報道発表資料

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2007年08月31日
  • 地球環境

オゾン層保護対策推進月間の取組について

 9月はオゾン層保護対策推進月間です。
 1987年9月16日に「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」が採択されたことにちなみ、政府では毎年9月を「オゾン層保護対策推進月間」と定めています。
 月間中は、10月に施行される「改正フロン回収・破壊法」の周知など、国・地方公共団体において、オゾン層保護・フロン対策に関する啓発活動を集中的に行います。
 フロン対策は、オゾン層の保護のみならず地球温暖化防止のためにも大変重要であり、月間においては、その理解の浸透に努めていきます。
 特に今年は、「地球のために、私たちができる5つの大事なこと-フロンの管理・回収」という国民へのメッセージを作成しました。

1.オゾン層保護、フロン対策の経緯と現状

 1974年に米国のローランド博士らが、フロンによってオゾン層が破壊されるメカニズムを発見し、有害紫外線の増加によって人や生態系に影響が生ずる可能性を指摘しました。また、1982年に日本の南極観測隊が南極上空のオゾン全量の異常減少を確認し、1985年には南極上空におけるオゾンホールの形成が確認されました。
 これらを踏まえ、国際的な議論の下、1985年に「オゾン層保護に関するウィーン条約」が採択され、1987年9月にフロン規制のための国際的枠組みを定める「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」が採択されました。この議定書では、フロン等の生産・消費を種類別、先進国・開発途上国別に段階的に削減することを定めており、CFC(クロロフルオロカーボン)は2010年までに、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)は2040年までに、全廃することになっています。
 わが国は、1988年に「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」(オゾン層保護法)を制定・施行し、ウィーン条約及びモントリオール議定書に加入しました。同法により、既にCFCは1996年に全廃、HCFCの消費量は最大時の20%以下に削減しており、2020年までに全廃する予定です。
 モントリオール議定書に基づく世界的な取組により、フロン規制は大きな効果を上げ、フロン等のオゾン層破壊物質の生産量・消費量は大幅に削減されました。南極上空のオゾンホールは、未だに毎年のように大規模に形成されていますが、科学的な予測によれば、このまま順調にフロン規制が実施されると、今世紀中頃には、地球のオゾン層は1980年以前の状態まで回復すると言われています。

2.フロン対策の今後の課題

(1)モントリオール議定書による規制の強化
 モントリオール議定書によるフロン規制は順調に実施されていますが、規制スケジュールの前倒し等によって、オゾン層の回復を一層促進できるため、2040年に設定されている開発途上国のHCFC全廃スケジュールの前倒しを中心に、規制の強化がモントリオール議定書の締約国間で話し合われています。規制スケジュールを前倒しする場合における開発途上国への支援措置の強化についても議論される見込みです。
 次回の締約国会合は、9月17日から21日までカナダのモントリオールで開催されます。
(2)フロンの回収・破壊
 フロンの生産、消費規制により、オゾン層の破壊は食い止められつつありますが、エアコンの冷媒等として既に世の中に出回っているフロンを空気中に漏出させず、回収して破壊できれば、オゾン層の回復を一層促進することができます。また、フロンは、種類によっては二酸化炭素の数千倍もの強い温室効果を持つため、フロンを回収することは、地球温暖化防止の観点からも重要です
 このため、わが国では、2001年に「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律」(フロン回収・破壊法)を制定し、CFCとHCFCのみならず、オゾン層は破壊しないが強い温室効果を持つHFC(ハイドロフルオロカーボン)も対象として、業務用冷凍空調機器からのフロンの回収・破壊を義務づけています。また、家庭用エアコン・冷蔵庫については家電リサイクル法、カーエアコンについては自動車リサイクル法により、フロンの回収を行っています。
 今後とも、これらの法律等に基づき、オゾン層保護及び地球温暖化防止の双方の観点から、フロン回収の徹底を図ることが重要です。この10月1日からは、業務用冷凍空調機器からのフロン回収を徹底するため、改正フロン回収・破壊法が施行されます
(改正のポイント)
行程管理制度(フロンの引渡しを書面で管理する制度)の導入
機器の整備及び部品リサイクル時のフロンの回収義務の明確化
解体される建物における業務用冷凍空調機器の有無の確認の義務化
都道府県知事の指導権限の強化
(3)地球温暖化防止の観点からのフロン対策
 フロンは、二酸化炭素の約百倍から1万倍以上も強い温室効果を有する物質です。つまり、温室効果が千倍のフロンを1kg漏出すると1tの二酸化炭素を出したことと同じになります
 地球温暖化防止のための京都議定書では、フッ素ガスでは、HFC、PFC(パーフルオロカーボン)、SF6(六フッ化硫黄)が規制対象(代替フロン等3ガスと呼ばれます)になっていますが、CFCとHCFCはモントリオール議定書で規制されているために規制対象になっていません。しかし、地球温暖化防止のためには、代替フロン等3ガスと同様に、CFCとHCFCを空気中に漏出させないようにする必要があります。このため、フロン回収に関する前述の三つの法律では、CFC、HCFC、HFCを回収対象物質にしています。
 CFC、HCFCはモントリオール議定書の規制により排出がいずれ少なくなってきますが、逆にHFCは、CFCとHCFCの代替物質として使われ始めた物質であり、今後、使用量の増大が予想されていますので、その漏出を防止することがますます重要になります
(4)脱フロン社会を目指して
 フロンは、熱を効率よく運ぶ冷媒等として現代社会で大変便利に使われている物質です。しかし、オゾン層破壊、地球温暖化の防止のため、その生産等が規制されるようになり、CFC→HCFC→HFCの順で使用が代替されています。しかし、オゾン層を破壊しないHFCも地球温暖化防止の見地から問題視されており、更なる対応が必要です。
 このため、そもそもフロンを他の種類の物質に代替できないかを考え、フロンを使わなくて済む社会にすることも考える必要があります。そうすれば、フロン回収といった事後の余計な費用を負担する必要もなくなります。例えば、家庭用冷蔵庫ではイソブタン、業務用の冷凍機器や冷蔵機器ではアンモニアや二酸化炭素が代替冷媒として利用されています。
 しかし、家庭用エアコンやカーエアコンの冷媒は今のところHFC以外には考えられないと言われており、HFCの中でも温暖化係数(二酸化炭素を1とする温室効果の力)が小さい物質に代替することも検討する必要があります。
 特に、カーエアコンについては、EUにおいて温暖化係数150以下に規制するという指令が出されており、産業の国際競争力維持の見地からも、脱フロン又は低温暖化係数化が今後の重要な技術開発分野になっています
(5)地球のために、私たちにできる5つの大事なこと-フロンの管理・回収-
 以上のような課題を踏まえ、私たち一人一人が家庭や職場で心がけることが望ましい事柄を別紙にまとめてみました
 フロン対策は、オゾン層保護のみならず地球温暖化防止のために大変重要で、かつ効果のあるものですので、皆様のご協力をお願い申し上げます。

3.オゾン層保護対策推進月間における取組

○環境省
(1)ポスター
 フロンの回収を訴えるポスターを、経済産業省等関係府省庁及びオゾン層・気候保護産業協議会と協力して約1万部作成し、地方公共団体、国の出先機関、業界団体等に配布し、期間中掲示します(https://www.env.go.jp/earth/ozone/month/index.html)。
(2)パンフレット「オゾン層ってどうなってるの?2007」
 学校教育や環境イベント等で活用していただくため、オゾン層破壊の状況やその対策をわかりやすく解説したパンフレット「オゾン層ってどうなってるの?」を9月中に作成し、地方公共団体、関係業界に配布します。
(3)ホームページを通じた広報
 環境省ホームページ上に、オゾン層保護対策推進月間に関するページを設置し、各種普及啓発用資料を紹介しています。本ページから普及啓発用資料を自由にダウンロードしていただけます(https://www.env.go.jp/earth/ozone/month/index.html)。
(4)チームマイナス6%のメールマガジンによる広報
 地球温暖化防止に関するチームマイナス6%のメールマガジンでフロン対策の重要性を広報しています。
(5)シンポジウム「地球環境とフロン」の開催
 オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の採択20周年と改正フロン回収・破壊法の施行を契機に、フロン対策について理解を深めていただくため、シンポジウム「地球環境とフロン」を10月5日(金)13:00~16:45に東京国際交流会館にて開催します。
 本シンポジウムでは、フロンによるオゾン層破壊のメカニズムの解明によりノーベル化学賞を受賞したF.S.ローランド教授(カリフォルニア大学)と宇宙飛行士でもある毛利衛日本科学未来館館長による講演や地球環境やフロンに関する有識者によるパネルディスカッションを行います。
参加費:
無料
募集定員:
350人
申込期限:
9月21日(金)必着
(定員に達した場合は募集を早めに締め切る場合があります)
申込方法:
運営事務局ホームページ(http://www.dynax-eco.com/furon/index.html)参照
(6)関連行事への協力
 日刊工業新聞社主催の「第10回オゾン層保護・地球温暖化防止大賞」を後援し、フロン対策を通じ、オゾン層の保護や地球温暖化防止に大きく寄与した技術・事業者等に環境大臣賞を贈賞します。
贈賞式:
9月6日(木)15:00~15:40
東海大学校友会館(東京都千代田区霞が関3-2-5霞が関ビル33階)
(なお、引き続いて「10周年記念シンポジウム」も予定されています。)
○地方公共団体
 各地方公共団体において、講演会の開催やイベント会場や庁舎での展示、ポスター・パンフレット等の配布、HPやテレビ、ラジオを利用した広報等、オゾン層保護・フロン回収を呼びかける取組が実施されます(別添)。
(参考:https://www.env.go.jp/earth/ozone/cfc/law/setumei/index.html
○経済産業省
 環境省及び関係省庁等との共同ポスター作成、配布の他、以下のような取組みが行われる予定です。
  • 経済産業省本館1Fロビーにて、オゾン層保護や代替フロン等3ガスの排出抑制に関するパネル展示を実施(9月3日~28日)。
  • 東京メトロ(千代田線・半蔵門線)にて、交通広告を実施(8月27日~9月26日)。
  • 日刊工業新聞社主催の第10回オゾン層保護・地球温暖化防止大賞を後援し、経済産業大臣賞の贈賞を実施(9月6日)。
  • 改正フロン回収・破壊法の施行について、ラジオCMを実施(9月3日~28日)。

添付資料

連絡先
環境省地球環境局(旧)環境保全対策課フロン等対策推進室
直通:03-5521-8329
 室長:深見 正仁(内6750)
 補佐:伊藤 史雄(内6751)
 担当:伊藤 周太(内6753)

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