報道発表資料

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1997年08月06日

AGBM7第3日目(8月4日)の状況

8月4日(月)に開催されたAGBM会合は、午前中に全体会合を開催し、第1週の作業の進捗の報告を受けた後、新たに政策・措置に関するノングループを設けた。
現在交渉は、数量目標、政策・措置、組織・機構等に関するノングループや、その下に設けられた小グループにおいて、京都会議に向けて精力的に続けられている。
 また、エジプト及びケニアを訪れる途中、ドイツ・ボンを訪れていた石井環境庁長官は、AGBM全体会合に出席するとともに、関係者と会談を行った。
1. 全体会合

 午前中、全体会合が開かれ、第1週目の成果と今後のスケジュールについて簡単な報告が行われた後、ICLEI(国際環境自治体協議会)、産業NGO、環境NGOからステートメントが行われた。その後、田辺大使から8月2日付けのNGOのニューズレター(ECO)の記事(注)に示されるような京都会議の成功を危うくするような提案は行っていない旨発言を行った。また、OECDの附属書[1]国専門家会合議長からは、共通的な実施の可能性のある政策措置に関する調査(コモンアクションスタディ)の進展に関する報告が行われた。


2. 数量目標(QELROs)に関するノングループ

 全体会合の終了後、数量目標に関するノングループ会合が開催され、今週の議論の進め方等について、議論が行われた。途中、多くの小グループを設けることに対して途上国から異論が出たが、今回は特例として3つのグループをQELROSのノングループの下に設けることが了承された。
[1] 柔軟性(flexibility:排出権取引、共同実施等)に関する小グループを設け、4日午後4時半より第1回会合を開催する。柔軟性については他に小グループは設けず必要な事項は全てこのグループで取扱う。
[2] 先進国措置の途上国への影響(補償メカニズムを含む。)につき小グループを設ける。このグループは5日に会合を開く。
[3] 測定、報告、情報の送付に関する小グループを設ける。
[4] 附属書の取扱いについては、目標数値が示されない時に詳細な議論を行うことは好ましくないとの意向が議長より示された。
[5] 対象ガスの範囲に関し、GWPを用いる場合には「法的に唯一の値」を用いるべきではないかとの指摘が議長よりなされ、NZ、英、米が一度GWPを決めた場合には当分の間変えるべきではないと主張した。米は100年GWPを用いるべきと主張。
[6] 明日のQELROsのノングループの会合では、附属書[1]国間の数量目標の配分(アロケーションの問題)を議論する。


3. 政策措置に関するノングループ

 8月4日午後、政策措置に関するノングループが開催された(議長は、SBI議長であるモーリタニアのマムード氏。)。概要は以下のとおり。
[1] 冒頭、EUより、幾つかの国との意見交換を踏まえたものとしてノンペーパーが提出さ れ、今後の交渉のためのテキストとして用いてもらいたいとの趣旨説明が行われた。
[2] その後各国による一般演説が行われた。注目すべき点は、
(i) サウジが本テーマについてはG77+中国を代表する。
(ii) EU提案のノンペーパーを交渉の基礎にすることには、ハンガリー、ポーランド、エストニア等多くの東欧諸国及びスイスが賛成。サウジ、イラン、クウェート等のOPEC諸国やインドネシア等がエネルギー問題等に片寄っていると批判し、EU提案を交渉の基礎にするのは不適当と主張。米国、豪州、NZ等もEUのノンペーパーを批判した。カナダは基本的には好意的だが加提案を考慮するよう主張。G77及び中国はグループ内での検討が行われていないとして意見を留保。アフリカ諸国は、国毎の柔軟性が必要としてEUのノンペーパーに批判的。
(iii) 韓国、メキシコは、附属書X国として対策を強要されるのはベルリンマンデート違反であるとして附属書Xの表からこれら諸国を削減することを要求。
[3] 一般演説後、ノングループ議長から今後の進め方についての打診があり、議論した結果、5日夕方までにノングループの議長がこれまでの議論を整理した条文案を作成し、6日(水)にその条文案につき、議論を行うこととなった。


4. その他(組織・機構、途上国対策)

 組織・機構等に関するノングループ(柴田議長)は、午前の全体会合の終了後及び午後に会合を開催した。
 また、組織・機構等、第1週に議論が行われた条約第4条1項(途上国を含む全締約国の約束)の推進及び数量目標の一部についてノングループ座長による条文案が示された。
 なお、このノンペーパーの中には、米国の提案する全締約国が講ずる政策・措置が掲示されていたが、それが比較的詳しいものであったため、ベルリンマンデートにおける先進国の講ずるものとしての政策・措置に関し、同国が規定を設けることに反対していることとの関係から多数の国々の関心を呼んだ。


5. 石井環境庁長官のボン訪問

 石井環境庁長官は、総理の命により、ケニア、エジプトを訪問する往路、ドイツ、ボンを訪れ、全体会合の冒頭に出席するとともに、気候変動枠組条約のザミット・クタヤール事務局長、エストラーダAGBM議長と会談を行った。また、ドイツ連邦環境省を訪れ、ヤウク事務次官と会談を行い、政策措置の規定など一致して協力可能な分野があること、両国は京都会議の成功に向けて緊密に協力することを確認した。
(1) エストラーダ議長との会談
 エストラーダ議長との会談では、今後のAGBMの運営方針について、{1}議定書交渉の山場は次回のベルリンマンデート会合であること、{2}議定書の大枠を固めるためには、日本及び米国が数値目標について早急に決断を行うことが重要な鍵となること、{3}途上国における今後の地球温暖化対策についても、フレキシブルな形でこれを進めるための、何らかの取り決めを京都において行うことが可能となるであろうことなど、同議長の見解を拝聴した。これに対し、石井長官からは、我が国においては、総理が先頭に立って意見の取りまとめを行っていることを紹介した。

(2) 石井環境庁長官の現地記者会見
 石井長官は、現地で記者会見を行い、上述5及び(1)の点に関し、報告するとともに、ボン訪問の印象として、短い訪問ではあったが、
[1] 多くの国々が次々と自説を誠意をもって説明しており、また、必ずしも自説の全てにこだわらず、柔軟になり得ることを述べるなど、COP3における国際合意に向けた交渉が真剣に行われていること、
[2] 様々な会合に分かれ、合理的、組織的に検討を行っており、2週間程度の短い会合でも相当の議論の蓄積がなされること、
[3] 様々なNGOや各種の団体が意見発表を行い、政府間の交渉の促進に努めていることを実感した。京都に至るまでの間は、各国が最終的な判断を示すことはないにしても、国際合意のあるべき姿については、各国の理解が急速に、また、相当に一致していくことが期待できるものと心強く感じた旨述べた。


(注) NGOのニューズレター(ECO)の記事について
 ECOは、日本の読売新聞8月2日夕刊の記事を踏まえつつ、日本の「提案」と報道されたものが先進国全体の2010年時点の排出量を90年比で10%以上増加させるものとの試算を掲げ、日本を批判した。
連絡先
環境庁企画調整局地球環境部環境保全対策課課   長:小林  光
調 整 官:関 荘一郎(6765)
 課長補佐:石飛 博之(6737)
 係   長:中尾  豊(6738)