報道発表資料

この記事を印刷
2023年09月14日
  • 保健対策

内分泌かく乱作用に関するOECD試験法の策定及び改定について (国際的な標準試験法の開発に対するわが国の貢献)

1.化学物質の内分泌かく乱作用に関する環境省のプログラム(現在は「EXTEND2022」)の下で開発・検討が進められ、OECDにおいて、わが国主導で議論が行われた次の2つの魚類試験法が、OECDの国際標準試験法として採択され、本年7月に公開されました。
 ・メダカ拡張1世代繁殖試験(MEOGRT)(OECDテストガイドラインNo. 240)改定
 ・幼若メダカ抗アンドロゲン作用検出試験(JMASA)(OECDガイダンス文書)策定
 
2.環境省では、化学物質の内分泌かく乱作用が環境中の生物に及ぼす影響を明らかにするため、EXTEND2022の下でこれらの試験法も活用しつつ、更に試験・評価を進めます。併せて未完成の試験法の開発を進め、OECDによる標準試験法の確立に貢献します。

1.試験法開発の背景

(EXTEND2022に至る環境省のプログラム)

 化学物質の内分泌かく乱作用が環境中に及ぼす影響を把握するため、環境省のプログラム(現在は「化学物質の内分泌かく乱作用に関する今後の対応-EXTEND2022-」。以下「EXTEND2022」という。)では、広く認められた標準試験法等を活用した試験体系を構築し、その下で化学物質の試験を進めています。また、この体系の下で用いるべき試験法で未確立なものについては、当省の事業として試験法開発を進めてOECDに提案することを通じ、日本主導で試験法の開発や改定を進めてきました。

(OECDテストガイドライン)

 OECDテストガイドラインは、化学物質やその混合物の安全性の評価に用いるための、国際的に合意された試験方法です。これに従って取得された試験データは、さらに条件が揃えば他の国でも受け入れられるものとなる(化学品安全性データの相互受理:MAD)ため、国際標準試験法ということができます。
 さらにOECDでは、MADを前提とはしないものの加盟国が合意した試験方法を、ガイダンス文書として策定しています。

(国立環境研究所の貢献)

 わが国では、国立研究開発法人国立環境研究所が化学物質の生物影響に係る試験・評価手法の開発において中核的な役割を担っており、当省のプログラムにおいても、同研究所が内分泌かく乱作用に関する試験法開発の多くを担ってきました。

2.試験法の策定・改定の内容

(1)メダカ拡張1世代繁殖試験(MEOGRT)(OECDテストガイドラインNo. 240)の改定

 化学物質の内分泌かく乱作用が環境中の生物に及ぼす影響を把握するための確定試験法として、当省と米国環境保護庁の協力の下でメダカを用いた試験法の開発を進め、2015年に「メダカ拡張1世代繁殖試験(MEOGRT)(OECDテストガイドラインNo. 240)」として公開しました。
 この試験法は、EXTEND2022において、エストロゲン作用等による影響を把握するための「第二段階生物試験」と位置付けており、ノニルフェノール等を対象として順次試験を進めてきました。
 この試験法の改善のため、国立環境研究所の研究者により統計手法に関する記述の修正、一部記述の追加等が準備されました。これらは本年4月のOECD会合で採択され、本試験法の改定版が本年7月に公開されました。

(2)幼若メダカ抗アンドロゲン作用検出試験(JMASA)(OECDガイダンス文書)の策定

 EXTEND2022では、魚類短期繁殖試験(FSTRA)(OECDテストガイドラインNo.229)を「第一段階生物試験」に位置付けていますが、抗アンドロゲン作用に対応する第一段階生物試験はありませんでした。
 これを背景に同プログラムの下で、化学物質の抗アンドロゲン作用に係る第一段階生物試験として用いるべきスクリーニング試験法が、国立環境研究所の研究者により開発され、試験機関の参加による検証試験が行われました。試験法に係るガイダンス文書と検証試験結果は本年4月のOECD会合で採択され、本年7月に公開されました。

3.今後の対応

 メダカ拡張1世代繁殖試験(MEOGRT)については、今回改定された試験法を引き続きEXTEND2022における「第二段階生物試験」と位置付け、魚類に対する悪影響を定量的に把握するための試験を実施していきます。同試験の結果は、ノニルフェノールについて行われた同試験結果のように、当省が行うリスク評価における活用、参照等が期待されます。
 幼若メダカ抗アンドロゲン作用検出試験(JMASA)については、これをEXTEND2022における新たな「第一段階生物試験」の一つと位置付け、抗アンドロゲン作用を有する可能性が考えられる物質を対象とする試験の実施を検討します。
 EXTEND2022の枠組みで必要となる試験法のうち未完成のものについては、OECDの下での採択を目指し、国立環境研究所の協力の下で引き続き開発を進めます。これにより、OECDによる標準試験法の確立に貢献します。

連絡先

環境省大臣官房環境保健部環境安全課
代表
03-3581-3351
直通
03-5521-8261
課長
吉川 圭子
環境省大臣官房環境保健部環境保健企画管理課
課長補佐
山﨑 邦彦