報道発表資料

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2007年06月08日
  • 自然環境

タンチョウの生息環境に関する情報について

 昨年度、環境省が委託業務の中で収容した、タンチョウの死亡個体17羽(一部は収容されたのち死亡したもの)について、解剖による死因究明を行ったところ、電線や列車に衝突したと見られるものが、それぞれ4羽ともっとも多く、ついで、(列車以外の)交通事故と見られるものが3羽という結果となりました。
 また、今月6日には、環境省と北海道庁の担当者間で、タンチョウに関する連絡会議を行い、この中で、1988年から2004年までに収容された個体の、各器官の水銀濃度に関する分析結果(酪農学園大学・寺岡宏樹教授の研究による)について、情報交換を行いました。

1.平成18年度中に収容された死亡個体の死因について

 環境省では、タンチョウ保護増殖事業の一環として、釧路市動物園に「標本保存管理業務」を委託し、

  1. 収容された傷病個体の治療
  2. 死亡個体の解剖と死因の究明
  3. 解剖後の死体組織の冷凍保管
  4. タンチョウ保護増殖事業に資する研究・調査機関への試料提供

等を行っている。
 平成18年度中に、傷病等の理由により釧路市動物園に収容された個体は20羽で、そのうち6羽は生体で救護されたもの、残り14羽は死体で収容されたものである。また、生体で救護されたもののうち、3羽は現在も生存しており、1羽は野生復帰に成功している。

死亡した17羽のそれぞれの死因については、以下のとおり。

死因 個体数
電線衝突(電線衝突が疑われるものを含む) 4羽
列車衝突 4羽
交通事故(交通事故が疑われるものを含む) 3羽
その他の衝突事故(衝突物不明) 2羽
溺死 1羽
不明 3羽
17羽

 個体の収容数は、平成14年度の31羽を最大として、変動しており、タンチョウの野生個体の総数は増加傾向にあるが、収容個体数は増加していない。
 また、交通事故については、運転者などへの注意喚起を図っていく所存である。

2.収容個体の各器官の水銀濃度分析結果について

 「標本保存管理業務」の中で保管している個体(1988~2004年に収容:104個体)の各器官が含有する水銀濃度を、酪農学園大学毒性学教室の寺岡教授が分析した結果については、今月6日に、環境省と北海道の担当間で行った、タンチョウに関する連絡会議の中で、情報交換を行った。

 寺岡教授の分析結果は下表のとおり。

器官 サンプル数 水銀濃度(ppm(μg/g))
最高値 最低値 平均値 中央値
肝臓 104 142.09 0.00 20.96 4.73
腎臓 90 343.63 0.69 22.22 5.33
88 10.21 0.00 1.23 0.59
初列※ 54 11.30 0.01 1.61 0.64

※初列…外側の羽のこと。

 現時点で、水銀の起源及び水銀がタンチョウに与える影響等については明らかとなっていない。
 環境省では今後も、必要に応じ、情報の収集に努めていく所存である。

 なお、タンチョウが生息する地域を中心とする河川・湖沼等公共用水域における水銀濃度は、北海道が水質汚濁防止法に基づき、継続的に調査を行っているが、いずれの調査地点においても、環境基準を達成している。

3.今後の対応について

 今月6日には、タンチョウに関する情報交換のため、環境省と北海道庁の担当者間で、連絡会議を行ったが、今後も、北海道庁をはじめとする関係機関と連携し、情報収集に努めるとともに、タンチョウの生息する環境の保全並びにタンチョウの生息を脅かす要因の特定とその対策のため、必要な施策を講じていく所存である。

連絡先
環境省自然環境局野生生物課
課長:星野 一昭 (6460)
 課長補佐:西山 理行 (6475)
 係長:中島 治美 (6469)
 直通:(03)5521-8283