報道発表資料

この記事を印刷
1998年10月05日

「エネルギー対策と住宅・社会資本整備の連携における地球温暖化防止効果に関する調査」報告書について

環境庁、建設省、資源エネルギー庁の3省庁は共同で実施した「エネルギー対策と住宅・社会資本整備の連携による地球温暖化防止効果に関する調査」を踏まえ、この度、報告書をとりまとめた。尚、本調査に当たっては、(株)三菱総合研究所に委託し、同社において、有識者から成る研究会(座長:柏木孝夫東京農工大学教授)が設置された。
この報告書は、地球温暖化防止対策のためのエネルギー対策を、住宅・社会資本整備と連携して実施した場合の効果について定性的・定量的に把握するための調査結果をまとめたものであり、連携によって二酸化炭素削減の効果が大きくなることを明らかにしている。
具体的には、越谷市において計画中の駅前再開発事業及びニュータウン開発事業の各々において効果測定の試算を行った。駅前再開発事業ではエネルギー対策と住宅・社会資本整備との連携メニューにより、全プロジェクトによるCO2排出量の10.1%のCO2削減が可能、ニュータウン開発では、全プロジェクトによるCO2排出量の18.6%のCO2削減が可能との結果が得られた。また、こうした調査結果を踏まえ、今後のインフラストラクチャーの整備において考慮すべき点も挙げている。 環境庁では、本調査から、エネルギー対策と住宅・社会資本整備の連携が効果的であることが判明したので、建設省と資源エネルギー庁と共に、これらの対策の一層の推進・普及について取組を深めていく考えである。また、併せて、本報告書を都道府県、政令指定都市に配布して、これらの対策を強力に推進していく考えである。
1.調査の趣旨
(1) 地球温暖化防止京都会議において、世界的に増加し続ける温室効果ガスの排出抑制を国際的に取り決めるための京都議定書が採択された。議定書により、日本においては2010年を目途に1990年度比6%の温室効果ガス削減が定められたところであり、京都会議の議長国として、率先して目標達成を図っていかなければならないところである。 我が国の二酸化炭素の排出量は特に民生・運輸部門での増加が顕著であるが、民生・運輸部門の対策において、自動車やエネルギー利用機器単体ごとのエネルギー効率を高めるものについてはすでに多くの対策が講じられているのに対し、エネルギー対策と住宅・社会資本整備との連携という視点での対策や、その効果を定量的に把握した例は少ない。
(2) 「エネルギー対策と住宅・社会資本整備の連携による地球温暖化防止効果に関する調査」は、以上の状況を踏まえエネルギー対策と住宅・社会資本整備における地球温暖化防止対策に関し、それらの間での効果的な連携のあり方を検討し、効果の定量的な測定を実施したものである。
2.調査期間

  平成7年10月より3カ年継続して検討

3.調査体制

  平成8、9年度において、環境基本計画推進経費により、環境庁、建設省、資源エネルギー庁は「エネルギー対策と住宅・社会資本整備の連携による地球温暖化防止効果に関する調査」を(株)三菱総合研究所に委託した。調査に際しては、同社において、有識者の参画のもと研究会(座長:柏木孝夫東京農工大学教授)が設置された。

4.本報告書の要旨
(1)

調査の範囲
  本調査は、各種エネルギー対策の実施において、住宅整備、社会資本整備といった各種事業と連携した場合の、地球温暖化防止対策における効果を定性的、定量的に把握することを目的としているが、ここでいう住宅整備に関わる対策及び社会資本整備に関わる対策とは主に以下のものをいう。

住宅整備に係わる対策
 {1} 建築物の構造の省エネルギー化
 {2} 再生可能エネルギー(太陽光発電、太陽熱利用、風力発電)
社会資本整備に係わる対策
 {3} エネルギー・カスケーディング (従来型コジェネレーション、燃料電池)
 {4} 地域熱供給(再開発地区を対象とする民生用熱供給全般・河川水、海水、下水排水、工場廃熱等の未利用エネルギー活用)
 {5} リサイクルシステム(一般廃棄物ごみ発電)
 {6} 交通体系整備(低公害車、公共交通機関利用促進、モーダルシフト促進、道路環境整備)
 {7} 都市緑化による環境保全

 

(2) 地方自治体の現状
  現在におけるエコトピア計画、新エネルギー導入ビジョン、エコシティー都市環境計画といった地方自治体の計画においては、単独の対策の導入までしか考慮しておらず、二酸化炭素削減のための連携メニューまでは考慮されていない。
(3) 連携メニューの整理的検討
  連携メニューの効果は{1}連携によって効果をより発揮させる、{2}連携により導入が促進される{3}連携により導入課題が解消されるといったものが期待されなければならない。
  以上の視点から、上記の住宅整備にかかる各対策及び社会資本整備にかかる各対策の連携は、建築物の構造の省エネルギー化と再生可能エネルギー、建築物の構造の省エネルギー化とエネルギーカスケーディングとの連携等様々な連携メニューが考えられ、具体的にどのようなメニューが考えられるかを整理した結果は報告書にまとめられている。
(4) 連携メニューの定量的効果のケーススタディー
  ここで具体的なモデルをあげ連携メニューの効果を定量的に把握している。
  具体的なモデルとして、地球温暖化地域推進計画や新エネルギービジョン等をすでに作成している越谷市の、市街地再開発事業としての越谷東口第一種市街地再開発事業と土地区画整理事業としての越谷レイクタウン事業を選定した。
  越谷駅東口第一種市街地再開発事業は、駅前空間として交通利便性の高さ、地域の利便性の中心、高いアメニティ性の確保が求められる。また都市近郊であると同時にベッドタウンであることから両方の機能をミックスさせた整備を図っていくことが必要である。
  上記の必要性を満たしつつ、こうした問題を解消し地球温暖化対策を推進していくための連携手法を定量的に把握してみると、二酸化炭素削減量は、全プロジェクトによるCO2排出量の10.1%の削減効果があった。
 越谷レイクタウン事業は、生活空間としての機能向上、アメニティ性の向上、環境意識の高まりに対応すべく、自然の保全、創造が住民との協力の上で整備されるべきである。そのような課題を解決しつつ、地球温暖化対策を推進していくための連携手法を同様に定量的に把握してみると、二酸化炭素削減効果は、全プロジェクトによるCO2排出量の18.6%の削減効果があった。
(5) 連携メニューの費用対効果
  連携メニューの二酸化炭素削減効果がいくら大きくても費用が巨大では現実性がない。実現可能性、効率性の観点からも費用対効果の視点は重要である。試算の
 結果、越谷の ケースではもっとも費用対効果の優れた対策は地域冷暖房となった。
(6) 連携メニュー導入時の課題
  以上のように連携手法を採用した場合、定性的にも定量的にも地球温暖化対策として役立つものであることが分かった。しかし、主要連携メニューの導入には、
 基準を満たすべき法的規制、構築または導入すべきインフラ等解決すべき課題があり、報告書にまとめている。
  例えば、太陽光発電においては、次のような課題があるとされている。すなわち、「建築基準法や消防法、電気事業法等の法的規制があり、また電力事業者の承認が必要になるケースもある。土地区画整理事業等の都市計画と連携して導入する場合、地区計画や用途地域等の設定により高さ制限や容積率等が制限される場合があり、これら計画と整合性を図りつつ導入を図っていくことが必要である」と指摘している。
(7) 最後に
  本報告書は、上記課題の他、連携メニューのスムーズな定着のための諸条件を最後に列挙している。
{1} コスト低減の一層の推進と経済性負担のあり方の検討
 高コストのため普及条件の整っていない太陽光発電、低公害車といった技術においては、大量生産体制の確立を促進するための助成措置、地方自治体の費用負担、税制による費用負担の平準化等が考慮されるべきである。
{2} 地方自治体における担当部局の明確化
 地方自治体による積極的かつ具体的な温暖化対策のためには、エネルギー対策及び地球温暖化問題を掌握する部局の明確化が必要である。
{3} 関係主体における連携推進の整備
 導入促進のため、開発プロジェクトの計画段階から、計画立案者、推進者及び各種メニューの設計者、施工者、運用者が連携を図れる体制を整備すべきである。
{4} 連携メニューの導入指針の策定、関連データベースの構築
 導入指針内容例(連携メニューリスト、各メニューの概要、導入適正・効果、標準導入形態例、導入手順等)及びデータベース(導入対象地域、施設、用途別エネルギー需要原単位等)を導入検討に資するように策定することが必要である。
{5} ライフサイクルアセスメントの適用
 耐用年数の長い住宅・社会資本整備という巨大なインフラ整備の温暖化対策にはライフサイクルアセスメントの適用が必要であり、その実現のためにはその手法、各種データベースの一層の確立が必要である。
{6} 都市構造、地域構造に関わる地球温暖化対策に関する研究の一層の推進
 連携メニューの充実のために職住近接地、用途混在の土地利用計画と地球温暖化対策効果等都市構造、地域構造に関する一層の研究が必要である。
連絡先
環境庁企画調整局地球環境部環境保全対策課課   長 :竹内 恒夫
調 整 官  :谷津 龍太郎
 課長補佐 :上野 賢一(6286)
 担   当 :相ノ谷容造(6764)