報道発表資料

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1996年12月12日

気候変動枠組条約ベルリンマンデート・アドホックグループ第5回会合の第3日目の概要について

AGBM第5回会合では、現地12月11日、議題(4)の「条約第4条1項(全締約国の約束)の履行の推進」について、討議が行われた。
 今後は、現地13日午後に行われる本会合に対して報告するため、エストラーダ議長が結論ペーパーの案を作成し、非公式の協議が進められていくこととなる。
 なお、議題(5)の「議定書その他の法的な文書の可能な形式」については、時間の関係上討議は省略された。

1.議題(4)「条約第4条1項(全締約国の約束)の履行の推進」について

 各国の発言の概要は参考のとおりである。
 我が国からは、第4条1項の履行促進は重要と考えている旨述べ、条約履行のためのセミナーやトレーニング、共同実施活動(AIJ)などについて、特にアジア・太平洋地域に力を入れて国際協力を行っており、今後、これを継続、充実していくことを発言した。
 また、ベルリンマンデートを越えた議論を行おうとする米国の、途上国に対する厳しい姿勢が注目された。今後、これに対する途上国の反発のおそれも考えられる。

2.議題(5)「議定書その他の法的文書の可能な形式」について

 時間の関係上討議は省略されたが、EUより、EU提案の議定書骨子案の全体が明らかされた。また、G77より、従来のポジション(1 議定書の精神、2 範囲、3 履行確認、4 レビュー及び 5 組織が、大事である)を繰り返す発言が行われた。

 最後に、議長より発言を促されたAOSISのスレイド大使より、第6回アジア太平洋セミナーの議長サマリーの要旨が紹介された。

[参考] 第4条1項の履行の推進の議論における、主な国の発言概要(発言順)

国 名発 言 の 概 要
コスタリカ
(G77及び中国の代表)
  • 条約の趣旨・目的を援用しつつ、単に温室効果ガスの濃度の安定化を図るのみならず、経済成長や貧困の克服などに寄与することが今後の取組の目的とされなければならない。
  • 歴史的に見て、先進国の責任が大きく、まず、先進国がその全ての義務を果たすことが重要
  • 途上国も、乏しい資金や技術の制約の下で取組を進めているが、先進国からの資金や技術の移転が、途上国の義務の履行にとって不可欠である
  • 共同実施(JI)やAIJは、先進国の義務を果たさないことの身代わりとなるものでない
  • JIを実施するとしても、先進国間に限定されるべき
 (多くの途上国より支持が表明された)
アイルランド
(EU代表)
  • 条約第4条1項の履行を促進するため、議定書には、特別に1条を設け、技術移転、AIJ、多国間金融機関や民間資金移転などに関する締約国のとるべき対策を附属書として詳細に規定することを提案
ノルウェー
  • 対策を全世界的に進める上で、資金の円滑な供給の仕組みを考えることが重要
マレーシア
  • 特に調査研究や環境監視における努力が不足しているとして、国際的な環境監視センターの設立を検討することを提唱
マーシャル
諸島
  • GEFの改善を要望
  • 通報のガイドラインなど、第4条1項の履行にあたっての各種ガイド
    ライン類において、途上国各国の特殊性を汲みうる実行可能性が配慮されることを歓迎
ミクロネシア
  • 脆弱性の評価や海面上昇の監視、適切な環境保全的技術のリストアップなどへの国際的取組を要請
イラン
  • 今後の対策強化にあたっては、途上国に与える影響を是非調査するべき
インド
  • IPCCのガイドラインを認識しつつ、第1回の通報の作業を進めているが、データが不足している
  • 産業分野をはじめとした後悔しない対策とともに、適応対策にも取り組もうとしており、これらを実施する上で、ソフト、ハード両面での技術移転が必要
国 名発 言 の 概 要
米国
  • "graduation"という理念を設け、国の発展の段階に応じて義務が重くなるのが当然
  • ベルリンマンデートは全世界的な努力を引き出す上で十分ではなく、次の一里塚(second milestone)が必要であり、第4条1項の具体的な履行策(例えば、審査を受けることなど)について、更なるネゴシエーションを行うべき項目を、COP3に向けた議論の中で明らかにすることが必要
  • (上記につき、ベルリンマンデートの範囲を超える作業を要求しているとの議長の注意を受けて、)この主張は、ベルリンマンデートを否定するものではない。AGBMにおいて内容を議論し、COP3において議定書とともに決定する「京都マンデート」としてもよい
トルコ
  • 一律削減より差異化目標が望ましく、また、トルコが特別の扱いを受けることとなることを期待
フィリピン
  • AIJが先進国の果たすべき義務の不履行の代償措置となるべきではない
  • AIJ自体について、果たして効果や利点があるのか、十分研究されるべき
  • 脆弱な途上国への先進国の対策強化の影響を評価することが必要
ジンバブエ
  • 先進国が、全締約国の義務の履行促進のためにどの程度努力しているのかを、先進国の通報の詳細審査の中で、きちんとチェックすべき
ロシア
  • 移行期経済諸国は別の扱いが必要
  • ロシアの排出量の推移が附属書I国全体の合計排出量安定化に寄与してきたが、これからは経済の立ち直りのために排出増加が不可避となっている
  • 移行期経済諸国については、例えば、1990年から2010年までの排出量が90年レベルの排出量を超えないこと(注)を目標として欲しい
    (注:20年間の合計排出量なのか単年度排出量なのかは詳細不明)
  • 移行期経済諸国以外の先進国は、2010年時点では90年より削減すべき
  • JIなどの実行可能性を高める目標達成メカニズムには好意的
オーストラリア
  • 第4条1項の履行のため、COP3は、前進のためのより固い土台を提供するべき
  • 途上国の通報へのIPCCガイドラインの適用、成果指標の作成、後悔しない対策の余地の特定、各国の合意可能なJIスキームづくりなどについて、COP3後の国際交渉を期待
国 名発 言 の 概 要
ブラジル
  • 対策強化が全世界的課題であることを、他の途上国と比べ率直に認める
カナダ
  • JIは、民間部門を活用して、皆にとって一石二鳥の状況を作り出し得るものとなる
  • GEFや地域の開発援助金融機関の役割も重要
  • 議定書には、第4条1項の促進につき、条項を設けるべき
タイ
  • 通報に関する審査は、条約上、先進国のみに課されるものであり、途上国の審査に反対
連絡先
環境庁企画調整局地球環境部環境保全対策課
課  長:小林  光 (6740)
 調査官:小林 正明(6760)
 補  佐:清瀬 和彦(6758)
 温暖化国際対策推進室
 室  長:鈴木 克徳(6741)
 担  当:奥山 祐矢(6739)