報道発表資料

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1997年09月10日

平成9年度環境基本計画推進調査費による調査研究の予算配分について

今般、平成9年度環境基本計画推進調査費による調査研究テーマを決定した。
(調査費合計:210百万円)
 当調査費は、環境基本計画に位置付けられた課題に関する調査研究を対象とするもので、「政策分」(政策の立案に関し複数省庁が連携して実施する調査研究)と「緊急分」(環境保全に重大な影響を及ぼす等に対処して、緊急に行う調査研究)に分類される。
「政策分」は、次の6テーマについて調査研究を実施することとした(調査費小計:171百万円)。(1)~(4)は平成7年度から、(5)は平成8年度からの継続調査、(6)は平成9年度からの新規調査である。
 (1)環境基本計画の長期的目標に係る総合的指標の開発に関する調査
 (2)地球温暖化防止のためのエネルギー対策と住宅・社会資本整備の効果的連携のあり方に関する調査研究
 (3)生息・生育環境の確保による生物多様性の保全及び活用方策検討調査
 (4)持続可能な農山村地域の実現方策検討調査
 (5)ライフサイクルアセスメント(LCA)の適用方策に関する調査
 (6)環境教育の総合的推進に関する調査
 また、「緊急分」についても、5テーマについて調査研究を実施することとした(調査費小計:39百万円)。   
1. 環境基本計画推進調査費の概要について
 環境基本計画推進調査費は、環境基本計画に位置付けられた、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会を構築するための課題に関し、調査研究を実施するための経費である。
 これは、平成6年12月に閣議決定された環境基本計画を受け、平成7年度より、新たに予算計上されたものであり、環境庁以外の各省庁が実施する調査に要する予算につ いては、環境庁から各省庁へ移替えるものである。
調査の内容は、「政策分」と「緊急分」に分類され、その概要は次のとおりである。
「政策分」
環境基本計画に位置付けられた政策の立案に関し、複数省庁が連携して実施するもの
原則として複数年度にわたり実施
「緊急分」
環境保全に重大な影響を及ぼし、又はそのおそれのある事態の発生に対処して、緊急に実施するもの
原則として単年度実施


2. 平成9年度環境基本計画推進調査費(政策分)による調査研究について以下の6テーマについて、複数省庁が連携して調査研究を実施することとした。
調査費の合計は、170,936千円である。
(1) 環境基本計画の長期的目標に係る総合的指標の開発に関する調査(39,675千円)
<予算配分省庁> 環 境 庁 企画調整局(担当:中島 内線6222)、水質保全局
建 設 省 大臣官房、建設経済局、国土地理院
農林水産省 農業工学研究所
 環境基本計画において、「循環」「共生」「参加」「国際的取組」の長期的目標の達成状況などを具体的に示す総合的な指標あるいは指標群を早急に開発することが求められている。
 このため、諸外国や国際機関における「持続可能な開発の指標」の開発作業と連携を図りつつ、指標開発が遅れていた建設分野、土壌・地盤環境分野等の指標を含め、前年度に整理した総合指標の試用と評価を行い、その改良を図るため定量的データの更なる洗い出しと加工を行う。
(2) 地球温暖化防止のためのエネルギー対策と住宅・社会資本整備の効果的連携のあり方に関する調査研究(33,190千円)
<予算配分省庁> 環 境 庁 地球環境部(担当:上野 内線6758)
建 設 省 都市局、住宅局
通商産業省 資源エネルギー庁石炭・新エネルギー部
 地球温暖化問題については、国連気候変動枠組条約に基づく国際的取組が本格化している一方、国内的には、地球温暖化防止行動計画に掲げる、2000年の二酸化炭素排出量目標の達成が危ぶまれる水準にあり、今後とも一層の努力が必要な状況である。
特に、家庭、オフィス等民生部門における排出量は年々増加傾向にある。 
 このため、都市における基盤的施策である住宅・社会資本の整備と、エネルギー対策との効果的な連携のあり方を検討し、その成果を得て、具体的連携方策について、モデルプロジェクトを基に定性的に評価するとともに、試算可能なものについては、二酸化炭素削減量の導入効果の一例として定量的評価を行う。そのうえで、具体的な都市を選定し、プロジェクト等について両施策の連携を図った場合の効果や、実際の導入に向けた課題を明らかにし、連携的対策の自治体等への普及推進方策について検討する。
(3) 生息・生育環境の確保による生物多様性の保全及び活用方策検討調査(29,233千円)
<予算配分省庁> 環 境 庁 自然保護局(担当:中澤 内線6434)
農林水産省 大臣官房
林 野 庁 指導部
建 設 省 大臣官房
 生物多様性は、大気・水・土壌環境に複雑に関わっており、評価手法の確立を始めとして、その適切な保全及び活用のための課題が多い。
 このため、生物地理学的区分に応じた体系的な生息・生育環境の確保による生物多様性保全に資するよう、自然生態系、二次的自然や都市部における自然の評価、保全、活用のあり方等について検討を行う。平成7年10月31日、生物多様性条約に基づき、政府の生物多様性国家戦略が決定されたところであり、本調査の結果はその推進を図る上で必要不可欠なものである。
(4) 持続可能な農山村地域の実現方策検討調査(29,204千円)
<予算配分省庁> 環 境 庁 企画調整局(担当:高田 内線6222)
農林水産省 構造改善局
林 野 庁 指導部
国 土 庁 計画・調整局
 農山村地域は、日本の国土の根幹を成しており、農地や森林等の有する環境保全機能の適切な維持や、地域における各種資源の持続的な維持管理などが重要な課題として位置付けられている。
 このため、{1}農山村地域における各種資源の適切な継承、{2}都市地域との循環関係における環境負荷の低減、{3}環境保全に関する農山村地域と都市地域の適切な交流、などが実行される、持続可能な農山村地域の実現に向けた方策について検討するものである。
(5) ライフサイクルアセスメント(LCA)の適用方策に関する調査(19,583千円)
<予算配分省庁> 環 境 庁 企画調整局(担当:田中 内線6243)
厚 生 省 水道環境部
農林水産省 大臣官房
運 輸 省 海上技術安全局
 環境基本計画においては、事業者、国民等は環境への負荷の低減を自主的、積極的に進め、また、国は製品等の原料採取から廃棄に至る全段階での環境への負荷の評価(ライフサイクルアセスメント)の手法について調査研究を進めることとされている。
 しかし、工業製品や発電等の一部のサービス活動以外の分野では、LCAをどのようなテーマに、どのように適用していくべきかがほとんど明らかになっていない状況にある。
 このような状況に鑑み、政府及び民間において全体として調和のとれたLCAの普及、実施に資するため、各分野における環境負荷要因を把握し、LCAの適用方策を検討する。
(6) 環境教育の総合的推進に関する調査(20,051千円)
<予算配分省庁> 環 境 庁 企画調整局(担当:山本 内線6272)
文 部 省 初等中等教育局
 学校、地域社会、家庭等の多様な場面においてその地域の実態に応じて有機的な連携を図り、総合的な環境教育の推進に向けて新たな展開を検討するため、現状を把握し、平成8年7月の中央教育審議会第1次答申(「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」)をも踏まえ、その推進のために必要な施策等を明らかにする。
 平成9年度は、それぞれの場面において行われている環境教育・学習について、現行制度・施策のレビュー、文献調査、施策担当者や教員、児童生徒、こどもエコクラブ会員等への意識調査、先進事例の収集等を行うことによりその実態を把握し、分析 ・課題の抽出を行う。


3. 平成9年度環境基本計画推進調査費(緊急分)による調査研究について

以下の5テーマについて、調査を実施することとした。
調査費の合計は、39,049千円である。
(1) ツシマヤマネコ緊急疫学調査(4,490千円)
(環境庁自然保護局野生生物課 担当:植田、長田 内線6465)
 長崎県対馬島内にのみ生息するツシマヤマネコは、レッドデータブックでは絶滅危惧種に選定されている。そこで、環境庁は個体を捕獲して人工繁殖を試みる事業を開始したが、捕獲したツシマヤマネコの健康検査で、ノラネコ起源と思われるFIV(猫免疫不全ウイルス感染症)、FIP(猫伝染性腹膜炎)の2種のウイルス感染症について陽性の結果が出た。これらのウィルスは、他の個体にも感染し、また個体を死に至らしめる可能性が強い。このため、今後のツシマヤマネコの保護対策を検討していくうえで、これらのウイルスがどの程度対馬島内に浸透しているかを緊急に把握することを目的に調査を行うものである。
(2) カンムリウミスズメ繁殖状況等緊急調査(6,362千円)
(環境庁自然保護局鳥獣保護業務室 担当:水谷 内線6472)
 ナホトカ号油流出事故により、日本沿海の固有種であり、レッドデータブックで危急種に選定されているカンムリウミスズメ(推定個体数1,000~2,000羽)が被害個体として確認された。このため、繁殖地周辺海域での生息状況の確認、繁殖地の環境条件の調査、生息に影響を与える捕食者の排除等の生息環境改善措置の試験的実施等、カンムリウミスズメの個体数回復のための検討を行うものである。
(3) ナホトカ号油流出事故に伴う国立・国定公園における自然環境への影響に関する緊急調査(9,540千円)
(環境庁自然保護局計画課 担当:中澤 内線6434)
 ナホトカ号の事故により流出した重油の自然生態系への影響については、事故直後の状況を緊急把握するため国立・国定公園等を中心とした調査を実施した。その結果、自然環境への影響は限定的であると考えられるが、生物への影響については生活史全体を考慮した継続した調査が必要であることから、海浜・海域生物の生育状況、指標生物調査による自然生態系への影響等の追跡調査を実施するとともに、今後の長期モ  ニタリング手法及び対策について検討を行うものである。
(4) 油流出事故に対するバイオレメディエーション技術検討調査(9,789千円)
(環境庁企画調整局環境研究技術課 担当:田中 内線6243)
(環境庁国立環境研究所水土壌圏環境部長 渡辺 0298-50-2338)
(水産庁研究部研究課研究管理官 玉井 3502-8111内線7379)
 近年、微生物等を用いて油等の有害物質による環境汚染の浄化を行う技術(バイオレメディエーション)が注目を集めており、特にナホトカ号油流出事故の発生を契機に、バイオレメディエーションによる油汚染の浄化に対して期待が高まっている。
 しかし、油のバイオレメディエーションについては、環境影響の問題及び有効性の問題について未解明な点が多いため、ナホトカ号事故による油汚染海岸の油等を用いて当該事故の油漂着海岸を模擬した環境での現地試験等を行うことにより、本技術の適用に関して我が国海岸における環境影響、有効性等について基礎的な知見を得る。
(5) ナホトカ号油流出事故に伴う浅海域への環境影響に関する緊急調査(8,868千円)
(水産庁研究部研究課研究管理官 玉井 3502-8111内線7379)
 ナホトカ号油流出事故の浅海域の海洋生物等への影響を把握するため、多量の重油が漂着した福井・石川両県の浅海域で調査を行った結果、生物群集構造や生物体内油成分濃度等に憂慮すべき影響が見られることが判明した。このため、回復過程にあるとみられる同地域内での重油の影響度の変化を引き続き追跡調査するとともに、今後講ずべき対策について検討する。
連絡先
環境庁企画調整局企画調整課
課 長:小島 敏郎 (内線6310)
 担 当:加藤 英雄 (内線6212)

環境庁企画調整局環境計画課
課 長:細谷 芳郎 (内線6220)
 計画官:今田 長英 (内線6227)
 担 当:飛島、山本、荒川(6224)