報道発表資料

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2007年06月28日
  • 自然環境

ヤンバルクイナの飼育下繁殖に関する基本方針の策定について

沖縄島北部のやんばる地域のみに生息するヤンバルクイナは、近年、ジャワマングースやノネコ等の影響などにより、その生息域や生息個体数が大きく減少しているものと推定されており、環境省レッドリスト(2006)では、最も絶滅のおそれの高い絶滅危惧IA類に分類されています。
 このような現状を受けて環境省では、平成16年11月に保護増殖事業計画を策定し、生息状況の調査、ジャワマングースやノネコの捕獲事業等を実施してきました。
 この度、この保護増殖事業計画に基づき、繁殖技術の確立と飼育下における生態的知見の把握及び一定の個体数の維持を図るため、飼育下における繁殖を実施することとし、「ヤンバルクイナの飼育下繁殖に関する基本方針」を策定しましたのでお知らせします。
 環境省では、今年度から、野生個体を飼育下に導入して飼育及び繁殖を試験的に行い、来年度からの本格実施に向けて、知見の集積等を行っていく予定です。

1 ヤンバルクイナの現状

ヤンバルクイナ

 ヤンバルクイナは、1981年に新種として記載された日本で唯一の無飛翔性の鳥で、沖縄島北部のやんばる地域にのみ生息しています。
 1985年の調査では、1800羽程度が生息しているものと推定されていましたが、生息域へのジャワマングースの侵入、ノネコやノイヌ等による捕食、開発による生息域の縮小及び交通事故等、本種の生息環境を悪化させる様々な要因により、2000から2001年に行われた調査では、1200羽程度まで減少しているものと推定されています。また最近の研究では、さらに減少傾向にあることが指摘されています。
 同様に生息域についても、その南限が徐々に北上し、減少傾向にあることが確認されています。
 2006年12月に公表した環境省の鳥類レッドリストでは、最も絶滅のおそれの高い「絶滅危惧IA類」に分類されました。

2 ヤンバルクイナ保護増殖事業の経緯

 環境省では、平成5年にヤンバルクイナを「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」に基づく国内希少野生動植物種に指定し、平成16年には文部科学省、農林水産省、国土交通省と共同で「ヤンバルクイナ保護増殖事業計画(以下「保護増殖事業計画」という。)」を策定して、保護増殖事業を行ってきました。
 平成17年度には、有識者による「ヤンバルクイナ保護増殖事業ワーキンググループ」を設置し、保護増殖事業の内容等について助言を得てきました。この中で、本種の個体数及び生息域の急激な減少等を背景に、飼育下繁殖の必要性についても議論を開始し、その目的や具体的な方法、実行可能性などについて、より詳細な検討が行ってきました。

 これらの経緯を経て、環境省では、今般、繁殖技術の確立と飼育下における生態的知見の把握及び一定の個体数の維持を図るため、「飼育下における繁殖」を実施することを決定し、「ヤンバルクイナの飼育下繁殖に関する基本方針」を策定しました。

3 ヤンバルクイナ飼育下繁殖に関する基本方針について

 「ヤンバルクイナの飼育下繁殖に関する基本方針」とは、環境省が、保護増殖事業計画第3の3「飼育下における繁殖及びその個体の再導入」で定める内容に沿って、個体の飼育下繁殖を実施するにあたり、その目的と、[1]ファウンダ(創設個体)の確保、[2]飼育下個体群の管理、[3]再導入による野外個体群の回復、[4]関係機関との調整の各実施項目に関する基本的事項を定めたものです(別紙 1)。
 この「基本方針」の中で、飼育下繁殖に供する個体は、野外の個体を捕獲するなどの方法で確保することとし、その際は、遺伝的多様性の保持や野外個体群への影響が最小限になるよう留意することとしています。また、飼育下の個体群は、環境省が一元的に管理することとし、感染症の蔓延等への対策として、複数の施設に分散して飼育することの必要性についても言及しています。
 将来、飼育下で繁殖した個体を野生下に再導入する方法についても、今後検討していく予定です。

 また、「基本方針」の下に、より具体的な実施内容等を定めた「ヤンバルクイナ飼育下繁殖実施方針」を、那覇自然環境事務所において作成しています(別紙 2)。
 「実施方針」では、飼育下個体群の創設個体(ファウンダ)を10つがいとし、10年後を目途に、この10つがいを飼育下で200羽まで増殖させることとする、飼育下繁殖事業の数値的目標を定めています。

この数値的目標は、ヤンバルクイナ保護増殖事業ワーキンググループにおいて、本種の遺伝的多様性の保持と、再導入することを想定した際に必要となる健全な飼育下個体群の一定数の維持という観点に、現実的に準備することが可能な施設の収容能力及び実施体制等を勘案して議論し、決定したものです。

4 飼育下繁殖に関する今年度中の事業について

 平成19年度に実施する事業内容は、上記「実施方針」のもとに那覇自然環境事務所で作成した「平成19年度ヤンバルクイナ飼育下繁殖試験実施計画(平成19年度の年次計画)」に記載しています(別紙 3)。

今年度中は、飼育下繁殖事業を開始するに当たって必要な知見等の収集を目的とした「飼育下繁殖試験」を行うこととし、飼育下繁殖事業は平成20年度からの本格実施を目指します。

 今年度実施する飼育下繁殖試験では、[1]現在、傷病等の理由により緊急的に飼育下に保護されている個体を引き続き飼育して、その生態等の観察を行うとともに、[2]繁殖期にはペアリングさせて繁殖を試み、[3]その繁殖行動の観察、産卵状況の確認、場合によっては人工孵化を行うことで、繁殖及び孵化技術に関する知見の集積を目指します。
 また、上記「実施計画」に記載した事項に沿って、野外の個体を捕獲することなどにより、飼育下個体群の創設個体(ファウンダ)となる個体の確保を目指します。

 今年度の飼育下繁殖試験は、現在、傷病等の理由により緊急的に保護した個体が飼育されている、ネオパークオキナワの国際種保存研究センター(沖縄県名護市)及びNPO法人どうぶつたちの病院飼育施設(沖縄県国頭村及びうるま市)において、両団体の協力を得ながら実施していく予定です。

添付資料

連絡先
環境省自然環境局野生生物課
課長:星野 一昭(6460)
 課長補佐:西山 理行(6475)
 課長補佐:曽宮 和夫(6464)
 係長:中島 治美(6469)
 直通(03) 5521-8283

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