報道発表資料

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2023年09月08日
  • 水・土壌

海洋ごみデータの調和に関する国際ワークショップの結果について

 令和5年8月 29 日(火)~同年8月 31 日(木)、パシフィコ横浜で海洋ごみデータの調和に関する国際ワークショップ(International Workshop on Marine Debris Data Harmonization)が開催されました。
 本ワークショップは、プラスチック汚染対策の基盤となるデータの利用可能性の向上に向け、海洋ごみデータの調和を推進することを目的に、日本国環境省が、海洋ごみのモニタリング・観測に関する国際的な調整機能及びその下でモニタリングを行う国・機関等のネットワークである Integrated Marine Debris Observing System (IMDOS)の開催運営支援を受けて主催しました。
 結果の概要については以下の通りです。

1.背景

  • 本ワークショップは、プラスチック汚染の緩和に向け、海洋ごみ汚染の状況を把握するために必要な指標に関するデータの調和を推進するため、必要とされるメタデータの特定等を通じ、データレベルを向上することを目的として開催されました。
  • ワークショップでは、モニタリング手法とデータの統合的な利用における調和について最新の知見が紹介された他、全体会議および分科会グループでの議論が行われました。
  • なお、IMDOS による開催運営支援の元、環境省の主催により、横浜のパシフィコ横浜コンベンションセンターにおいて開催され、海洋ごみのデータ管理、モニタリング手法の調和に関する国際専門家等、約 50 名が参加しました。
  • また、EU における H2020 EuroSea、Mercator Ocean International が実施するEU4OceanObs、H2020 EUROqCHARM プロジェクトの共催により開催されました。

2.主な成果

  • 海洋表層マイクロプラスチックのモニタリングにおける共通プロトコル、データ要件案に関して合意した上で、国・機関、専門家等が参加し、海洋のモニタリング・観測に関する国際的な調整機能を担う Global Ocean Observing System (GOOS )と IMDOSによる支援の下、データ提供者間の連携ネットワーク (実践コミュニティ) を構築しました。
  • 環境省、European Marine Observation and Data Network (EMODnet)、NOAA National Centers for Environmental Information (NCEI)、及びその他の大規模なデータ管理者間において、日本が公表している「漂流マイクロプラスチックのモニタリング手法調和ガイドライン」を基にした議論の上、関連するメタデータ案およびデータ要件案が合意されました。
  • 海洋ごみに関するデータベースやマップ等の提供により各国の政策立案等への活用を目指す UNEP Global Partnership on Plastic Pollution and Marine Litter (GPML)Digital Platform data matrix において必要とされる、標準的な関連メタデータ及びデータ要件に関する推奨事項が確認されました。
  • 海洋表層マイクロプラスチックと世界規模での海洋ごみ汚染の状況を把握するために必要な指標について、統合的なデータ管理システム(federated data management system)の構築に向けたロードマップが合意されました。

3.日程・場所

  • 日時:令和5年8月 29 日(火)~同年8月 31 日(木)
  • 場所:パシフィコ横浜

4. 主催者等

  • 主催:日本国環境省
  • 開催運営支援:Integrated Marine Debris Observing System
  • 後援:EU H2020 EuroSea project, EU4OceanObs project

5. 各セッションの概要

 プラスチック汚染の緩和に必要とされる主要指標に必要なデータ調和に向け、関連するメタデータの特定等、データレベルを向上するため、以下の7つのセッションについて情報共有や議論が行われました。

セッション 1: ワークショップの開催意義と目的 
 9カ国の専門家より、各地域における科学的なデータの政策や意思決定への活用事例が紹介され、海洋汚染対策の緊急性と必要性が共有されました。また、以下のような観点から意見交換が行われました。
  • 国際的なコミュニティにより集積されるべきモニタリングデータ
  • 技術的側面と需要的側面の考慮
  • 科学と政策立案の双方向コミュニケーション、公平性、調和されたモニタリングガイドラインの重要性 等

セッション 2: 海洋ごみ汚染の状況を把握する指標に必要なデータ、同データ収集の現状と、課題を克服するための取組 
 海洋ごみの指標として報告されるべきデータ案の確認、及びそれらデータを収集するために必要なモニタリング・監視能力に関する国際動向、及び将来的な展望について議論が行われました。

セッション 3: モニタリングの実施主体・場所・期間 
 既存の調査における利用可能な知見に基づき、海ごみ指標のモニタリング・監視能力のマッピングについて議論が行われました。議論では、多くのデータベースが存在する中でのデータアクセスの改善、使用者におけるモニタリングデータの使いやすさ、信頼性、政策決定への活用等の課題が示されました。

セッション 4: 世界レベルでの相互運用可能な海洋ごみの調和されたデータ管理 
 各国、地域で進められているモニタリングプロジェクトやシステムについての紹介が行われたうえで、特に海洋表層マイクロプラスチックに関する日、米、欧州における既存のデータベースをもとに、これらを統合したデータ管理システムに関するコンセプトの他、海洋ごみの指標に関する共通のデータ報告・必要要件、既存の定義の調和等について議論が行われました。
 更に、海洋表層マイクロプラスチックの調和されたデータ管理をめざし、以下の4つの議論グループに分かれ、詳細な議論が行われました。
  • グループ 1: 関連するメタデータと報告に必要な共通のデータ要件
  • グループ 2: 海洋表層マイクロプラスチックの採取・分析のための調和ガイドラインに関するロードマップに必要な事項
  • グループ 3: 社会技術的な課題
  • グループ 4: 他の世界的な指標との調和

セッション 5: 海洋表層マイクロプラスチックの経験に基づく観測ネットワークの持続と展開 
 以下の5つの議論グループにおいて、これまでの議論をもとに、以下の分野におけるネットワークの連携可能性に関して議論が行われました。
  • グループ 1: 海洋表層マイクロプラスチック
  • グループ 2: 海底ごみ
  • グループ 3: 海岸漂着ごみ
  • グループ 4: 海洋表層マクロプラスチック
  • グループ 5: 生物相

セッション 6: ワークショップの成果と今後の取組 
 海洋表層マイクロプラスチックの統合的なデータ管理システムの構築に向けたロードマップとして、セッション4の成果に基づき、共通関連データの様式を作成し、統合データ管理システムの実証試験を進めること等が合意されました。さらに、データの品質管理や研究手法比較、マイクロプラスチック関連物質等について、国際的な議論を継続する必要性が確認されました。

本ワークショップの結果については、後日改めてレポートとして取りまとめられます。

連絡先

環境省水・大気環境局海洋環境課
代表
03-3581-3351
直通
03-5521-8304
課長
大井 通博
主査
藤岡 勝之
水・大気環境局海洋環境課 海洋プラスチック汚染対策室
直通
03-6205-4934
室長
藤井 好太郎
補佐
長谷 代子
係長
宮﨑 一騎