報道発表資料

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1998年03月09日

「水質汚濁に係る生活環境の保全に関する環境基準の水域類型の指定の見直しについて」及び「水質汚濁防止法の特定施設の追加等について」の中央環境審議会の答申について

 3月9日に開催される中央環境審議会水質部会(部会長:村岡浩爾・大阪大学工学部教授)において、昨年5月14日に諮問された「水質汚濁に係る生活環境の保全に関する環境基準の水域類型の指定の見直しについて」及び「水質汚濁防止法の特定施設の追加等について」に対する第1次答申案がとりまとめられ、同日、近藤中央環境審議会会長より環境庁長官に対し答申が行われた。
 環境庁では、本答申を踏まえ、環境基準の水域類型の指定の見直しについては告示の改正、特定施設の追加については政令改正を速やかに行うよう手続きを進める予定である。

(答申の要点)
1.(環境基準の水域類型の指定の見直しについて)
中川下流、荒川下流(2)*、小河内ダム貯水池(奥多摩湖)について、利用目的、現状水質を考慮し、水域類型を見直す。
2.(特定施設の追加等について)
水質汚濁防止法の規制対象となる施設(特定施設)にPCB処理施設を加える。

*荒川下流(2)・・・笹目橋より下流

1.「水質汚濁に係る生活環境の保全に関する環境基準の水域類型の指定の見直しについて」1次答申について

1)背景
{1}河川・湖沼等の水質汚濁の防止の観点から、昭和46年12月28日付環境庁告示第59号により、生活環境の保全に係る環境基準が設定された。この環境基準は、水域の利用目的(水道、水産、水浴等)に対応して複数の類型が設けられており、個々の水域にいずれかの類型をあてはめることによって、当該水域の、具体的な水質目標が示され、諸般の施策が講じられることとなっている。また、類型指定は、政令で指定された水域以外の水域については環境庁長官が行うこととされている。
{2}水域類型の指定については、水域の利用の態様の変化等事情の変更に伴い適宜改訂することとされているが、多くの公共用水域において、利用目的や水質汚濁の状況について変化が生じているにも関わらず、ほとんど見直しが行われていない状況にあった。また、平成6年には、総務庁の行政監察により見直しの実施について勧告がなされている。このため、利用目的や水質汚濁について状況の変化が生じている水域について、類型指定の見直しを行う必要が生じた。
2)審議経過
 本年度は、平成9年5月14日付で中央環境審議会に諮問し、まず、状況変化の著しい中川下流、荒川下流(2)、小河内ダム等につき、以下のように水質部会及び水質部会陸域環境基準専門委員会でご検討いただき、第1次の答申をいただくこととなった。
平成9年5月14日第14回中央環境審議会水質部会
・諮問
・陸域環境基準専門委員会の設置
平成9年9月30日第1回陸域環境基準専門委員会
・諮問文の内容について
・当面の検討の進め方について
・今年度見直し対象水域の概要について
平成10年1月16日第2回陸域環境基準専門委員会
・見直し対象水域の将来水質について
・水域類型の見直し(案)について
・来年度見直し対象水域の予定箇所(案)について
平成10年2月17日第3回陸域環境基準専門委員会
・水域類型の指定の見直しに係る一次報告(案)について
平成10年3月9日第15回中央環境審議会水質部会
・1次答申

3)答申の概要
政令別表による名称水域水域類型
(下段は現行)
達成期間
(下段は現行の類型の達成状況)
利根川水系の中川中川下流
(花畑川分岐点より下流)
河川C5年以内で可及的速やかに達成
河川D達成
荒川水系の荒川荒川下流(2)
(笹目橋より下流)
河川C直ちに達成
河川D達成
多摩川水系の多摩川小河内ダム貯水池
(奥多摩湖)
(全域)
湖沼AA5年以内で可及的速やかに達成
河川AA達成
湖沼[1]直ちに達成
(窒素は除く) 
――――――――

 各々の利用目的及び環境基準の達成状況より、水域類型及び達成期間は以上のとおりとすることが望ましいとされた。

4)今後の予定
 環境庁では、本1次答申に基づき、速やかに当該告示の改正をすることとしている。また、来年度は、多摩川下流、多摩川中流及び猪名川下流並びに深山ダム貯水池、川治ダム貯水池、土師ダム貯水池、弥栄ダム貯水池及び小瀬川ダム貯水池について見直しを行うことを予定している。

2.「水質汚濁防止法の特定施設の追加等について」1次答申について

1)背景
 水質汚濁防止法においては、公共用水域及び地下水の水質を汚濁するおそれのある汚水又は廃液を排出する施設を特定施設として政令で指定し(水質汚濁防止法施行令別表第一)、排水規制等の対象としている。
 この特定施設については、工場及び事業場の汚水等の排出実態の変化や規制対象物質の追加等に伴い、順次追加してきているが、平成3年度にトリクロロエチレン又はテトラクロロエチレンによる洗浄施設及び蒸留施設を追加したのを最後に追加を行っていない。この間、平成6年には、13の有害物質が新たに水質汚濁防止法上の規制対象物質に追加されたほか、未規制の施設について水質保全上の問題が指摘されるなど、排水規制の見直し、強化を行う必要性が高まってきていたところである。

2)審議経過
 平成9年5月14日付で、平成6年に追加された13の有害物質を排出する施設や、その他水質汚濁の原因となるおそれのある施設の特定施設への追加等について、中央環境審議会に諮問し、以下のように水質部会及び水質部会排水規制専門委員会でご検討いただいた。
平成9年5月14日第14回中央環境審議会水質部会
・諮問
・排水規制専門委員会の設置
平成9年10月20日第1回排水規制専門委員会
平成10年1月16日第2回排水規制専門委員会
・PCB処理施設の特定施設への追加について検討
・水質部会への報告案について了承
平成10年3月9日第15回中央環境審議会水質部会
・答申

3)答申の概要及び今後の予定
 審議の結果、1次答申として「PCBの処理施設を水質汚濁防止法の特定施設に追加することが適当である。」との結論をいただくこととなった。PCB処理施設の追加は、化学的処理技術の開発や「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」の改正等PCB処理に向けての取組が強化されるなか、PCBの安全な処理の推進に資するものである。環境庁では、これを受け水質汚濁防止法施行令を改正することとしている。
 今後は、その他の施設等に関し、引き続き排水規制専門委員会でご検討いただくこととしている。

水質部会委員名簿
部会長村岡 浩爾大阪大学工学部教授
委員浅野 直人福岡大学法学部教授
加藤 壱将全日本水道労働組合中央執行委員長
鎌倉 利夫全国町村会監事
岸 ユキ女優
木原 啓吉江戸川大学社会学部教授
小早川 光郎東京大学大学院法学政治学研究科教授
櫻井 治彦労働省産業医学総合研究所所長
佐竹 五六(社)配合飼料供給安定機構理事長
清水 誠東京大学名誉教授
須藤 隆一東北大学大学院工学研究科教授
隅山 克己全国漁業協同組合連合会専務理事
高橋 さち子魚類生態研究家
高橋 裕芝浦工業大学工学部教授
中川 昭一郎東京農業大学総合研究所教授
宮西 香津子全国地域婦人団体連絡協議会理事
三好 俊吉日本鋼管(株)代表取締役会長
特別委員恩田 怡彦日本製紙連合会副会長
小林 康彦(財)日本環境衛生センター専務理事
坂井 順行(財)港湾空港建設技術サービスセンター理事長
猿田 勝美神奈川大学名誉教授
七野 護(社)日本食品衛生協会専務理事
谷山 重孝(社)日本農業集落排水協会理事長
林 裕造北里大学薬学部客員教授
樋口 敬一(社)日本化学工業協会技術環境部会副部会長
桧山 博昭金属鉱業事業団理事長
福井 経一(財)日本下水道協会常務理事
松尾 友矩東京大学大学院工学系研究科教授
陸域環境基準専門委員会名簿
委員長猿田 勝美神奈川大学名誉教授
委員高橋 裕芝浦工業大学工学部教授
特別委員松尾 友矩東京大学大学院工学系研究科教授
専門委員岡田 光正広島大学工学部教授
沖野 外輝夫信州大学理学部教授
小倉 紀雄東京農工大学農学部教授
京才 俊則建設省土木研究所下水道部長
藤原 正弘(財)水道技術研究センター専務理事
牧 幸男太平生物化学工業(株)
増島 博東京農業大学農芸化学科教授
宮崎 章工業技術院資源環境技術総合研究所水圏環境保全部長
渡辺 正孝国立環境研究所水土壌圏環境部長
排水規制専門委員会名簿
委員長松尾 友矩東京大学大学院工学系研究科教授
委員浅野 直人福岡大学法学部教授
猿田 勝美神奈川大学名誉教授
須藤 隆一東北大学工学部教授
特別委員福井 経一日本下水道協会常務理事
専門委員上路 雅子農林水産省農業環境技術研究所資材動態部農薬動態科長
田中 勝国立公衆衛生院廃棄物学部長
土屋 隆夫東京都環境学研究所所長
森田 昌敏国立環境研究所地域環境研究グループ統括研究官
米澤 義堯通商産業省工業技術院資源環境技術総合研究所首席研究官
連絡先
環境庁水質保全局水質管理課
課 長 :一方井誠治(6630)
 補 佐 :増田  隆司(6632)
(水域類型見直し関係)

環境庁水質保全局水質規制課
課 長 :畑野  浩  (6640)
 補 佐 :長野  幸司(6644)
(特定施設関係)