報道発表資料

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2006年03月27日
  • 地球環境

気候変動政策に関する日米共同ワークショップ(気候アクションとコ・ベネフィットに関する日米ワークショップ)について

平成17年度環境省事業として、(財)地球環境戦略研究機関(IGES)は米国環境保護庁(EPA)と共催で、3月22~23日、気候変動対策と共通利益に関する日米ワークショップ(US-Japan Workshop on Climate Actions and Co-benefits)を開催しました。本ワークショップには、政府機関、地方自治体、企業、研究機関、国際機関、NGOなど、気候変動や大気汚染、廃棄物などの広範な分野における日米の専門家が出席し、日米の国内における気候変動対策に関する取組みや、中国、インド等の途上国における温室効果ガスの削減につながる対策(大気汚染対策、エネルギー対策等)、いわゆる共益プログラムについてプレゼンテーションと意見交換が行われました。今後は、環境省とEPAが協力して、日米共同の共益プログラムの実現に向けた検討を行っていくこととなりました。

1.ワークショップの日程等

(1)日程:2006年3月22日(水)~23日(木)
(2)開催場所:米国 ワシントンDC
(3)主催:(財)地球環境戦略研究機関(IGES)、米国環境保護庁(EPA)
(4)出席者:我が国より環境省小島地球環境審議官、IGES森島理事長、浜中理事他、米国よりクルーガーEPA気候変動課長他、その他地方自治体、企業、研究機関、国際機関、NGOなど計約60名が出席。

2.ワークショップの結果概要(議題(英文)は別紙)

(1)日米の気候変動対策について

 日米双方より、政府、地方自治体、企業等における気候変動対策の紹介が行われた。

 気候リーダーズプログラムは、EPAが企業の総合的な気候変動戦略を開発することを推進することを目的としたプログラムである。本プログラムにおいては、企業に対する温室効果ガス排出量を把握するためのインベントリ作成支援、州政府、地域及び国際レベルでの温室効果ガスの算定スキーム、温室効果ガス削減及び関連するリスク管理、5~10年間の野心的な排出削減目標の設定(46のパートナーが目標を設定済み)等が行われている。

 クリーンエネルギーと環境・州パートナーシップは、EPAと先進的な取組を行っている州政府の自主的なパートナーシップであり、全米の人口の49%、エネルギー消費の46%を占める12の州が参加している。その他の事例として、エネルギー効率アクションプラン、再生可能エネルギーの導入を定めた再生可能ポートフォリオ基準、家電製品のエネルギー効率基準などが紹介された。

 この他、州政府や企業が設定している気候変動に関する様々な目標、北東部7州による排出量取引制度(RGGI)、カリフォルニア州における自動車からのCO2排出規制などが報告された。

 わが国からは、環境省より京都議定書目標達成計画に基づく取組、特に、トップランナー制度、温室効果ガス排出量算定公表制度、政府によるクレジット取得制度、クールビズ等の普及啓発等について紹介したほか、IGESより、環境省が実施している国内自主排出量取引制度等の概要と課題について報告を行った。

 その後の意見交換においては、米国は州政府、企業レベルでさまざまな排出インベントリシステム(排出量算定制度)を持っているが、これらの間での調整が課題であるとの意見や、電力の使用などの間接的なCO2排出の取扱いの難しさ、技術移転とキャップ&トレード型の排出量取引制度との関係、京都議定書の削減目標遵守と対策インセンティブの関係等についてコメントがあった。

(2)途上国に対する共益プログラムについて

 EPAは、1998年より統合環境戦略(IES)プログラムを実施している。IESプログラムは、途上国内の地方における再生可能エネルギー、省エネルギー技術や公共交通対策等の統合的な政策措置を通じて、地域の大気汚染の改善、経済の発展、温室効果ガスの削減などの複数の便益の実現を目指すもので、現在、中国、インド等のアジアや、南米など8カ国の途上国において実施されている。EPAは、研修の実施等を通じて、大気汚染を改善するための能力向上を図るなど、プログラムの進行役(ファシリテーター)としての役割を果たしている。また、様々な利害関係者(ステークホルダー)も参加している。

 このように、開発途上国による汚染対策と温室効果ガスの削減策を同時に実施する、いわゆる「共益(Co-benefits)プログラム」に関連し、小島地球環境審議官より我が国が公害を克服した経験を紹介し、公害被害のコストは対策コストを大幅に上回ったこと、気候変動問題においても、気候災害のコストが巨大であることから、対策を講じない場合のコストが対策のコストを大幅に上回る可能性があることを示した。また、汚染対策と気候変動対策には共通項が多く、日米のこれまでの経験を生かして共益プログラムに協力することが、これらの地域における環境問題を克服するための鍵であると述べた。

 共益プログラムについては、エネルギー、室内汚染及び大気汚染、廃棄物、農業及び林業等の各分野における、日米の政府、民間、地方自治体等による取組が紹介された。また、二国間、多国間の協力事例として、我が国環境省と米国国務省及びEPA等より、クリーンエネルギーと気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)、メタン市場化パートナーシップに基づく取組みが紹介された。

 我が国からは、環境的に持続可能な交通(EST)に関するプロジェクト、過去15回主催してきたアジア太平洋地球温暖化セミナー(APセミナー)、2008年に打ち上げが予定されている衛星GOSATによるメタン漏洩のモニタリング計画、アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)等の日本政府によるイニシアティブや、東京都によるヒートアイランド対策などの都市環境問題への取組、モデル計算による廃棄物減量対策の効果、JICAによる環境分野における途上国協力などが紹介された。

 米国からは、メタン市場化パートナーシップの下での、廃棄物の埋立て地からのメタン回収とバイオ燃料利用のプロジェクト、コダック社による、健康・安全・環境5ヵ年目標の下での世界各地の関連工場での温室効果ガス削減に向けた取組、州政府や都市での取組、政府(連邦、州、市)、民間企業、研究所、議会など幅広いステークホルダーの省エネルギーを目的としたグループについての報告、イリノイ州の農家が州政府、シカゴ気候取引所(CCX)などと協力して、家畜系廃棄物やウッドチップなどを活用したバイオエネルギーにより、炭素市場に参加することにより所得を増やせる仕組みを検討している事例などが報告された。

 この他、アジア技術研究所(AIT,タイ)より、我が国が開発したアジア太平洋統合モデル(AIM)を活用して、タイ及びインドネシアにおいて、炭素税を導入した場合の二酸化炭素及び大気汚染物質(硫黄酸化物、窒素酸化物)排出量の削減効果についてのプレゼンテーションが行われた。IGESより、アジアの途上国においては、一酸化二窒素(N2O)の排出、森林伐採からのCO2排出、農業部門からのメタン排出等が課題であることが報告された。また、世界銀行からは、インドの家庭における薪使用による室内空気汚染と、森林及び土壌の劣化等に関する報告が行われた。

 パネルディスカッションにおいては、途上国を中心に共益対策を進めていくため、共益に関する普及啓発の重要性のほか、各国の政府間、政府内部、さらに地方自治体、企業、研究機関、NGOなどとの連携の重要性、能力開発の重要性などが指摘された。特に、国や地方によって、それぞれの共通の利益が異なることから、これらの利害関係者(ステークホルダー)の連携の重要性、大気汚染や気候変動など多様なニーズに応えるための対策や技術に関するポートフォリオを整備することの重要性が指摘された。気候変動枠組条約の下での2013年以降の国際枠組み構築に向けて、共益プログラムのような途上国を対象とした取組をさらに進めていくことは重要であり、今後、環境省では、EPAとともに日米共同プロジェクトの実現に向けた検討を行っていくこととなった。


【関連ページ】
(財)IGESによる発表
米国環境保護庁(EPA)による発表

添付資料

連絡先
環境省地球環境局地球温暖化対策課
国際対策室長:水野 理(6772)
 補佐:竹本 明生(6773)
 係長:島田久仁彦(6775)
 担当:小林 豪(6775)

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