報道発表資料

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2005年06月29日
  • 水・土壌

環境モニタリング(常時監視等)に関する基準の制定について

近年の環境汚染の態様の変化を踏まえ、大気、自動車騒音、水質、土壌、地盤沈下の各メディアに係る環境モニタリング(常時監視等)について、測定局・地点の配置、監視項目・対象範囲、測定頻度等に関する基準等を新たに制定し、本日、都道府県等に通知しました。
 本年度より環境モニタリングに係る補助制度が廃止されましたが、これらの基準等により、各メディア横断的に、全国的観点から適正な環境モニタリングの水準を確保していきます。
 なお、大気、自動車騒音、水質、土壌、地盤沈下といった環境メディアの環境モニタリングでは互いに関連があり、総合的に進めることが重要です。今回初めて、こうした観点から各メディアの環境モニタリングの進め方を一括して示すこととしました。

I 背景・趣旨

 環境の状況を的確に把握することは環境行政の要諦であることから、我が国では、激甚な公害にみまわれた昭和40年代以来、地方公共団体等の多大な努力によって、高度の環境モニタリング体制を構築してきた。
 具体的には、大気汚染防止法第22条、騒音規制法第18条、水質汚濁防止法第15条、農用地の土壌の汚染防止等に関する法律第11条の2及びダイオキシン類対策特別措置法第26条の規定により、地方公共団体において、常時監視が行われている。また、市街地の土壌汚染や地盤沈下についても、地方公共団体の環境監視を促進してきたところである。
 的確な環境モニタリングを実施するためには、環境を取り巻く状況の変化を踏まえ、モニタリング体制の不断の見直しが必要である。近年の環境汚染の態様は大きく変化していることから、測定局・地点の配置、監視項目・対象範囲、測定頻度等に関し、効率的かつ効果的な環境モニタリングの在り方について、改めて検討が求められた。
 また、平成17年度から、いわゆる三位一体補助金改革により、環境モニタリングに係る国の補助制度が廃止され、相当額が地方公共団体に税源移譲されることとなった。環境モニタリング体制の維持・発展については、今後、地方公共団体の判断・対応がより一層重要となるが、一方で、環境モニタリングは、その大部分が法律に基づく国からの法定受託事務であることから、国においても全国的な観点から適正な水準の確保を図るため、一定の方向性を示すことが必要である。このため、各地方公共団体においてその裁量を活かしつつ、環境モニタリングが確実に執行されることを担保するための仕組みについて検討が求められた。
 これらの状況を踏まえ、環境省においては、関係の専門家で構成する審議会又は検討会を開催し、環境モニタリングのための測定局・地点の数の望ましい水準、監視項目・対象範囲の明確化等、効率的かつ効果的な環境モニタリングの在り方について検討を進めてきたところであり、今月相次いで、これらの検討結果がまとまった。
 これを受け、大気、自動車騒音、水質、土壌、地盤沈下の各分野ごとに環境モニタリングに関する基準等を制定し、都道府県等に通知することとした。
 なお、環境モニタリングのうち法定受託事務である常時監視については、平成13年前後に、都道府県等がよるべき基準(以下「事務処理基準」という。)を制定し、通知していたところであるので、上記の環境モニタリングに関する基準については、事務処理基準の改正という形で通知をした。

II 環境モニタリングに関する基準等の主な内容

1.大気環境関係

 必要な測定局の確保等を図るため、大気汚染の状況の常時監視に関する事務処理基準を改正し、以下のように、測定局の数及び配置等に関する定量的な基準を定めた。

(1)
各都道府県において測定項目ごとの望ましい測定局数の水準を定めることとした。  
この水準は、全国的視点から必要な測定局数に、地域的視点から必要な測定局数を加えて算定することとした。
[1]
全国的視点から必要な測定局数
  • 人口及び可住地面積による算定(人口75,000人当たり1局又は可住地面積25km当たり1局を設置する。)
  • 環境濃度レベルに対応した局数の調整(濃度レベルの高い地域は多めに、低い地域は少なめに調整。)
  • 測定項目の特性に対応した局数の調整(NOやSPMは多めに、CO等は少なめに調整。)
[2]
地域的視点から必要な測定局数
  • 自然的状況(地形的又は気象的状況)の勘案
  • 社会的状況(大気汚染発生源への対応、住民のニーズへの対応、規制や計画の履行状況の確認等)の勘案
  • これまでの経緯の勘案(長期間継続して測定をしてきた測定局を重視)
(2)
測定局の具体的な配置については、上記の全国的及び地域的視点を踏まえ、測定局の種類(一般環境大気測定局・自動車排出ガス測定局等)に応じて、各都道府県及び政令市において適切に決定することとした。

2.自動車騒音関係

 道路に面する地域の騒音曝露状況について、監視の質を確保しつつ、効率的・合理的に広い範囲を把握するため、以下のように、自動車騒音の状況の常時監視に関する事務処理基準を全面改正することとした。

(1)
監視の対象となる地域の範囲を明らかにするとともに、監視を効率的・合理的に実施できる基準を以下のように定めた。
[1]
監視対象の明確化
  • 監視対象は、原則2車線以上の道路(市町村道は原則4車線以上の道路)に面する地域であって、住居等が存在する地域であることを明確にした。
[2]
測定・作業等頻度の設定
  • 評価は毎年行うこととするが、評価過程にある測定・作業等頻度については、地域の状況等に応じて実施計画を策定することにより、監視の質を確保しつつ、毎年~約5年(最大10年)と弾力的に頻度を設定できるようにした。
[3]
騒音把握手法の拡張
  • 自動車騒音の大きさの把握は、騒音の測定によるほか、既存の交通量・速度の測定結果を活用できるように拡張した(選択制)。
(2)
事務内容を整理し、慣習的に実施していた事項、欠落していた判断基準等を事務に明文化した。

3.水質関係

 公共用水域及び地下水の水質モニタリングの水準の確保を図るため、以下のように、水質の常時監視等に関する事務処理基準を改正した。

(1)
公共用水域関係
 河川、湖沼、海域ごとに測定・調査すべき地点(利水地点、汚濁水の流入地点、河川の流入地点等)の設定の考え方等を明確にし、効率化、重点化については、以下のように規定した。
[1]
汚濁源の状況、調査地点の位置関係等に応じて地点、項目、頻度等について効率化ができることとした。
[2]
環境基準未達成の地域や指定湖沼、閉鎖性海域、特定の保全計画のある水域等において重点化すべきこととした。
 なお、効率化、重点化にあたっては、化学物質排出移動量届出制度(PRTR)で公開・開示されるデータの活用にも留意すべきこととした。
(2)
地下水関係
 地下水調査の種類ごとに、調査地点、項目、頻度の考え方を明確化した。また、モニタリングの効率化を図るための基本的な考え方を規定した。
 具体的には、新たな地下水汚染を発見するための調査については、地域全体をメッシュ(メッシュの間隔の目安は、市街地で1~2km、周辺地域で4~5km)等に分割し、調査地点が偏在しないよう調査区域を選定することとした。また、分割した調査区域の中から毎年調査区域を選定して順次調査を行い、数年間(目安として3~5年)で地域全体を調査することとした。

4.土壌関係

(1)
農用地土壌関係
 調査地点について、農用地の土壌が汚染されている地域の周辺や汚染のおそれがある地域を対象として調査を行うことなど、おおむね従来の処理基準どおりに実施すればよいこととした。
(2)
市街地土壌関係
 国と地方が行う市街地の土壌環境モニタリングについて、以下のような内容の「土壌環境モニタリングプラン」を策定し、国としても積極的に土壌環境データを収集、整理し、施策に活用することとした。
  • 国は、平成17年度から22年度までを3年ごとに2期に分け、第1期には「自然汚濁レベル」、第2期には「もらい汚染による土壌汚染レベル」に係る全国的な環境監視データを取得し、整理解析することとした。
  • また、地方公共団体に対しては、土壌汚染対策法の円滑な運用等のため、[1]地域における重金属類のバックグラウンドレベルの把握、[2]過去の土地利用履歴等により汚染が懸念される地域の汚染状況の把握、[3]公共用水域及び地下水モニタリングで現に地下水環境基準値を超える地域あるいは汚染土壌の見つかった土地周辺での土壌調査を行うべきであるとの技術的な提言を行った。

5.地盤沈下関係

 地盤沈下に関する望ましい監視の水準等について、以下のような「地盤沈下監視ガイドライン」を策定した。

(1)
地盤高の観測は、地盤沈下の発生状況を直接把握する上での基本であることから、調査対象区域が網羅できるよう1km2に1ヶ所の割合で地盤高観測の水準点を設けることや、観測頻度を年1回とすること等を標準とした。
(2)
地盤沈下の未然防止の観点から地下水位の状況を把握する必要があるため、地下水位観測井を地盤高観測の水準点の近傍に設けることや、観測頻度を月1回とすることが望ましいものとした。
(3)
地盤沈下の原因の解析や効果的な対策を講じるためには、地下水の揚水量を利用用途ごとに、少なくとも年1回程度の頻度で把握することが望ましいものとした。

6.ダイオキシン類関係

 ダイオキシン類の常時監視に係る事務処理基準のうち、大気関係は1.に、水質関係は3.に準じて、必要な測定地点の確保等を図るための改正を行った。
 また、土壌関係は、調査地点について、一般環境の他、発生源周辺の調査を行うことなどおおむね従来の処理基準の考え方で都道府県等がモニタリングすればよいこととした。ただし、調査の年次計画について、当該計画終了後も、新たに同様の年次計画を立て、調査地点を選定する必要があることについて明確化する改正を行った。

III 今後の予定

 今後は、各都道府県等において、この基準等に基づき、一層合理的な環境モニタリング体制についての確立に向け、所要の措置が講じられることとなる。各都道府県等における措置の実施状況については、環境省各担当課に報告をいただく予定である。

添付資料

連絡先
環境省環境管理局大気環境課
課長 関 荘一郎(内6530)
 補佐 佐藤美稚子(内6538)
 補佐 熊倉 基之(内6547)
 担当 増田 大美(内6539)

環境省環境管理局自動車環境対策課
課長 奥主 喜美(内6520)
 補佐 望月 京司(内6563)
 補佐 垣下 禎裕(内6526)
 担当 児玉 知之(内6527)

環境省環境管理局総務課ダイオキシン対策室
室長 牧谷 邦昭(内6532)
 補佐 太田 志津子(内6579)

環境省環境管理局水環境部企画課
課長 谷 みどり(内6610)
 補佐 大森 健司(内6615)
 担当 並木 正治(内6624)
 担当 川崎 健彦(内6625)

環境省環境管理局水環境部土壌環境課
課長 鏑木 儀郎(内6650)
 補佐 東條 純士(内6651)
 補佐 辻原 浩 (内6652)
 補佐 中山 知子(内6653)
 地下水・地盤環境室
 室長 志々目友博(内6670)
 補佐 瀬戸 俊彦(内6671)
 補佐 水谷 好洋(内6672)
 担当 坪谷 剛(内6674)
 担当 小沼 信之(内6675)