報道発表資料

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2023年07月07日
  • 地球環境
  • 総合政策

環境省ナッジ事業の結果について

1.環境省では、ナッジ(英語nudge:そっと後押しする)やブースト(英語boost:ぐっと後押しする)を始めとする行動科学の知見を活用してライフスタイルの自発的な変革を創出する新たな政策手法を検証するとともに、産学政官民連携・関係府省等連携のオールジャパンの体制による日本版ナッジ・ユニットBEST(Behavioral Sciences Team)の事務局を務めています。

2.この度、令和4年度から実施している「ナッジ×デジタルによる脱炭素型ライフスタイル転換促進事業」で採択された事業者のうち、株式会社サイバー創研及び株式会社電力シェアリングが令和4年度に実施した、金銭的及び非金銭的インセンティブが節電行動に与える効果に関する予備的な実証実験の結果についてお知らせします。

3.予備的な実証実験の結果、講じた介入内容のうち、金銭的インセンティブにより、4.3%の追加的な節電・省CO2効果が統計的有意に実証されました。今後、結果を踏まえて本格的な実証実験を実施する予定です。

■ 実証実験実施期間

令和4年11月から12月

■ 実証実験参加世帯及び介入内容

調査会社のモニタのうち、中部電力管内に居住するおよそ700世帯を無作為に以下の3つのグループに割当てました。

・30分毎の電力使用量の過去2年間分の実績データの提供を受けてAIを用いて解析し、実証実験の実施期間の間に各世帯の日々の予測電力使用量や家電等の電気機器毎の推定電力消費量を提示して節電を依頼するとともに、日々の省エネ行動の報告を求め、省エネ行動の実施数に応じたランキングを表示するグループ(介入群1)
・介入群1の介入内容に加え、日々の電力使用量の実績が予測電力使用量を下回った場合に金銭的インセンティブを提供するグループ(介入群2)
・比較対象としてナッジを提供しないグループ(対照群)

■ 用いたAIの概要

以下の2種類の予測や解析を目的としてAIを活用しました。

・過去2年間の電力使用量及び気象データ、現在の気象予報並びに各世帯の属性情報等から、電力使用量を予測(図1)
・電力使用量の機器分離技術と機械学習を用いて家電等の電気機器毎の推定電力消費量を解析(図2)
 
図1:電力使用量の予測の例
https://www.env.go.jp/content/000145287.png
図2:電気機器毎の電力消費用の推定の例
https://www.env.go.jp/content/000145288.png

■ 結果

介入群1と介入群2の間の比較において、金銭的インセンティブの追加により4.3%の追加的な節電・省CO2効果が統計的有意に実証されました。一方で、対照群と介入群2の間の比較においては、介入により電力使用量が2.7%減少する傾向が見られましたが、統計的有意差は検出されませんでした。

■ 今後について

令和5年度においては、令和4年度の予備的な実証実験の結果を踏まえて、実証実験の参加世帯数や介入内容の見直しを行い、改めて実証実験を実施する予定です。
また、クライメートテック(気候テック)のスタートアップでもある株式会社電力シェアリングが開発した時間帯別CO2排出係数に関する我が国発の特許技術を用い、炭素会計の考え方に基づいて、電力の使用に伴うCO2排出量及びその削減量を精緻に算定し、家庭毎に評価・スコアリングすることにより、節電に加え、昼間のEV利用等、再生可能エネルギーの比率の高い時間帯に電力の使用をシフトさせるナッジ手法を構築し、検証する予定です。

連絡先

地球環境局地球温暖化対策課脱炭素ライフスタイル推進室
代表
03-3581-3351
直通
03-5521-8341
室長
井上 雄祐
室長補佐
池本 忠弘
主査
深澤 友博
担当
林 晃平