報道発表資料
2025年09月12日
- 自然環境
令和7年度西之島総合学術調査結果概要について
令和7年7月22日(火)から同年7月29日(火)にかけて、「令和7年度西之島総合学術調査」を実施しました。
今般、その調査結果概要を取りまとめましたので、お知らせいたします。
<主な概要>
撮影した映像の一部を報道用に提供しますので、提供を希望される場合は担当者まで御連絡ください。
今般、その調査結果概要を取りまとめましたので、お知らせいたします。
<主な概要>
- 3年ぶりに西之島へ上陸し、陸上及び海域の調査を実施。
- 火山活動による山体の成長は見られず、浸食が進行している様子を確認。
- 鳥類については、概ね昨年度と同様に生息、繁殖していたものの、カツオドリの繁殖域の拡大やセグロアジサシの減少を確認。
- 節足動物については、昨年に引き続きハサミムシを確認したほか、カツオブシムシの生息を3年ぶりに、台地上でのカニの存在を4年ぶりに確認。
- 令和2年の大規模噴火後、初めて植物の生育を確認。
- 調査期間外も一定期間情報を収集できる体制の構築に向けて、無人探査機や衛星通信装置等を試行的に設置。
撮影した映像の一部を報道用に提供しますので、提供を希望される場合は担当者まで御連絡ください。
背景・目的
西之島は、小笠原諸島に位置する孤立性の高い海洋島であり、極めて人為的影響の少ない自然環境が存在します。環境省では、平成25年以降の火山活動の影響を受けた西之島の状況を把握するため、令和元年9月に上陸し、鳥類、昆虫、植物等に関する調査を実施しました。しかし、令和元年12月以降の火山活動により、生態系が維持されていた旧西之島の全てが溶岩又は火山灰に覆われ、新たな大地が形成されました。生物相がリセットされた状態となったことで、西之島は、原生状態の生態系がどのように遷移していくのかを確認できる世界に類のない科学的価値を有しています。
そこで、環境省としては、人為的な影響を可能な限り与えないように配慮しつつ、西之島における生態系の変化や噴火の過程等、自然の遷移をモニタリングすることで、海洋島における原生状態の生態系の成り立ち(一次遷移)を解明することを目的として、毎年、総合学術調査を実施しています。
本調査によって得られた知見は、西之島における自然のモニタリングや保全に役立てていくことを想定しています。また、新たに開発された調査技術は、西之島に限らず様々な地域の自然のモニタリングや生物資源の保全等に寄与していくことを期待しています。
そこで、環境省としては、人為的な影響を可能な限り与えないように配慮しつつ、西之島における生態系の変化や噴火の過程等、自然の遷移をモニタリングすることで、海洋島における原生状態の生態系の成り立ち(一次遷移)を解明することを目的として、毎年、総合学術調査を実施しています。
本調査によって得られた知見は、西之島における自然のモニタリングや保全に役立てていくことを想定しています。また、新たに開発された調査技術は、西之島に限らず様々な地域の自然のモニタリングや生物資源の保全等に寄与していくことを期待しています。
調査内容及び結果概要
西之島では、島のほぼ全域を含む山頂火口から概ね1.5kmの範囲に噴火警報(火口周辺)が発令されています。このため、ドローン等を活用した遠隔調査を実施しました。また、今回は、噴火警報発令範囲外の陸地において、令和4年以来3年ぶりに上陸して調査を実施しました。
内容としては、(1)陸域生態系調査、(2)地質調査、(3)海域調査を実施しました。
現地調査には以下の専門家が参加しました。
内容としては、(1)陸域生態系調査、(2)地質調査、(3)海域調査を実施しました。
現地調査には以下の専門家が参加しました。
- 川上 和人(森林総合研究所 鳥類調査担当)
- 黒田 洋司(明治大学理工学部 探査機担当)
- 加藤 恵輔(明治大学理工学部 探査機担当)
- 川口 允孝(東京大学地震研究所 地質調査担当)
- 森 英章(自然環境研究センター 陸上節足動物調査担当)
(1)陸域生態系調査
<調査内容>
西之島では生態系が維持されていた旧島の全てが溶岩に埋め尽くされ、溶岩による新たな台地が形成されました。そのため、陸域については、噴火による攪乱後の鳥類をはじめとした生物相の変化や、海洋島の生態系の成立プロセスにおいて海鳥等が果たす役割を明らかにするために、以下の調査を実施しました。
① 目視による観察(地形の概況把握、海鳥の生息状況の確認等)
② ドローンによる撮影(地形の詳細把握、地上繁殖性海鳥の生息状況、植物の存在の有無の把握等)
③ 上陸地点周辺における鳥類の死体や巣材、節足動物等の採集
④ 上陸地点周辺における調査機器(無人探査機、自動撮影装置、粘着トラップ等)の設置・回収
<調査結果>
(ア)鳥類
カツオドリ、アオツラカツオドリ、クロアジサシ、オオアジサシ及びセグロアジサシの生息を確認できました。カツオドリ、アオツラカツオドリ、クロアジサシ及びオオアジサシについては幼鳥も確認できたことから、西之島での繁殖に継続的に成功していると考えられます。
特にカツオドリにおいては、これまでに繁殖の記録のなかった北部のエリアでも営巣が確認され、繁殖域の拡大を確認できました。一方で昨年は多数観察されたセグロアジサシは、個体数が激減しており繁殖も確認できませんでした。
海鳥は、西之島のように陸上に生物が乏しい環境においても食物資源を海から得るため繁殖可能である他、種子散布、栄養塩の運搬など生態系で重要な役割を担っていることから、西之島における生態系構築の先駆者であると考えられます。したがって、海鳥の定着プロセスを把握することは、西之島の生態系の成り立ちの解明につながる大きな手掛かりになると考えられることから、今後も継続したモニタリングが重要となります。

オオアジサシ
(写真提供:森林総合研究所 川上和人)

カツオドリ
(写真提供:自然環境研究センター 森英章)
(ウ)植物等
令和4年の上陸調査に引き続き、藻類の生育を確認しました。また、令和2年の大規模噴火後初めて、植物の生育を確認しました。大規模噴火後に西之島における植物の生育を確認できたのは初めてであり、植物の定着から群集の成立に至る一連のプロセスの解明につながると考えられます。

コケ植物
(写真提供:自然環境研究センター 森英章)
(エ)長期モニタリングに向けて
調査期間終了後も一定期間情報を収集できる体制の構築に向けて、西之島北部に試行的に無人探査機や衛星通信装置等を設置しました。

無人探索機
(写真提供:自然環境研究センター 森英章)
西之島では生態系が維持されていた旧島の全てが溶岩に埋め尽くされ、溶岩による新たな台地が形成されました。そのため、陸域については、噴火による攪乱後の鳥類をはじめとした生物相の変化や、海洋島の生態系の成立プロセスにおいて海鳥等が果たす役割を明らかにするために、以下の調査を実施しました。
① 目視による観察(地形の概況把握、海鳥の生息状況の確認等)
② ドローンによる撮影(地形の詳細把握、地上繁殖性海鳥の生息状況、植物の存在の有無の把握等)
③ 上陸地点周辺における鳥類の死体や巣材、節足動物等の採集
④ 上陸地点周辺における調査機器(無人探査機、自動撮影装置、粘着トラップ等)の設置・回収
<調査結果>
(ア)鳥類
カツオドリ、アオツラカツオドリ、クロアジサシ、オオアジサシ及びセグロアジサシの生息を確認できました。カツオドリ、アオツラカツオドリ、クロアジサシ及びオオアジサシについては幼鳥も確認できたことから、西之島での繁殖に継続的に成功していると考えられます。
特にカツオドリにおいては、これまでに繁殖の記録のなかった北部のエリアでも営巣が確認され、繁殖域の拡大を確認できました。一方で昨年は多数観察されたセグロアジサシは、個体数が激減しており繁殖も確認できませんでした。
海鳥は、西之島のように陸上に生物が乏しい環境においても食物資源を海から得るため繁殖可能である他、種子散布、栄養塩の運搬など生態系で重要な役割を担っていることから、西之島における生態系構築の先駆者であると考えられます。したがって、海鳥の定着プロセスを把握することは、西之島の生態系の成り立ちの解明につながる大きな手掛かりになると考えられることから、今後も継続したモニタリングが重要となります。

オオアジサシ
(写真提供:森林総合研究所 川上和人)

カツオドリ
(写真提供:自然環境研究センター 森英章)
(イ)節足動物
クロアジサシの死体から、令和4年以来確認がなかったトビカツオブシムシを複数確認しました。また、令和3年以来4年ぶりに、台地上(海浜部以外)でカニを確認しました。稚ガニのみ確認されており、流れ着いた幼生が成長し台地上まで上陸していると言えます。ハサミムシは過年度の調査においては継続して生息が確認されていましたが、今回初めて北側の台地上においても生息が確認されました。
これらの節足動物は、生態学的遷移の中で、海鳥の死骸を分解することで生態系の土台である土壌を作り出す役割を担っている可能性があります。節足動物の生息状況の調査を行うことは、海鳥と同様に、西之島の生態系成立プロセスを解明するにあたって重要となります。
また、アメリカシロヒトリ(北米原産の外来種。本州や父島、母島に侵入済み。)の成虫1個体を確認しました。本種の幼虫は植食性であり、植物が分布しない西之島には定着できないため偶然飛来していたものと考えられますが、新たな昆虫等の侵入機会が度々あることを示しています。
クロアジサシの死体から、令和4年以来確認がなかったトビカツオブシムシを複数確認しました。また、令和3年以来4年ぶりに、台地上(海浜部以外)でカニを確認しました。稚ガニのみ確認されており、流れ着いた幼生が成長し台地上まで上陸していると言えます。ハサミムシは過年度の調査においては継続して生息が確認されていましたが、今回初めて北側の台地上においても生息が確認されました。
これらの節足動物は、生態学的遷移の中で、海鳥の死骸を分解することで生態系の土台である土壌を作り出す役割を担っている可能性があります。節足動物の生息状況の調査を行うことは、海鳥と同様に、西之島の生態系成立プロセスを解明するにあたって重要となります。
また、アメリカシロヒトリ(北米原産の外来種。本州や父島、母島に侵入済み。)の成虫1個体を確認しました。本種の幼虫は植食性であり、植物が分布しない西之島には定着できないため偶然飛来していたものと考えられますが、新たな昆虫等の侵入機会が度々あることを示しています。

ハマベハサミムシの幼虫
(写真提供:自然環境研究センター 森英章)
(写真提供:自然環境研究センター 森英章)

トビカツオブシムシの幼虫
(写真提供:自然環境研究センター 森英章)
(写真提供:自然環境研究センター 森英章)
(ウ)植物等
令和4年の上陸調査に引き続き、藻類の生育を確認しました。また、令和2年の大規模噴火後初めて、植物の生育を確認しました。大規模噴火後に西之島における植物の生育を確認できたのは初めてであり、植物の定着から群集の成立に至る一連のプロセスの解明につながると考えられます。

コケ植物
(写真提供:自然環境研究センター 森英章)
(エ)長期モニタリングに向けて
調査期間終了後も一定期間情報を収集できる体制の構築に向けて、西之島北部に試行的に無人探査機や衛星通信装置等を設置しました。

無人探査機
(写真提供:明治大学理工学部 加藤恵輔)
(写真提供:明治大学理工学部 加藤恵輔)

無人探索機
(写真提供:自然環境研究センター 森英章)
(2)地質調査
<調査内容>
西之島の自然環境・生態系に大きな影響を及ぼす火山の活動状況は、生態系の遷移を解明するにあたって欠かせない情報となります。そのため、これまでの西之島のマグマ活動の全体像を把握し、火山活動の現状を評価するため、以下の調査を実施しました。
① 目視観察及びドローン撮影による地形・地質構造の把握
② 上陸地点周辺における岩石試料の採取
<調査結果>
(ア)地形・地質
昨年度と比較して噴火による山体(陸域)の成長は認められず、山体の浸食が更に進行している状況が確認されました。
(イ)火山ガス
過年度から継続して、火砕丘の主火口及び山腹からの噴気を確認しました。また、火口底には灰白色の火口湖が存在し、蒸気が上がっている状況を確認しました。

火砕丘南西部のガリと斜面崩壊堆積物
(写真提供:東京大学地震研究所 川口允孝)
西之島の自然環境・生態系に大きな影響を及ぼす火山の活動状況は、生態系の遷移を解明するにあたって欠かせない情報となります。そのため、これまでの西之島のマグマ活動の全体像を把握し、火山活動の現状を評価するため、以下の調査を実施しました。
① 目視観察及びドローン撮影による地形・地質構造の把握
② 上陸地点周辺における岩石試料の採取
<調査結果>
(ア)地形・地質
昨年度と比較して噴火による山体(陸域)の成長は認められず、山体の浸食が更に進行している状況が確認されました。
(イ)火山ガス
過年度から継続して、火砕丘の主火口及び山腹からの噴気を確認しました。また、火口底には灰白色の火口湖が存在し、蒸気が上がっている状況を確認しました。

火砕丘南西部のガリと斜面崩壊堆積物
(写真提供:東京大学地震研究所 川口允孝)
(3)海域調査
<調査内容>
噴火が海洋環境及び海洋生態系に与えた影響や噴火以降の海洋生態系の遷移状況を明らかにすることを目的として、以下の調査を実施しました。
① 海洋生物相把握のための環境DNA調査
<調査結果>
潮間帯や沿岸域の砂礫や海水について、環境DNA解析のための試料を採取しました。
噴火が海洋環境及び海洋生態系に与えた影響や噴火以降の海洋生態系の遷移状況を明らかにすることを目的として、以下の調査を実施しました。
① 海洋生物相把握のための環境DNA調査
<調査結果>
潮間帯や沿岸域の砂礫や海水について、環境DNA解析のための試料を採取しました。
今後の予定
今回の調査で収集したデータ及び試料については、今後、各分野の専門家が解析し、西之島の生態系の状況を明らかにしていく予定です。こうした調査結果も踏まえ、西之島の生態系の遷移過程の評価や今後のモニタリング調査についての検討等を行う予定です。
※ 報道用映像の提供について(報道機関向け)
本調査時に撮影した映像の一部を報道用に共通利用できるものとして提供します。提供した映像をキャプチャーした画像も御利用いただけます。映像の提供を希望される場合は、メールの件名を「西之島調査映像提供の申込み」とした上で、会社名、部署名、役職、氏名及び連絡先(電話番号及びメールアドレス)を明記の上、【担当:前田(shizen-keikakuアットマークenv.go.jp※)】宛てにお送りいただきますようお願いします。担当(前田)から返答がない場合は、お手数をおかけしますが、環境省自然環境局自然環境計画課(03-5521-8274)へ御連絡ください。
※ 送信の際には、アットマークを半角の@に置き換えてお送りください。
※ 報道用映像の提供について(報道機関向け)
本調査時に撮影した映像の一部を報道用に共通利用できるものとして提供します。提供した映像をキャプチャーした画像も御利用いただけます。映像の提供を希望される場合は、メールの件名を「西之島調査映像提供の申込み」とした上で、会社名、部署名、役職、氏名及び連絡先(電話番号及びメールアドレス)を明記の上、【担当:前田(shizen-keikakuアットマークenv.go.jp※)】宛てにお送りいただきますようお願いします。担当(前田)から返答がない場合は、お手数をおかけしますが、環境省自然環境局自然環境計画課(03-5521-8274)へ御連絡ください。
※ 送信の際には、アットマークを半角の@に置き換えてお送りください。
連絡先
環境省自然環境局自然環境計画課
- 代表
- 03-3581-3351
- 直通
- 03-5521-8274
- 課長
- 西村 学
- 課長補佐
- 辻田 香織
- 専門官
- 前田 尚大
関東地方環境事務所国立公園課
- 直通
- 048-600-0816
- 課長補佐
- 鹿野 謙二
- 専門官
- 石井 桃花