報道発表資料
平成12年度から環境省が実施していたオオタカ保護指針策定調査について、生息分布、繁殖個体数等の結果が取りまとめられたので、その概要をお知らせします。
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調査の概要
本調査は、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律に基づく国内希少野生動植物種であり、環境省発行のレッドデータブックにおいて絶滅危惧II類に選定されているオオタカについて、[1]全国的な生息状況の把握、[2]開発事業地において保護対策を検討するための効果的な調査手法の検討、[3]既存の保護対策の検証、[4]知見の収集整理等を行い、今後の保護指針策定のための基礎資料とすることを目的としている。
調査は平成12年度から実施され、その結果、調査実施以前には不足していたオオタカに関する生息分布、繁殖個体数、効率的な調査手法に関する基礎情報等の新たな知見の収集が図られ、特に本州中部地域の生息分布情報の充実が図られた。
なお、調査結果は由井正敏岩手県立大学教授を座長とした専門家による検討委員会で検討していただき、分布図を公表することについても了解を得た。 -
結果の概要
- (1) 生息分布について
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- 既存資料調査及びNGOへのアンケート調査の2つの調査を行い、結果を総合したところ、全国4391メッシュ(10km×10km)のうち、1630メッシュ(37%)でオオタカの生息状況に関する情報が得られた。
- そのうち560メッシュにおいて、繁殖を確認(Aランク)又は生息を確認し繁殖の可能性がある(Bランク)とされた(別紙1参照)。
- なお、今後の調査の進展によって、今回生息状況に関する情報が得られなかった2761メッシュ(63%)において生息が確認される可能性がある。
- 全国的なオオタカ生息分布図については、今回初めて作成した。
- (2) 繁殖個体数について
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繁殖個体数については、以下の2通りの方法で推計した。
- 方法1
- NGOへのアンケート調査結果によると、繁殖が確認されたメッシュについては、1メッシュ当たり平均で2.0つがいが確認されていることから、全国の繁殖メッシュ(A,Bランク560メッシュ)に当てはめて計算した。
- その結果、以下のとおりとなった。
560メッシュ×2.0つがい×2羽=2240羽
- 方法2
- A,Bの繁殖ランクのうち既存資料調査のみで確認されているメッシュでは正確なつがい数がわからないことから、この1メッシュに最低1つがいが繁殖していると仮定してつがい数を計算し、これをNGOアンケート調査で確認されているつがい数に足しあわせ計算した。
- 既存資料調査のみにより確認されているA、Bランクのメッシュは560メッシュのうち207メッシュだったので、これに該当するつがい数は207つがいと算定された。
- これにNGOアンケート調査で確認されている353メッシュ(353=560-207メッシュ)のつがい数705つがいを足しあわせ計算すると、以下のとおりとなった。
(207+705)つがい×2羽=1824羽
- これにより、全国のオオタカの繁殖個体数は少なくとも1824~2240羽であると推計された。
- なお、繁殖個体を含む全国の生息個体数の推計については、幼鳥、繁殖に参加していない個体がどの程度いるのかという知見がなく、またオオタカの生息状況に関する情報が得られなかった調査メッシュ数が多い(全国メッシュの63%)ことから、引き続き今後の課題である。
- 今回の繁殖個体数の推定値は、これまでの全国の生息個体数の推定値「1000羽以上」(1996年日本野鳥の会アンケート結果)を上回っているが、これは調査の進展により、これまで調査が実施されていなかった地域で新たに生息が確認されたためであり、繁殖個体数の増加を示すものとは言えない。
- 方法1
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- (3) 調査手法の改善
- 別紙2参照
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今後の対応
環境省では、現在、オオタカについて、今回発表の調査終了後から引き続いて「希少猛禽類保護指針策定調査」を実施しており、生息分布や生態等の基礎的な知見の集積のみならず、生息環境の整備方法等、積極的な保護方策を検討するための調査も実施しているところである。これらの調査結果も踏まえ、今後、オオタカ保護指針としてとりまとめることとしている。
添付資料
- 別紙1 日本におけるオオタカの生息分布 (1996年~2000年)[PDFファイル 131KB] [PDF 130 KB]
- 別紙2 オオタカ保護指針策定調査の結果について -調査手法の改善-[PDFファイル 71KB] [PDF 70 KB]
- 連絡先
- 環境省自然環境局野生生物課
課長:名執 芳博(6460)
課長補佐:鈴木 明(6465)
担当:岡部 佳容(6465)