットを講ずればよい。
学校教育法第2条は、学校の設置主体を国・地方公共団体及び学校法人に限定しているが、株式会社を含む法人についても学校の設置を認めるよう法改正すべきである。
また、株式会社が参入した場合においては、その経営する学校は教育の一端を担うことから、学校法人同様、新規参入者たる株式会社についても、助成の手立てを行い得るようにすべきである。この場合、憲法との関係でそれが許容されるように必要な関連法令の整備を行うこととすべきである。
(4)農業分野における株式会社参入の一層の推進
平成13年3月に改正農地法が施行され、一定要件のもと株式会社形態を採り入れた新たな農業生産法人制度がスタートした。農地取得を認める株式会社の範囲を拡げるメリットは、より多様な株式会社が参入することによって、農業の担い手の多様化、それによる農業の生産構造の強化などが図られることである。
一方、株式会社参入拡大に対し、次の懸念が挙げられ、更なる制度の改革についてはスタートしたばかりの新制度の定着状況を十分見極めていくことが重要との意見がある。
1) 投機、資産保有目的での農地取得が行われる
2) 農業は、水管理、土地利用等の面で地域の農業者の集団活動により成り立っているが、このような地域社会のつながりを乱す
しかしながら、我が国農業の生産構造は零細でかつ高齢化した個人の担い手による経営が長期的に継続しており、産業としての農業の競争力を向上させるには、株式会社等の企業的農業経営者や意欲と能力のある農業者が生産の大部分を担う生産構造を確立するよう、農業の構造改革を加速する必要がある。
改正後の農業生産法人制度による株式会社形態の参入は、現時点では約25に達しており、地域の食品企業等が株式会社形態の農業生産法人を設立するなどの農業経営の株式会社化が見られるが、現状以上に株式会社形態の農業生産法人が農業の担い手として積極的に参画し、農業の法人化を加速的に進める必要がある。
このため、現行の売上基準(農業及び関連事業の売上が過半)、役員(過半が農業従事者)、出資割合(1構成員当たり10%以下)といった農業生産法人の要件を撤廃し、資金調達、研究開発、労働管理等の面で優位性のある株式会社の全面的な参入を認めるべきである。その際、株式会社形態の農業生産法人の大幅な参入によって農地の投機的取引の発生等に対する懸念があるというなら、別途、農地の転用・転売の制限措置を講ずること等も併せて検討すべきである。
なお、医療・福祉・教育などの純粋にサービスを供給している分野とは異なり、農業は商品の供給を伴う分野であることから、生産段階のみならず、流通段階での改革も必要である。したがって、流通や農業支援サービスに一層の競争原理を導入し、イコールフッティングを目指すことが重要であり、このため、これに対応した農協系統自らの改革を促すべきである。
以上の考え方の下、本年9月以降の当会議での審議においては、分野別にこの問題について審議・検討を進め、一定の進展が見られた分野もあるが(進展状況については各関係分野の記述参照)、なお当会議の提言との隔たりは大きいと言わざるを得ない。 したがって、当会議は、来年度においても規制改革における最重要課題の一つとして、本課題に取り組み、関係者を始め国民各位の理解を得て、その達成に尽くす所存である。
【具体的施策】
官民役割分担の再構築
(1)公共サービス分野における民間参入
公共サービス分野における民間参入を積極的に推進していく観点から、下記(1)~(19)の措置を講ずるべきである。
(1) 「公の施設」の管理
地方自治法(昭和22年法律第67号)では、地方公共団体は住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設(公の施設)を設けるものとし、その管理を地方公共団体の出資法人、公共団体、公共的団体に限定して委託することができる旨規定している。この規定の趣旨は、施設の利用料金の決定と収受は民間に委託することができないというにすぎず、それ以外の管理行為については広く民間へ委託することが可能であることを直ちに地方公共団体に周知徹底すべきである。【平成14年度中に措置】
また、一定の条件の下での利用料金の決定等を含めた管理委託を、地方公共団体の出資法人等のみならず、民間事業者に対しても行うことができるように現行制度を改正すべきである。【次期通常国会に法案提出予定】
(2) 水道事業【平成14年度中に措置】
地方公共団体が経営する水道事業については、可能な場合には、地方公共団体の判断により、できる限り民営化、民間への事業譲渡、民間委託を図るべきである。 その際より多様な経営主体の参入を確保するため、設備の所有は水道法(昭和32年法律第177号)上の水道事業者となるための要件とされていないことについて、直ちに周知徹底すべきである。
また、平成13年の水道法改正により、水道の管理に関する技術上の業務を民間委託することができることとされたが、事業の一層の効率化を図るため、料金設定への関与等を含めた包括的な民間委託を推進すべきである。
(3) 下水道事業【平成14年度中に措置】
下水道事業については、現行下水道法(昭和33年法律第79号)の下でも、悪質下水の排除規制、排水区域内の下水道の利用義務付け等に係る公権力の行使以外の事務の相当部分が既に民間事業者に委託されているが、民間事業者の創意工夫をいかし事業の効率化を進めるため、設備の維持修繕、料金設定への関与等を含めた包括的な民間委託を推進すべきである。
(4) 一般廃棄物処理
一般廃棄物の処理については、民間委託や許可業者による収集が年々増加するとともに、近年では、最終処分についてもPFI手法の活用により一般廃棄物処理施設の建設、運営を民間が行う事例も見られるようになっている。
こうした状況を踏まえ、一般廃棄物の処理に関しては、市町村に課せられている処理責任が十分果たされるよう留意しつつ、一般廃棄物の処理における民間委託、PFI手法の導入等を進めるための環境整備を図り、更に業務委託を拡大していくべきである。【逐次実施】
なお、一般廃棄物処理業者の許可要件については、「当該市町村による廃棄物の処理が困難であること」という条項の運用の在り方を明確に示すべきである。【平成14年度中に措置】
(5) 病院
国立病院については、廃止、民営化等をするものを除き、平成16年度からの独立行政法人化が進められているが、当該業務を継続させる必要性、組織の在り方について、個別施設の廃止、民営化等を含め、遅くとも独立行政法人設立後の最初の中期目標期間終了時に速やかに検討を行い、結論を得、その結果に基づき、所要の措置を講ずるべきである。【最初の中期目標期間終了時に速やかに検討・結論】
社会保険病院、厚生年金病院については、現在、国が施設を設置し、経営は公益法人等に委託して行っている。国自らが施設を設置する必要性は薄れていると考えられる病院については、現状を精査し、私立医療法人への移譲を含む整理合理化等所要の措置を講ずるべきである。【平成14年度以降逐次実施】
労災病院については、平成16年度から独立行政法人化し、一部について廃止、民営化等をすることとされているが、当該業務を継続させる必要性、組織の在り方について、個別施設の廃止、民営化等を含め、遅くとも独立行政法人設立後の最初の中期目標期間終了時に速やかに検討を行い、結論を得、その結果に基づき、所要の措置を講ずるべきである。【最初の中期目標期間終了時に速やかに検討・結論】
(6) 職業紹介・職業訓練
職業紹介については、民間による有料職業紹介事業の取扱職業の原則自由化が行われたところであるが、無料職業紹介についても求職者、求人企業双方にとって質の高いサービスが提供できるよう、公共職業安定所の保有する求人情報等の民間への公開や、管理職・専門職等の紹介に関する民間への業務委託等を進め、民間のノウハウを一層いかしつつ職業紹介ができるようにすべきである。【平成14年度以降逐次実施】
職業訓練については、雇用・能力開発機構について平成16年3月からの独立行政法人化が進められているが、一層の民間委託を進める等により民間教育訓練機関の育成を図るとともに、当該業務を継続させる必要性、組織の在り方について遅くとも独立行政法人設立後の最初の中期目標期間終了時に速やかに検討を行い、結論を得、その結果に基づき、所要の措置を講ずるべきである。【最初の中期目標期間終了時に速やかに検討・結論】
(7) 公営ガス事業等の地方公営企業【逐次実施】
公営ガス事業については、行財政改革の進展等により、民間への事業譲渡や民間委託が進められているが、既に同様の民間事業者が多数存在している状況を踏まえ、さらに民営化、民間への事業譲渡、民間委託を推進すべきである。
また、公営バス事業、病院事業等他の地方公営事業においても、同様に民営化、民間への事業譲渡、民間委託を推進すべきである。
(8) 駐車違反対応業務・自動車保管場所証明業務
都市における交通渋滞を緩和し、効率的な経済活動を実現するためには、違法駐車問題の解決が重要である。都心部における駐車違反対応を効率化するため、当該業務の民間委託を推進することが必要である。現在の制度においては、民間委託は、違法駐車車両の警告等に限られているが、今後、現場における駐車違反対応業務の民間委託を幅広く行うことができるように、広く国民の意見を踏まえながら、駐車違反に関する法制度の在り方を含めて検討すべきである。【平成15年度中に結論】
また、違法駐車対策に資する自動車保管場所証明業務については、現在、現地調査、データの入力について民間委託が行われているが、今後、更に委託先の拡大を推進すべきである。【平成15年度中に措置】
(9) 地方税の納税【平成15年度中に措置】
地方税の納税は、現在、民間金融機関において行うことはできることとされているが、納税者の利便の向上を図るため、コンビニエンスストア等においても納税をすることができるようにすべきである。
(10) 刑務所【平成15年度中に措置】
刑務所については、民間委託が可能な範囲を明確化し、PFI手法の活用等により、民間委託を推進すべきである。
(11) 国税の納税【平成15年度中に措置】
国税の納税は、現在、日本銀行代理店等である民間金融機関において行うことはできることとされているが、納税者の利便の向上を図るため、既に行われている口座振替に加え、ATMやパソコン、携帯電話を使った納税をすることができるようにすべきである。
(12) 学校
国立大学は、高度な学術研究を担うとともに、高等教育の機会均等の実現に貢献してきたが、今後、教育研究機能を更に高度化し、国際競争力ある大学づくりを目指す必要がある。このため、国立大学については法人化と教員・事務職員等の非公務員化を平成16年度を目途に開始することとされているが、教育研究業績の評価や私立学校法人との業務運営等の比較も行った上、当該業務を継続させる必要性、組織の在り方について、遅くとも法人設立後の最初の中期目標期間終了時に速やかに検討を行い、結論を得、その結果に基づき、所要の措置を講ずるべきである。【最初の中期目標期間終了時に速やかに検討・結論】
国公立の小中高大を始めとする学校全般に対する民間参入を促進する観点から、PFI手法、公設民営方式の活用等を推進するとともに、民間委託が可能な範囲の拡大、明確化を図るべきである。【平成15年度中に措置】
(13) 国民年金保険料の納付
国民年金保険料の納付は、現在、民間金融機関においては行うことができることとされているが、国民の利便の向上を図るため、コンビニエンスストアにおいても納付をすることができるようにすべきである。【平成15年度中に措置】
また、既に行われている口座振替に加え、ATMやパソコン、携帯電話を使った納付をすることができるようにすべきである。【平成16年度当初に措置】
(14) 回路配置利用権等の登録事務【平成15年度中に措置】
回路配置利用権等の登録については、既に公益法人が指定法人として全面的に事務を行っているところであるが、「公益法人に対する行政の関与の在り方の改革実施計画」(平成14年3月29日閣議決定)にあるように、政府責任を維持した上で、「法令等に明示された一定の要件を備え、かつ、行政の裁量の余地のない形で国により登録された公正・中立な第三者機関」が当該事務を行うこととし、民間の参入の拡大を図るべきである。
(15) 工業所有権に関する事務
我が国産業の国際的な競争力を今後とも高めていくためには、新たな価値を生み出す優れた発明等に係る権利の適切な保護と有効な活用が可能となるような仕組みを整備することが重要である。一方、現在の工業所有権については、審査期間の長期化等により、優れた発明等に係る権利の適切な保護と有効な活用に影響が生じることが懸念されている。
このため、迅速かつ的確な審査等により早期に権利を登録することができるよう、国内特許文献に関する調査業務に関しては、既に指定法人に行わせているところであるが、さらに国内非特許文献や外国特許文献に関する調査業務等に関しても、当該指定法人に行わせることにより、民間への業務委託の範囲を一層拡大すべきである。【平成15年度中に措置】
また、現在、特許権の調査業務を行わせている指定法人については、今後、この業務が更に拡大すると見込まれるため、公益法人に限定せず、幅広く民間を指定することができるよう検討し、結論を得るべきである。【平成15年度中に結論】
なお、実用新案権については、近年の登録が減少している状況を踏まえ、廃止も含めて検討すべきである。【平成15年度中に結論】
(16) 競売【平成15年度中に検討・結論】
競売手続については、現在行われている競売物件の評価及び情報提供についての民間委託の運用が適切に行われるよう、その実情を調査し、運用上見直すべき点について所要の措置(運用改善についての要望を含む。)を採るべきである。
(17) プログラムの著作物の登録事務【平成15年度中に検討・結論】 プログラムの著作物の登録については、既に公益法人が指定法人として全面的に事務を行っているところであるが、当該事務を行わせることができる指定法人を公益法人に限定しないことも含め、当該事務の実施主体の在り方について、見直しを図るべきである。
(18) 恩給の支給【速やかに検討、平成16年度までに結論】
恩給の支払事務は、現在、郵便局で行われているが、恩給受給者の利便の向上のため、支払事務と併せ行われている窓口相談・債権管理事務が円滑に行われるための条件整備を始めとして、支払事務を民間金融機関においても行うことができるよう、検討すべきである。
(19) 切手、葉書、証券、政府刊行物等の製造等【最初の中期目標期間終了時に速やかに検討・結論】
印刷業務については、平成15年4月から独立行政法人化されることとされているが、独立行政法人の業務とされているもののうち切手、葉書、証券、政府刊行物等の製造、印刷等については、既に競合する民間事業者でも実施されていることを踏まえ、廃止、民間への移管を含め、当該業務を継続させる必要性、組織の在り方について遅くとも独立行政法人設立後の最初の中期目標期間終了時に速やかに検討を行い、結論を得、その結果に基づき所要の措置を講ずるべきである。
上記(1)~(19)以外の国の事務・事業についても、民営化、民間への事業譲渡、民間委託を積極的に推進することが重要である。このため、各府省は、「行政改革大綱」(平成12年12月1日閣議決定)に基づいて、所管事務・事業の全般について計画的、積極的に民営化、民間への事業譲渡、民間委託を推進すべきである。【平成14年度以降逐次実施】 また、総務省は、民営化、民間への事業譲渡、民間委託の実施状況を毎年度の「行政改革大綱」の実施状況に関するフォローアップの中で明らかにすべきである。【平成14年度以降逐次実施】 地方公共団体の行う事務・事業についても、地方自治の観点を尊重しつつ、上記(1)~(19)と同様の趣旨で取り組むよう、各府省は地方公共団体に要請すべきである。【平成14年度以降逐次実施】 また、総務省は、優良事例を地方公共団体に周知するとともに、地方公共団体の取組状況を適切に把握し、公表すべきである。【平成14年度以降逐次実施】
(2)民間参入拡大の推進方策
(1) 民間への事業主体変更の円滑化【平成14年度中に措置】
補助金の交付を受けて建設した施設について事業主体の変更(例えば、地方公共団体から民間への変更等)を行う場合であっても、住民に提供されるサービスの実態に変化がなく、補助目的等に照らし適当であるときは、補助金の取扱いを変えないことができる旨を明確にすべきである。
地方債の発行により建設した施設について地方公共団体から民間事業者に対する貸付け等の方法により事業主体の変更を行う場合であっても、当該施設が低廉な利用料で広く住民の利用に供されるか否か等を総合的に勘案し、地方公共団体が自ら事業主体となる場合と同様の公共性を有するときは、地方債の繰上償還を要しない旨を地方公共団体に周知すべきである。
(2) PFI事業の推進【平成14年度中に措置】
PFI手法を有効に活用するためには、民間の創意工夫が最大限発揮できるようにすることが重要である。
このため、(a)入札前に、リスク分担等の契約内容の明確化を図るために、国・地方公共団体と入札参加者が十分に意思疎通を行い、必要があれば、全ての入札参加者に周知した上で契約書案の変更を行うこと、(b)事業内容に応じて、資格審査段階において、まず簡易な事業提案に係る審査を行うことにより、入札前の多段階選抜を行うこと、(c)入札後の契約締結の際に、入札前には確定していないリスク分担等の明確化を図るために契約書案の変更を行うことについて、現行法令上可能である事項を発注者に対して明示すべきである。
水道事業者、用水供給事業者宛のみ掲載