報道発表資料

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1998年10月15日

神鋼神戸発電所計画について

環境庁は、卸供給発電(IPP)として計画されている神鋼神戸発電所(140万kW)について、10月15日付で環境保全上の観点からの意見を通産省に対して述べた。卸供給発電は、電源開発調整審議会に諮られないため、通産省がその立地に際し関係省庁と調整することとし、環境庁が卸供給発電に対して初めて意見を述べたもの。
 環境庁の意見は、既設の製鉄所も含めて大気汚染対策を実施することにより窒素酸化物やばいじんの総排出量を現状以下とすることや温排水対策の実施などを内容としている。また、発電所アセスでは、初めて二酸化炭素の削減について要請している。
 通産省では、環境庁の意見を踏まえて、事業者を指導するとしている。

1.卸供給発電について

 平成7年12月に施行された改正電気事業法により、許可を受けない非電気事業者でも入札制度を通して自由に発電事業に参入すること、いわゆる卸供給発電(IPP; Independent Power Producer)が可能となった。
 卸供給発電は、通常の発電所と異なり、電源開発調整審議会の審議の対象となっていないが、通商産業省の省議決定による環境影響評価の対象となるもの(火力発電所では15万kW以上)については、環境影響評価が実施され、それに対して環境庁が意見を述べることとしている。
 なお、環境影響評価法の全面施行後(平成11年6月以降)は、卸供給発電事業についても、規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがあるものについては、同法に基づく環境影響評価の対象となる。

2.神鋼神戸発電所の概要

事業者 (株)神戸製鋼所 最大出力 140万kW
(70万kW×2)
計画位置 神戸市灘区灘浜東町
(神戸製鉄所内)
燃料 石炭 約336万t/年
       (湿炭)
用地 約30万m2
(神戸製鉄所全体
で約100万m2)
着工 平成11年6月~
発電方式 ボイラー・タービン方式
(発電効率42.7%)
運転開始 1号機;平成14年4月
2号機;平成16年4月

3.環境庁意見の内容

神鋼神戸発電所計画に対する環境庁意見

 神鋼神戸発電所計画は、大都市地域に設置される大規模な石炭火力発電の計画であり、環境保全上特段の配慮が必要とされる。こうした点を考慮し、当該計画に対し以下の意見を提出するので、通商産業省におかれては事業者を適切に指導されたい。

1.立地予定地の周辺地域は、二酸化窒素及び浮遊粒子状物質に係る環境基準が達成されておらず、大気汚染防止法の硫黄酸化物に係る総量規制地域に指定され、かつ、公害健康被害の補償等に関する法律の旧第一種地域であることから、事業の実施に際しては、既設製鉄所の対策も含めて大気環境への負荷低減対策を推進する必要がある。
  このため、通商産業省におかれては、下記につき事業者を適切に指導されたい。

(1)硫黄酸化物について、硫黄分の少ない炭種選定や最新の排出ガス処理技術の導入等により、既設製鉄所を含めた低減対策を講じ、年間総排出量が現状程度となるよう可能な限りその抑制に努めること。

(2)既設製鉄所も含めたばい煙対策を講じることにより、発電所を含めた製鉄所全体から排出される窒素酸化物の年間総排出量を現状を下回る1500トン以下とすること。また、同様に、定期的な排出濃度の測定から得られるばいじんの年間総排出量を現状以下とすること。

(3)発電所の運転開始後の維持管理及び情報提供について、以下の措置を講じること。
  {1}上記の年間総排出量に対応した発電所の年平均の運転管理目標濃度を設 定し、自治体との連携の下、既設製鉄所も含めたばい煙排出量の厳格な管理を行うこと。また、本計画の煙突高が一般的な大規模石炭火力発電所の 煙突高と比べて低いことに鑑み、自治体の環境監視と緊密に連携した情報 システムを構築することにより、疾風汚染による高濃度が出現した際などには既設製鉄所も含めて迅速な対応を行うこと。
  {2}石炭利用に伴い発生する可能性のある重金属等微量物質について、発電所からの発生監視等により環境保全上支障を生じることがないよう措置すること。
  {3}地域住民に対して、既設製鉄所も含めたばい煙排出量及び発電所の使用石炭成分、事業者による常時監視測定データ等の情報を提供すること等により、事業の実施について環境保全面での信頼の確保に努めること。

2.立地予定地の周辺地域は、国道43号線をはじめとして道路沿道における騒音及び大気汚染の改善が進んでおらず、自動車NOx法の特定地域にも指定されている。このため、海上輸送の活用や公共交通機関の利用による発生交通量の削減及び低公害車の導入等を既設製鉄所も含めて推進することにより、沿道における環境負荷の低減を図るよう、通商産業省におかれては、事業者を適切に指導されたい。

3.瀬戸内海は閉鎖性が高く、一部で水質汚濁に係る環境基準を超過し、富栄養化の進行している海域であり、温排水の影響についても慎重な配慮が望まれる海域である。
  本計画は、出力当たりの温排水排熱量は抑制されているものの温排水の拡散範囲が拡大することから、水質及び海生生物への影響が懸念される。事業者においては水質・水温及び海生生物の監視を実施し、所要の対策を講じることとしているが、通商産業省におかれては、これらが適切に実施されるよう事業者を適切に指導されたい。

4.発電所を含めた製鉄所全体から排出される二酸化炭素を削減するため、通商産業省におかれては、下記につき事業者を適切に指導されたい。

(1)事業者として可能な限り製鉄所内における省エネルギー対策や新エネルギ ー利用等の促進に努めること。

(2)発電施設の熱効率の向上を進めるとともに、発生する排熱を製鉄所内外でできる限り有効利用すること。特に、周辺地域への蒸気・温水の供給等の排熱の有効利用は、温排水による水質及び海生生物への影響の抑制にも資するものであり、広域熱供給幹線への排熱供給等について積極的に検討すること。

連絡先
環境庁企画調整局環境影響評価課環境影響審査室
室  長 :小林正明(内6231)
 審査官  :瀧口博明(内6233)
 担  当 :諸熊武史(内6233)