報道発表資料

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1996年12月10日

気候変動枠組条約ベルリンマンデート・アドホックグループ第5回会合の第1日目の概要について

現地12月9日、予定どおりAGBM第5回会合の第1日目の議事が進められた。
 まず、午前中に公式会合が開催され、午後は、AGBMの非公式会合として、議定書のエレメントについてこれまでに意見の提出があった13カ国からそれぞれ意見の要点を説明し、会場からの質疑を受けるラウンドテーブル・ディスカッションを行いさらに6時から、IPCCが最近まとめた対策の在り方に関するテクニカルペーパーの説明と質疑応答を行った。
 なお、現地10日には、午前中に政策措置について、午後には、数量化された排出削減・抑制目的(QELROS)について議論が行われ、午後6時から、附属書I国の対策の強化に伴い非附属書I国に生じるインパクトについてのワークショップが開催される予定である。

1.AGBM公式会合

 冒頭、エストラーダ議長から、ここ数日の間に、ロシア、日本、ニュージーランドから意見が提出されたので、事務局文書として配布する旨の紹介が行われた。また、特別にボーリンIPCC議長より挨拶があった。
 その後、アジェンダの採択等の後、今後のAGBM等のスケジュールが、以下の通り報告された。

来年2~3月  SBSTA/SBI  2月24日~
        AGBM6      2月28日~ 3月 6日
  7~8月  SBSTA/SBI  7月28日~ 7月31日
        AGBM7      8月 1日~ 8月 7日
   10月  AGBM8     10月27日~10月31日
COP3  12月 1日~12月12日

(なお、エストラーダ議長から、COP3の大臣会合は、会期の中間段階で実施する旨発言があった。)

2.AGBM非公式会合

(議定書案のエレメントについての各国意見についての ラウンドテーブル・ディスカッション)

 AGBM副議長のスパビット氏(タイ)の議事進行の下、標記の会合が開催された。なお、非公式会合であったが、NGO等も出席でき、会場は満員となった。
 各国の提案に関する発言は、全部で13カ国からあったが、その概要とそれに対する主な反応は、参考に掲げるとおりである。我が国は4番目に発言を行い、これに対して、以下の3カ国からコメントがあった。

  1. EU(アイルランド)
     政策措置について、規定上は拘束性があるように見えるが、実質的に拘束性がないのではないか。拘束性を持たせるのであれば、EU提案のように、各国が協調しないと導入できない政策について、拘束性を持たせるべきではないか。
     → 我が国より、日本はメニューアプローチの立場に立つ旨返答。
  2. マレーシア
     日本提案のようにフレキシブルな案では温暖化を防げるか不明であり、温暖化して被害が生じたときの保険のような規定を議定書に設けたらどうか。
     → 我が国より、今回の措置は、実現性のあるものであって、着実な効果が期待できるものである旨返答。
  3. 米国
     一人当たり排出量目標のpトンと総排出量目標の削減率q%の間には何らかの関係があるのか。
     → 我が国より、p、qの値については現時点で想定されておらず、数字はネゴシエーションの対象である旨返答。

 各国の発言及び質疑応答の後、議長より、今日のラウンドテーブルは情報共有化のためのものであり、結論は敢えて求めず、AGBMへの報告も行わない旨述べられ、散会した。

3.IPCCの政策措置に関するテクニカルペーパーについてのワークショップ

 18時20分から、各国代表及びNGOオブザーバーなどが参加し、テクニカルサポートの専門家によるIPCCテクニカルペーパーの説明を聴取した。質問は、比較的に低調であったので、引き続き、ワトソン氏(IPCC新議長)が到着後に、別途セッションを開く可能性を検討することとし、19時40分に散会した。

[参考]非公式会合における各国の発言の概要とそれに対する主な反応(発表順)

国 名発 言 の 概 要主 な 反 応
オーストラリア
  • ベルリンマンデート・プロセスは、差異化を要請している
  • 一人当たりの国民総支出についての損失を均等にするように各国別の削減率を決め、先進国全体としての削減を図るべし
  • いかにして、附属書I国全体としての削減が確保されうるのかが明確でない
    [EU(アイルランド)]
ガンビア
  • 先進国と途上国との間には、大きな差がある
  • 途上国経済への悪影響を避けるべきこと及び途上国における温暖化への適応対策が重要である
  • 途上国の間にも大きな格差がある(米国)
  • 適応対策についても新議定書は規定を置くべき(サウジアラビア)
アイルランド
(EU代表)
  • 数量目的も政策措置も拘束力のあるものとする
  • 新議定書の締約国と条約の附属書I国との異同等について、質問があった。
ニュージーランド
  • 全てのガスを対象とすべき
  • 排出権取引は柔軟性を確保する上で重要である
  • 短期的で非現実的な目標にこだわるよりは、長期的な大気中の温室効果ガスの安定化を図ることが重要である
  • 費用最小化を図れる手法が重要である
  • 政策措置は基本的には各国の裁量に委ねるべきだが不適切な補助金の除去や国際的なバンカー燃料への課税等は、各国間で調整する必要がある
 
ノルウェイ
  • 全世界の合計削減率(ただし、現状の対策のままのケース(BAUケース)の将来見通し排出量からの削減率)を国毎の事情により特定の式により加減するアイディアを提示
  • どのような式を使おうとも代入するデータが時とともに変化するので、約束に安定性がない(米国)
  • BAUケースのベースライン排出量見通しについても信頼性が低い(米国)
  • 先進国全体が、果たして削減されるか疑問である(EU)
国 名発 言 の 概 要主 な 反 応
ロシア
  • 先進国全体としての目標と差異化された責任とを強く主張
  • 共同実施について好意的
 
西サモア
(AOSIS代表)
  • 従来から提案しているAOSISの議定書案はベルリンマンデートに完全に即した内容となっている
 
サウジアラビア
  • CO2に偏らない包括的アプローチ、吸収源の増進、適応対策の位置づけ、既存の不適切な補助金の除去が必要
  • エネルギー需要の抑制のための需要側での課税強化に反対
  • 産油国の福祉が低下するより、水没により国が絶滅するおそれがあることの方が重要である
    (マーシャル諸島連邦)
スイス
  • 全体的構成としてはEU案を支持
  • 国毎の差異化として、1人当たり排出量に応じ、先進国を3~4のグループに分け、1人当たり排出量の大きな国程大きな削減を担うべし
 
イギリス
  • EUの提案に含まれない詳細な事、項特に審査の仕方や気候変動の指標(Climate change indicators)づくりなどを訴えた
  • 指標に照らした判断がどのように国際社会や各国の行為に結びつくのか(米国)
米国
  • 排出量の貸借り(目標以上の削減を達成した場合には、その分を次の目標の達成に繰り越すこと)などの柔軟性が必要
  • 次のステップにおける途上国の対策参加が必要
  • 米国は議定書の履行確保や強制力を強調するが、10年間の目標では事実上、履行が確保されているかどうかが最終年まで分からず、実質的に義務がないのと同じ
    (EU、マーシャル諸島連邦→これに対し、米国より、借り出しの上限を設けることを示唆
ザイール
  • 先進国で既存の2000年目標が守れない国があるのは問題であり、こうした国々の2000年以降の目標については、より厳しいものにするべき
 

(注)AOSISは、他国の提案に対するコメントとして、フレキシビリティを確保することは否定しないが、チェックの確実性が犠牲にさせてはならないこと、緩和対策と同様に適応対策が重視されるべきこと、差異化の議論ゆえに国際合意が遅らされてはならないことを指摘した。

連絡先
環境庁企画調整局地球環境部環境保全対策課
課  長:小林  光 (6740)
 調査官:小林 正明(6760)
 補  佐:清瀬 和彦(6758)
 温暖化国際対策推進室
 室  長:鈴木 克徳(6741)
 担  当:奥山 祐矢(6739)