報道発表資料

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1996年12月13日

平成8年度環境モニター・アンケート「におい環境について」の調査結果

環境庁は、平成8年度環境モニター・アンケート調査として、日常生活の様々な場面で感じる「におい環境」の状況等についての調査を行った。
 その結果、「不快なにおい(悪臭)」と同様に、「心地よいにおい(かおり)」に対する関心も高いことがわかった。「不快なにおい」としては、自動車の排ガス、公衆トイレ、ゴミ集積所・収集車などがよく感じられており、「心地よいにおい」としては、草花、樹木などがあげられるとともに、かおりを通じて私達が身の回りの様々な環境と強く結びついていることが示された。
 このことから、におい環境の保全において、生活に身近な悪臭問題の改善と、幅広い視野に立ったかおりの保全・創出との両面から取組を進めていくことが必要であることがわかった。
 環境庁としては、悪臭防止法に基づき、工場・事業場に対する規制などを推進するとともに、本調査の結果などを活用し、良好なにおい環境を形成していくための市民、事業者など各主体の取組を促進していくこととしている。
1.調査の目的および実施方法

(1)目的

 「悪臭」は典型七公害の一つとして環境基本法にもその名があげられており、人々に身近な環境問題として、毎年多くの公害苦情が発生している。
 私たちは、このような不快なにおい(悪臭)から、心地よいにおい(かおり)まで様々な“におい”の中で暮らしており、今後、生活環境におけるこれら様々なにおいを「におい環境」として再認識し、市民一人一人が悪臭をなくし、かおりを積極的にまもり・育てる行動を起こすことが求められる。
 この調査は、日常生活の中で感じる色々な“におい”について、不快なにおい(悪臭)や心地よいにおい(かおり)の両面から、におい環境に対する現状認識と、その対策のあり方などについて意識調査を行うことにより、悪臭のない良好なにおい環境の創造に向けて、市民の取組を支援するための施策等を検討する上での基礎資料を得ることを目的として実施したものである。

(2)実施方法

 環境庁が委嘱している1,500人の環境モニターを対象とし、平成8年6月に総務庁管区行政監察局等を経由して郵送によるアンケート調査を実施した。回答者は1,407人(男性683人、女性724人)で、回答率は93.8%であった。
 
 
2.調査結果の概要

2-1 様々な環境問題の中での悪臭問題の位置づけ 【問1】

 様々な環境問題のそれぞれについて、今後の環境保全上どの程度重要な問題と考えるかたずねたところ、悪臭(不快なにおい)については約4割の人が「大変重要だ」と答え、また、「重要」と考えている人(「大変重要だ」と「どちらかというと重要だ」の合計)は9割を超えている。(図1)
 また、日常生活で悪臭(不快なにおい)についてどの程度被害や影響を感じているかについてみると、「感じる」としている人(「強く感じる」と「時々感じる」の合計)は全体の半数を超えている。(図2)
 このことは、悪臭は健康に直接関わる問題ではないものの、大気汚染などの他の環境問題と同様にその重要性が認められ、身近な環境問題として無視できない課題の一つであることを示している。

2-2 日常生活の中の「不快なにおい」と「心地よいにおい」 【問2】

(1)においを感じる頻度

 日常生活の中でにおいを「よく感じる」とした回答は、不快なにおい(悪臭)、心地よいにおい(かおり)とも約1割であった。また、不快なにおいを「感じる」とする回答(「よく感じる」と「時々感じる」の合計)をみると、72.6%、心地よいにおいを「感じる」とする回答は62.5%であった。(図3)
 このことは、においについて、不快なにおいと同様に、心地よいにおいに対する関心も高いことを示している。

(2)においを感じる場面

 においを感じる場面については、心地よいにおい、不快なにおいとも、多くの人が「近所で散歩等をしているとき」としており、次いで、心地よいにおいについては「遠くへ旅行したとき」、不快なにおいについては「自宅にいるとき」となっている。  また、「通勤通学の途中」や「職場・学校」では、不快なにおいと比較すると、心地よいにおいを感じるとする回答は低率となっている。(図4)
 さらに、「自宅にいるとき」及び「近所で散歩等しているとき」とする回答率の合計を地域区分別に見ると、「工場地域等」、「商業地域等」、「住居地域」で不快なにおいを感じる機会が多く(表1)、一方、「農・漁・山村地域」、「住居地域」では心地よいにおいを感じる機会がわずかに多い。(表2)
 この結果は、都市の生活に身近な場所で不快なにおいの影響を受けている一方、農・漁・山村地域や住居地域などの身近な場所で心地よいにおい環境が残されていることを示している。

2-3 不快なにおい(悪臭)の状況 【問3】

(1)不快なにおい(悪臭)を感じる程度
 住居付近の屋外で気になるにおいについて、「感じる」もの全体(「強く感じる」と「弱いが感じる」の合計)では、自動車の排ガス、公衆トイレ、ゴミ集積所・収集車などが上位となっている。また、家庭の調理の排気や排水、ゴミ焼きなどについては、工場や飲食店・食料品店などを上回っている。(図5)
 この結果は、日常生活に密接な発生源からの悪臭が多く感じられていることを示しており、近年の悪臭苦情において、畜産農業や各種製造工場に代わり、都市・生活型の悪臭苦情が増加傾向にあることとも一致している。

(2)改善すべき責任のありか

 不快なにおい(悪臭)を「感じる」と答えた人に、そのにおいは誰の責任で改善すべきかをたずねたところ、公共施設や水路などについては「国や地方自治体」に、工場、建設工事、飲食店・食料品店などについては「事業者」に、ペット、ゴミ焼き、調理などについては「国民一人ひとり」に責任があるとする割合が大きい。(図6)
 これらは、排出形態に応じた各主体の責任ある行動を求める意識が集約された結果といえる。
 一方で、ゴミ集積所・ゴミ収集車については、「国や地方自治体」と「国民一人ひとり」に責任の所在が二分され、自動車の排ガスなどについては、さらに「事業者」も含めて3つの主体に責任が分かれるなど、各主体の協力による問題解決が求められているものもある。

2-4 心地よいにおい(かおり)の状況 【問4~5】

(1)心地よいと感じるにおい

 様々なにおいをあげてどの程度心地よさを感じるかたずねたところ、「心地よいと感じる」とした回答(「大変心地よいと感じる」と「どちらかというと心地よいと感じる」の合計)が最も高かったものは、「草花」、次いで「樹木」であった。これらは、いずれも9割以上の高率であり、植物が発するにおいは、多くの人が心地よいにおいと感じていることがわかる。(表3)
 また、「海」、「日光」、「風」なども多くの人が挙げており、かおりを通じて私達が身の回りの様々な環境と強く結びついていることを示している。

(2)かおりから感じられる季節感

 においから感じる季節感については、春は「草花」、「樹木」、夏は「海」、「花火」、秋は「枯葉・落ち葉」、冬は「焚き火」、「日光」などとの結びつきの強いことがわかる。(図7)
 特に、春の草花や樹木のかおり、夏の海のかおりは高率であり、多くの人がイメージする象徴的な季節のかおりといえる。
 また、春と夏については、回答率が全体的に高く、かおり豊かな季節であることがうかがえる。

(3)かおりを楽しむための行動の状況

 かおりの心地よさを感じるときについては、「遠出したとき」が最も高く、次いで「住まい周辺」、「自宅の庭」、「室内」となっている。(図8)
 また、「遠出したとき」とする回答は、「工業等地域」、「商業等地域」、「住居地域」で高率であり、「農・漁・山村地域」ではそれより若干低くなっている。(図9)
 このことから、特に都市部においては、身近な場所でかおりを楽しむのみならず、森や海など遠くヘ出かけてかおりを楽しむという意識も強いことが示されており、森や海などの自然とともに、都市内における身近なかおりの保全も必要と考えられる。

2-5 におい環境の改善策について 【問6~9】

(1)におい環境の改善策の必要度

 におい環境の改善策として「ぜひとも必要」という回答が高かったものは、「緑地や樹林地の保全」、次いで「不快なにおい(悪臭)を出す事業・施設の対策」、「不快なにおい(悪臭)を出さないよう国民一人ひとりが配慮する」などであった。
 このことから、におい環境の改善のためには、悪臭防止対策を推進するとともに、自然のもたらすかおりの保全と創出を合わせて推進する必要があることがわかる。(図10)

(2)かおりを利用したまちづくりの対策例

 におい環境の改善策の実例をたずねたところ、「かおりの公園」、「かおりの道」、「花のフェスティバルの開催」などにより、かおりとのふれあいのきっかけづくりを行っているものや、「花いっぱい運動」など住民によるかおりづくりの取組などがあげられている。

(3)住まいや周辺にほしいかおり

 住まいや周辺にほしいかおりを具体的にたずねたところ、かおりの種類としては、「季節を感じさせる草花」、「かおりのする植物」、「森などのみどり」といった自然のにおいをあげる回答が多く、そのほかにも、「海」、「川」、「土」など自然的な要素があがっている。
 かおりのほしい場所としては、公共空間が多くあがっている。
 また、一方で「まず悪臭を除く」、「人工的なにおいはいらない」、「むやみににおいを提供すべきではない」といった意見もみられる。
 そのほか、駅など多くの人が訪れる場所や道路に、悪臭防止対策の一つとして、かおり植物を植えたり、花のかおりを漂わせてほしいといった提案もある。

(4)かおり植物の周知と好き嫌い

 よく知られているかおり植物は、上位から順に「キク」、「キンモクセイ」、「バラ類」、「ユリ類」、「ウメ」、「スギ・ヒノキ」、「サンショウ」、「スイセン」、「ジャスミン」、「ミカン類」などである。
 また、例示した植物38種のうち32種については、そのかおりを「嫌い」とする回答率が10%未満と低率で、多くのかおり植物が人々から好まれていることがわかる。
 逆に、「嫌い」とする回答率が多かった植物もいくつかあることから、公共空間などのような不特定多数の人が訪れる場所に植栽される場合には、そこを訪れる人々のかおり植物に対する嗜好性も考慮が必要となることがわかる。


3.今後の対応

 環境庁としては、悪臭防止法に基づき、工場・事業場に対する規制などを推進するとともに、市民、事業者など各主体の取組を促進するために、本調査の結果やかおり環境都市モデル事業などを通じ、におい環境保全やかおりによるまちづくりのための指針づくりを進めることとしている。


 図表(略)

連絡先
環境庁大気保全局企画課大気生活環境室
室   長:鈴木安次(内6540)
 室長補佐:小柳勝彦(内6542)
 担   当:倉谷英和(内6545)

環境庁長官官房総務課環境調査官室
上席環境調査官:堀内英壽(内6142)
 課長補佐     :平塚 勉 (内6145)