地中熱関係

帯水層蓄熱について

本ページでは、地中熱利用システムのひとつである「帯水層蓄熱システム」について紹介しています。

帯水層蓄熱システムとは?

 帯水層蓄熱システムは地中熱利用システムのひとつで、地中熱利用ヒートポンプを利用した、オープンループ方式と呼ばれるシステムのひとつに分類されます。英訳の"Aquifer Thermal Energy Storage"の頭文字を取って、「ATES(エーテス)」とも呼ばれます。
 広く普及している空気熱源ヒートポンプ(空調エアコン)では冷暖房の排熱を大気に放出していますが、帯水層蓄熱ではその排熱を帯水層(地下水が存在する地層)に蓄え、熱エネルギーとして活用することで省エネ・省CO2・ヒートアイランド現象緩和を図ります。


 上の図は帯水層蓄熱システムの模式図です。
 夏期の冷房運転時には、左の冷熱井(れいねつせい)から地下水をくみ上げ、建物の冷房に使用します。冷房利用によって温まった地下水は、右の温熱井(おんねつせい)から帯水層に注入されます。これを夏期の間続けることで、温熱井の周囲の温度は地下水の温度より高くなります。
 冬期の暖房運転時には、右の温熱井から地下水をくみ上げ、建物の暖房に使用します。夏期の運転によって温熱井の周辺の温度は高くなっているため、ただ地下水をくみ上げるよりも効率の良い暖房が可能です。暖房利用によって冷えた地下水は、左の冷熱井から帯水層に注入されます。これを冬期の間続けることで、冷熱井の周囲の温度は地下水の温度よりも低くなります。この冷えた地下水を次の夏期に使用し、また温まった地下水を冬期に使用し・・・と続けていくことで、年間を通じて高効率な空調運転が可能になります。
 なお、帯水層に熱を蓄えるという特徴上、帯水層蓄熱システムは地下水の流れがほとんど無いか、遅い場所でのみ使用可能です。

帯水層蓄熱システムの特徴

帯水層蓄熱システムには、主に以下の特徴があります。

節電・省エネによるCO2削減効果
 高効率な空調運転による消費電力の削減は、電力使用によるCO2排出削減につながります。

コスト削減効果
 空気熱源ヒートポンプの電気使用と比較して、節電による電気代の削減が見込まれます。

ヒートアイランド現象の緩和
 空気熱源ヒートポンプのように冷房時の排熱を大気に放出しないため、都市部のヒートアイランド現象を緩和します。

持続可能な地下水の利用と保全
 くみ上げた地下水の熱のみを使用し、同一の帯水層に全量還元することで地盤沈下を抑制することができ、持続可能な地下水の保全と利用が可能です。
 
帯水層蓄熱システムの夏の月別CO2排出量
 
帯水層蓄熱システムの夏の月別ランニングコスト
出典:NEDO 再生可能エネルギー熱利用技術開発
 上の図は、山形県山形市の民間の事務所で帯水層蓄熱システムを導入した際の月別CO2排出量・ランニングコストの例です。本施設では、地下水を利活用することによって地中熱利用システムを高効率化し、省エネルギーとCO2排出量の大幅削減を実現させることを目的として帯水層蓄熱システムが導入されました。
 特に夏期の冷房運転に際して、空気熱源ヒートポンプと比較してCO2排出量、ランニングコストともに64%減という結果が出ています。

帯水層蓄熱システムの事例

 兵庫県高砂地区、大阪市北区うめきた2期地区では、帯水層蓄熱システムの構築に関する技術開発を行うとともに、運用に伴う地下水位低下による地盤沈下への影響の評価、熱源井のメンテナンス、長寿命化等に関する検討が行われました。
工事の進むうめきた2期地区