報道発表資料

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2006年10月05日
  • 地球環境

平成19年度地球環境研究総合推進費の新規課題公募開始について

環境省では、地球環境保全政策を科学的側面から支援することを目的として、地球環境研究総合推進費(以下「推進費」という。)による研究を推進しています。
 推進費は、競争的研究資金として運用されており、産学官を問わず応募のあった研究課題に対して学識経験者による審査を行い、平成19年度から着手する研究課題を選定します。
 平成19年度新規研究課題の公募は10月6日(金)正午から開始し、11月17日(金)正午を期限として応募を受け付けます。
 従来に引き続き、地球の温暖化を始め、各種の地球環境問題の解決に資する独創的・先導的な研究課題を募集するほか、平成19年度から『地球温暖化に係る政策支援と普及啓発のための気候変動シナリオに関する総合的研究』として、「戦略研究開発プロジェクト」への参加者を広く募集します。

1.公募の概要

  • 環境省では、平成2年度から推進費を活用して、国立試験研究機関、独立行政法人、大学、民間研究機関等、様々な分野の研究機関、研究者の連携・協力の下に、地球環境研究を総合的に進めています(平成18年度予算額32.6億円、46の研究課題を実施中)。
  • 本研究資金により、地球環境の将来予測・影響・対策等に関する数多くの科学的知見を蓄積しつつあり、例えば、地球温暖化に関する研究成果は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第4次評価報告書へ多数引用される予定であり、国際的にも貢献しています。
  • 推進費では、基礎研究、応用研究を含め広く研究を実施していますが、環境省としては特に、地球環境問題を解決に導くための施策・政策に対する科学的な貢献を明確に指向した研究(政策反映指向型の研究)の提案を期待しています。

(1)研究の対象分野

研究の対象分野は、以下の6つの分野のいずれか又は複数の分野です。

[1]
オゾン層の破壊
[2]
地球温暖化
[3]
酸性雨等越境大気汚染
[4]
海洋汚染(地球規模の化学物質汚染を含む)
[5]
自然資源の劣化(熱帯林の減少,生物多様性の減少,砂漠化等)
[6]
地球環境保全のための社会・政策研究

(2)公募する研究区分(研究制度)

次に示す[1]~[4]の研究区分について、研究課題を公募します。

[1]戦略的研究開発領域
 公募に際して、あらかじめ、環境省が戦略研究開発プロジェクトの研究テーマの素案を作成し、そこに参加するサブテーマレベルの研究者や研究計画を公募するという、トップダウン方式の制度です。19年度に開始する戦略研究開発プロジェクトは『地球温暖化に係る政策支援と普及啓発のための気候変動シナリオに関する総合的研究』であり、詳細は次項2.を参照してください。応募者の要件は国内の研究機関(産学官等は問わない)に所属する研究者となっています。
[2]地球環境問題対応型研究領域
 上記[1]と異なり、公募に際して研究テーマを特定せず、個別又は複数の地球環境問題の解決に資する研究課題を広く公募するという、ボトムアップ方式の制度です(1課題当たり年間1千万円~1億円規模、3年間)。応募者の要件は[1]の場合と同じです。10課題前後の採択を予定しています。
[3]地球環境研究革新型研究領域(若手研究者のみ対象)
 上記(1)の研究対象分野について、特に新規性・独創性・革新性に重点を置いた若手研究者向けの募集枠で、研究代表者及び研究参画者のすべてが平成18年4月1日時点で40歳以下を要件とします(1課題当たり年間1千万円程度(直接研究費)、1~2年間)。10課題前後の採択を予定しています。
[4]国際交流研究(エコ・フロンティア・フェローシップ)
 上記[1]から[2]の研究課題を円滑に進めるため、海外の優秀な研究者(主に若手研究者)を招へいして行う研究です。4人程度の採択を予定しています。

2.戦略研究開発プロジェクト『地球温暖化に係る政策支援と普及啓発のための気候変動シナリオに関する総合的研究』について

(1)プロジェクト全体の研究テーマ

 19年度より開始する戦略研究開発プロジェクトの研究テーマは、『地球温暖化に係る政策支援と普及啓発のための気候変動シナリオに関する総合的研究』とします。今回は、これに参画する具体的な研究課題(プロジェクト構成研究課題)を公募します。プロジェクト全体の予算規模は現時点では未定ですが、年間4億円規模を想定しています。研究期間は、第I期3年間及び第II期2年間の計5年間(3年目に中間評価)を予定しています。

(2)プロジェクト全体の目的(概要)

 本研究の目的は、温暖化に伴う気候変動シナリオ研究を精緻化し、国内外の環境政策決定の場へ科学的知見を提供するとともに、これらの成果を広く国民へ普及する手法を確立することです。具体的な目標は以下のとおりです。
 気候モデルによる温暖化の将来予測シミュレーションは、温暖化対策を策定する上での重要な科学的基盤であると同時に、温暖化対策に取り組む国民各層の「温暖化すると何が起こるのか?」という素朴な疑問に答え、動機付けに資する科学的基盤でもあります。近年、コンピュータ技術の進歩に後押しされ、気候モデル研究は急速に発展してきました。特に日本では地球シミュレータの活用による顕著な進展があり、IPCC AR4にも新しい知見を多く提供しています。
 しかしながら、シミュレーション結果が政策策定および国民への普及啓発に実用的な観点から今まで以上に役立ち、またIPCCの次期報告書(AR5)に対して我が国が積極的な貢献を行うためには、以下の4つの克服すべき課題が残されています。

[1]個別気候モデルの信頼性
 世界の複数の気候モデルが少しずつ違う予測結果を与えており、どの結果をどの程度信頼してよいのか、信頼性に関する評価の物差しが必要となっています。加えて、気候モデルによる予測全般に対して、どのように信頼してよいのかが国民一般や政策決定者に対して分かりにくいため、適切な見方を提示することが必要となっています。
[2]気候モデルの解像度
 第二に、国内の地域毎の温暖化影響など国民の実感に即した、かつ適応策策定等に直結する情報を提供する上で、気候モデルの解像度(空間詳細性)が未だ不十分です。その一方で、空間的に詳細な予測結果であるほど、より不確実性が高いという矛盾もある。どの程度信頼してよいかの適切な指標を付した上で、より空間的に詳細な気候変動シナリオが求められています。
[3]気候モデルの予測結果の翻訳
 第三に、予測結果の大部分は、平均気温が何度上がるかといった抽象的な表現で語られることが多いのが現状です。これを、例えば「熱帯夜が現在よりも15日増える」という情報に翻訳することによって、「温暖化すると何が起こり、自分の生活にどう影響するのか」といった実感に即したメッセージを国民各層に伝えることが可能になります。こうしたコミュニケーションのための方法論、技術を今後確立していくことが課題となっています。
[4]気候モデルと社会経済シナリオの連携
 第四に、気候モデルは予測の前提条件として社会経済シナリオを用いるが、現在はこの間の連携が十分に行われていません。特に、空間解像度が粗い社会経済シナリオを基に、次世代の気候モデル実験に必要である空間詳細な化学物質等の排出シナリオや土地利用変化のシナリオを構築する手法を確立する必要があります。この点は、IPCC AR5に向けた気候モデル実験に向けて、国際的にも重要な研究開発課題の一つになる可能性が高いといえます。

 以上のような課題を克服するためには、予測シミュレーションのさらなる発展(「気候変動予測」研究と呼ぶ。)に期待するとともに、それと同時・補完的に、既存の予測結果ならびに今後5年間に得られる予測結果を解析して、より使いやすく信頼性の高い情報に昇華していく研究(「気候変動シナリオ」研究と呼ぶ。)を国内関連分野の研究勢力を結集して、総合的に展開する必要があります。

 現時点では、上記に示した課題を克服するために必要な個々の研究課題(プロジェクト構成研究課題)は未定です。このため、戦略研究プロジェクトを構成するにふさわしいプロジェクト構成研究課題を公募します。上記4つの課題に対応したプロジェクト構成課題に、プロジェクト全体を総括する課題を加えた5つのプロジェクト構成課題の採択を予定しています。

(3)公募するプロジェクト構成研究課題の予算規模と研究期間

 プロジェクト構成研究課題の予算規模は、1研究課題当たり、年間数百万円~約1億円の範囲内とし、研究期間はプロジェクト全体と同じ5年間(3年目に中間評価)を予定しています。

3.公募の詳細

 公募の詳細については、「公募要項」を参照して下さい。応募書類の様式を含め、地球環境研究総合推進費ホームページ(https://www.env.go.jp/earth/suishinhi/index.htm)にて閲覧・入手(ダウンロード)が可能です。
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4.今後のスケジュール

10月6日(金) 公募要項の公開(上記ホームページ上)、応募書類の受付開始
11月17日(金) 応募書類の受付締切
12月~1月 第一次書面審査
1月~2月 第二次ヒアリング審査
3月 採択候補課題の決定

5.公募に関する問い合わせ先

環境省地球環境局研究調査室 推進費担当 佐藤、千葉
TEL 03-3581-3351(内6734)、FAX 03-3581-4815、e-mail suishinhi@env.go.jp

連絡先
環境省地球環境局総務課研究調査室
室長:塚本 直也(内線6730)
 補佐:佐藤 保 (内線6732)
 担当:千葉 康人(内線6732)