報道発表資料

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1998年01月14日

白神山地周辺地域における環境共生型地域整備計画調査報告書について

「白神山地周辺地域における環境共生型地域整備計画調査」は、国土総合開発事業調整費により平成7~8年度に国土庁、農林水産省、林野庁、建設省と共同で実施した調査である。
 環境庁では、世界遺産地域の白神山地の貴重な生態系を維持しつつ、地域活性化に結びつけるために、白神山地周辺地域における自然環境の保全と適正な活用を軸
とした総合的な地域整備計画を策定することを目的とした調査を学識経験者等からなる調査委員会により実施し、このたび調査結果の報告書をとりまとめた。 
 同調査では、地域特性の把握を行った上で、計画の基本方針・基盤整備方針の策定等を行った。
 同調査の報告書は、下記のとおり、環境庁白神山地世界遺産センター他において縦覧の用に供する。
(縦覧先)
環境庁図書館(東京都千代田区)
   TEL:03-3581-3351
環境庁東北地区国立公園・野生生物事務所(青森県上北郡十和田湖町)
   TEL:0176-75-2728
環境庁白神山地世界遺産センター(青森県中津軽郡西目屋村)
   TEL:0172-85-2622
青森県自然保護課(青森県青森市)
   TEL:0177-22-1111
秋田県自然保護課(秋田県秋田市)
   TEL:0188-60-1616

1. 調査名
白神山地周辺地域における環境共生型地域整備計画調査

2. 調査年
平成7~8年度

3. 報告書の概要
[1] 調査の背景及び目的
当地域は、青森県と秋田県にまたがる約13万haの原生的なブナ林を主体とする豊かな自然を有する白神山地の周辺地域であるが、社会的には、過疎や高齢化が進展するなどの課題に直面している。
このため、本調査は、白神山地の貴重な生態系を維持しつつ、地域の活性化に結びつけるために、白神山地周辺地域における自然環境の保全と適正な利用を軸とした総合的な地域整備計画を策定することを目的とする。
[2] 調査の範囲
青森・秋田県境に位置する世界遺産地域白神山地の登録地の周辺地域(世界遺産地域登録地そのものは調査対象外)
[3] 調査結果の概略
(1) 地域特性の把握
地域資源の特性から、当地域は、標高に特徴づけられる流域を単位とした3つの環境に区分される。区分された環境には、多様な価値をもつ地域資源が分布し、「森林」「河川」「道」によって相互につながりを持っている。
{1} 河川源流域および上流域(山地)
人間の居住空間より高度が高い標高200m以上の地域は、自然林を主体とした森林生態系が形成される自然の領域を成している。
{2} 河川中流域(里地)
周囲を白神山地に連なる尾根に囲まれる標高100~200mに位置する谷底の里地では、地形特性に応じた巧みな土地利用が行われ、森林・畑地・水田・居住地がセットになった集落形態が形成されている地域である。
{3} 河川下流域(平地)
標高約100m以下の低地は、人為による土地改良が進展した地域であり、人工的な水利システムによる水域の社会的利用がなされている。また、陸域の水辺の利用に加えて沿岸域が利用されている。
(2) 環境共生型地域整備計画の目標
白神山地の多様な地域資源を持続的に利用することで、人間と自然の新しいかかわりを考え、その過程において地域独自の新しい価値を創造することを、環境共生型地域整備計画の目標とした。
(3) 基本方針
自然環境保全に根ざした適正な地域資源の利用と、地元住民の将来にわたる利益の確保の観点から、本計画の基本方針は、「もり」「みず」「交流」をキーワードに、地域資源のネットワーク化を図り、地域資源の根幹となっている「森林」や「河川」の保全と復元、また地域文化を支えている情報や道を中心とした「交流」の回復と創造を図ることとした。
1) もりのネットワーク計画
もりのネットワーク計画は、陸上生物の生息環境の保全により、生物多様性の維持・増大と地域の優れた森林景観の保全や地域の生活を支えてきた自然資源の安定供給、自然資源を持続的に利用する伝統的な技術や地域文化の保存・活用につなげることを目的とする。
良好な森林であるブナ等天然林や広葉樹林を保全し、可能な限りブナ林や広葉樹林の復元を図り、もりのネットワークを構築する。
2) みずのネットワーク計画
みずのネットワーク計画は、水生生物の多様性の維持・増大を図り、水辺景観の保全、自然資源供給の安定性の確保、自然資源を持続的に利用する伝統的な技術や地域文化の保存・活用につなげることを目的とする。水生生物の生息環境である河川の流量・水質・水温等を良好な状態で保ち、河川本来の形態・河床構造・周辺環境を維持・復元するとともに、ダム等で分断された箇所は回遊路の確保等を行い、みずのネットワークを構築する。
3) 交流のネットワーク計画
地域活性化を図るために、地域特性に基づき、白神山地地周辺地域に6つの地域ユニットを設定し、各地域ユニット内において、地域資源を利用するための拠点のネットワーク化をすすめ、地域における人と情報の交流を図る。また、各地域ユニット内の交流の中核となる拠点を設置し、6つの中核拠点のネットワーク化及び中核拠点と他の都市とのネットワーク化をすすめ、人と情報の広域的な交流を図る。
(4) 基盤整備方針
地域資源を保全・復元し、活用していくために、基礎データの収集・研究の実施、資源保全および利用のための拠点や組織づくりを行う。
(3)に示されたネットワークを支え、求められる機能や満足するためのに最低限必要と考えられる基盤整備項目は次のとおり示される。
{1}中核交流拠点、{2}交流拠点、{3}拠点間の連絡-交通網と情報網、{4}整備推進体制の確立と組織づくり
(5) 個別整備手法
「調査研究」、交流のネットワークを支える情報網に乗せる「情報」のあり方、そして持続可能な利用のためのルールづくりの基礎となる「インタープリテーション」の個別整備を図る。
4. 調査委員会名簿
委員長  糸賀 黎(長野県自然保護研究所 総括研究員)
 牧田 肇(弘前大学教養部教授)
 小笠原 
連絡先
環境庁自然保護局計画課
課    長 :小林 光  (内線6430)
 課長補佐 :上杉 哲郎(内線6432)
 審査官   :奥田 直久(内線6436)
 代表TEL :03-3581-3351