報道発表資料

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1998年12月18日

平成10年版「化学物質と環境」について

「化学物質と環境」(通称「黒本」)は、環境安全課が昭和49年以来実施している化学物質の各種環境調査結果をまとめて公表する年次報告書である。今回公表する平成10年版「化学物質と環境」は、平成9年度化学物質環境安全性総点検調査結果、平成9年度指定化学物質等検討調査結果、平成9年度有機スズ化合物に関する環境調査結果及び平成9年度非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査結果等についてとりまとめたものである。
 なお、本件については12月18日開催の中央環境審議会環境保健部会化学物質専門委員会(七野護委員長、(社)日本産業廃棄物処理振興センター情報処理センター長)に報告、了承された。
1.平成9年度化学物質環境安全性総点検調査結果の概要

化学物質による環境汚染の未然防止と汚染の早期発見及び適切な化学物質環境安全対策の立案に資するため、化学物質の環境残留性等の安全性について総点検を行うものである。

(1) 環境調査
水系・大気系の一般環境において、合計21物質について環境残留性を調査したところ次のとおり。なお、この結果これまでの調査で、765物質について調査が行われ、そのうち、295物質が一般環境から検出されたこととなる。
1) 水系調査
ア.水系環境中に残留していると予測される、クロロベンゼン等14物質について、残留が予測される媒体(水質・底質・魚類)を選び全国56地点で調査を実施した。
イ.その結果、塩化ビニル等5物質が検出された。このうち塩化ビニルなどについては、今後も環境調査を行い、推移を監視することが必要と考えられる。
2) 大気系調査
ア.大気系環境中に残留していると予測される、N,N-ジメチルホルムアミド等11物質について、全国21地点で調査を実施した。
イ.その結果、N,N-ジメチルホルムアミド等8物質が検出された。このうちN,N-ジメチルホルムアミドなどについては、今後も環境調査を行い、推移を監視することが必要と考えられる。 
(2) 水質・底質の経年監視(水質・底質モニタリング)
1) 環境中に残留する物質の水質・底質中の濃度を経年監視する調査であり、平成9年度は第一種特定化学物質を中心に、p,p'-DDT等20物質について全国18地点で調査を実施した。
2) その結果、水質からは、p-ジクロロベンゼン等5物質が検出された。底質からは20物質すべてが検出された。これらの物質を中心に今後とも監視を継続することとする。
(3) 指標生物の経年監視(生物モニタリング)
1) 生物を対象に、環境中に残留する物質の濃度を経年監視する調査であり、平成9年度は第一種特定化学物質を中心に、PCB等11物質について全国21地点の魚類8種、貝類2種、鳥類2種について調査を実施した。
2) その結果、魚類からは11物質、貝類からはp,p'-DDTを除く10物質、鳥類からはPCB、p,p'-DDE、p,p'-DDD及びtrans-ノナクロルの4物質が検出された。これらの物質を中心に今後とも監視を継続することとする。

2.平成9年度指定化学物質等検討調査結果の概要

指定化学物質又は第二種特定化学物質について、環境中での残留性及び人への暴露状況を調査するものである。

(1) 環境残留性調査
クロロホルム等7物質について、全国の水質・底質36地点、大気34地点で調査したところ、7物質すべてが検出された。
(2) 暴露経路調査(日常生活において、人がさらされている媒体(室内空気、食事等)別の化学物質量に関する調査)
クロロホルム等6物質について、全国9地区各3世帯において調査したところ、室内空気からは6物質すべてが、食事からは1,2-ジクロロプロパンを除く5物質が検出された。
(3) 環境残留性調査及び暴露経路調査の結果からの考察は次のとおり。
クロロホルム、四塩化炭素は環境中に比較的高い濃度で広範囲に残留し、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2-ジクロロエタン、1,2-ジクロロプロパン及び1,4-ジオキサンは環境中に広範囲に残留している。これらの物質については、環境汚染の状況を監視するため、今後とも引続き調査を実施していくことが必要である。
3.平成9年度有機スズ化合物に関する環境調査結果の概要

トリブチルスズ化合物及びトリフェニルスズ化合物について、『生物モニタリング』においては生物(魚類、貝類、鳥類)を、また、『指定化学物質等検討調査』においては水質及び底質を対象として調査を実施した。調査結果についての評価は次のとおり。

(トリブチルスズ化合物)
トリブチルスズ化合物は環境中に広範囲に残留しており、その汚染レベルは、生物、水質及び底質ともに横ばい又は改善の傾向にある。
現在の汚染レベルが特に危険な状況にあるとは考えられないが、引続き環境汚染対策を推進するとともに環境汚染状況を監視していく必要がある。

(トリフェニルスズ化合物)
トリフェニルスズ化合物は環境中に広範囲に残留しており、その汚染レベルは、生物及び底質においては概ね横ばい又は改善の傾向にある。なお、水質は平成7年度以降全地点で不検出が続いている。
現在のトリフェニルスズ化合物の生産状況を考慮すれば、汚染状況はさらに改善されていくものと期待されるが、今後も引続き、環境汚染対策を継続するとともに、環境汚染状況を監視していく必要がある。

また、トリブチルスズ化合物、トリフェニルスズ化合物ともに内分泌かく乱化学物質の疑いがあるとの指摘があることから関連の情報を含め、毒性関連知見の収集に努めることも必要である。

4.平成9年度非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査結果の概要

ダイオキシン類、PCBの一種であるコプラナPCBs(3種類)について、環境中(底質及び生物)の存在状況を調査した。調査結果についての評価は次のとおり。

(ダイオキシン類)
ダイオキシン類の一般環境への汚染状況は、前年度までの調査結果と比較して大きく変化したとは認められないが、環境中から広範囲に検出されているため、今後、詳細な汚染状況を把握しその推移を追跡して監視していくことが必要である。
また、ダイオキシン類の発生源や環境中挙動などの汚染機構の解明に努めるほか、内分泌かく乱化学物質の疑いがあるとの指摘があることから関連の情報を含め、毒性関連知見の収集に努めることも必要である。

(コプラナPCBs)
平成9年度調査では、コプラナPCBs の中でこれまでの調査同様3物質のみの調査を行い、平成8年度の調査結果と比較して大きく変化したとは認められない。コプラナPCBs の環境残留は、主にPCB製品からの環境放出に由来すると考えられており、またPCBは既に昭和47年に使用が中止され、平成4年7月には「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づく特別管理産業廃棄物に指定されているが、平成9年度の調査結果は、コプラナPCBs が広範囲な地点の環境から検出されていることを示している。従って、コプラナPCBs については、今後は調査対象の異性体数を増やすなど、さらに詳細に汚染状況を調査し、その推移を追跡して監視することが必要である。

連絡先
環境庁企画調整局環境保健部環境安全課
課   長 :吉田 徳久(内線6350)
 保健専門官 :尾崎 福栄(内線6355)
 担   当 :大嶽 秀之(内線6355)