報道発表資料

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2025年11月28日
  • 保健対策

令和5年度大気汚染に係る環境保健サーベイランス調査及び令和3年度大気汚染に係る環境保健サーベイランス調査局地的大気汚染濃度を考慮した調査結果について

1.  環境省では、公害健康被害補償法に基づく第一種地域指定の解除(昭和62年改正)に伴い、地域人口集団の健康状態と大気汚染との関係を定期的・継続的に観察し、必要に応じて所要の措置を講ずるために、大気汚染に係る環境保健サーベイランス調査を平成8年度から毎年度実施しています。令和5年度の調査結果をとりまとめましたので、公表します。
 
2.  また、主要幹線道路沿道等の局地的大気汚染による健康影響について、「局地的大気汚染を考慮するための今後の調査方法(最終報告)」(令和6年10月)に基づき令和3年度の調査結果をとりまとめましたので、公表します。
 
 
【添付資料】
別添1  令和5年度 大気汚染に係る環境保健サーベイランス調査結果について(概要)
別添2  令和3年度 大気汚染に係る環境保健サーベイランス調査 局地的大気汚染濃度を考慮した解析結果について(概要)

■  調査結果の概要

(1)令和5年度の調査結果
 例年どおり、3歳児を対象とした調査(以下「3歳児調査」という。)及び小学1年生を対象とした調査(以下「6歳児調査」という。)を実施し、それらの単年度解析、並びに、平成9~令和5年度の3歳児調査及び平成16~令和5年度の6歳児調査のそれぞれを統合したデータ(以下「統合データ」という。)を用いた経年・統合解析等を行った。また、令和5年度の6歳児調査回答者のうち令和元~2年度に実施した3歳児調査時に回答のあった者について、追跡解析を行った。
 3歳児調査の対象者は全国34地域の約7万1千人(回答者は約5万8千人)であり、6歳児調査の対象者は全国35地域の約7万5千人(回答者は約6万人)であった。
 
【各解析の結果:ぜん息】
  • 単年度解析:対象者別背景濃度区分ごとの有症率及び調査対象地域ごとの対象者別背景濃度の平均値と有症率の検討では、いずれの大気汚染物質においても濃度区分が高くなるほどぜん息有症率が高くなる傾向はみられなかった。オッズ比による検討では、3歳児調査については、SOで1を超えて統計学的に有意(p<0.05、以下同様に有意差を判定)な結果(オッズ比:1.14、95%信頼区間[1.05-1.23])が得られた。6歳児調査については、大気汚染物質とぜん息に1を超えて統計学的に有意な結果は得られなかった。
  • 経年解析:大気汚染によると思われる有症率増加を示す地域はみられなかった。
  • 統合解析:対象者別背景濃度区分ごとの有症率及び調査対象地域ごとの対象者別背景濃度の平均値と有症率の検討では、濃度が高くなるほど有症率が高くなる傾向はみられなかった。オッズ比による検討においては、いずれの調査も1を超えて統計学的に有意な結果が得られた大気汚染物質はなかった。
  • 追跡解析:対象者別背景濃度区分ごとの発症率及び調査対象地域ごとの対象者別背景濃度の平均値と発症率の検討では、NO及びNOについて、濃度が高くなるほど発症率が高くなる傾向がみられた。オッズ比による検討では、NO及びNOにおいて1を超えて統計学的に有意な結果が得られた。
  • その他:大気汚染物質以外では、いずれの調査も、本人及び親のアレルギー疾患の既往ありの項目について、オッズ比が2~3程度の統計学的に有意な結果が得られた。統合データのオッズ比の検討でも、同様の結果が得られた。  
【各解析の結果:ぜん息】
  • オッズ比の検討では、3歳児調査について、「ぜん鳴」とOY、「ぜん鳴(かぜなし)+ぜん息」とSO及びPM2.5との関連性について1を超えて統計学的に有意な結果が得られた。6歳児調査について、「かぜひき回数(5回以上)」とNO及びNOとの関連性について1を超えて統計学的に有意な結果が得られた。
 
(2)局地的大気汚染濃度を考慮した令和3年度の調査結果
 主要幹線道路沿道等の局地的大気汚染による健康影響(令和3年度)について、「局地的大気汚染を考慮するための今後の調査方法(最終報告)」(令和6年10月)に基づき、新たにモデルによりNOの屋外濃度を推計し解析を行った。
 対象者別背景濃度区分ごとの有症率の検討では、いずれの調査でもNO濃度が高くなるほどぜん息有症率が高くなる傾向はみられなかった。オッズ比の検討では、大気汚染とぜん息有症率について、いずれの調査でも1を超えて統計学的に有意な結果は得られなかった。距離帯による解析でも差はみられなかった。
 

■  今後の課題

 これまでの調査の単年度解析では、大気汚染と喘息について1を超えて統計学的に優位な結果が得られたことが何度かあったが、常に1を超えて統計学的に有意な結果を示すような一定の傾向として捉えられる状況にはなかった。令和5年度の3歳児調査では、ぜん息とSOにおいて1を超えて統計学的に有意な結果が得られた。SOは近年極めて濃度が低くなっており、健康被害との関連性の評価が困難になっているが、今後も調査対象として注意深く観察を継続する。
 令和5年度の追跡解析では、対象者別背景濃度区分ごとのぜん息発症率の検討及び追跡対象地域ごとの対象者別背景濃度の平均値とぜん息発症率の検討においてNO、NOの濃度が高くなるほど発症率が高くなる傾向がみられ、オッズ比が1を超えて統計学的に有意な結果 が得られたこととの関連性は不明であるが、今後も同物質とぜん息発症の関係性について注意深く観察する。
 大気汚染物質濃度 について、NO、NO、SPMは全般的に低下傾向、SOは低濃度で推移、平成29年度より対象となったOY、O8は概ね横ばいで推移している。平成30年度より対象となったPM2.5は低下傾向にある。今後も大気汚染とぜん息等の呼吸器症状との関連性について地域特性も踏まえて注意深く観察する。
 経年・統合解析においては、長期的な大気汚染の傾向を考慮して、例えば5年程度の統合データを用いて経年的に比較するなど、解析方法の検討を行っているが、今後も引き続き検討を進める。
 また、追跡解析(平成16~令和5年度の計20回)は、10年度分以上のデータが蓄積したことから、平成28年度からぜん息の発症・持続についての経年解析を追加した。追跡統合解析に係る評価方法及びデータの取扱いの検討をさらに進める。
 
 このほか、幹線道路沿道等の局地的大気汚染濃度を考慮した解析については、令和8年度から追跡解析、令和10年度から経年・統合解析を行う予定である。今後はこれらの解析の方法を検討しつつ、引き続き局地的な大気汚染の影響を注意深く観察していく。
 なお、屋外濃度推計モデルについて、一般局大気測定局(以下「一般局」という。)、自動車排出ガス測定局(以下「自排局」という。)での推計値と実測値の差を検証したところ、一部の自排局では推計値が過小となるケースがみられた。これらの自排局では、自動車の非定常走行によりNO排出量が定常走行時よりも多いこと、道路構造や沿道状況が複雑であることなどにより高濃度となっている可能性が高く、モデルがこれらの特性を考慮していないと考えられた。このようにモデルの再現性が十分でない場合もあることに留意する必要がある。
 また、一般局での推計値と実測値の差を検証したところ、モデルの推計値には地域ごとにバイアスがみられたため、一般局のNO濃度の実測値と推計値の差を用いてこれを補正している。将来にわたって一定の推計精度を確保する観点から、今後も地域ごとの補正量やその経年的な変化に留意し、必要に応じてモデルに使用する基礎データの見直しや排出量の推計方法の改良などを検討していくことが必要である。
 

連絡先

環境省 大臣官房 環境保健部 企画課 保健業務室
代表
03-3581-3351
直通
03-5521-8256
室長
田中
室長補佐
松田
担当