報道発表資料

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2023年03月14日
  • 自然環境

石西礁湖のサンゴ白化現象の2022年12月調査結果について

環境省沖縄奄美自然環境事務所では、今年度のサンゴ白化現象の状況を把握するため、2022年9月に引き続き同年12月前半に石垣島と西表島の間に広がる石西礁湖(せきせいしょうこ)において調査を実施しました。
調査の結果、全調査地点の平均白化率は2022年9月の92.8%から50.2%まで低下しました。一方、平均被度も同年9月の21.6%から17.0%まで低下しました。

これまでの経緯及び趣旨

  • 過去に損なわれた生態系その他の自然環境を取り戻すことを目的とした自然再生推進法(2003(平成15)年1月1日施行)に基づき、石西礁湖における自然再生事業を2006(平成18)年から実施している。
  • 自然再生事業の一環としてサンゴのモニタリング調査を、2002(平成14)年の試行調査を経て、2005(平成17)年から実施している。
  • 大規模白化現象が発生した2016(平成28)年からは、スポットチェック法※1(15分間のスノーケリングを行い、白化率※2、被度※3等を目視観察)による調査を実施している。

調査内容

(1)調査地点
モニタリング調査の調査定点として設定している石西礁湖内の31地点で実施した。調査定点の位置は、付属資料の図1のとおり。
(2)調査期間
2022(令和4)年12月2日から同年12月13日まで
(3)調査方法
調査地点毎におよそ50m四方の調査地点を設定し、スポットチェック法により、調査を行った。
サンゴ群体の白化状況の程度を4階級に分類し、それぞれの被度の割合を記録した。
Ⅰ 健全:群体全体が白化していない状態
Ⅱ 薄色:群体の一部白化・一部死亡・全体的に色が薄い状態
Ⅲ 白化:群体全体が完全に白化している状態
Ⅳ 死亡:群体全体が白化により死亡した状態
 

調査結果

2022年9月と12月の各調査地点における白化率、全地点の平均白化率(以下「平均白化率」という。)は、付属資料の図2、3のとおり。また、各調査地点における被度、全地点の平均被度(以下、「平均被度」という。)及び2016(平成28)年以降の被度の変化は、付属資料の図4のとおり。2016(平成28)年以降の白化の状況と平均被度の変化は図5のとおりである。

(1)白化の状況
  •  平均白化率は50.2%であった。
  •  白化状況の内訳は、健全49.8%、薄色24.5%、白化1.4%、死亡24.3%であった。2022(令和4)年9月時点では平均白化率が9割を超えていたが、その後、海水温が下がって「薄色」や「白化」の群体のうち回復した群体があったものと考えられる。一方、いくつかの地点では、9月時点で「白化」であった群体が死亡し、「死亡」の割合が高い値になるなどの影響も見られた。
  •  前回の大規模白化現象が見られた2016(平成28)年12月時点と比較すると、本調査時点のほうがサンゴ群体全体における「健全」と「薄色」の割合は高く、2016年よりも被害が抑えられたといえる(付属資料の図5)。
  •  被害が抑えられたのは、2022(令和4)年9月の台風11号(ヒンナムノー)及び12号(ムイファー)によって表層の温かい海水が深場の冷たい海水と掻き回されて海水温が低下したことが影響した可能性があることや、いくつかの地点では2016(平成28)年の大規模白化以降にサンゴの生育型(優占するサンゴの種類)が高水温に強い種に変化していることが影響した可能性がある。
(2)被度の変化 
  •  平均被度は、2021(令和3)年9月の26.2%、2022(令和4)年9月の21.6%から17.0%に低下した。
  •  多くの調査地点は、2016(平成28)年の大規模白化以降ゆるやかに回復していたが、2022(令和4)年9月から12月の調査時には被度が低下しているところが多かった。これは、2021(令和3)年調査時より死亡群体が増加したためと考えられる(付属資料の図4)。
  •  被度が低下する要因は単一ではなく、サンゴの病気やオニヒトデ等の食害生物による影響なども考えられるが、それらはあまり確認されておらず、今回の被度の低下は、夏季の高水温による白化の影響が大きいと考えられた。また、2022(令和4)年9月の台風11号(ヒンナムノー)及び12号(ムイファー)による物理的な損壊等も影響している可能性がある。
  •  2016(平成28)年の大規模白化以降、2021(令和3)年にかけて平均被度は回復傾向であったものの、2022(令和4)年の大規模白化によって再び減少した。ただし2016(平成28)年の大規模白化と比較する際には、2016(平成28)年と2022(令和4)年ではサンゴの生育型が変わっている可能性があることにも留意しなければならず、2022(令和4)年の白化による平均被度の低下度合いを、2016(平成28)年と単純に比較することはできない。

今後の対応

本調査において「薄色」や「白化」に分類された群体が、今後回復又は死亡すると見られることから、今後の白化状況の推移は、例年のモニタリング調査の一環として実施する追跡調査のほか、環境省生物多様性センター(山梨県富士吉田市)が実施している「モニタリングサイト1000サンゴ礁調査」の中で石西礁湖の近隣海域も含めて把握を進める。
上記の結果を踏まえ、来年度も引き続き今年度に発生した大規模白化現象の影響把握等に努める。
また、各種の結果は石西礁湖自然再生協議会等においても報告予定である。

注釈

※1 スポットチェック法
モニタリングサイト1000サンゴ礁調査マニュアル第5版(環境省生物多様性センター 2013(平成25)年)による。
https://www.biodic.go.jp/moni1000/manual/spot-check_ver5.pdf
※2 白化率
白化現象が起きる前まで生きていたと思われるサンゴ群体が占める範囲(健全+薄色+白化+死亡)のうち、白化したサンゴ群体と白化により死亡したサンゴ群体が占める範囲(薄色+白化+死亡)の割合
※3 被度
着生可能な海底面の範囲のうち、生きているサンゴ群体が占める範囲の割合。

連絡先

環境省自然環境局自然環境計画課
代表
03-3581-3351
直通
03-5521-8274
課長
堀上勝
調整官
石川拓哉
専門官
守容平
沖縄奄美自然環境事務所
代表
098-836-6400
所長
宇賀神知則
自然再生企画官
鈴木祥之