報道発表資料

この記事を印刷
1997年04月22日

中国におけるトキの繁殖状況について

環境庁が4月上旬に日本鳥類保護連盟とともに行った中国陜西省における現地調査の結果、野生のトキは今年8つがいを形成し、22卵を産卵していることが判明した。このうちの1つがいは、他のつがいと異なり、山奥の営巣地ではなく、洋県中心部に近いねぐらで産卵した。
 また、陜西省のトキ救護飼養センターでは人工飼育中のトキの2つがいがこれまでに4卵を産卵した。
 昨年に続き、良好な繁殖状況であることから、環境庁を含む官民一体となったトキ保護のための日本の協力が着実に効果を現してきたものと考える。

1 野生トキの繁殖状況

  • 野生のトキは、中国秦嶺山脈南部の陜西省洋県の山村部に44羽生息している。(96年秋の中国側調査結果)
  • 今年の繁殖期には、このうち16羽が8つがいを形成し、これまでに22卵を産卵した。
  • 一昨年までの営巣地は三岔河など山奥に限られていたが、今年は昨年と同様、1つがいが洋県中心部に近いねぐら(草  )に営巣した。
  • なお、昨年の繁殖期には、8つがいが24卵を産卵し、うち17卵が孵化。14羽が生存した。このうち1羽は救護飼養センターに保護収容された。

2 飼育下のトキの繁殖状況

  • 陜西省洋県のトキ飼養センターでは、25羽のトキを飼育している。
  • 今年の繁殖期には、これまでに2つがいが合計4卵を産卵した。
  • この他、1つがいが間もなく繁殖にはいると予想されている。このつがいは、雄が骨折したため、繁殖にはいるのが遅れたもの。
  • なお、昨年は、飼育下の3つがいが26卵を産卵し、13卵が孵化。10羽が生存している。

3 中国のトキの生息数

    (1997年春) (1996年春)
陜西省洋県   野生   44羽 31羽
    人工飼育 25羽 15羽
       
北京動物園   人工飼育 15羽 14羽
       
(合計)   84羽 60羽
    (野生 44羽) (野生 31羽)
    (人工 40羽) (人工 29羽)
(注) この他、日本では新潟県佐渡のトキ保護センターで1羽が飼育されている。

4 トキの繁殖状況についての環境庁の評価

(1) 昨年同様に野生のトキの繁殖状況は良好である。
   昨年は野生のトキの繁殖により14羽の幼鳥が誕生し、そのうち13羽が野生の状況で生存し、野生のトキの個体数が一挙に44羽に増加した。本年も昨年と同数のつがいが形成され、ほぼ同数の産卵が見られた。
(2) 山奥に限られていた繁殖地が低地部に広がりつつある。
 これまでトキの繁殖地は標高約900mの三岔河など山奥に散在していたが、昨年より標高約500mの洋県中心部に近い平地部の林でも営巣が見られるようになった。この林は繁殖に参加していないトキのねぐらに利用されているもの。このことは、平地部における生息環境が徐々に改善されていることを示すものといえよう。
(3) トキの良好な繁殖状況は日本の地道な協力が効果を現してきたことを示すものである。
   中国のトキ保護のために、95年より、環境庁と、経団連自然保護基金及び環境事業団地球環境基金の助成を受けた(財)日本鳥類保護連盟が中国側と協力して、飼育繁殖施設の拡充、生息環境の改善、調査研究及び普及啓発の促進に取り組んできた。また、これに加え、民間の募金による中国側への資金提供が行われているほか、89~92年の間にはJICAによる機材供与、専門家派遣等が行われた。こうした地道な協力の積み重ねにより、生息地における野生個体の増加と人工繁殖による飼育個体の増加がようやく着実になされつつある状況になったものである。
 

5 今回の中国トキ保護調査団の概要

(1) 目的 {1} 陜西省洋県におけるトキの生息・繁殖状況の把握
  {2} 日中トキ保護協力事業の進捗状況確認
(参考) 事業内容 飼養センターの設備拡充
生息環境の改善
調査研究
普及啓発
日本側協力機関 環境庁、(財)日本鳥類保護連盟、経団連自然保護基金、環境事業団地球環境基金
 
(2) メンバー  星野一昭  環境庁自然保護局野生生物課 課長補佐
 金子良則  新潟県佐渡トキ保護センター 主任
 柳澤紀夫  (財)日本鳥類保護連盟 理事
 杉本吉充  (財)日本鳥類保護連盟 総務室長
 
(3) 日程  4月4日~4月14日

現地におけるトキの繁殖状況等の写真は野生生物課に用意してあります。

連絡先
環境庁自然保護局野生生物課
課長:小林  光 (内線6460)
 補佐:星野 一昭(内線6462)
     直通電話 03-3580-2161