報道発表資料

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2022年07月22日
  • 地球環境

環境省ナッジ事業の結果について

1. 環境省では、ナッジ(英語 nudge:そっと後押しする)やブースト(英語 boost:ぐっと後押しする)を始めとする行動科学の知見を活用してライフスタイルの自発的な変革を創出する新たな政策手法を検証するとともに、産学政官民連携・関係府省等連携のオールジャパンの体制による日本版ナッジ・ユニット BEST(Behavioral Sciences Team)の事務局を務めています。

2. この度、平成 29 年度から令和3年度まで実施した「低炭素型の行動変容を促す情報発信(ナッジ)による家庭等の自発的対策推進事業」で採択された事業者のうち、「新学習指導要領に対応した小学校・中学校・高等学校向け省エネ教育プログラム」(代表事業者:日本オラクル株式会社)及び「省エネ行動促進のための行政窓口を通じたナッジ型情報提供」(代表事業者:株式会社メトリクスワークコンサルタンツ)に関する実証実験の結果についてお知らせします。

1.新学習指導要領に対応した小学校・中学校・高等学校向け省エネ教育プログラム

■ 実証実験の実施事業者
 ・ 日本オラクル株式会社(代表事業者)
 ・ 株式会社住環境計画研究所
 ・ 東京ガス株式会社

■ 実証実験の実施期間
 平成 29 年度から令和2年度

■ 実証実験の参加者
 全国の小学校、中学校、高等学校、大学の児童・生徒:84 校 9,899 名
 ・ 小学校:3,441 名
 ・ 中学校:2,526 名
 ・ 高等学校:2,944 名
 ・ 大学(短大含む):988 名

■ 実証実験の内容
 新学習指導要領に対応し、小・中・高等学校の教育現場に容易に導入可能な省エネ教育プログラムを開発した後に、全国の学校で実施しました(毎週約1時間の授業を連続して全6回実施。又はその短縮版。)。そして、家庭での電気・ガス・水道使用量やCO2 削減効果、環境配慮行動の実践度合い等を定量的・定性的に検証しました。一部の学校においては、複数年にわたって教育効果の持続性についても検証しました。
 本プログラムの特徴として、アクティブ・ラーニングの手法に加え、気付きから自発的な行動を促すナッジ(行動の結果の見える化やフィードバック、コミットメント等を含む。)や行動変容ステージモデル等の最新の行動科学の知見が活用されていることが挙げられます。また、学校での省エネ教育が家庭の CO2 排出量に与える影響を定量的に実証した国内初の取組になります(実施事業者調べ)。

■ 結果
 省エネ教育後に平均 5.1%の CO2 削減効果(電気・ガスの合計)が統計的有意に得られました。また、省エネ教育後における環境配慮行動の実践度合いの検証により、省エネ教育後に環境配慮行動を実践できていた人の 95.1%において、省エネ教育後1年後においても環境配慮行動が持続していることが確認されました。

■ その他
 具体的なナッジや教育プログラムの内容、CO2 削減効果の図や実証実験参加校等、より詳細な資料として以下のリンク先の実施事業者による報告資料(実施事業者のウェブサイト並びに第1回及び第3回日本版ナッジ・ユニット連絡会議資料)を御参照ください。また、開発したテキストは、本事業終了後に本事業に参画した教科書会社が教材として出版し、全国の学校の授業等で採用されています。

https://www.tokyo-gas.co.jp/news/press/20210422-01.html 
https://www.env.go.jp/content/900447806.pdf
https://www.env.go.jp/content/900447835.pdf 

2.省エネ行動促進のための行政窓口を通じたナッジ型情報提供

■ 実証実験の実施事業者
 ・ 株式会社メトリクスワークコンサルタンツ(代表事業者)
 ・ 大阪大学

■ 実証実験の実施期間
 平成 31 年度から令和2年度

■ 実証実験のフィールド
 ・ 岩手県矢巾町、東京都町田市、兵庫県尼崎市
   行政窓口における転入・転居・出生・婚姻の手続き時
 ・ 大阪府住宅供給公社、大阪市住宅供給公社
   契約時・退去時の手続き時

■ 実証実験の内容
 行政窓口等における手続き時において、LED 照明や省エネ型冷蔵庫に関するリーフレット1枚を住民に配布した後の1か月間の LED 照明や省エネ型冷蔵庫の購買行動、そして省エネ行動についてアンケート調査を実施し、ランダム化比較実験の手法により効果検証を実施しました。リーフレットは4種類用意し、それぞれ金銭的利得、損失回避、社会規範、非金銭的利得(環境配慮訴求)のいずれか1つを強調しました。実証実験に協力いただいた方々は、これら4種類のリーフレットのいずれか1種類を配布するグループ(合計4グループ)又はリーフレットを配布しないグループ(1グループ。比較対象)に分かれて参加いただきました。
 本実証実験は、行政窓口を始めとした住民との既存の接触の機会の活用により、ナッジを組み込んだリーフレット配布による省エネ行動促進効果を検証したものです。転入・転居・出生・婚姻の届出といったライフスタイルが変化するタイミングに焦点を当ててタイミング良く情報発信を行うことにより、効果的な行動変容が引き起こされることを狙いとしたものです(フレッシュスタート効果)。
 本実証実験はまた、環境省事業により大阪府、吹田市、大阪府地球温暖化防止活動推進センターが実施した以下のリンク先の実証実験を踏まえ、伝える内容を4つから2つに厳選して実施しました。

https://www.pref.osaka.lg.jp/eneseisaku/nudge/nudge.html

■ 結果
 LED 照明の購入については、どのリーフレットも有意な効果が見られませんでした。一方で、省エネ型の冷蔵庫の購入については、社会規範及び非金銭的利得のメッセージが統計的有意に効果的であり(リーフレットを配布しないグループと比較して4パーセントポイント向上。)、地方公共団体や行政手続きの種類毎に解析した結果によれば、町田市や転入・転居時において効果的でした。
 省エネ行動については、金銭的利得のメッセージが統計的有意に効果的であり(リーフレットを配布しないグループと比較して 11 パーセントポイント向上。)、転入・転居の1週間以内にリーフレットを受け取った住民においては、金銭的利得に加え、損失回避や非金銭的利得のメッセージも効果的でした。このことは、新生活の早いタイミングでの情報発信がより重要であることを示唆するものです。

■ その他
 地方公共団体がその住民に対して情報発信をする際のボトルネックの1つとして、両者が接する機会を設けることの難しさがあります。行政窓口等を通じたリーフレット配布は、こうした機会を新たに作ることを必要とせず、既に存在する機会を活用することができます。また、追加的な人的・金銭的コストに関しても、得られる効果と比較して低く抑えることができ、費用対効果の面でも優れた取組となり得ます。実際に、本実証実験で開発されたリーフレットをそのまま活用すれば、導入費用はリーフレットの印刷費のみであり、CO2 削減の観点での費用対効果は普及期において 237 円/t-CO2 と高くなることが見込まれます。このように、地方公共団体にとって取り組みやすく、また、横展開・波及効果が期待される取組です。
 本実証実験で開発したリーフレットは、実施事業者の了承の下、一切の改変をしない場合に限り(※知的財産権及び、特にナッジについては、わずかであっても表現等が変更になると、元と同様の効果が得られなくなるおそれがあるため。)、環境省への事前の連絡によって無償で使用することができます。使用を希望される地方公共団体等におかれましては、本報道発表の問合せ先までお問い合わせください。
 より詳細な資料として以下のリンク先の実施事業者による報告資料(第 27回日本版 ナッジ・ユニット連絡会議資料)を御参照ください。

https://www.env.go.jp/content/000051329.pdf

○ ナッジ事業の結果の社会実装について

 環境省では、「低炭素型の行動変容を促す情報発信(ナッジ)による家庭等の自発的対策推進事業」により一定の効果が実証されたナッジ手法等について、その社会実装を推進する民間企業・地方公共団体等を支援する補助事業「ナッジ手法の社会実装促進事業」を実施しています。本報道発表により紹介したナッジ手法を活用した取組も同補助事業の対象となります。詳しくは、以下の報道発表資料を御覧ください。

 ・ 令和4年7月7日付報道発表「令和4年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金
  (ナッジ手法の社会実装促進事業)の公募開始について」

   https://www.env.go.jp/press/press_00164.html

連絡先

環境省地球環境局地球温暖化対策課 脱炭素ライフスタイル推進室
代表
03-3581-3351
直通
03-5521-8341
室長
井上 雄祐 (内線 5797)
室長補佐
池本 忠弘 (内線 5580)
室長補佐
酒井 良文 (内線 5807)
担当
西尾 優花 (内線 5805)