報道発表資料

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2005年03月30日
  • 水・土壌

平成15年度臭素系ダイオキシン類排出実態等調査結果について

環境省は、臭素系ダイオキシン類の排出実態等に関して、平成15年度の調査結果を取りまとめた。
 今回の調査対象の難燃剤製造工場及び難燃(防炎)繊維加工工場からの排出ガス、排出水等及び施設周辺環境から臭素系ダイオキシン類が検出された。
 排出ガスについては、臭素化ダイオキシン類濃度は低く、施設周辺の環境大気中の濃度は特に高くなかった。排出水については、一部の工程から高い濃度の臭素化ダイオキシン類が検出された。施設周辺の公共用水域においては、難燃剤製造工場周辺の水域では一般環境に比べて低かったが、難燃(防炎)繊維加工工場周辺の水域からは一般環境に比べて比較的高い濃度の臭素化ダイオキシン類が検出された。また、調査した工程、施設以外からも臭素系ダイオキシン類が発生/排出されている可能性が示唆された。
現時点では、臭素化ダイオキシン類の毒性評価については定まっていないため、環境へ与える影響等について評価することは困難であり、引き続き知見の集積を図っていく必要がある。
 環境省としては、ダイオキシン類対策特別措置法に基づき、今後も引き続き、因果関係を含めた調査を実施し、その結果等を踏まえ、必要な措置を講ずることとしている。

1.背景

 ダイオキシン類の類縁化合物である臭素系ダイオキシン類については、ダイオキシン類対策特別措置法附則第2条において「政府は、臭素系ダイオキシンにつき、人の健康に対する影響の程度、その発生過程等に関する調査研究を推進し、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする」との検討規定が設けられている。
 環境省では、この規定を踏まえて、世界保健機関(WHO)から刊行された国際化学物質安全性計画(IPCS)の環境保健クライテリア205において、臭素系ダイオキシン類の生成、排出が報告されている工程(臭素系難燃剤及びその使用製品の製造・加工から廃棄・リサイクルに至るまでの工程)に係る工場の施設を順次対象にして、臭素系ダイオキシン類の排出実態等の調査を行っている。

2.調査の概要

 平成15年度においては、難燃剤製造工場及び難燃(防炎)繊維加工工場を対象に臭素系ダイオキシン類の排出実態等を調査した。なお、調査の一部については、経済産業省と共同で実施した。

(1) 調査対象施設  
  難燃剤製造工場 : 2工場
    (臭素系難燃剤であるテトラブロモビスフェノールA(TBBPA)またはTBBPAを原料としたTBBPA系難燃剤(TBBPAポリカーボネートオリゴマー)を製造する工場)
  難燃(防炎)繊維加工工場 : 3工場
    (臭素系難燃剤であるヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)またはデカブロモジフェニルエーテル(DeBDEs:ポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDEs)の一種)を使用して難燃(防炎)繊維加工を行う工程を有する工場)

(2) 調査媒体
  調査対象施設関連項目
    [1]排出ガス、[2]排出水等(総合排水、工程排水)、[3]建屋内空気
  調査対象施設の周辺環境関連項目
    [1]環境大気、[2]降下ばいじん、[3]公共用水域水質、[4]公共用水域底質
   
 
(3) 調査対象物質
  臭素系ダイオキシン類
  臭素化ダイオキシン類
    (ポリ臭素化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PBDDs)、ジベンゾフラン(PBDFs))
  モノ臭素ポリ塩素化ダイオキシン類
    (モノ臭素ポリ塩素化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(MoBPCDDs)、ジベンゾフラン(MoBPCDFs))
   

3.調査結果及び考察の概要

 調査結果の概要を表1~4に示す。

(1)難燃剤製造工場
 臭素化ダイオキシン類は、今回調査したテトラブロモビスフェノールA(TBBPA)またはTBBPA系難燃剤を製造している難燃剤製造工場の排出ガス、排出水等、建屋内空気及び施設周辺の環境大気、降下ばいじん、公共用水域の水質及び底質の全ての検体から検出された。
排出ガス中の臭素化ダイオキシン類濃度(毒性等量相当値(注1))は、難燃プラスチック製造工場及び家電リサイクル工場を対象とした平成14年度臭素系ダイオキシン類排出実態等調査(以下、「平成14年度調査」という。)における排出ガス中の濃度(難燃プラスチック製造工場:平均0.036ng-TEQ/m3N, 家電リサイクル工場:平均0.017ng-TEQ/m3N)に比べて低かった。
 排出水等については、一部の工程排水において、高濃度の臭素化ダイオキシン類が検出されたが、処理後の総合排水中の濃度は平成14年度調査における排出水中濃度(難燃プラスチック製造工場:平均1.5pg-TEQ/L, 家電リサイクル工場:平均31pg-TEQ/L)に比べて1桁程度低かった。周辺の公共用水域の水質濃度も一般環境調査結果(注2)と比べて低かった。
  また、一部の環境大気、排水口付近の海域から、今回調査したTBBPA製造工程からの 排出ガスや施設からの総合排水と同程度の濃度レベルの臭素化ダイオキシン類が検出されたことから、当該製造工程以外の工程や施設からも臭素化ダイオキシン類が排出されている可能性が示唆された。

 モノ臭素ポリ塩素化ダイオキシン類については、一部の工程排水及び施設周辺の環境大気、降下ばいじん、公共用水域の水質及び底質から検出された。検出された工程排水中のモノ臭素ポリ塩素化ダイオキシン類の実測濃度は、臭素化ダイオキシン類に比べて極めて低濃度であった。

(2)難燃(防炎)繊維加工工場
 臭素化ダイオキシン類は、今回調査したヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)やデカブロモジフェニルエーテル(DeBDEs)を使用した難燃(防炎)繊維加工工場からの排出ガス、排出水等、建屋内空気及び施設周辺の環境大気、降下ばいじん、公共用水域の水質及び底質のうち、排出ガス1検体を除く全ての検体で検出された。
 排出ガスについては、平成14年度調査における排出ガス中の濃度(難燃プラスチック製造工場:平均0.036 ng-TEQ/m3N, 家電リサイクル工場:平均0.017ng-TEQ/m3N)に比べ、一部に高い濃度が検出された。また、周辺環境大気中濃度は一般環境調査結果(注2)よりやや低い値であった。
  排出水等については、臭素化ダイオキシン類は、染色・難燃(防炎)加工工程排水の全検体から検出されたが、工程で用いている工業用水や防炎加工のための難燃剤を添加していない染色のみの工程排水からは検出されなかったことから、当該染色・難燃(防炎)工程から発生/排出している可能性が考えられる。施設からの総合排水の濃度レベルは、平成14年度調査における排出水中濃度(難燃プラスチック製造工場:平均1.5pg-TEQ/L, 家電リサイクル工場:平均31pg-TEQ/L)に比べて高かった。当該濃度は、染色・難燃(防炎)加工工程排水よりもかなり高いことから、施設内に当該工程以外に臭素化ダイオキシン類を発生/排出する工程等が存在する可能性が示唆された。
  また、排出水では、臭素化ダイオキシン類濃度とPBDEs濃度との間に高い相関が見られたが、臭素化ダイオキシン類濃度とHBCD濃度との間には相関がみられなかったことや、加工剤の原料であるDeBDE難燃剤中の臭素化ダイオキシン類濃度は、HBCD難燃剤中の濃度よりも高かったことなどから、臭素化ダイオキシン類の存在は、主にPBDEsと関係している可能性が示唆された。
施設の排水口付近の水域の水質の濃度は、排水口から離れた水域に比べて高かったことから、当該施設からの臭素化ダイオキシン類の排出等が周辺水域濃度に影響を及ぼしている可能性が示唆された。

 モノ臭素ポリ塩素化ダイオキシン類については、一部の工程の排出ガス及び排出水より検出されたが、排出ガスの一部を除き、臭素化ダイオキシン類に比べてかなり低濃度であった。 

(注1) 臭素化ダイオキシン類については、その毒性について不明な点が多く、現在のところ、国際的に
 同意が得られた毒性等価係数(TEF)はないが、IPCS(国際化学物質安全性計画)の環境保健クライテリアにおいて、塩素化ダイオキシン類同族体に用いられているTEFを、対応する臭素化ダイオキシン類同族体に暫定的に適用してもよいのではないかという考えが示されている。このため、本調査では、臭素化ダイオキシン類の実測値とともに、実測値に塩素化ダイオキシン類のWHO-TEF(1998)をかけて求めた毒性等量相当値についても参考値として併せて示している。
また、現時点で臭素化ダイオキシン類の毒性評価は定まっていないため、環境へ与える影響等について評価することは困難であり、引き続き知見の集積を図っていく必要がある。

(注2) 一般環境中の臭素化ダイオキシン類(4~6臭素化体)について調査した平成14年度臭素系ダイオキシン類に関する調査結果(平成16年2月、環境省環境保健部環境リスク調査室)では、公共用水域水質及び環境大気中の臭素化ダイオキシン類の毒性等量相当値の平均値は、それぞれ0.0017pg-TEQ/L及び0.015pg-TEQ/m3であり、相当する難燃剤製造工場周辺水域水質及び難燃(防炎)繊維加工工場周辺の環境大気の平均値は、それぞれ0pg-TEQ/L及び0.007pg-TEQ/m3であった。

4.今後の予定

 環境省としては、ダイオキシン類対策特別措置法に基づき、今後も引き続き、因果関係を含めた調査を実施し、その結果等を踏まえ、必要な措置を講ずることとしている。


平成15年度臭素系ダイオキシン等排出実態調査結果報告書

添付資料

連絡先
環境省環境管理局総務課ダイオキシン対策室
室長 牧谷 邦昭 (内6532)
 補佐 太田志津子(内6579)
 担当 山井  毅 (内6571)

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