報道発表資料

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1996年12月18日

トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンに係る環境基準について「今後の有害大気汚染物質対策のあり方について(第三次答申)」

 12月18日に中央環境審議会大気部会(部会長;斎藤孟;早稲田大学名誉教授)が開催され、標記の答申がまとめられる予定である。
 答申の要点は以下のとおりであり、環境庁においては、これらを踏まえ、速やかに環境基本法第16条に基づく大気環境基準の告示を行う予定である。今後は、改正大気汚染防止法に基づき、本基準が確保されるようトリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの排出抑制対策の推進に努めていくこととしている。
(答申の要点)

  1. トリクロロエチレンに係る環境基準について
    トリクロロエチレンに係る大気環境基準の設定に当たっての指針値を年平均値 0.2mg/m3 以下とすること。
  2. テトラクロロエチレンに係る環境基準について
    テトラクロロエチレンに係る大気環境基準の設定に当たっての指針値を年平均値 0.2mg/m3 以下とすること。

1.経 緯

 中央環境審議会(会長;近藤次郎;元日本学術会議会長)は、平成7年9月20日付けで諮問された「今後の有害大気汚染物質対策のあり方について」に対し、本年1月30日付けで中間答申を行い、これを踏まえ、大気汚染防止法の一部改正が行われた(5月9日公布)。
 これを受けて、中央環境審議会大気部会においては、今後の有害大気汚染物質対策のうち、有害大気汚染物質に係る環境基準の設定に関する専門的事項について環境基準専門委員会(委員長;横山榮二;(社)大気環境学会会長)を設置し、検討を進めてきた(別紙1)。
 その結果、本年10月18日付けの「今後の有害大気汚染物質対策のあり方について(第二次答申)」において、ベンゼンに係る大気環境基準設定に当たっての指針値が提示された。
 12月18日(水)に開催予定の第16回大気部会においては、平成7年9月20日付けの諮問に対し、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンに係る環境基準に関する「今後の有害大気汚染物質対策のあり方について(第三次答申)」(別紙2)がまとめられる予定である。

2.今後の有害大気汚染物質対策のあり方について(第三次答申)の概要

(1) トリクロロエチレンに係る環境基準について

 トリクロロエチレンは、化学工業製品の合成原料、溶剤、洗浄剤等、広範な用途に使われている。動物実験では発がん性を有することが確認されており、発がん性以外の毒性としては中枢神経障害、肝臓・腎臓障害等が報告されている。
 また、トリクロロエチレンについては、平成5年に環境庁が大気環境指針(年平均値として 250μg/m3 以下)* を設定しており、我が国の大気環境中濃度は、これまでの測定結果によれば、一般環境ではいずれも大気環境指針を下回っているものの、工場・事業場の周辺環境では大気環境指針を上回る測定データも得られている。
 環境基準専門委員会においては、トリクロロエチレンの健康影響評価について再度検討を行い、トリクロロエチレンの人の健康影響に係る判定条件と指針に関する専門委員会報告(別添1)がまとめられた。

 第三次答申は、この報告に基づき、「トリクロロエチレンに係る大気環境基準の設定に当たっての指針値として、低濃度長期曝露による健康影響を未然に防止する観点から年平均値0.2mg/m3以下」と結論している。

(2) テトラクロロエチレンに係る環境基準について

 テトラクロロエチレンは、化学工業製品の合成原料、溶剤、洗浄剤等、広範な用途に使われている。動物実験では発がん性を有することが確認されており、発がん性以外の毒性としては中枢神経障害、肝臓・腎臓障害等が報告されている。
 また、テトラクロロエチレンについては、平成5年に環境庁が大気環境指針(年平均値として 230μg/m3 以下)* を設定しており、我が国の大気環境中濃度は、これまでの測定結果によれば、一般環境ではいずれも大気環境指針を下回っているものの、工場・事業場の周辺環境では大気環境指針を上回る測定データも得られている。
 環境基準専門委員会においては、テトラクロロエチレンの健康影響評価について再度検討を行い、テトラクロロエチレンの人の健康影響に係る判定条件と指針に関する専門委員会報告(別添2)がまとめられた。

 第三次答申は、この報告に基づき、「テトラクロロエチレンに係る大気環境基準の設定に当たっての指針値として、低濃度長期曝露による健康影響を未然に防止する観点から年平均値0.2mg/m3以下」と結論している。

   * ) 1mg/m3 = 1000μg/m3

3.今後の対応

 環境庁としては、この答申を受けて、速やかに環境基本法第16条に基づく大気環境基準の告示を行う予定である。
 今後は、改正大気汚染防止法に基づき、本基準が確保されるようトリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの排出抑制対策の推進に努めていくこととしている。

連絡先
環境庁大気保全局企画課
課   長:櫻井 正人(内線6510)
 課長補佐:奥村 二郎(内線6514)