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2008年02月14日
  • 保健対策

「平成18年度POPsモニタリング調査結果」について

 環境省は、平成14年度から、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(POPs条約)第16条に基づく同条約の有効性評価に資するため、環境中におけるPCB類、DDT類その他残留性有機汚染物質(POPs)のモニタリング(POPsモニタリング調査)を実施してきた。
 このたび取りまとめた平成18年度の調査結果の概要は次のとおり。

  1. 我が国及びその周辺のPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向を示している。
  2. しかしながら、幾つかの地点では、一過性のものと考えられるものの、相対的に高濃度を示す事例も観察されている。
  3. 平成18年度調査においても、国内での農薬登録実績のないマイレックスが水質、底質、生物及び大気中から検出され、トキサフェン類も生物中から検出されたことから、東アジア地域等のレベルでの長距離移動も勘案した継続的な監視が引き続き行われることが求められる。

背景

 残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants。以下「POPs」という。)による地球規模の汚染を防止するために、平成13年5月22日に、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(以下「POPs条約」という。)が採択され、我が国は平成14年8月30日に同条約を締結した。POPs条約は平成16年5月17日に発効し、平成19年4月30日現在で138カ国が締結している。
 POPs条約では、POPsについて、ヒト及び環境中における存在状況等を明らかにするために国内及び国際的な環境モニタリングを実施すること(第11条)及びモニタリングデータを活用した条約の有効性の評価を行うこと(第16条)が規定されている。
 そこで環境省では、POPsの環境中の存在状況の監視及び条約の有効性評価に資する基礎データを得るため、平成14年度よりPOPsモニタリング調査を実施している。

1.平成18年度の調査概要

(1)対象物質
 POPs条約は、ポリ塩化ビフェニル(PCB)類、DDT類、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)及びポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)等の12物質群を対象としている。
 本調査は、これらPOPs条約対象物質のうち、ダイオキシン類対策特別措置法に基づき常時監視が行われているダイオキシン類を除いた、アルドリン、ディルドリン、エンドリン、クロルデン類、ヘプタクロル類、ヘキサクロロベンゼン(HCB)、マイレックス、トキサフェン類、PCB類(コプラナーポリ塩化ビフェニルを含む。)及びDDT類の10物質群にヘキサクロロシクロヘキサン(HCH)類を加えた11物質群を対象としている。
(2)対象媒体
 一般環境中(排出源と予想される地点以外の都市、郊外、島嶼、山地、河川等)の【1】水質(全国主要河川、主要湖水、港湾等を中心に48地点)、【2】底質(全国主要河川、主要湖水、港湾等を中心に64地点)、【3】大気(おおむね100km四方に区分して全国をほぼカバーする37地点)及び【4】生物(シロサケ、アイナメ、ウサギアイナメ、サンマ、スズキ、ミナミクロダイ、ウグイ、ムラサキイガイ、イガイ、ムクドリ又はウミネコのいずれかを対象として合計25地点(そのほか別途入手したカワウ、ハシブトガラス、スナメリ、ニホンザル、タヌキ、クマタカ及びオオタカに係る試料も対象とした。))を対象として実施した。
(3)分析手法
 各媒体の試料から、対象物質を抽出、精製後、高分解能ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/HRMS)により分析を実施した(トキサフェン類については、負イオン化学イオン化法によるガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS-NCI)により別途分析した。)。なお、同族体、異性体等が存在する物質群については可能な限り同族体、異性体等ごとに分析を実施した。
(4)その他
 調査の実施に当たり、専門家から構成されるPOPsモニタリング検討実務者会議(事務局:(独)国立環境研究所)において調査手法、結果等の評価等がなされた。

2.平成18年度の調査結果及び評価の概要

(1)高分解能ガスクロマトグラフ質量分析装置を主体とする分析手法の適用により、平成14~17年度と同様、8割を超える地点及び試料においてPOPsが定量検出された。媒体ごとの各対象物質の検出状況に係る評価の概要は以下のとおり。POPs条約に係る取組の一環として、我が国における現在の環境濃度レベルを把握することができ、POPs条約の有効性評価に資する基礎データが引き続き得られたものと考えられる。

(2)水質及び底質
 平成14~18年度のデータの推移をみると、水質及び底質中のPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向にあると考えられる。水質及び底質中の濃度の地域分布を見ると、例年どおり、港湾、大都市圏沿岸の準閉鎖系海域等人間活動の影響を受けやすい地域で相対的に高い傾向を示すものが比較的多く見られた。
 同族体、異性体等類似の物質(以下「同族体等」という。)から構成される物質群については、昨年度に引き続き以下のような傾向がみられた。
ア.
アルドリン、ディルドリン及びエンドリンについては、ディルドリンの構成割合が大きい地点がほとんどであるものの、一部においてエンドリンの構成割合が大きい地点がみられた。
イ.
クロルデン類については、cis-クロルデン及びtrans-クロルデンの構成割合が比較的大きかった。
ウ.
ヘプタクロル類については、水質ではcis-ヘプタクロルエポキシド、底質ではヘプタクロル及びcis-ヘプタクロルエポキシドの構成割合が比較的大きかった。
エ.
トキサフェン類は検出されなかった。
オ.
PCB類については、地点により同族体等の構成割合に違いがみられた。
カ.
DDT類については、p,p’-体(特にp,p’-DDE)の構成割合が比較的大きいが、一部においてo,p’-体の構成割合が比較的大きかった。
キ.
HCH類については、β-HCHの構成割合が比較的大きかった。

 国内で農薬登録実績のないマイレックスは、昨年度同様一部の底質において検出された。

(3)生物
 平成14~18年度のデータの推移をみると、生物中のPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向にあると考えられる。昨年度に引き続き、PCB類、DDT類等が人口密集地帯近傍の沿岸域の魚で高めの傾向を示した。
 また、野生生物ではほぼすべての対象物質についてスナメリが最も高い濃度を示した。
 同族体等から構成される物質群については、昨年度に引き続き以下のような傾向がみられた。
ア.
アルドリン、ディルドリン及びエンドリンについては、水質及び底質における傾向と同様、ディルドリンの構成割合が比較的大きかった。
イ.
クロルデン類については、水質及び底質における傾向とは異なり、クロルデン、オキシクロルデン及びノナクロルの割合に大きな差はみられなかった。
ウ.
ヘプタクロル類については、水質及び底質における傾向と同様、cis-ヘプタクロルエポキシドの構成割合が大きかった。
エ.
トキサフェン類は、水質及び底質における傾向とは異なり、一部の生物において検出された。
オ.
PCB類については、水質及び底質における傾向と同様、地点により同族体等の構成割合に違いがみられた。
カ.
DDT類については、水質及び底質における傾向と同様、p,p’-体(特にp,p’-DDE)の構成割合が大きかった。
キ.
HCH類については、水質及び底質における傾向と同様、β-HCHの構成割合が比較的大きかった。

 国内で農薬登録実績のないマイレックスは、昨年度同様一部の生物において検出された。

(4)大気
 平成14~18年度のデータの推移をみると、大気中のPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向にあると考えられる。大気中のPOPs濃度については、温暖期(9~10月)及び寒冷期(10~12月)の2回測定が行われ、いずれの対象物質についても、例年どおり、気温の高い温暖期の方が寒冷期よりも全国的に濃度が高くなる傾向が認められた。
 同族体等から構成される物質群については、昨年度に引き続き以下のような傾向がみられた。
ア.
アルドリン、ディルドリン及びエンドリンについては、ディルドリンの構成割合が比較的大きかった。
イ.
クロルデン類については、ほぼtrans-クロルデン、cis-クロルデン及びtrans-ノナクロルにより構成される傾向がみられた。
ウ.
ヘプタクロル類については、ヘプタクロルの構成割合が比較的大きかった。
エ.
トキサフェン類は、水質及び底質における傾向と同様、検出されなかった。
オ.
PCB類については、地点により同族体等の構成割合に違いがみられた。
カ.
DDT類については、p,p’-体とo,p’-体との構成割合に大きな差はみられなかった。
キ.
HCH類については、水質、底質及び生物における傾向とは異なり、α-HCHの構成割合が比較的大きかった。

 国内で農薬登録実績のないマイレックスは、昨年度同様一部の大気において検出された。

(5) 以上の結果を、これまでに得られたデータと比較すると、我が国及びその周辺のPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向を示している。  平成18年度調査においても、国内での農薬登録実績のないマイレックスが水質、底質、生物及び大気から、トキサフェン類が生物中から検出されたこと等から、東アジア地域等のレベルでの長距離移動も勘案した継続的な監視が引き続き行われることが求められる。

3.その他

 本調査結果は、化学物質環境実態調査結果と併せて平成18年度のモニタリング調査結果として取りまとめ、中央環境審議会化学物質評価専門委員会(平成20年度2月22日(金)に開催予定)において報告等がなされる予定である。

以上

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課
電話: 03-3581-3351(代表)
課長 木村 博承(内線6350)
保健専門官 角井 一郎(内線6361)
担当 山下 修(内線6355)

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平成19年1月12日
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