環境再生・資源循環

UNEP国際資源パネル

概要

 地球規模での経済活動の拡大に伴い、天然資源の持続可能な利用の確保が国際社会の大きな課題となっていることから、国連環境計画(UNEP)により、天然資源の持続可能な利用および資源利用によるライフサイクルにわたる環境影響に関する独立した科学的評価の提供、並びにそれらの環境影響を経済成長から切り離す(デカップリング)方法に関する理解の増進を目的として2007年11月に設立された。

 持続可能な資源管理に係わる分野の著名な専門家30名程度のパネルメンバーと20を超える各国政府やEC、OECD、UNEPなどの国際的な機関からなる運営委員会で構成され、事務局をUNEPが務めている。なお、国際資源パネルメンバーとして、我が国からは、森口祐一国立大学法人 東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻都市資源管理研究室教授(2007年~2016年)、橋本征二立命館大学教授(2015年~)が登録。


 主な活動として、政府の政策担当者、産業界、社会に向けて、世界の重要な資源に関する課題に対し、実践的な解決策の開発を目的として下記の分野を対象とした評価報告書を作成している。評価報告書は、下記の国際資源パネルのHPよりダウンロード可能(一部、日本語訳あり)である。

 また、5月15~16日に開催されたG7富山環境大臣会合において、昨年のエルマウ・サミットにおけるG7からの要請を受け、UNEP国際資源パネルから資源効率性に関する統合報告書の政策決定者向け要約(SPM)が公表された。

(参考)報道発表:http://www.env.go.jp/press/102533.html

パネル会合開催実績

第1回パネル会合 (2007年11月) ブタペスト(ハンガリー)

第2回パネル会合 (2008年5月) ローマ(イタリア)

第3回パネル会合 (2008年11月) サンタバーバラ(アメリカ)

第4回パネル会合 (2009年6月) パリ(フランス)

第5回パネル会合 (2009年11月) 北京(中国)

第6回パネル会合 (2010年6月) ブリュッセル(ベルギー)

第7回パネル会合 (2010年11月) ケープタウン(南アフリカ共和国)

第8回パネル会合 (2011年5月) ヘルシンキ(フィンランド)

第9回パネル会合 (2011年11月) ニューデリー(インド)

第10回パネル会合 (2012年5月) コペンハーゲン(デンマーク)

第11回パネル会合 (2012年11月) 東京(日本)

第12回パネル会合 (2013年4月) ベルリン(ドイツ)

第13回パネル会合 (2013年11月) ナイバシャ(ケニア)

第14回パネル会合 (2014年5月) サンティアゴ(チリ)

第15回パネル会合 (2014年11月) ロッテルダム(オランダ)

第16回パネル会合 (2015年5月) ハノイ(ベトナム)

第17回パネル会合 (2015年10月) ダボス(スイス)

第18回パネル会合 (2016年6月) ケープタウン(南アフリカ共和国)

第19回パネル会合 (2016年11月) パリ(フランス共和国)

第20回パネル会合 (2017年6月) ヘルシンキ(フィンランド)

第21回パネル会合 (2017年11月) リマ(ペルー)

第22回パネル会合 (2018年6月) 深圳(中国)

第23回パネル会合 (2018年10月) 横浜(日本)

パネルにおける対象分野(作業部会)

  • デカップリング(Decoupling)※1
    この分野での活動は、資源消費及び環境に対する悪影響を増大させることなく、継続的な経済成長と人々の健康・幸福の両立を可能にする方策を模索することである。これは「デカップリング」と称される。当研究では、デカップリングを加速する技術と政策の機会を特定する。
  • 都市(Cities)
    都市に関する研究は、都市というコミュニティが個々の都市レベルでデカップリングの実現ができるよう支援することである。当研究は、意思決定者に対して都市化とグローバルな資源フローの相互関係に関する科学的情報を提供し、世界の天然資源の75%(推定)が消費される都市において持続可能な技術革新の機会を特定する。
  • 環境影響(Environmental Impacts)
    環境影響に関する研究は、有害な環境影響や資源不足に最も影響を及ぼす資源や物質に関する権威ある政策関連の評価を提供すると共に、当影響を緩和する対策を提供する。この評価には、温室効果ガス緩和技術や国際貿易による環境影響などの問題に関する最新の科学的知見が含まれる。
  • 水資源(Water)
    水資源に関する研究は、水資源の生産性、効率性及び持続可能性をさらに高める方法を特定することである。持続可能な水資源管理と水資源測定の改善を促す科学的根拠を提供し、その結果として、環境フローと生態系の健全性を確保しながら、地球上の水産資源を農業、工業、家庭において最大限に活用することが可能になる。
  • 金属資源(Metals)
    国際資源パネル(IRP)によるグローバルな金属フローの研究では、地球上の金属ストック及び金属フローに関する科学的評価を提供することで、金属の再利用やリサイクルの可能性、及び再生可能な資源循環の確立を模索する。
  • 土地及び土壌(Land and Soil)
    土地及び土壌に関する国際資源パネルの研究は、土地の潜在能力、その生産性及び土壌回復力などの土地や土壌資源の持続可能な管理の改善を目指している。国際資源パネルによる評価は、人口増加、都市化及び食習慣や消費行動の変化に由来する開発のグローバルな土地利用の変化の影響を検討する。これには、生物多様性への影響、食糧、繊維及び燃料の供給、自然及び人間社会の健全性への影響評価も含まれる。
  • 食糧(Food)
    当研究では、資源効率を高め、より持続可能な食糧システムへの移行を行い、世界規模の食糧保障を強化する機会を特定することで、資源利用に係るグローバルな食糧システム及び環境への影響を検討する。
  • REDD+(REDD+)
    国際資源パネルは、発展途上国における森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減に関する国連共同事業(UN-REDD事業)事務局と協力して、既存・計画段階のREDD+活動とグリーン経済への移行の相互補強関係を確立する方法に関する理解・知見を向上させるための評価を実施した。

その他分野横断型テーマ

  • 統合シナリオ分析(Integrated Scenario Analysis:ISA)
    金属、鉱石、水、エネルギー、食糧、都市化、環境影響およびデカップリングなど資源横断的な課題を統合的に取り扱うシナリオの開発を行う。
  • 世界の物質フローと資源生産性評価(Material Flow Accounting:MFA)
    国際統一的な物質フロー及び資源生産性に関するデータベースの作成、世界や主要地域の資源消費に関する報告を行う。

UNEP国際資源パネル公式ホームページ(外部ページ)

UNEP 国際資源パネル公式ホームページ(外部ページ)

報告書(日本語・仮訳)

G7 統合報告書 政策決定者向け要約「資源効率性:潜在的可能性及び経済的意味」

注釈(※1)
本報告書では、Decoupling には2つの意味があると定義しており、一つは資源消費から経済活動を切り離す"resource decoupling"と、もう一つは、環境影響から切り離す"impact decoupling"があるとしている。理想的には、環境影響が消失する方向で経済が成長すべきで、より持続可能な経済に向けて進展するには、資源消費の絶対的な削減が必要だとしている。

第20回会合(2017年6月)ヘルシンキ(フィンランド)
第21回会合(2017年11月)リマ(ペルー)
第22回会合(2018年6月)深圳(中国)
第23回会合(2018年10月)横浜(日本)