報道発表資料

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1997年04月24日

開発途上国に対する水俣病の経験の普及啓発方策について

環境庁においては、水俣病のような悲惨な公害が二度と引き起こされないようその教訓を伝えていくため、開発途上国に対して水俣病の教訓を伝えるに当たっての課題を整理し、今後の普及啓発方策の検討に資するため、平成8年度に「開発途上国に対する水俣病の経験の普及啓発方策に関する調査」を外部委託により行い、今般、その報告書がとりまとめられた。
  1.  趣旨
     戦後の経済復興・経済発展の過程で生じた水俣病は、我が国の公害の原点とも言うべき事件であり、深刻な環境汚染や健康被害をもたらしたのみならず、人々が生活する地域の絆も損なうなど多大な影響を及ぼし、この問題を巡る紛争が政治による解決を迎えるまで実に40年の歳月を要した。
     環境庁においては、水俣病のような悲惨な公害が二度と引き起こされないようその教訓を伝えていくため、開発途上国に対して水俣病の教訓を伝えるにあたっての課題を整理し、今後の普及啓発方策の検討に資するため、「開発途上国に対する水俣病の経験の普及啓発方策に関する調査」を(財)水と緑の惑星保全機構(理事長:山崎 圭)に委託して行った。
     
  2. 「日本/インドネシア 水俣病の経験の普及に関するセミナー」の開催

     本調査は、環境汚染の防止に取り組んでいるインドネシアにおいて、平成8年11月27日に「水俣病の経験の普及に関するセミナー」を開催し、実際に水俣病経験の普及啓発活動を行うとともに、セミナーの聴衆に対してアンケートを実施し、今後の水俣病経験を伝えるに当たっての具体的な課題を整理した。
     日本からは、水俣病被害者、NGO、地域住民、水俣市、熊本県、環境庁、国立水俣病総合研究センター、(財)水と緑の惑星保全機構から計12名が参加した。
     
  3. セミナーにおけるアンケート結果の概要
      
    {1} 印象に残ったビデオ・展示について、多くの回答者が「水俣病ガイダンス」ビデオ(水俣市作成)をあげていたこと、また、最も印象に残った日本側の発表についても、水俣病発生当時の基礎的なデータを紹介した発表があげられていたことなどから、水俣病に関する基礎的な知識についての関心が高かったことが認められ、この部分について十分な説明時間の設定等が必要であること、映像等による視覚に訴える手法が効果的であること等が認識された。
     
    {2} 多くの人々が今回のセミナーが有意義だったことをあげており、特に被害者、住民、NGO関係者からの報告が特に印象に残ったと回答した人が少なくなかったことからも、生活の中で水俣病に直面した人々の声を直接伝えることの重要性が認識された。
     
    {3} ディスカッションの時間が短かったことを指摘した回答者が多く、その原因として、質疑応答の時間の不足、報告内容の重複、質問者が簡潔に質問していないこと、通訳の問題などがあげられており、今後のセミナーの運用について貴重な情報が得られた。
    {4} インドネシア政府代表に対する質問や要望が出されていることから、地元政府に対する質疑時間の設定等について、十分な配慮が必要であることが認識された。


              【セミナープログラム】

 日本/インドネシア水俣病の経験の普及に関するセミナー
 日時:平成8年11月27日(水) 午前9時~午後5時
 場所:サヒッドジャヤホテル(ジャカルタ市)
 主催:(財)水と緑の惑星保全機構
 後援:インドネシア環境省協力:日本環境庁

1. 開会式
  挨拶 環境庁環境保健部特殊疾病対策室長   石塚 正敏
     インドネシア環境省官房長       スダルソノ
     インドネシア環境省副大臣       エッフェンディ=スマルジャ
  水俣病に関するガイダンスビデオ放映

2. ガイダンス
 「セミナーの目的と狙い」(財)水と緑の惑星保全機構 青山 俊介
 「セミナーの意義と活用」
           インドネシア環境省国際協力部長 ダナ=カルタクスマ

3. セッション1
 「水俣病発生の経過と対策」環境庁環境保健部特殊疾病対策室長  石塚 正敏
 「水俣病の健康被害と地域社会への影響~国立水俣病総合研究センターの役割」
    国立水俣病総合研究センター国際・総合研究部社会科学室長 田村 憲治
 「水俣病問題への熊本県の取り組み」  熊本県公害保健課長   野村 隆司
 「地域社会の問題としての水俣病問題」 水俣病資料館副館長   志水 恒男
 「水俣病患者として伝えたいこと」   水俣病患者平和会会長  石田  勝

4. セッション2 「水俣病とともに生きて」 
         水俣病被害者・弁護団全国連絡会議代表委員 橋口 三郎
 「未認定患者という立場から」 水俣病患者連合会長     佐々木 清登
 「地域住民にとっての水俣病問題」 水俣青年会議所理事長  山口 善史
 「水俣病問題におけるNGOの役割」
          水俣市ボランティア連絡協議会会長     萩嶺 浄円

5. 総合討議
 「海洋汚染防止の政策と戦略」
              インドネシア環境省海洋担当  ヘン=ウクトセヤ
 「ジャカルタ湾の水中環境の歴史と現状」
       ジャカルタ市都市環境評価センター情報統計部長 リリアン=サリ
 「健康における重金属公害の現状」 国立インドネシア大学公衆衛生学部
                          ラフマディ=プルワナ

  総合討議

6.閉会式
  挨拶  (財)水と緑の惑星保全機構        青山 俊介
       インドネシア環境省国際協力局長      ダナ=カルタクスマ

*モデレーター 
(財)水と緑の惑星保全機構          青山 俊介
 インドネシア環境法センター理事       マス=アフマッド=サントサ

連絡先
環境庁企画調整局環境保健部保健企画課特殊疾病対策室
室 長 石塚 正敏(6330)
 補 佐 正木 清郎(6331)