報道発表資料

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1998年12月22日

平成9年度地方公共団体等における有害大気汚染物質モニタリング調査結果について

 平成9年4月に施行された改正大気汚染防止法に基づき、平成9年度から地方公共団 体では有害大気汚染物質の大気環境モニタリングを本格的に開始した。平成9年度に環境 庁が実施した調査結果については本年7月に公表したところであるが、平成9年度に地方 公共団体が実施した有害大気汚染物質の大気環境モニタリング調査結果について、環境庁 の調査結果と併せて、今回初めてとりまとめた。   大気汚染防止法に基づき指定物質に指定されている物質に係る測定結果の概要は以下 のとおりである。 
     (単位:ダイオキシン類はpg-TEQ/m3、その他はμg/m3 ) 

物 質 名 地点数 平均値 最小値 最大値
ダイオキシン類 68 0.55 0.010 1.4
ベンゼン 53 3.4 0.77 11
トリクロロエチレン 55 2.3 0.063 39
テトラクロロエチレン 56 1.1 0.12 7.6

  ダイオキシン類について、夏期及び冬期を含め年2回以上測定した地点における測定 結果を平成9年9月に設定された大気環境指針値(0.8pg-TEQ/ m3)と比較すると、68 地点中14地点について指針値を超過していた。
   ベンゼンについて、月1回以上の頻度で1年間にわたって測定した地点における測定 結果を平成9年2月に設定された環境基準値(3μg/m3)と比 較すると、53地点中26 地点について環境基準値を超過していた。
   トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンについては、全ての地点において環境 基準値(ともに200μg/m3)を下回っていた。

 1.概要
  大気中の濃度が低濃度であっても人が長期的に曝露された場合には健康影響が懸念され る有害大気汚染物質については、平成9年度から、改正大気汚染防止法に基づき、地方公 共団体(都道府県・大気汚染防止法の政令市)において本格的にモニタリングを開始した ところである。
  環境庁においては、昭和60年度から有害大気汚染物質のモニタリング調査を行い、平 成10年7月16日に、平成9年度有害大気汚染物質モニタリング調査結果を公表したと ころである。
  一方、地方公共団体における平成9年度の有害大気汚染物質の大気環境モニタリングに ついても調査結果がまとまり、今回、環境庁の調査結果と併せて公表することとした。
  なお、平成9年度は地方公共団体における本格的なモニタリングが実施された初年度で あるため測定頻度が少なく、年平均値を算出し、環境基準等により評価できないデータも 多くあるが、有害大気汚染物質の大気環境中の濃度を把握する上で貴重な情報となるため 、これらのデータについても取り入れた上で調査結果をとりまとめた。

 2.調査方法、対象物質及び測定地点数
 (1)調査方法
    原則として、有害大気汚染物質モニタリング指針(平成9年2月2日制定、平成1 0年1月9日一部改正)及び有害大気汚染物質測定方法マニュアル(環境庁大気保全局大 気規制課)に準拠して調査を実施した。

 (2)対象物質
 ・ダイオキシン類
 ・揮発性有機化合物・・・アクリロニトリル、塩化ビニルモノマー、クロロホルム、1, 2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、1 ,3-ブタジエン、ベンゼン
 ・アルデヒド類・・・・・アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド
 ・重金属類・・・・・・・水銀及びその化合物、ニッケル化合物、ヒ素及びその化合物 、ベリリウム及びその化合物、マンガン及びその化合物、クロム及びその化合物  ・多環芳香族炭化水素・・ベンゾ[a]ピレン

  (注)水銀及びその化合物、ベンゾ[a]ピレンについては、平成9年度当初は測定方 法が定まっていなかったため、一部の対応可能な地方公共団体等において測定を実施。

 (3)測定地点数
  平成9年度の調査における地域分類(一般環境、発生源周辺及び沿道)別の調査地点数 (環境庁及び政令市が実施した調査地点数を含む。)を都道府県・測定対象物質ごとにま とめたものを表4~6(7頁~9頁)に示す。
  ダイオキシン類については、一般環境、発生源周辺及び沿道を合わせて、254地点(27 都道府県)で測定が実施された。
  ベンゼンについては385地点(47都道府県)トリクロロエチレンについては379地点(47 都道府県)テトラクロロエチレンについては380地点(47都道府県)で測定が実施された 。
  なお、水銀及びその化合物、ベンゾ[a]ピレンについては、平成9年度当初において は測定方法がまだ定まっておらず、一部の対応可能な地方公共団体のみで測定を実施した ため、測定地点数は少なくなっている。

 3.測定値の評価について
  長期曝露による健康リスクが懸念されている有害大気汚染物質のモニタリングにおいて は、原則として月1回以上の頻度で測定を実施し、年平均濃度を求めることとしている。 (ダイオキシン類については、季節ごとに測定することが望ましいが、少なくとも夏期及 び冬期に測定する必要があるとしている。)また、ベンゼン、トリクロロエチレン及びテ トラクロロエチレンに係る大気環境基準や、ダイオキシン類に係る大気環境指針も年平均 値として示されているところである。
  しかしながら、平成9年度は地方公共団体における本格的なモニタリングが実施された 初年度であり、必要とされる頻度で測定を実施できなかった地方公共団体もあることから 、全ての測定結果について年平均濃度を算出し、評価をすることは困難である。
  このため、今回のとりまとめにおいて、調査結果表の平均値の欄には、当該測定地点に おける複数回の測定結果の算術平均値を記載したが、調査地点によっては、必要とされる 測定頻度の測定を実施していない場合もあることから、大気環境基準値や大気環境指針値 との直接的な比較はできないものもあることに留意する必要がある。

 4.調査結果の要点
 (1)ダイオキシン類
  ダイオキシン類には多数の異性体が存在しており、その毒性の評価に当たっては、これ らの中で最も毒性が強いといわれている2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシン(2, 3,7,8-TCDD)の毒性を1としたときの他の異性体の相対的な毒性を毒性等価係数(TEF)で 示し、その上で2,3,7,8-TCDDの等量濃度(TEQ)として換算し、評価するのが一般的である 。
  今回とりまとめた測定地点のうち、夏期及び冬期を含め年2回以上測定した地点数は、 一般環境では218地点中63地点、発生源周辺では29地点中2地点、沿道では7地点中3地点で あり、全体としては254地点中68地点であった。
  ダイオキシン類の濃度については下表のとおりであった。(表1、7、図1、2参照)
  測定頻度に係る条件を満たしている地点の測定結果を平成9年9月に設定されたダイオ キシン類の大気環境指針値と比較すると、一般環境について63地点中14地点で指針値を超 過、発生源周辺2地点及び沿道3地点についてはいずれも指針値以下であり、合計すると、 68地点中14地点で指針値を超過していた。
  なお、測定頻度に係る条件を満たしていない地点も含め、今回とりまとめた全ての地点 のデータについてまとめた値を表1の中の括弧内に示したが、これらのデータについては 、大気環境指針値との直接的な比較はできないものもあることに留意する必要がある。
 (注)1pg(ピコグラム)は1兆分の1g(グラム)
 (参考)ダイオキシン類の指針となる大気環境濃度として、中央環境審議会答申を受け、 年平均値0.8pg-TEQ/m3以下(大気環境指針値)と平成9年9月に設定。

 (2)ベンゼン
  原則として月1回以上の頻度で1年間にわたって測定することとしているが、平成9年 度は地方公共団体におけるモニタリングが実施された初年度であることもあり、この条件 を満たしている地点は少ない。
  今回とりまとめた測定地点のうち、月1回以上の頻度で1年間にわたって測定した地点 数は、一般環境では228地点中31地点、発生源周辺では73地点中14地点、沿道では84地点 中8地点であり、全体として385地点中53地点であった。
  ベンゼンの濃度については下表のとおりであった。(表2、図3参照)
  測定頻度に係る条件を満たしている地点の測定結果を平成9年2月に設定された大気環 境基準値と比較すると、一般環境について31地点中13地点で、発生源周辺について14地点 中6地点で、沿道について8地点中7地点で環境基準値を超過しており、合計すると53地点 中26地点で環境基準値を超過していた。
  なお、測定頻度に係る条件を満たしていない地点も含め、今回とりまとめた全ての地点 のデータについてまとめた値を表2の中の括弧内に示したが、これらのデータについては 、大気環境基準値との直接的な比較はできないものもあることに留意する必要がある。

 (3)トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレン
  ベンゼンと同様に、測定頻度に係る条件を満たしている地点は少ない。
  トリクロロエチレンについて、月1回以上の頻度で1年間にわたって測定した地点数は 、一般環境では241地点中34地点、発生源周辺では80地点中16地点、沿道では58地点中5地 点であり、全体として379地点中55地点であった。
  テトラクロロエチレンについて、月1回以上の頻度で1年間にわたって測定した地点数 は、一般環境では241地点中34地点、発生源周辺では81地点中 17地点、沿道では58地点中5地点であり、全体として380地点中56地点であった。
  トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの濃度については下表のとおりであった 。(表3、図4、5参照)
  平成9年2月に設定された大気環境基準値と比較すると、トリクロロエチレン及びテト ラクロロエチレンについては、全ての地点で環境基準値を下回っていた。
  なお、測定頻度に係る条件を満たしていない地点も含め、今回とりまとめた全ての地点 のデータについてまとめた値を表3の中の括弧内に示したが、これらのデータについては 、大気環境基準値との直接的な比較はできないものもあることに留意する必要がある。
 (注)1μg(マイクログラム)は100万分の1g
   (参考)ベンゼンの環境基準は、年平均値3μg/m3以下
       トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの環境基準は、それぞれ年平 均値200μg/m3以下

 5.今後の対応  有害大気汚染物質の大気環境モニタリングについては、大気汚染防止法に基づき、国及 び地方公共団体が調査の実施に努めることとされており、地方公共団体においても現在本 格的な調査が実施されているところである。
  環境庁としては、今後とも、有害大気汚染物質の大気環境モニタリングの充実を図ると ともに、有害大気汚染物質による大気汚染の健康リスク評価を行い、対策の推進に役立て ていくこととしている。

                                 (参考1)

            毒性等価換算濃度(TEQ)について

  ダイオキシン類の濃度については、測定により得られるダイオキシン類の各異性体の濃 度値に国際毒性等価係数(I-TEF;International Toxicity Equivalen-cy Factor;表参 照)を乗じて、毒性等価換算濃度(TEQ;Toxicity EquivalencyQuantity)により表すも のとする。

 表 ダイオキシン類に関する国際毒性等価係数

PCDD異性体 I-TEF PCDF異性体 I-TEF
2,3,7,8-TCDD 1 2,3,7,8-TCDF 0.1
1,2,3,7,8-PCDD 0.5 1,2,3,7,8-PCDF 0.05
2,3,4,7,8-PCDF 0.5
1,2,3,4,7,8-HCDD 0.1 1,2,3,4,7,8-HCDF 0.1
1,2,3,6,7,8-HCDD 0.1 1,2,3,6,7,8-HCDF 0.1
1,2,3,7,8,9-HCDD 0.1 1,2,3,7,8,9-HCDF 0.1
2,3,4,6,7,8-HCDF 0.1
1,2,3,4,6,7,8-HCDD 0.01 1,2,3,4,6,7,8-HCDF 0.01
1,2,3,4,7,8,9-HCDF 0.01
OCDD 0.001 OCDF 0.001
その他のPCDD 0 その他のPCDF 0

添付資料

連絡先
環境庁大気保全局大気規制課
課 長 :飯島  孝(内6530)
 補 佐 :柳橋 泰生(内6532)

環境庁大気保全局自動車環境対策第二課
課 長 :松本 和良(内6550)
 補 佐 :印南 朋浩(内6551)