報道発表資料

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2026年10月02日
  • 自然環境

令和8年度西之島総合学術調査結果概要について

 令和8年7月22日(水)から同年7月29日(水)にかけて、「令和8年度西之島総合学術調査」を実施しました。
 
 今般、その調査結果概要を取りまとめましたので、お知らせします。また、調査で撮影した映像を環境省YouTubeで公開しました。 
 <概要>
 ・ 2年連続で西之島に上陸し、陸上及び海域の調査を実施した。
 ・ 火山活動による山体の成長は見られなかった。昨年度植物を確認したガリー(浸食により生じた溝)が消失するなど、浸食による地形の変化が進行している様子を確認した。
 ・ 鳥類については、過年度と概ね同様の傾向であるものの、昨年度は減少が見られたセグロアジサシの大幅な増加を確認した。同種の集団は不安定な状況で推移している可能性がある。
 ・ 節足動物については、ハサミムシがより広域に生息している状況を確認した。昨年とは別種のガを確認するなど、飛翔性の種の侵入が断続的に起きている可能性が示唆された。
 ・ 昨年度とは異なるガリーでコケ植物の生育を確認した。
 ・ 無人探査機、カメラ、地震計及びこれらの拠点施設を西之島に試行的に設置し、衛星通信を介した遠隔操作や生物、地震・火山活動のモニタリングに成功した。

背景・目的

 西之島は、小笠原諸島に位置する孤立性の高い海洋島であり、極めて人為的影響の少ない自然環境が存在します。環境省は、平成25年以降の火山活動の影響を受けた西之島の状況を把握するため、令和元年9月に上陸し、鳥類、昆虫、植物等に関する調査を実施しました。しかし、令和元年12月以降の火山活動により、生態系が維持されていた旧西之島の全てが溶岩又は火山灰に覆われ、新たな大地が形成されました。生物相がリセットされた状態となったことで、西之島は、原生状態の生態系がどのように遷移していくのかを確認できる世界に類のない科学的価値を有しています。
 そこで、環境省は、人為的な影響を可能な限り与えないように配慮しつつ、海洋島における原生状態の生態系の形成過程(一次遷移)を解明することを目的として、西之島における生態系の変化や噴火の過程等を把握する総合学術調査を毎年実施しています。
本調査によって得られた知見は、西之島における自然のモニタリングや保全の在り方の検討に役立てていくことを想定しています。

調査内容及び結果概要

 調査実施時、西之島では、火口周辺警報(入山危険)が発令されており、島のほぼ全域を含む山頂火口から概ね1.5kmが警戒が必要な範囲とされていました(※)。このため、ドローン等を活用した遠隔調査や、火口周辺警報発令範囲外の陸地における上陸調査を実施しました。
 内容としては、(1)生物調査、(2)地質調査・火山観測を実施しました。
 現地調査には、以下の専門家が参加しました。
  • 川上 和人(森林総合研究所 鳥類調査担当)
  • 黒田 洋司(明治大学理工学部 探査機担当)
  • 加藤 恵輔(明治大学理工学部 探査機担当)
  • 前野 深 (東京大学地震研究所 地質調査担当)
  • 森  英章(自然環境研究センター 陸上節足動物調査担当) 
※調査実施後の令和8年9月8日に、火口周辺警報(火口周辺危険)に引き下げられ、警戒が必要な範囲は山頂火口から概ね1kmに縮小されました。

(1)生物調査

<調査内容>
 ① 目視観察及びドローン撮影による生物の生息・生育状況把握
 ② 上陸した調査員による生体等の採集
 ③ 設置した調査機器(無人探査機、自動撮影装置、粘着トラップ等)による生息・生育状況把握及び生体等の採集
 ④ 海洋生物相把握のための環境DNA調査

<調査結果>
 (ア)鳥類
 過年度と同様、カツオドリ、アオツラカツオドリ、クロアジサシ、オオアジサシ及びセグロアジサシの繁殖並びにシロガシラカツオドリの生息を確認できました。カツオドリ等は昨年度・一昨年度とその個体数に大きな変化は見られませんでしたが、昨年個体数が激減したセグロアジサシについては、今年は大幅な増加が確認されました。
 カツオドリ等のように比較的安定している個体群と、セグロアジサシのように不安定な状態で推移している可能性がある個体群の両方が確認されており、継続的な状況把握と安定化のプロセスの解明が期待されます。
 
カツオドリの親子 
セグロアジサシの集団繁殖地
(写真提供(上・下):森林総合研究所 川上和人)

 (イ)節足動物等
 過年度の調査において継続して確認されていたハサミムシについて、今回初めて島の南側においても生息が確認され、島の周縁部に広く生息していることが明らかになりました。島内でどのように分布を拡大したのか、解明が期待されます。
 令和元年から令和2年にかけての大噴火後では初めてシロオビノメイガを確認しました。昨年は別種のガを確認しており、飛翔性昆虫の侵入機会がたびたびあることが示されています。
※これらのガの幼虫は植食性であり、食餌植物がない西之島には定着できないため偶然飛来したものと考えられます。
 トビカツオブシムシについて、無人探査機等を活用した夜間調査により、夜間に鳥類の死骸に飛来して群がる様子を確認できました。
 潮間帯では貝類やカニ類等計6種(死骸を含む)を確認しましたが、このうちオガサワラタマキビは令和元年から令和2年にかけての大噴火後では初めての確認となりました。
 
シロオビノメイガ
探査機の遠隔操作による夜間調査
(写真提供(下):明治大学 黒田洋司)

 (ウ)植物等
 昨年の調査に引き続き、藻類やコケ植物の生育を確認しました。コケ植物については、繁殖の証拠である胞子体も確認できました。昨年植物を確認したガリーは消失していましたが、別のガリーで植物を確認できました。なお、昨年の調査で確認されたシダ植物は確認できませんでした。侵入と消失を繰り返しながら遷移が進んでいることを示す証拠と言えます。
 
コケ植物
コケ植物の胞子体
(写真提供(下):森林総合研究所 川上和人)
 
 (エ)長期モニタリングに向けて
 調査期間終了後も一定期間情報を収集できる体制の構築に向けて、西之島北部に遠隔操作可能な無人探査機やカメラ、衛星通信装置及びこれらの拠点施設等を試行的に設置しました。
 設置した無人探査機について衛星通信を介して遠隔で操作可能なことを確認しており、鳥類の繁殖状況や夜間の節足動物の状況、地震・火山活動等をモニタリングしています。今後、継続した調査の実施や、無人探査機等の強度に関する知見の収集が期待されます。
 ※無人探査機等の機器の開発は、環境研究総合推進費による研究課題[4MF-2601]にて実施されています。
 
無人探査機(中型機)
無人探査機(大型機)
観測の拠点施設

(2)地質調査・火山観測

<調査内容>
 ① 目視観察及びドローン撮影による地形・地質構造の把握
 ② 上陸した調査員による地質試料の採取
 ③ 地震計の設置及び地震観測 

<調査結果>
(ア)地形・地質
 昨年度と比較して噴火による山体(陸域)の成長は認められず、山体の浸食が更に進行している状況が確認されました。
 令和元年から令和2年にかけての大噴火により形成された溶岩・地層から地質試料を採取しました。これにより、大噴火期間中の噴火状況の推移の解明が期待されます。
 
(イ)火山観測
 令和元年から令和2年にかけての大噴火後、初めて地震計を設置しました。これにより、衛星通信を介して現地の地震・火山活動がモニタリングできるようになりました。
 
地震計の設置状況 
(写真提供:東京大学地震研究所 前野深)

調査で撮影した映像について

 今回調査で撮影した映像を環境省Youtubeで公開しています。下記URLからご覧ください。
 https://youtu.be/zD8jkGDR08Q
 ※動画を利用する場合は、「著作権・リンクについて」のページ(https://www.env.go.jp/mail.html)に則りご利用ください。

今後の予定

 今回の調査で収集したデータ及び試料については、今後、解析を進める予定です。

「西之島の保全のための上陸ルール」について

 西之島においては、不注意な上陸により随伴生物等を人為的に持ち込むことで、世界的にも希有な新しい生態系の構築過程に人為的撹乱を生じさせてしまうことが懸念されています。「小笠原諸島世界自然遺産地域科学委員会」及び小笠原諸島世界自然遺産を管理する関係行政機関(環境省関東環境局、林野庁関東森林管理局、東京都、小笠原村)は、世界遺産の顕著な普遍的価値を損なわないために、上陸を計画する全ての方々に対して、平成28年6月に「西之島の保全のための上陸ルール」(https://kanto.env.go.jp/pre_2016/post_82.html)を定めています。
 なお、今回の調査では、関係法令に基づく手続や本ルールに則った防疫作業を経て実施しています。

連絡先

環境省自然環境局自然環境計画課
代表
03-3581-3351
直通
03-5521-8274
課長
長田 啓
課長補佐
辻田 香織
専門官
前田 尚大
専門官
谷口 晃基(担当)
関東環境局国立公園課
直通
048-600-0816
企画官
藤井 沙耶花
係員
西 龍汰