報道発表資料

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1999年01月26日

4つの「総合環境学習ゾーン」の決定について

体験的な環境学習活動を推進するため、平成10年度第3次補正予算に盛り込まれた「総合環境学習ゾーン・モデル事業」では、各地で自主的な環境学習活動が行われることを前提に、環境庁の直轄事業として、これら学習活動の現場において必要な学習用資器材を配備することとしている。整備対象の学習現場については、子ども達等の学習希望者が1泊程度の行動圏の中で、多様なテーマや環境を対象に学習活動が行えるよう、幅広いバラエティの現場を網羅できる、それぞれ複数の県からなる4つのゾーンの中で選定することとしていた。
 環境庁ではこのたび、まずこの4つのゾーン({1}日本海東北部、{2}東海、{3}京滋・阪神、{4}瀬戸内海中央)を決定した。

1.4つの総合環境学習ゾーン

 以下の4つのゾーンにおいて、今後、関係県・市町村における環境学習活動への取組プランを取りまとめつつ、学習資器材を配備する場所及びそこへ配備する学習資器材(展示、観察用具、実験用具、資料・テキスト、情報機器及びそのソフト等)の内容を決定する。
 なお、この4つのゾーンの周辺においても、他のモデルになる環境学習活動が期待される若干数の学習現場については、4つのゾーンに準じて事業の対象地区とする予定である。

ゾーン
地域の特性
関係県
日本海東北部ゾーン 日本海に面する多雪地帯。かつては日本海沿岸のつながりが深く、現在は大陸との関係が重要となる地域。ブナ林をはじめ自然が豊かで、農林漁業も盛んである。 秋田、山形、新潟 (概ね290万ha)
東海ゾーン 主要な交通路が集中し、地域間の交流も活発な、太平洋ベルト地帯の中央。温暖な気候の下で各種の人間活動が発展。 三重(北中部)、愛知、岐阜、長野(南部)、静岡、山梨(南部)(概ね340万ha)
京滋・阪神ゾーン 日本の中で最も古くから栄えた歴史的背景を有する大都市地域。水系としてのつながりが深く、身近に二次的な自然も多く残されている。 大阪、兵庫(東部)、京都、滋賀(概ね150万ha)
瀬戸内海中央ゾーン 日本唯一の多島内海。小雨気候のもと、永い間の人間と自然の係わりの中で形成された独特の風土が特徴。 岡山、香川、広島(概ね170万ha)

※4ゾーン周辺の若干数の学習現場についても、事業の対象地区とする予定 

2.各学習ゾーンで期待される特色ある環境学習活動の推進の方向

 各ゾーンでは、かねてより各自治体、NGO等による環境学習活動が行われているが、 これら活動のうち、環境庁が重点的に学習資器材を提供、配備することにより、各ゾーン それぞれ、例えば、次のような特色ある活動が行われることとなるようにと、環境庁としては 期待している。このため、今後、関係自治体等と相談し、地元の参加、連携が得られるもの についてその具体化を図っていく。

ゾーン
他のモデルとなるような特色ある環境学習活動のイメージ
日本海東北部ゾーン
  • 関係県が連携して海辺の生物観察、水質調査、ゴミ拾い等を行い日本海の環境保全を考える「夕陽海岸スクール」
  • 雪国の暮らしを体験して雪と親しみ、雪の量や質の変化から環境問題を学ぶ、「雪国から地球を考える」
  • 各地(各県)で山を歩き、日本海特有の森林生態系を学び、情報交換等を行う「ブナの森探検隊」
東海ゾーン
  • 簡易な分析キットや測定器で大気・騒音などを歩いて調べ、地域内の環境の違いを体験する「エコ体験調査隊」
  • 干潟や磯で自然を観察・調査し、「海辺いきものマップ」を作成
  • 地域の様々な活動団体を巻き込み、ゴミの減量化、分別、リサイクル、リユースを学び、クリーン作戦を進める「ごみ大好き作戦」
  • 「環境研究村」の知識や専門家を子どもたちにも開放する「子ども環境研究むら」 
京滋・阪神ゾーン
  • 大阪湾や琵琶湖をはじめ、河川の上・中・下流で連携して水生生物や水質を一斉に調査し、河の環境保全を考える「水辺スクール連合」
  • 工場と地域の人々が一緒に街の中や湾・湖・川等の環境を調べて、地域環境の改善を考える「エコ町内会活動」
  • 公園・学校や神社の樹林の様子を調べて、「緑の宝マップ」を作り、調査木を決めて「グリーン検診」を行う。
瀬戸内海中央ゾーン
  • 海岸のクリーン作戦をゾーン内で実施。ごみマップを作成し打ち寄せられるゴミの起源や環境の一体性を考える「このごみ何のごみ」研究
  • 落ち葉を集めた堆肥づくりや炭焼き体験を通じて、マツ林や里山の保全と活用方法を学ぶ「里山再発見プロジェクト」
  • 瀬戸内海の無人島で電気を使わずに生活する「環境サバイバル体験」を行い、環境に負荷を与えない生活を学ぶ

(注)本表の学習活動の内容は、概ねの方向を示すもので、名称も仮称である。

3.今後の段取り

 今後は、4つのゾーンの関係県からの学習活動展開についての方針等のヒアリング、各ゾーン毎の打ち合わせ会、必要に応じた現地調査を経て、3月には各ゾーン毎の総合環境学習推進プラン(仮称)を 取りまとめるとともに、資器材を配備する現場及びそれぞれの整備内容を決定し、年度末には整備を終了する予定。
 また、これと並行し、各現場に共通的に配備する教材、情報システム、必要な基礎的情報データベース等については、環境庁において開発を進めていく。
 なお、平成11年度においては、各地における学習活動の状況を評価し、環境教育・学習の推進に係る施策の充実、特に、地球学校(中核的な環境教育・学習拠点施設)の構想の検討に役立てる。

参考1  総合環境学習ゾーン・モデル事業について

 本事業は、環境教育・学習のために必要な人材、教材、場、プログラム等の要素のうち、主に教材等の資器材に注目し、その充実を環境庁が支援することにより、特にこのような資器材の不足する現場における体験的な環境教育・学習の推進を図ろうとするもの。したがって、各地の現場における資器材面以外の面での自主的で活発な活動の展開が本事業の前提となる。なお、本事業全体の仕組みを図解すると下記のとおり(事業費7億5千万円)。

参考2  総合環境学習ゾーンの意味

 環境教育・学習の類型を、そのテーマと狙い(学習の進展段階)とにより区分してみると、次の表のようになる。このような多様な環境学習活動現場を、極力、1泊行動圏程度の地理的な広がりの中で網羅することにより、環境学習が現場の体験に裏付けられて進むように図ることが、ゾーン設定の狙いである。
 さらに、ゾーン内の各学習現場間での情報交換を密にし、学習者の便宜を図ることはもとより、各現場それぞれの学習プログラム、アクティビティの内容の充実、向上を図るとともに、一斉にひとつのテーマに様々なアプローチで取り組むなどにより、関心を呼び、かつ、分かりやすい学習が展開されることを期待している。このようなことを通じ、究極的には、より多くの国民が環境保全活動に参加することを狙っている。

参考3  4つのゾーン

 省略

連絡先
環境庁企画調整局企画調整課
課長 富田 辰郎(内6210)

環境庁企画調整局企画調整課環境保全活動推進室
室長 伊藤 哲夫(内6196)

環境庁自然保護局企画調整課
課長 小林 光 (内6410)

環境庁自然保護局企画調整課自然ふれあい推進室
室長 黒田大三郎(内6420)