報道発表資料

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2022年08月18日
  • 地球環境

「第13回ペータースベルク気候対話」の結果について

 2022 年7月 18 日~19 日、ドイツ・ベルリンにおいて、「第 13 回ペータースベルク気候対話」が行われたところ、概要は以下のとおりです。
 我が国からは、小野環境省地球環境審議官、水野外務省国際協力局気候変動課交渉官、木村経済産業省産業技術環境局地球環境問題交渉官ほかが出席しました。

1. 会合の概要

(1)日程・場所
   2022 年7月 18 日 ~ 19 日 ドイツ・ベルリン

(2)主催
   ドイツ及びエジプト
   (共同議長:ドイツ・ベアボック外務大臣、エジプト・シュクリ外務大臣兼 COP27 議長)

(3)出席者
   ドイツ(議長国)及びエジプト(COP27 議長国)、主要先進・途上国の閣僚級、国連事 務総長(ビデオメッセージ)、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局長代理等が出席。
   我が国からは、小野環境省地球環境審議官、水野外務省国際協力局気候変動課交渉官、木村経済産業省産業技術環境局地球環境問題交渉官ほかが出席した。

2. 議論の概要

 今次会合では、ドイツのショルツ首相、エジプトのエルシーシ大統領、グテーレス国連 事務総長(ビデオメッセージ)による基調講演と、講演に対する各国からのコメントや質疑応答がなされた後に、本年 11 月にエジプトで開催予定の COP27 の成功に向けて、主要交渉議題として、ロス&ダメージ(気候変動の悪影響に伴う損失と損害)に対する行動、ロス&ダメージに関する資金アレンジメント、適応、適応資金、緩和、緩和資金、エネルギ ー移行について議論された。
 会合後、共同議長による総括が発出された。閣僚会合での主な議論の概要は下記のとおり。

以下議長サマリー(原文は英語): ※ サマリーの内容は、議長の責任で作成されたものであり、必ずしも我が国の見解を代表するものではない。 
原文: https://www.cop27.eg/assets/files/readMore.pdf 

(1)概要

 2022 年のペータースベルク気候対話は、気候危機と他の世界的危機(COVID-19、エネルギー、食糧、債務、ウクライナとロシア間の戦争、生物多様性)との関連が、かつてなく明らかな状況の中で開催された。閣僚らは、自らが直面する新たな課題のみならず、持続可能な社会・経済発展の取組と利益、経済の安定と安全に対するリスク及びその増大要因である気候変動に対して行動する緊急性が高まっていると述べた。
 閣僚、参加者、専門家らは、気候変動が既に何百万人もの人々の食糧安全保障、水へのアクセス、その他多くの生計手段を脅かしていることを強調した。約 33 億から 36 億の人々が、気候変動に対して非常に脆弱な状況で生活している。IPCC 第6次評価報告書第2作業部会報告書では、既に一部で適応の限界に達しており、住みやすい持続可能な未来を確保するための余地が急速に狭まっていることが認識されている。地球温暖化が進むと、人間や生態系、関連するロス&ダメージに対して推測される悪影響は深刻化する。全てのコミュニティと国は、気候変動の被害を受ける。多様な脆弱性により、特に途上国、その中でも後発開発途上国、低地の小島嶼開発途上国、沿岸コミュニティ、周縁化され、貧しい人々は、より大きな課題に直面する。
 信頼は、協力を拡大し強化するための基本的な要素として、各国の発言を通じた重要なテーマであった。これには、(資金や緩和の野心に関する)コミットメントが守られ、前に進められるべきという信頼も含まれる。1.5℃を射程に入れ続ける発展経路を実現する必要性及び行動や支援の規模を拡大することで実施を加速する必要性も、横断的なテーマであった。ボンでの成果は、必要とされる行動の緊急性や合意へのコミットメントを反映していないとの認識が一般的であった。参加者は、また、食糧安全保障、生物多様性、砂漠化、海洋、保健、社会・経済開発、その他の環境・開発問題との関連性を認識し、適切な連携を確保することの重要性を強調した。
 気候変動への対応における市民社会、先住民、女性、若者の重要性について、多くの参加者によって指摘がなされた。これには、UNFCCC 気候会議及び他の関連会議において、積極的かつ適切に彼らの参加を確保することも含まれる。今回のペータースベルク気候対話では、ドイツと COP27 議長国のエジプトは、参加の新しい基準を設定し、市民社会の構成員の参加枠確保に重点を置いた。 

(2) 主な成果

1. 気候変動による影響が強靱な発展経路にもたらすリスクの増大及び気候変動による影響に最も脆弱な人々がその影響に適応し、対処するためのより良い支援を行う必要性についての共通認識

 ほぼ全ての国が、壊滅的な洪水、干ばつ、熱波、森林火災、異常気象に関する事例を取り上げた。全ての人々が気候危機の影響を感じていること、また、最も貧しく脆弱な人々が、直面する影響に最も無防備であることが明らかにされた。COP を見据え、議論は、それぞれのロス&ダメージを回避し、最小化し、対処するための全ての人々の能力を高める成果に対する明確な期待を表面化させた。また、途上国が影響に対処―財政的及び能力構築並びに技術移転を通じてー適応し、さらにはロス&ダメージの回避、最小化、対処するに当たって、より良い支援を行うための基盤を COP が築くことの期待について、意見の一致がみられつつあった。
 COP27 が、適応に関する世界全体の目標に向けた作業(適応の進展をより適切に 評価、測定し、目標達成に向けた進展を把握する方法を検討することを含む)を通じて、適切に適応に対処すべきであるとの点で、幅広い見解の一致が得られた。さらに、多くの参加者からは、国の適応計画をいかにして資金調達可能な事業計画へと転じ、成功裡に実施させることができるかについて経験が共有された。
 議論の中心はロス&ダメージであった。参加者の中には、サンティアゴ・ネットワークの運営に関する交渉も含め、これまでのところ進展がないことに失望を表明する者もいた。多くの参加者が、ロス&ダメージに対する行動と資金を拡大する必要性を強調した。COP27 の優先的な成果に関する見解は様々であったが、次のような成果への期待が含まれる:ネットワークの運用を開始すること、グラスゴー対話のフォローアップと成果を定義すること、UNFCCC 議題にロス&ダメージを議論する場を常設すること。締約国は、ロス&ダメージの資金アレンジメントについて議論する場の必要性について議論し、いくつかの参加者は、既存の体系並びにそれを効果的に利用し強化する方法及び、全体の資金支援体系に追加の調整が必要かどうかを評価することを提案した。解決策の一環として、ドイツは、気候リスクに対するグローバル・シールドを提示した。他の締約国は、ロス&ダメージに特化した個別のチャンネルが直接的かつ直ちに必要であることを強調した。また、CREWS(気候リス ク及び早期警戒システム)、気候リスクに対するグローバル・シールド、 InsuResilience グローバル・パートナーシップ及び、世界気象機関(WMO)の今後5年間の世界共通の早期警戒システム導入に向けた取組といったイニシアティブなど、正式な交渉の外での強力かつ協調的な行動は、正しい方向への重要かつ補完的で相互に補強するステップと受け止められており、こうした行動の必要性について意見 の一致がみられた。


2.  将来の影響を抑えるために、緩和策の加速された実施と野心がまず重要であることへの理解

 世界が複数の危機に直面する中、多くの参加者が気候目標へ焦点を当てることをやめてはならないと強調した。また、現在の地政学的な状況において、再生可能エネルギーと効率化の促進は、エネルギー安全保障、健康、気候変動への恩恵をもたらすものであることを、多くの参加者が指摘した。新たな状況により化石燃料の使用量の短期的な増加が、2030 年の気候変動緩和目標の達成を危険にさらしてはならない、ということが強調された。
 多くの国が実施のギャップを強調した。ディープ・ダイブ・セッションでは、各国がどのように公正な方法で実施を加速しているかについて、情報交換の意欲が高まっていることが示された。公正な移行を加速させる為の議論に欠かせないものとして、資金、能力構築、技術へのアクセスだけでなく、政策や規制手法に関する協力及び意見交換が取り上げられた。これを踏まえ、締約国は、COP27 において、各国の実施加速を支援する緩和作業計画の強力な決定が行われるよう求めるとともに、可能な場合は野心を拡大し、協力を強化し、実施加速の障害を克服するための技術レベルの議論、さらには6条の全面実施について意見交換する場を提供するよう求めた。多くの参加者が、強力な緩和行動がなければ、将来の気候の影響に対処するために必要な規模の適応やロス&ダメージへの対応は達成できない可能性があることを強調した。
 緩和のコミットメントと約束の効果的で迅速な実施を今すぐ始める必要がある一方、数か国は、グラスゴー(合意)にて、更新され更に野心的な NDCs、または NDCsと長期戦略における強化された目標によって、COP27 に十分先立ち、野心を引き上げるよう呼びかけられていることを強調した。多くの参加者が、現在の約束が、たとえ完全に実施されたとしても、世界は依然として、摂氏 1.5℃の上昇までに制限する道筋をはるかに超えていると指摘した。多くの参加者が、工業国が道を切り開くことへの期待や、世界最大級の経済大国の重要な役割を強調した。
 より包摂的で実行性の高いメカニズムの潜在的なモデルとして、公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)、エネルギー移行対話、プラットフォーム、パートナーシップが言及された。多くの国が、これらは資金を動員するための包括的なアプローチによって補完される必要があると指摘した。
 衡平、共通に有しているが差異のある責任と各国の能力に関する原則が、公正な移行への配慮の鍵であると強調された。アフリカの参加者は、再生可能エネルギー拡大におけるより多くの参加型プロセスを確保する、分散型エネルギーシステムの重要性を強調した。他のいくつかの途上国、特に小島嶼開発途上国は、取引コストや(最新の)技術の調達に対処する必要性を強調した。 


3. 気候資金の供給及び世界の資金の流れとその仕組みを、パリ協定の目標に整合させていくことの双方が、実施を加速するための重要な要因であると多くの者が強調 

 1000 億米ドル目標の達成は、途上国にとって依然として非常に重要であり、完全な達成に向けた進展は、信頼を築き、確保するための基盤となると考えられている。多くの国が、先進国全体での適応資金の供与を 2025 年までに 2019 年の水準から倍増させるという、COP26 のコミットメントに具体的な進展が見られることへの期待を表明した。多数の代表が、現在、カナダとドイツが共同で用意している 1000 億米ドルの気候資金支援に関する実施計画(Delivery Plan)の進捗報告を期待した。
 多くの参加者から、十億単位から兆単位へのシフトを生み出す上で、パリ協定第2条1項(c)の重要性が高まっていることが表明されるとともに、UNFCCC の中に専用の議論の場を創設すべきとの提案を行う参加者も見られるなど、資金の流れをパリ協定に整合させる取組について意見交換を促し、進捗を把握することの必要性が強調された。この中で、特に MDBs と機関投資家の役割に焦点が当てられた。
 ポスト 2025 資金目標に向けた議論において、いくつかの締約国は、こうした議論は、緊急性の意識と必要な規模の双方を反映するべきと述べた。同目標への期待には、公的資金及び民間資金の大幅な規模拡大を反映させること、途上国のニーズに応えること、そして資金の質を強化すること等が含まれる―多くの締約国が、資金アクセスに関する継続的な問題及び特に適応のための無償資金の増額のより一層の必要性を掲げた。
 公正な移行は、特に途上国において誰も取り残さないという社会的、経済的な国情があることを認識しつつ、合意された移行を実行するための管理されたプロセスの必要性を強調する、いくつかの国から指摘がなされた。

3. その他

 我が国からは、小野環境省地球環境審議官から、COP26 における緩和、適応及び資金に係るバランスの取れた成果を踏まえ、COP27 に向けて、緩和作業計画の決定、質の高い炭素市場の構築と運用、適応に関する世界全体の目標に関する作業計画の進展、ロス&ダメージの技術支援に関するネットワークの早期完全運用化等の議論に貢献していく旨発言がなされた。

以上

連絡先

環境省 地球環境局 国際連携課 気候変動国際交渉室
代表
03-3581-3351
直通
03-5521-8330
室長
青竹 寛子 (内線 5812)
室長補佐
伊藤 貴輝 (内線 5751)
担当
池田 宏之 (内線 5124)