報道発表資料

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1996年12月20日

ジュネーブにおける気候変動枠組条約の関連諸会議の結果概要について

  1. ジュネーブにおいて、現地12月9日から18日にかけて逐次開催されていた気候変動枠組条約の一連の関連諸会議が終了した。
  2. 16日~18日に開かれた科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA)会合では、温室効果ガス目録ガイドラインづくりなどについてのIPCCとの協力、SBSTAの長期的な作業計画における重要なテーマなどについて、各国が合意した。なお、共同実施活動(AIJ)については次回会合で引き続き議論されることとなった。
  3. 同じく16日~18日に開かれた条約第13条に関するアドホックグループ(AG13)会合では、条約の実施に関する問題の解決のための多国間協議手続の基本的な性格について、各国より様々な見解が発表され、本件についての理解が深められた。次回会合より、手続の内容などに関する合意形成に向けた話し合いが進められることとなる見込みである。
  4. この他、OECD及びIEAがいわゆるコモン・アクション・スタディ(CAS)の今後の進め方を議論するために会合を開いたほか、IEAを中心に進められている気候変動テクノロジーイニシアティブ(CTI)に関しても今後の進め方を検討する会合が開かれた。先進工業国の全てを含むOECDについては、今回の会合の結果、地球温暖化対策に関する役割の発揮がますます期待されるところとなってきた。
  5. さらに、今回の会期中には、外部の団体が共同実施活動(AIJ)に関する会議を開くなど、地球温暖化対策を巡る国際的検討作業が活発に進められた。

1.SBSTA第4回会合の結果

(1) IPCCとの協力について
 
 主に、{1}IPCCの温室効果ガス目録ガイドライン、{2}IPCCの活動に対する協力、{3}IPCCが準備することとなっている排出プロファイル(排出量の将来見通し)に対する助言、について議論された。
 {1}については、次のような結論を得た。
1) 1996年の改正ガイドラインの附属書[1]国に対する適用は1997年については任意とし、1998年については義務とする。なお、基準年(1990年)にさかのぼって再計算する。
2) HFCs、PFCs、SF6の排出量については、生産量や使用量ではなく、「現実の排出量」の推定が奨励される。
3) 収穫木材の取り扱いについては、IPCCが準備する専門家会合を歓迎する。
 {2}に当たっては、IPCCの技術報告や特別報告作成の活動を歓迎するとともに、第3次評価報告書の作成については、SBSTAにおける検討事項が考慮されるようIPCCに依頼することとなった。また、IPCCが、1996年の改正ガイドラインについて、ワークショップ、セミナー等を通じて周知に努めるよう要求する旨決定した。
 {3}については、報告の結果を地球温暖化防止京都会議に向けた交渉に資するように作業を進めるべきとの意見がある一方で、京都会議に向けた交渉とは切り離し、社会経済的影響も含め周到に準備して作成すべきという意見も出され、排出プロファイルの性格付け自体について見解が分かれた。結局、この案件については、IPCCが各国から提出される意見を基に報告書の作成を進める一方、次回会合においても、引き続き議論することとなった。
 
(2) 方法論的問題
 
 この議題では、{1}条約プロセスにおける長期的な作業計画、{2}附属書[1]締約国の通報準備に係るガイドラインの改正について、検討された。
 {1}は、今回初めて取り上げられることとなった議題であり、作業計画とは、目録、対策、影響分析に関する検討の進め方などである。検討の結果、方法論的なテーマとして重要なものとして、1)対策の評価手法、2)適応対策の評価手法、3)排出推計手法、4)温室効果ガス抑制及び吸収増加に係る特定の政策措置の効果測定手法、5)対策技術の評価手法、6)気候変動影響評価手法、が挙げられた。なお、長期的な作業計画に関して、IPCC、GEF等他の関連する国際機関等との役割分担が必要性であることが各国の共通の認識とされた。  
 {2}については、今回の会合ではガイドラインの見直しは行わず、1)国際バンカー油については現状通り外数計上とする、2)電力の貿易については現状通り輸出国でカウントする、3)ア)排出量の気温補正とイ)電力貿易に関する技術的政策的事項に関する文書を作成することを事務局に依頼する、4)これら1)~3)についてはさらに検討を続けることが決議された。また、土地利用の変化や森林分野からの排出・除去のカウントや、温暖化指数(GWP)についても、引き続き検討を続けることとなった。
 
(3) 共同実施活動について
 
 AIJの統一報告様式及び手法上の課題について検討が行われたが、報告様式の項目毎に詳細な検討を始めたため、調整作業が著しく難航し、報告書様式の前半部分までしか十分な議論を行うことができなかった。そのため、残りの部分については、次回の会合で引き続き検討することとなった。

2.AG13会合の結果

 AG13は、条約第13条に定める条約の実施に関する問題を解決するための多国間協議手続の具体的あり方について議論される場である。これまで2回開催されてきたが、実質的な議論が行われるのは、今回が初めてとなる。今回は、議長の進行により、{1}その基本的な性格がいかにあるべきか、{2}どのような機能を有するべきか、{3}機関の構成、{4}手続について議論された。

{1} については、各国より、多国間協議手続は、簡潔、協調的、透明(結果及び手続が外部から明らかであること)、予防的(結果が生じる前に対策を講じ、将来に向けての条約の履行を確保すること)、司法的なものではないこと、といった基本的な概念を有するべきであることが表明された。
{2} については、SBIや科学的、技術的な事項について問題の解決にあたるマンデートを有するSBSTAとの関係や、紛争解決について定める条約第14条との関係を明確にする必要があるとの指摘が行われた。また、多国間協議手続は、拘束的(管理的)なものであるより勧告的(忠告的)なものであるべきと多くの国が主張した。このように多国間協議手続を何らかのレビュープロセスへと発展させようとの見解を持つ国がある一方、本手続を援助的なものとすべきことを強調する国もあり、この点については、次回会合で議論することとなった。
{3} については、各国より様々なアイデアが出されたが、新設とするか既設の機関を活用するか、機関を締約国会議の下に設けるかSBIの下に設けるか、常設とするか臨機応変に設置するか、機関の人数を限定するか無限定とするか等の点で、必ずしも一致した見解は出なかった。
{4} については、手続は、締約国会議の決定によって確立されるべきであること、手続の管理は最終的には締約国会議が行うこと、手続の結論は義務付けのない勧告とすべきであり、拘束的なものとすべきではないこと、との主張が多くの国より表明された。協議手続の対象となる課題の取り上げ方、協議の頻度については、特に突っ込んだ議論は行われなかった。

 これまでの理解を深めるための話し合いを受けて、次回会合からは、合意形成が進められていくこととなる予定である。

3.CASに関するコモン・インタレスト・グループ(OECD加盟国+移行期経済諸国)の会合

 12月13日に開催され、イギリスが議長を務めた。排出枠取引の活用、農業構造改革政策への地球温暖化対策等の組み込み、排出量予測の手法向上、国際約束の遵守確保策、移行期経済諸国との協力などについて主に意見交換がなされ、明年2月のOECD会合で検討した上、3月のAGBM第6回会合に対し、その時点までの検討の成果をすべて盛った報告書を提出することとした。

4.CTIに関するIEA等の会議

 12月13日に開催され、オランダが議長を務めた。科学に関するIPCCの活動に加え、技術に関するSBSTAの作業も活発化すると想定されるが、こうした中で、CTIがどのような役割を果たせるかにつき意見交換が行われた。その結果、CTIの7つのタスクフォース(参考参照)の活動について、それぞれの民間セクターや途上国の参加を促していくことにより、既存の活動を充実していく方向への賛同が多く、タスクフォース毎に検討した上、明年2月のCTI会合にその結果を報告することとなった。

 (参考)CTIの7つのタスクフォース

1. 環境にやさしく費用効果の高い技術の利用を促進するための、政府間及び政府と民間の協力の推進
2. 国別行動計画について、技術評価の手法等、技術に関する側面からの貢献
3. エネルギーに関する技術ネットワークの確立と能力開発
4. 新技術の市場普及の促進
5. 技術賞制度の創設等による環境にやさしい技術に対する認識の向上
6. 既存の研究、開発活動の間の関連付け及び協力の強化
7. 温室効果ガスの固定化、処分等に関する長期的技術開発の可能性の調査

5.その他の会合

 環境アカデミー(スイス政府が支援する環境政策研究NGO)の主導により、AIJのための国際的なマニュアルづくりの作業が開始されており、このための会合が12月13日に開かれた。我が国に対し、作業への参加が求められた(今後、環境庁として参加する方向で検討の予定)。

 また、19日には、条約事務局の主催により、途上国の条約遵守のための活動を促進するために国際機関や途上国の専門家等が集まって情報交換を行う「気候変動フォーラム」が開催された。今回の会合では、排出目録及び国別報告書の作成促進方策について意見交換が行われ、我が国からは、アジア・太平洋地域における取組が着実に進められていることを報告し、高い評価を得た。今後、途上国の取組を促進するために、1997年中に地域ワークショップを開催し、情報交換、促進プロジェクトの作成等を行うこととなった。

連絡先
環境庁企画調整局地球環境部環境保全対策課
課 長:小林   光(6740)
 担 当:奥山 祐矢(6739)