報道発表資料
2024年12月20日
- 自然環境
生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)総会第11回会合の結果報告について
1. 2024年12月10日から16日まで、ナミビア共和国・ウィントフックにおいて、IPBES総会第11回会合が開催されました。
2. 本会合では、「生物多様性、水、食料及び健康の間の相互関係に関するテーマ別評価(ネクサス・アセスメント)」及び「生物多様性の損失の根本的要因、変革の決定要因及び生物多様性2050 ビジョン達成のためのオプションに関するテーマ別評価(社会変革アセスメント)」に係る報告書の政策決定者向け要約(SPM)が承認されました。
あわせて、2025 年から2028 年までの4年間に実施予定の、「生物多様性と生態系サービスに関する第2次地球規模評価」のスコーピング文書(評価の目的、方法、章構成等を定めた文書)について議論が行われ、同文書に基づき評価が実施されることが承認されました。
3. 2025 年1月下旬に、環境省主催の結果報告会をオンライン会議形式にて開催予定です。
2. 本会合では、「生物多様性、水、食料及び健康の間の相互関係に関するテーマ別評価(ネクサス・アセスメント)」及び「生物多様性の損失の根本的要因、変革の決定要因及び生物多様性2050 ビジョン達成のためのオプションに関するテーマ別評価(社会変革アセスメント)」に係る報告書の政策決定者向け要約(SPM)が承認されました。
あわせて、2025 年から2028 年までの4年間に実施予定の、「生物多様性と生態系サービスに関する第2次地球規模評価」のスコーピング文書(評価の目的、方法、章構成等を定めた文書)について議論が行われ、同文書に基づき評価が実施されることが承認されました。
3. 2025 年1月下旬に、環境省主催の結果報告会をオンライン会議形式にて開催予定です。
1. 会議の概要
(1) 名 称 (日本語)生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)総会第11 回会合
(英 語)The eleventh session of the Plenary of the Intergovernmental Science-Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services (IPBES)
(2) 期 間 2024 年12 月10 日 ~ 同年12 月16 日
(3) 場 所 ナミビア共和国・ウィントフック
(4) 参加者 IPBES 参加国政府、IPBES 専門家、国連教育科学文化機関(UNESCO)、生物多様性条約事務局等の関連国際機関、その他オブザーバー等
(5) 公式ウェブサイト
https://www.ipbes.net/events/ipbes-11
(英 語)The eleventh session of the Plenary of the Intergovernmental Science-Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services (IPBES)
(2) 期 間 2024 年12 月10 日 ~ 同年12 月16 日
(3) 場 所 ナミビア共和国・ウィントフック
(4) 参加者 IPBES 参加国政府、IPBES 専門家、国連教育科学文化機関(UNESCO)、生物多様性条約事務局等の関連国際機関、その他オブザーバー等
(5) 公式ウェブサイト
https://www.ipbes.net/events/ipbes-11
2.成果の概要
IPBES 総会第11 回会合では、「生物多様性、水、食料及び健康の間の相互関係に関するテーマ別評価(ネクサス・アセスメント)」及び「生物多様性の損失の根本的要因、変革の決定要因及び生物多様性2050 ビジョン達成のためのオプションに関するテーマ別評価(社会変革アセスメント)」について、報告書の政策決定者向け要約(SPM)が承認されました。
あわせて、2025 年から2028 年までの4年間に実施予定の「生物多様性と生態系サービスに関する第2次地球規模評価」のスコーピング文書(評価の目的、方法、章構成等を定めた文書)について議論が行われ、同文書に基づきアセスメントが実施されることが承認されました。
また、日本からは、IPBES の「学際的専門家パネル(Multidisciplinary Expert Panel:MEP)」の共同議長を務める、東京大学大学院農学生命科学研究科の橋本 禅教授が、SPM の図表に関する参加国等のコンサルテーションの共同議長を務めるなど、今次会合の運営に参加しました。さらに、環境省の他、外務省、文部科学省、農林水産省が参加するとともに、評価報告書の執筆に関わった専門家等が参加しました。
なお、会合の主な成果は以下の通りです。
(1) 「生物多様性、水、食料及び健康の間の相互関係に関するテーマ別評価(ネクサス・アセスメント)」
この評価(アセスメント)は、生物多様性、水、食料、健康、気候変動のネクサス(相互作用)の各要素、及び要素間における行動の機会等を特定し、相互に関連する対応オプション間のシナジー(相乗効果)とトレードオフ(相反作用)について明らかにすることを目的に実施されました。
承認されたSPM には、12 の主要なメッセージ(キーメッセージ)と、その根拠が記述されています。以下は、IPBES 事務局から示された3つのヘッドラインメッセージです。
● 世界は、生物多様性の損失、水と食料の不安、健康、気候変動という相互に関連し、増大する危機に直面している。それぞれの危機に、個別に単独で対応するという現状の取組は非効果的かつ非生産的である。
● このような危機に同時に対処するという観点から、生物多様性、水、食料、健康、気候変動の間のコベネフィット(相乗便益)が生じるような、「ネクサス・アプローチ(相互的アプローチ)」を用いた71 の対応オプションが分析されている。
● 共通の危機に対処する際、誰もが「ネクサス・アプローチ」の成功に貢献できる。異なる人々が参加すること、また協力的・順応的・衡平的な方法で関わることで、さらに効果的な成果をあげることができる。
また、以下はいくつかの主要なメッセージについて概要をまとめたものです。
・ 生物多様性や他のネクサスの要素に関する負の影響を軽視し、また一部の人々への短期的な利益や経済的な見返りを優先する社会的、経済的、政策的な決定は、ウェルビーイング(高い生活の質)に不平等な結果をもたらす。既存の統治アプローチは、劣化する自然に対する負の影響に対処できなかったことが多く、また、その負の影響は不均衡な形で一部の人々のウェルビーイングに影響を与えている。(主要なメッセージA3(KM-A3))
・ 生物多様性の損失をもらしている直接的及び間接的要因が、現状のまま継続することは、気候変動の悪化とともに、生物多様性、水の利用可能性と質、食料安全保障、人間の健康にとって負の結果をもたらす。またネクサスの単一の要素の目標を優先し、他の要素を考慮しないシナリオは、ネクサス全体にトレードオフをもたらす。(主要なメッセージB1(KM-B1))
・ ネクサス全体の便益を最大化し、人々と自然に対するポジティブな結果をもたらすことは将来的に実現可能であるが、各ネクサス要素全てについてポジティブな結果を最大化することは困難である。しかし、いくつかの環境配慮型の対応策を用いたシナリオを用いることで、ネクサス要素全体でバランスの取れた便益の達成が可能である。(主要なメッセージB2(KM-B2))
・ 生物多様性、水、食料、健康、気候変動を持続的に管理することのできる、相乗効果の高い対応オプションは既に数多く存在している。生物多様性に重点を置いていない対応オプションの方が、生物多様性のために特別に設計された対応オプションよりも、生物多様性にとってより大きな便益をもたらすことが多い。(主要なメッセージC1(KM-C1))
・ 生物多様性分野に必要な資金ギャップは年間0.3~1兆ドルであり、また、水、食料、健康、気候変動に直接関連する持続可能な開発目標の達成のために必要となる追加投資額は、少なくとも年間4兆ドルである。価値観や構造の改革、及び狭隘な利益を重視した経済及び金融システムに関する迅速なアクションにより、生物多様性と他のネクサス要素のための投資を増やすことが可能になる。(主要なメッセージD2(KM-D2))
なお、本評価には、執筆者等として別紙の専門家が参加しました。特に、政策と社会政治的なオプションを評価した第4章については、公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)の齊藤修上席研究員が統括執筆責任者(Coordinating LeadAuthor: CLA)を務めました。
(2) 「生物多様性の損失の根本的要因、変革の決定要因及び生物多様性2050 ビジョン達成のためのオプションに関するテーマ別評価(社会変革アセスメント)」
この評価は、持続可能な世界に向けた社会変革を促進、加速、維持するために、実現可能な選択肢と、社会変革の世界的ビジョンを達成するためのステップを特定し、社会変革の決定要因、社会変革が直面する最大の障害と発生方法等について明らかにすることを目的に実施されました。
承認されたSPM には、17 の主要なメッセージ(キーメッセージ)とその根拠が記述されています。以下は、IPBES 事務局から示された3つのヘッドラインメッセージです。
● 社会変革は急務であり困難であるが、可能である。
● 社会変革には、5つの主要な戦略※がある。
● 社会変革の実現に向けては、個人を含め、すべての関係者やセクターが重要な役割を有する。
※ 5つの主要な戦略
戦略1: 自然と人間にとって価値のある場所の保全及び再生
戦略2: 生物多様性の損失及び自然衰退に最も寄与するセクターにおける体系的な変革
戦略3: 自然及び衡平性のための経済システムの変革
戦略4: 統合的、包摂的、説明責任のある、かつ順応的な統治システムへの改革
戦略5: 人間と自然との基本的な相互の結びつきを認識及び優先した社会的な見方及び価値観へのシフト
また、以下はいくつかの主要なメッセージについて概要をまとめたものです。
・ 生物多様性の損失と自然衰退の根本原因に対処する4つの重要な原則は、意識的な社会変革のプロセスを導く。これらの4原則とは、「衡平性と正義」、「多元性と包摂性」、「人間と自然が尊重し合う互恵的な関係」及び「適応的な学習と行動」である。(主要なメッセージ3(KM3))
・ 社会変革は可能であり、規模の大小を問わず、生物多様性の損失の根本原因に取り組むことで、公正で持続可能な世界に向けた社会変革に貢献する。(主要なメッセージ6(KM6))
・ 5つの主要な戦略及びそれらに関連する行動は、補完的かつ相乗的な効果を持ち、地球規模の持続可能性のために意識的な社会変革を進める大きな可能性を有している。各戦略を実現するための統合された一連の行動は、硬直化した見方や構造、慣行を適応的に是正できる。(主要なメッセージ7(KM7))
・ 生物多様性の2050 年ビジョンを達成するためには、農業・畜産業、漁業、林業、インフラ、鉱業、化石燃料など、生物多様性の損失に大きく寄与するセクターにおける社会変革は極めて重要かつ急務であり、それにより地球規模の持続可能性を推進するような社会的利益が得られる。(主要なメッセージ9(KM9))
・ 支配的な社会の見方や価値観を変え、人間と自然の相互関係を認識・優先させることは、社会変革に向けた強力な戦略となる。(主要なメッセージ12(KM12))
・ 社会全体での変革を達成するためには、すべての関係者やセクターが社会変革のビジョンを描き、協働・貢献していくという、社会や政府全体でのアプローチが必要である。(主要なメッセージ14(KM14))
なお、本評価には、執筆者等として別紙の専門家が参加しました。
(3) 「生物多様性と生態系サービスに関する第2次地球規模評価」スコーピング文書
2025 年から2028 年までの4年間に実施予定の「生物多様性と生態系サービスに関する第2次地球規模評価」のスコーピング文書(評価の目的、方法、章構成等を定めた文書)について議論が行われ、同文書に基づきアセスメントが実施されることが承認されました。スコーピング文書は、以下の5章から構成されています。
第1章:背景説明
第2章:異なる知識体系と先住民及び地域社会の役割
第3章:現状と傾向
第4章:将来の道筋
第5章:行動のための選択肢
今後、執筆者等の専門家が選定され、2028 年までの期間でアセスメントが実施されます。評価報告書の政策決定者向け要約(SPM)は、IPBES 総会第15 回会合において承認される予定です。
なお、本スコーピング文書の作成には、主執筆者(Leading Author: LA)として東京大学新領域創生科学研究科の石原広恵准教授が参加しました。
(4) 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)との関わり
IPBES 総会第10 回会合以降、生物多様性と気候変動に関し、IPCC とIPBES の協働が有益と思われるテーマ別または方法論上の問題について、IPBES 参加国に対して意見の提出が求められていました。本会合では、各国からの意見をとりまとめた資料が提供され、今後実施予定の各評価を執筆する専門家に対し、参考資料として提供されることとなりました。
また、IPBES 参加各国のフォーカルポイントに対し、各国のIPCC のフォーカルポイントと引き続き連携し、科学協力及び情報共有を強化し、関連するプロセス、手順及び作業計画の理解を深める方策を、共同で検討するよう求められることとなりました。
(5) 2025-2027 年予算
2025 年予算は10,237,955 米ドル、2026 年及び2027 年の見込予算は、それぞれ9,879,550 米ドル及び10,152,411 米ドルとすることが採択されました。
(6) 次回総会
次回総会となる、IPBES 総会第12 回会合は、英国において開催されることが決定されました。2026 年1月の開催が見込まれています。
あわせて、2025 年から2028 年までの4年間に実施予定の「生物多様性と生態系サービスに関する第2次地球規模評価」のスコーピング文書(評価の目的、方法、章構成等を定めた文書)について議論が行われ、同文書に基づきアセスメントが実施されることが承認されました。
また、日本からは、IPBES の「学際的専門家パネル(Multidisciplinary Expert Panel:MEP)」の共同議長を務める、東京大学大学院農学生命科学研究科の橋本 禅教授が、SPM の図表に関する参加国等のコンサルテーションの共同議長を務めるなど、今次会合の運営に参加しました。さらに、環境省の他、外務省、文部科学省、農林水産省が参加するとともに、評価報告書の執筆に関わった専門家等が参加しました。
なお、会合の主な成果は以下の通りです。
(1) 「生物多様性、水、食料及び健康の間の相互関係に関するテーマ別評価(ネクサス・アセスメント)」
この評価(アセスメント)は、生物多様性、水、食料、健康、気候変動のネクサス(相互作用)の各要素、及び要素間における行動の機会等を特定し、相互に関連する対応オプション間のシナジー(相乗効果)とトレードオフ(相反作用)について明らかにすることを目的に実施されました。
承認されたSPM には、12 の主要なメッセージ(キーメッセージ)と、その根拠が記述されています。以下は、IPBES 事務局から示された3つのヘッドラインメッセージです。
● 世界は、生物多様性の損失、水と食料の不安、健康、気候変動という相互に関連し、増大する危機に直面している。それぞれの危機に、個別に単独で対応するという現状の取組は非効果的かつ非生産的である。
● このような危機に同時に対処するという観点から、生物多様性、水、食料、健康、気候変動の間のコベネフィット(相乗便益)が生じるような、「ネクサス・アプローチ(相互的アプローチ)」を用いた71 の対応オプションが分析されている。
● 共通の危機に対処する際、誰もが「ネクサス・アプローチ」の成功に貢献できる。異なる人々が参加すること、また協力的・順応的・衡平的な方法で関わることで、さらに効果的な成果をあげることができる。
また、以下はいくつかの主要なメッセージについて概要をまとめたものです。
・ 生物多様性や他のネクサスの要素に関する負の影響を軽視し、また一部の人々への短期的な利益や経済的な見返りを優先する社会的、経済的、政策的な決定は、ウェルビーイング(高い生活の質)に不平等な結果をもたらす。既存の統治アプローチは、劣化する自然に対する負の影響に対処できなかったことが多く、また、その負の影響は不均衡な形で一部の人々のウェルビーイングに影響を与えている。(主要なメッセージA3(KM-A3))
・ 生物多様性の損失をもらしている直接的及び間接的要因が、現状のまま継続することは、気候変動の悪化とともに、生物多様性、水の利用可能性と質、食料安全保障、人間の健康にとって負の結果をもたらす。またネクサスの単一の要素の目標を優先し、他の要素を考慮しないシナリオは、ネクサス全体にトレードオフをもたらす。(主要なメッセージB1(KM-B1))
・ ネクサス全体の便益を最大化し、人々と自然に対するポジティブな結果をもたらすことは将来的に実現可能であるが、各ネクサス要素全てについてポジティブな結果を最大化することは困難である。しかし、いくつかの環境配慮型の対応策を用いたシナリオを用いることで、ネクサス要素全体でバランスの取れた便益の達成が可能である。(主要なメッセージB2(KM-B2))
・ 生物多様性、水、食料、健康、気候変動を持続的に管理することのできる、相乗効果の高い対応オプションは既に数多く存在している。生物多様性に重点を置いていない対応オプションの方が、生物多様性のために特別に設計された対応オプションよりも、生物多様性にとってより大きな便益をもたらすことが多い。(主要なメッセージC1(KM-C1))
・ 生物多様性分野に必要な資金ギャップは年間0.3~1兆ドルであり、また、水、食料、健康、気候変動に直接関連する持続可能な開発目標の達成のために必要となる追加投資額は、少なくとも年間4兆ドルである。価値観や構造の改革、及び狭隘な利益を重視した経済及び金融システムに関する迅速なアクションにより、生物多様性と他のネクサス要素のための投資を増やすことが可能になる。(主要なメッセージD2(KM-D2))
なお、本評価には、執筆者等として別紙の専門家が参加しました。特に、政策と社会政治的なオプションを評価した第4章については、公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)の齊藤修上席研究員が統括執筆責任者(Coordinating LeadAuthor: CLA)を務めました。
(2) 「生物多様性の損失の根本的要因、変革の決定要因及び生物多様性2050 ビジョン達成のためのオプションに関するテーマ別評価(社会変革アセスメント)」
この評価は、持続可能な世界に向けた社会変革を促進、加速、維持するために、実現可能な選択肢と、社会変革の世界的ビジョンを達成するためのステップを特定し、社会変革の決定要因、社会変革が直面する最大の障害と発生方法等について明らかにすることを目的に実施されました。
承認されたSPM には、17 の主要なメッセージ(キーメッセージ)とその根拠が記述されています。以下は、IPBES 事務局から示された3つのヘッドラインメッセージです。
● 社会変革は急務であり困難であるが、可能である。
● 社会変革には、5つの主要な戦略※がある。
● 社会変革の実現に向けては、個人を含め、すべての関係者やセクターが重要な役割を有する。
※ 5つの主要な戦略
戦略1: 自然と人間にとって価値のある場所の保全及び再生
戦略2: 生物多様性の損失及び自然衰退に最も寄与するセクターにおける体系的な変革
戦略3: 自然及び衡平性のための経済システムの変革
戦略4: 統合的、包摂的、説明責任のある、かつ順応的な統治システムへの改革
戦略5: 人間と自然との基本的な相互の結びつきを認識及び優先した社会的な見方及び価値観へのシフト
また、以下はいくつかの主要なメッセージについて概要をまとめたものです。
・ 生物多様性の損失と自然衰退の根本原因に対処する4つの重要な原則は、意識的な社会変革のプロセスを導く。これらの4原則とは、「衡平性と正義」、「多元性と包摂性」、「人間と自然が尊重し合う互恵的な関係」及び「適応的な学習と行動」である。(主要なメッセージ3(KM3))
・ 社会変革は可能であり、規模の大小を問わず、生物多様性の損失の根本原因に取り組むことで、公正で持続可能な世界に向けた社会変革に貢献する。(主要なメッセージ6(KM6))
・ 5つの主要な戦略及びそれらに関連する行動は、補完的かつ相乗的な効果を持ち、地球規模の持続可能性のために意識的な社会変革を進める大きな可能性を有している。各戦略を実現するための統合された一連の行動は、硬直化した見方や構造、慣行を適応的に是正できる。(主要なメッセージ7(KM7))
・ 生物多様性の2050 年ビジョンを達成するためには、農業・畜産業、漁業、林業、インフラ、鉱業、化石燃料など、生物多様性の損失に大きく寄与するセクターにおける社会変革は極めて重要かつ急務であり、それにより地球規模の持続可能性を推進するような社会的利益が得られる。(主要なメッセージ9(KM9))
・ 支配的な社会の見方や価値観を変え、人間と自然の相互関係を認識・優先させることは、社会変革に向けた強力な戦略となる。(主要なメッセージ12(KM12))
・ 社会全体での変革を達成するためには、すべての関係者やセクターが社会変革のビジョンを描き、協働・貢献していくという、社会や政府全体でのアプローチが必要である。(主要なメッセージ14(KM14))
なお、本評価には、執筆者等として別紙の専門家が参加しました。
(3) 「生物多様性と生態系サービスに関する第2次地球規模評価」スコーピング文書
2025 年から2028 年までの4年間に実施予定の「生物多様性と生態系サービスに関する第2次地球規模評価」のスコーピング文書(評価の目的、方法、章構成等を定めた文書)について議論が行われ、同文書に基づきアセスメントが実施されることが承認されました。スコーピング文書は、以下の5章から構成されています。
第1章:背景説明
第2章:異なる知識体系と先住民及び地域社会の役割
第3章:現状と傾向
第4章:将来の道筋
第5章:行動のための選択肢
今後、執筆者等の専門家が選定され、2028 年までの期間でアセスメントが実施されます。評価報告書の政策決定者向け要約(SPM)は、IPBES 総会第15 回会合において承認される予定です。
なお、本スコーピング文書の作成には、主執筆者(Leading Author: LA)として東京大学新領域創生科学研究科の石原広恵准教授が参加しました。
(4) 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)との関わり
IPBES 総会第10 回会合以降、生物多様性と気候変動に関し、IPCC とIPBES の協働が有益と思われるテーマ別または方法論上の問題について、IPBES 参加国に対して意見の提出が求められていました。本会合では、各国からの意見をとりまとめた資料が提供され、今後実施予定の各評価を執筆する専門家に対し、参考資料として提供されることとなりました。
また、IPBES 参加各国のフォーカルポイントに対し、各国のIPCC のフォーカルポイントと引き続き連携し、科学協力及び情報共有を強化し、関連するプロセス、手順及び作業計画の理解を深める方策を、共同で検討するよう求められることとなりました。
(5) 2025-2027 年予算
2025 年予算は10,237,955 米ドル、2026 年及び2027 年の見込予算は、それぞれ9,879,550 米ドル及び10,152,411 米ドルとすることが採択されました。
(6) 次回総会
次回総会となる、IPBES 総会第12 回会合は、英国において開催されることが決定されました。2026 年1月の開催が見込まれています。
3.その他
・ 会議冒頭、アン・ラリゴーデリIPBES 事務局長が退任予定であり、今次会合が最後のIPBES 総会出席になる旨アナウンスがあり、参加者から同事務局長への謝意が表されました。
・ 本年、IPBES が公益財団法人旭硝子財団の「ブループラネット賞」を受賞したことを受け、今次会合では、事務局長、IPBES 議長はじめ各国代表団から受賞を賞賛する発言が相次ぎました。
・ 今次会合では、2つの評価報告書の審議に加え、第2次地球規模評価のスコーピング、IPCC との関わりなど重要議題が多く、予定の会議時間を大幅に超過しての閉会となりました。また、評価報告書の内容などについて、参加者間で白熱した議論が展開されました。
・ 日本からは、IPBES への拠出を表明するとともに、「侵略的外来種とその管理に関するテーマ別評価報告書」が完成したことを受け、これまで日本が公益財団法人地球戦略研究機関(IGES)にホストしてきた技術支援機関が活動を終了したこと、また、シナリオ・モデルのタスクフォースに関する技術支援機関を同じくIGES に設置し、継続してIPBES の活動を支援していくことなどを表明しました。
・ 本年、IPBES が公益財団法人旭硝子財団の「ブループラネット賞」を受賞したことを受け、今次会合では、事務局長、IPBES 議長はじめ各国代表団から受賞を賞賛する発言が相次ぎました。
・ 今次会合では、2つの評価報告書の審議に加え、第2次地球規模評価のスコーピング、IPCC との関わりなど重要議題が多く、予定の会議時間を大幅に超過しての閉会となりました。また、評価報告書の内容などについて、参加者間で白熱した議論が展開されました。
・ 日本からは、IPBES への拠出を表明するとともに、「侵略的外来種とその管理に関するテーマ別評価報告書」が完成したことを受け、これまで日本が公益財団法人地球戦略研究機関(IGES)にホストしてきた技術支援機関が活動を終了したこと、また、シナリオ・モデルのタスクフォースに関する技術支援機関を同じくIGES に設置し、継続してIPBES の活動を支援していくことなどを表明しました。
4. IPBES 事務局主催記者発表
IPBES 事務局の主催により、今回受理された各テーマ別評価報告書に関する記者発表が行われ、動画が配信されました。次のURL から録画を御覧いただけます。
・ 生物多様性、水、食料及び健康の間の相互関係に関するテーマ別評価(ネクサス・アセスメント)
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=wi6daXdSuQM
・ 生物多様性の損失の根本的要因、変革の決定要因及び生物多様性2050 ビジョン達成のためのオプションに関するテーマ別評価(社会変革アセスメント)
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=ikmTTTBequI
・ 生物多様性、水、食料及び健康の間の相互関係に関するテーマ別評価(ネクサス・アセスメント)
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=wi6daXdSuQM
・ 生物多様性の損失の根本的要因、変革の決定要因及び生物多様性2050 ビジョン達成のためのオプションに関するテーマ別評価(社会変革アセスメント)
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=ikmTTTBequI
5. 環境省主催結果報告会
(1) 概要
【日時】2025 年1月下旬(予定)
【形態】オンライン(予定)
【主催】環境省
【議事次第(予定)】
1) IPBES 総会第11 回会合結果概要
2) IPBES 総会第11 回会合で承認されたテーマ別評価SPM(2件)等
3) IPBES 総会第11 回会合に関する専門家所見
4) その他関連事項
5) 質疑応答
(2) 参加申込要領
後日公開予定です。
【日時】2025 年1月下旬(予定)
【形態】オンライン(予定)
【主催】環境省
【議事次第(予定)】
1) IPBES 総会第11 回会合結果概要
2) IPBES 総会第11 回会合で承認されたテーマ別評価SPM(2件)等
3) IPBES 総会第11 回会合に関する専門家所見
4) その他関連事項
5) 質疑応答
(2) 参加申込要領
後日公開予定です。
<参考>
● 生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム
(Intergovernmental science-policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services:IPBES)
◆ 生物多様性と生態系サービスに関する動向を科学的に評価し、科学と政策のつながりを強化するための政府間のプラットフォームとして2012 年に設立された政府間組織
◆ 2024 年12 月1日現在、147 カ国が参加
◆ 科学的評価、能力開発、知見生成、政策立案支援の4つの機能が活動の柱
◆ これまでに以下の評価報告書及びワークショップ報告書を作成
・ 生物多様性及び生態系サービスのシナリオとモデルの方法論に関する評価報告書
・ 花粉媒介者、花粉媒介及び食料生産に関するテーマ別評価報告書
・ 生物多様性及び生態系サービスに関する地域・準地域別評価報告書
・ 土地劣化と再生に関するテーマ別評価報告書
・ 生物多様性と生態系サービスに関する地球規模評価報告書
・ 生物多様性とパンデミックに関するワークショップ報告書
・ 生物多様性と気候変動に関するIPBES-IPCC 合同ワークショップ報告書
・ 野生種の持続可能な利用に関するテーマ別評価報告書
・ 自然の多様な価値と価値評価の方法論に関する評価報告書
・ 侵略的外来種とその管理に関するテーマ別評価報告書
◆ 参考情報
・ IPBES web サイト
https://www.ipbes.net/
・ 環境省web サイト
https://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/ipbes/index.html
(Intergovernmental science-policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services:IPBES)
◆ 生物多様性と生態系サービスに関する動向を科学的に評価し、科学と政策のつながりを強化するための政府間のプラットフォームとして2012 年に設立された政府間組織
◆ 2024 年12 月1日現在、147 カ国が参加
◆ 科学的評価、能力開発、知見生成、政策立案支援の4つの機能が活動の柱
◆ これまでに以下の評価報告書及びワークショップ報告書を作成
・ 生物多様性及び生態系サービスのシナリオとモデルの方法論に関する評価報告書
・ 花粉媒介者、花粉媒介及び食料生産に関するテーマ別評価報告書
・ 生物多様性及び生態系サービスに関する地域・準地域別評価報告書
・ 土地劣化と再生に関するテーマ別評価報告書
・ 生物多様性と生態系サービスに関する地球規模評価報告書
・ 生物多様性とパンデミックに関するワークショップ報告書
・ 生物多様性と気候変動に関するIPBES-IPCC 合同ワークショップ報告書
・ 野生種の持続可能な利用に関するテーマ別評価報告書
・ 自然の多様な価値と価値評価の方法論に関する評価報告書
・ 侵略的外来種とその管理に関するテーマ別評価報告書
◆ 参考情報
・ IPBES web サイト
https://www.ipbes.net/
・ 環境省web サイト
https://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/ipbes/index.html