地中熱関係

導入事例インタビュー 唐津市浜玉町ハウスみかん栽培施設

ハウスみかんの栽培に地中熱を活用!
農業分野での普及に向けた実証研究

 

 
佐賀県 産業労働部

導入概要

【場所】佐賀県唐津市浜玉町
【用途】ハウス農園の暖房熱源
【供用開始】令和4年1月
【導入効果】
・重油削減量:9,300L
・化石燃料由来のCO2削減量:24tCO2

地域の特産品を支えるインフラとして

導入された地中熱ヒートポンプ
 佐賀県は施設園芸が盛んで、ハウスみかんの生産量は全国一位を誇ります。その甘味と酸味のバランスは絶妙で、夏場に食べられるおいしいみかんとして人気があります。高品質なハウスみかんの栽培には、秋から冬にかけてハウス内を25℃に保つことが求められます。このため、徹底した環境管理が必要であり、暖房熱源として重油ボイラーが使用されるため、燃料コストの負担が大きいです。佐賀県では、平成30年3月に策定した「佐賀県再生可能エネルギー等先進県実現化構想」の中で、再生可能エネルギーの電力以外の用途開発を取組方針の一つに掲げています。その取組みの一環として、地中熱をハウスの空調設備に導入することができれば重油の削減効果が大きいと考えました。
 そこで、唐津エリアのハウスミカン部会に相談した結果、ヒートポンプなどの設備が未導入であり、ハウス周りに地中熱の採熱管を埋設できるスペースがあることなどの条件を満たすとしてご紹介いただいた江川様に実証研究へのご協力を依頼したところ、ご快諾いただき、令和3年度から実証試験をスタートしました。

産学官連携での実証研究

 導入した地中熱利用空調設備は、深さ110mの採熱孔を6本掘削し、ダブルUチューブを挿入しました。約10トンのみかんを出荷するハウス1棟(約16アール)に、加温能力41.3kWの地中熱ヒートポンプチラーとファンコイルユニット10台を設置して温風を送っています。地中熱空調と重油ボイラーを併用した試験は、令和6年度で3年を経過し、江川様にも各種センサーの設置や運転データの提供など多くのご協力をいただいており、現在、有明未利用熱利用促進研究会と佐賀大学によって効果の検証が進められています。
 同時に、県有施設である果樹試験場にも合計40kWの地中熱を導入し、細かな基礎的データの収集や検証を行っており、実証と基礎的研究の二つの側面で農業利用について検討を進めています。

左:温度測定装置 右:果樹試験場に導入された地中熱ヒートポンプ

脱炭素農業への横展開を見据えて

 本事業は、県内の地中熱や未利用熱利用を促進するために県内企業で組織された有明未利用熱利用促進研究会や佐賀大学、そして何よりもデータの提出やセンサーの追加設置など、多岐にわたる江川様のご協力のもと実施できている事業です。お陰様で非常に貴重なデータを収集できていますので、本事業をきっかけに脱炭素農業などへの横展開ができるように、今後とも佐賀県に適した導入や利用方法を検討していきたいと思います。

作業風景