報道発表資料

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2022年07月12日
  • 自然環境

IPBES総会第9回会合の結果について

1.2022年7月3日(日)から9日(土)まで、ドイツ・ボンにおいて、IPBES総会第9回会合が開催されました。

2.本会合の主な成果として、「野生種の持続可能な利用に関するテーマ別評価」報告書及び「自然及びその便益に関する多様な価値の概念化に関する方法論的評価」報告書の政策決定者向け要約(SPM)が承認されました。

3.環境省主催の結果報告会を2022年7月25日(月)にオンラインで開催します。

1.会議の概要

(1)名称
    日本語 生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)総会第9回会合
    英語  The ninth session of the Intergovernmental Science-Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services (IPBES) Plenary
(2)期間 2022年7月3日(日)~7月9日(土)
(3)場所 ドイツ・ボン
(4)参加者 IPBES参加各国の政府、国連環境計画などの関連国際機関など
(5)公式ウェブサイト https://ipbes.net/events/ipbes-9-plenary

2.成果の概要

(1)「野生種の持続可能な利用に関するテーマ別評価」
 野生種の利用の持続可能性を評価した報告書が受理され、政策決定者向け要約(SPM)が承認・公表されました。SPMには12のキーメッセージ等が記述されており、その概要は以下のとおりです。 
  •  世界のあらゆる地域の何十億もの人々が、食料、医薬品、エネルギー、収入、その他多くの目的で、約5万種の野生種を利用し、その便益を受けている。
  •  野生種の利用の持続可能性は、環境的要因・経済的要因・文化的要因・政治的要因など様々な要因の影響を受ける。
  •  野生種利用の社会的・生態学的状況に合わせて、公正性、権利、衡平性を確保する政策手段を採用することが持続可能な利用にとって最も効果的である。
  •  将来、気候変動、需要の増加、技術の進歩により、野生種の持続可能な利用が困難になる可能性が高い。これらの課題に対処するには、社会変革が必要である。 
  •  常に変化し続ける世界の持続可能性を維持するためには、野生種利用に当たってステークホルダー間で常に話し合い、順応的管理を行う必要がある。また、異なる価値観を踏まえた上で持続可能な利用に関する共通のビジョンを目指すこと、人間と自然の関係性の変革も必要。  
(2)「自然及びその便益に関する多様な価値の概念化に関する方法論的評価」
 自然及びその便益に関する様々な価値や価値観、価値評価手法、それらの政策への反映方法等について評価した報告書が受理され、政策決定者向け要約(SPM)が承認・公表されました。SPMには10のキーメッセージ等が記述されており、その概要は以下のとおりです。
  •  人々の自然に関する価値観は多様であるにもかかわらず、多くの政策立案では狭い価値(例えば、市場取引で評価される自然の価値)を優先し、自然と社会、また将来世代を犠牲にするとともに、先住民及び地域社会の世界観に関連する価値をしばしば無視してきた。
  •  自然の多様な価値を評価するには、多様な分野や知識体系から生まれた「自然を基盤とした価値評価」を始めとする50以上の自然の価値評価に関する手法が利用可能である。
  •  政策決定において自然の価値評価を考慮するよう求める声が高まっているものの、公表された自然の価値評価研究のうち政策決定への活用が報告されているのは5%未満である。
  •  地球規模の生物多様性の危機に対処するには、社会変革が必要であるが、それには現在支配的な短期的かつ個人の物質的利益を過度に重視する価値観から転換し、社会全体で持続可能性に整合する価値観を醸成できるかどうかにかかっている。
  •  生物多様性保全に関する意思決定に地元の農業者と自然保護活動家の対立する価値観をうまく統合できた事例として、日本の蕪栗沼(かぶくりぬま)ラムサール条約湿地が紹介された。  
(3)「生物多様性及び自然の寄与に係るビジネスの影響と依存度に関する方法論的評価」スコーピング文書
 2023年から2年間かけて実施される本アセスメントの内容や方法論についてまとめられたスコーピング文書が承認されました。この文書では、本アセスメントについて、ビジネスが生物多様性にどの程度依存しているのか、またビジネスによる生物多様性への影響を分類した上で、こうした依存度と影響を測定する枠組や尺度、指標等を評価し、さらにビジネス及び関係する政府、金融セクター、市民社会などによる行動オプションを評価することになりました。
 
(4)学際的専門家パネル(Multidisciplinary Expert Panel)メンバーの選出
 IPBESの活動を科学的・技術的側面から支える学際的専門家パネルのメンバーについて、国連の5地域区分からそれぞれ5名ずつ、計25名が選出されました。アジア・太平洋地域のメンバーとして、我が国が推薦した橋本禅(はしもと しずか)氏(東京大学大学院准教授)が再選されました。
 
 (5)2022-2024年予算
 2022年予算は8,873,599米ドル、2023年予算は10,322,910米ドル及び2024年の見込予算は10,148,828米ドルとそれぞれ決定されました。
 
(6)次回の総会
 第10回総会は、2023年4月若しくは5月に米国・ウィスコンシン州マディソンにて開催されることが決定されました。

3.IPBES事務局主催記者発表

「野生種の持続可能な利用に関するテーマ別評価」報告書及び「自然及びその便益に関する多様な価値の概念化に関する方法論的評価」報告書に関する記者発表が行われ、動画配信されました。それぞれ、以下から御覧いただけます。
 (1)「野生種の持続可能な利用に関するテーマ別評価」報告書
     https://www.youtube.com/watch?v=K76pQXEYIak
 
 (2)「自然及びその便益に関する多様な価値の概念化に関する方法論的評価」報告書
     https://m.youtube.com/watch?v=DMDYYH2b_F

​4.環境省主催結果報告会


(1) 概要
  【日時】2022年7月25日(月)13:30~15:00
  【形態】オンライン(Zoom webinarによるオンライン配信)
  【主催】環境省
  【議事次第(予定)】
   1)IPBES総会第9回会合結果概要
      環境省自然環境局 生物多様性戦略推進室長 中澤 圭一
   2)野生種の持続可能な利用に関するテーマ別評価政策決定者向け要約(SPM)概要
      森林総合研究所 主任研究員 古川 拓哉
   3)自然及びその便益に関する多様な価値の概念化に関する方法論評価政策決定者向け要約(SPM)概要
      国立環境研究所 研究員 吉田 有紀
   4)IPBES総会第9回会合に関する学際的専門家パネルとしての所見
      東京大学大学院 農学生命科学研究科 准教授 橋本 禅
   5)IPBES総会第9回会合総評
      京都大学 名誉教授 白山 義久
   6)侵略的外来種評価の進捗報告
      IPBES侵略的外来種評価技術支援機関 ヘッド 尼子 直輝
 
(2)参加申込要領
 2022年6月24日付け報道発表で御案内したとおり、同年7月20日(水)までに、以下のURLからお申し込みください(定員800名に達し次第締め切らせていただきます)。報道関係者の方は、所属先の分類で「メディア」と選択し、「取材を希望する」にチェックを入れてお申し込みください。
 https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_2PJUGuxDSICzbsRi5XbbkA

<参考>

● 生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム
 (Intergovernmental science-policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services:IPBES(イプベス)
◆ 生物多様性と生態系サービスに関する動向を科学的に評価し、科学と政策のつながりを強化する政府間のプラットフォームとして2012年に設立された政府間組織
◆ 2022年7月3日現在、139カ国が参加
◆ 科学的評価、能力開発、知見生成、政策立案支援の4つの機能が活動の柱
◆ これまでに以下の評価報告書とワークショップ報告書を作成
  ・ 生物多様性及び生態系サービスのシナリオとモデルの方法論に関する評価報告書
  ・ 花粉媒介者、花粉媒介及び食料生産に関するテーマ別評価報告書
  ・ 生物多様性及び生態系サービスに関する地域・準地域別評価報告書
  ・ 土地劣化と再生に関するテーマ別評価報告書
  ・ 生物多様性と生態系サービスに関する地球規模評価報告書
  ・ 生物多様性とパンデミックに関するワークショップ報告書
  ・ 生物多様性と気候変動に関するIPBES-IPCC合同ワークショップ報告書

◆ 参考情報
  IPBES webサイト
  https://www.ipbes.net/
  環境省webサイト
  https://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/ipbes/index.html

連絡先

環境省自然環境局 自然環境計画課
代表
03-3581-3351
直通
03-5521-8274
課長
堀上  勝 (内線 6430)
課長補佐
守分 紀子 (内線 6437)
環境省自然環境局 生物多様性戦略推進室
代表
03-3581-3351
直通
03-5521-8275
室長
中澤 圭一 (内線 6480)
室長補佐
浜  一朗 (内線 6484)
専門官
竹原 真理 (内線 7454)